溝付きナットは、穴が許す場所にしか止まりません
トレーラーの車輪ベアリングにグリスを詰め直した人が、ハブを回しながらナットを 50 ft·lb ほどまで二度締め、いったん緩めて手締めまで戻したところ、割ピンの穴がちょうどその位置で合った、と書いています。質問は、ここでピンを入れるか、もう一段戻すか。もう一段戻すとハブに 16 分の 1 インチほどのがたが出る。91 件の返信が付き、そのうち良い二つは違う手順を勧めていて、しかもどちらもこの部品についての同じ事実の上に立っていました。
締めるべき数値が存在しない
溝付きナットは頭頂に溝が切ってあり、相手のボルトには横穴が開いています。 ナットは、そのどれかの溝が横穴に合う位置にしか残せません。 それ以外の位置は存在しません。トルクレンチが何を示していてもです。
ですからこの継手の仕様は、トルク値だけでは成立しません。 値と、穴がそこになかったときにどうするかの規則が要ります。 次の合う位置まで進めるのか、そこまで戻すのか。 これは別々の指示で、得られる軸力も違います。細部ではありません。
スレッドでは両方の規則が使われていました。最多票の回答は完全に手順で、 トルクが一度も出てきません。ドラムを回し、わずかに引きずり始めるまで締め、 ドラムが自由に回るところまで少し戻して、ピンを入れる。 次点の回答は出発点が逆で、手締めの位置で穴が空いていたのは運がよかった、 そこが理想的なピンの位置だ、穴がそこにないときにだけさらに戻せ、と言っています。
その継手についてはどちらも正しく、どちらも他所には持ち出せません。 円すいころ軸受は軸方向のすきまで決めるので、ナットは何かを予圧するためにあるのではなく、 戻すのは安全です。締結を保たなければならない継手は逆で、 穴を探すために戻すのは、設計が当てにしていた軸力を使ってしまうことです。 そのトルクがそもそも何を買うはずだったのかは torque and clamp force(英語)にあります。
あのピンは、自分ではなく穴の名前で呼ばれている
割ピンは ISO 1234 の対象で、その寸法表の脚注が、 ほとんど誰も気づいていないことを述べています。 呼び径は割ピン穴の直径である。 ピン自体はもっと小さく、どれだけ小さいかも表にあります。
| 呼び径(穴) | ピン径 最大 |
|---|---|
| 1.6 | 1.4 mm |
| 2 | 1.8 mm |
| 2.5 | 2.3 mm |
| 3.2 | 2.9 mm |
同じ脚注は穴そのものについても 呼び径 1.2 未満は H13、1.2 超は H14 を推奨しています。 どの基準で見てもゆるい側です。二つを合わせると絵ははっきりします。 割ピンは、意図的にゆるい穴に入る、意図的にゆるい部品です。
せん断ピンではありませんし、そう設計されてもいません。 ナットがある位置を越えて動かないようにする止めです。 荷重を受けるためのピンはリーマ加工した穴にしまりばめか密なはめあいで入り、 公表されたせん断値を持っています。それは スプリングピンにはせん断荷重の規定があり、平行ピンにはありませんにあります。
延性の要求は「一度」
ISO 1234 の要求表に延性の行があり、そこの数字は読み飛ばしやすいので引用する価値があります。 割ピンの各脚は、それ自体に対して折り返される曲げに一度耐えられること。 曲げた箇所に破断の兆候が目に見えて現れないこと。
一度です。それがその曲げについて検証された寿命の全部です。 ピンをまっすぐ戻して外し、もう一度曲げるのは、同じ場所での二回目のサイクルで、 その材料は一度分しか資格を持っていません。あとに何が残っているかは規格に書かれていません。 同じ問いをピンではなくねじについて聞いたものは can you reuse a screw(英語)にあります。
仕上がりの行が妙に具体的なのも理由は同じです。 ピンにばりがないこと、目はできるかぎり円形であること、 二本のまっすぐな脚を合わせた断面が円形であること。 全部、ゆるい穴を通ってから曲げられる部品についての要求で、 その順序で、しかも割れずに、という話です。
規格が名指しし、そして一段大きくしろと言っている用途
規格が用途を名指しすることはめったにありません。ISO 1234 は二つ挙げています。 寸法表の二つめの脚注が、鉄道用途と、 クレビスピンの割ピンが交番する横方向の力を受ける場合について、 表が示すより一段大きい呼び径の割ピンを使うことを推奨しています。
これは既定についての告白として読めます。 表の通常の選び方は、そのピンが繰り返し働かされない止めであることを前提にしています。 荷重の向きが十分な頻度で反転するなら、規格としては材料が多いほうがよい。 この文書の中で、割ピンが疲労しうると認めているのにいちばん近い一文です。
自分たちの表がこれを落としていた理由
why screws loosen(英語)で、 緩み止めの手段を「どちらの失敗に効くか」で並べています。 そしてその表には、これまで確実固定の行がありませんでした。 プリベリングトルク、ねじ用接着剤、くさび形座金、ばね座金、定期的な増し締めはあった。 割ピンはなかった。
並べにくいのは、それが単独の分類だからです。 確実固定は回転に抵抗するのではなく、離散した段を越えた回転を禁止します。 最初の失敗様式に対しては、摩擦にはできない意味で絶対です。 もう一つ、へたりと緩和による締結力のゆっくりした喪失に対しては、何もしません。 そして他の手段にはない問題を持ち込みます。 最後に手元に残る軸力は、あなたが選んだものではなく、穴が許したものです。 行は追加しました。
スレッドにあった、外輪がスピンドルに焼き付いたという話が ピン留めへの反論にならないのもそのためです。 あれはピンで固定されたナットの位置についての話です。 回らないのに荷重を失い続けるナットに何が起きるのかは they glued the nut(英語)にあります。
図面を出す前に決めること
- トルクと、向きを書く。値だけでは足りません。 穴が合わないときに進めるのか戻すのかを書き、 この継手が実際に決めている量が締結力なのか軸方向すきまなのかを書く。
- 穴を指定する。ピンはそれで呼ばれているのだから。 ISO 1234 の呼び径は穴の直径で、公差は H13 か H14、ピンはそれより小さくなります。
- 組立てごとに新品のピン、と書く。 延性の要求は一度の曲げなので、再使用は検証の外です。
- 交番する横方向荷重がないかを確認する。 規格はその場合と鉄道用途を名指しし、一段大きくしろと言っています。
- そもそもこの継手がこれほど敏感でよいのかを問う。 次点の回答は言葉にしていませんが、趣旨は明確です。 隣り合う二つのピン位置の差で迷うなら、問題はピンより上流にあります。 荷重そのものを幾何で決めてしまう手は あのばねは、トルクの問題を長さの問題に置き換えているにあります。
ボルト側の穴にも独自の規格があり、 穴径と最小の端部距離は与えるが位置は与えない。 位置は用途ごとに計算しなければならない、と述べている。
この記事は六つの手順のどれか一つには収まりません。手順をまたいで出てくるか、組み付けたあとに出てくる話です。ここに行き着く判断がどこで下されているかはねじの決め方にまとめてあります。
よくある質問
溝付きナットは何 N·m で締めますか。
その問いだけでは答えが出ません。ナットは、溝がボルトの横穴に合う位置にしか残せないからです。使える仕様はトルク値に加えて、穴がそこになかったときの指示、つまり次の合う位置まで進めるか戻すかです。どちらが正しいかはその継手が何を決めているかによります。円すいころ軸受は軸方向すきまを与えているので戻すのは安全ですが、締結を保つ継手では、穴を探して戻すたびに軸力を失います。
割ピンの呼び径はピンの直径ですか。
違います。ISO 1234 の寸法表の脚注が、呼び径は割ピン穴の直径である、と述べています。ピンはそれより小さく、呼び 3.2 のピンは最大 2.9 mm、呼び 2 は 1.8 mm です。同じ脚注は穴について呼び 1.2 未満で H13、1.2 超で H14 を推奨しています。ピンも穴も、意図的にゆるくしてあります。
割ピンはせん断荷重を受けられますか。
そのための設計ではありません。自分の穴の中で小さめですし、推奨される穴公差は H13 か H14 なので、密なはめあいのせん断ピンにはなりえません。ISO 1234 もせん断値を公表していません。役目はナットがある位置を越えないようにする止めです。荷重を受けるためのピンはリーマ穴に入り、その規格がせん断値を与えます。別の部品で、別の文書です。
割ピンは再使用できますか。
規格が検証したのは一度の曲げです。ISO 1234 の延性要求は、各脚がそれ自体に折り返される曲げに一度耐え、曲げた箇所に目に見える破断が出ないことです。まっすぐ戻してもう一度曲げるのは同じ場所での二回目で、そのあと材料に何が残っているかは規格に書かれていません。新品を使ってください。
緩み止めの一覧に割ピンが載っていないのはなぜですか。
そうした一覧が使っている軸、つまり回転にどれだけよく抵抗するか、という軸に乗らないからです。確実固定は回転に抵抗するのではなく、離散した段を越えた回転を禁止します。ですから回転による緩みに対しては絶対で、もう一つの失敗、へたりと緩和による締結力のゆっくりした喪失に対しては無力です。さらに摩擦式の装置にはない結果も伴います。最後に残る軸力は、設定したものではなく穴が許したものになります。
参考資料
- ISO 1234:1997 — 割ピン;表 1 の寸法と二つの脚注(呼び径は穴の直径であること、鉄道用途と交番横荷重では一段大きくすること)、表 3 の材料・延性・表面処理・仕上がり
- ISO 7035 — 六角溝付きナット、DIN 935 に対応する ISO 規格(リンクなし:カタログ番号を確認できませんでした)
- ISO 4042 — 電気めっき。ISO 1234 がめっきピンについて参照している規格
- ISO 3269 — ファスナーの受入検査。ISO 1234 が指している受入れの経路
ISO 1234:1997 は公開されているプレビューから読みました。この分量の文書としては、寸法表、二つの脚注、要求表が全部入っており、本稿の数値はすべてそのページからのものです。溝付きナットの規格はカタログ水準でのみ確認しました。溝付きナットの溝の数を規格の原文で確認できなかったため、本ページのどこにも溝数と角度の刻みは出てきません。位置が離散的であるという事実だけを書いています。DIN 935 の寸法表に対応する割ピンを示す列があることは、条文ではなくカタログ水準の観察です。進めるか戻すかの規則は車両や設備の整備実務のもので、ファスナーの規格には入っていません。両方向とも実在するのは、それぞれ別の量を決めている継手に属しているからです。元スレッドのトレーラーについて安全上の判断は一切していません。その軸受の仕様を持っていないためです。ISO 7035、ISO 4042、ISO 3269 のカタログ番号は第二の情報源では照合していません。内部リンクの多くはまだ英語版のみです。
お問い合わせ
お問い合わせに溝付きナットと割ピンが入る場合は、 ねじと一緒に横穴の径と公差もお知らせください。 ピンは自分ではなく穴の名前で呼ばれていて、 その穴こそ、ピンが入るかどうかを決める図面上の項目です。