下穴の表は一つの数値ではなく公差の帯です

きれいに作られたタップと下穴の一覧表が r/MechanicalEngineering で 456 点を集め、最上位のコメントは経験 27 年の設計者から、これは若手に配りたい、というものでした。よくできた表に対する反応として妥当だと思います。ただ、その表が一枚に収めるために圧縮したものは知っておく価値があります。出典である規格が表にしているのは別のものですし、その序文の一文は多くの人の直感と逆を向いているからです。

規格が実際に表にしているもの

タップ加工前のドリル径には専用の国際規格があります。ISO 2306、 1972 年に小形工具の委員会から出て、2022 年の見直しを経て現在も有効です。 適用範囲が経験則を一文で言い切っています。 ドリル径はねじの呼び径からピッチを引いたものにほぼ等しい。 M6×1 なら 5.00 mm のドリルです。

しかし表のほうが経験則より面白い。各行が持っているのは 5H、6H、7H 各等級の谷の径の最大値、谷の径の最小値、 そして最後にドリル径です。 ドリルは公差の末端にある実務上の選択であって、仕様そのものではありません。

ねじ谷の径 最小谷の径 最大(6H)ドリル
M3 × 0.52.4592.5992.50
M4 × 0.73.2423.4223.30
M5 × 0.84.1344.3344.20
M6 × 14.9175.1535.00
M8 × 1.256.6476.9126.80
M10 × 1.58.3768.6768.50
M12 × 1.7510.10610.44110.20

つまり M6 の穴は 5.00 mm ではありません。6H のねじなら 4.917 から 5.153 mm のどこでもよく、 幅は 0.24 mm 近くあって、5.00 はその中の一点です。 6H の文字と数字がそれぞれ何を決めているのかは thread tolerance classes(英語)にあります。

規格はどちらへ寄せるかを述べていて、それは直感の側ではない

ISO 2306 の序文から、そのままの言葉で。 該当する谷の径の公差の範囲内であれば、下穴が大きいほどタップ加工は経済的になり、 タップ折損のおそれも下がる。

これを反射的な考えと並べてみます。穴が小さいほどねじ山が多く、 ねじ山が多いほど継手は強い、という考えです。 規格は強度について争っていません。公差の中に入っていれば帯のどこでも適合したねじになる、 そして上寄りのほうが切削のコストが低くタップの折損も少ない、と言っています。

この取引が成り立つのは、継手が壊れる場所が別だからです。 設計目標はめねじがなめる前にねじが折れることで、 それに必要なはめあい長さは thread engagement(英語)、 公表されている各種の規則が互いに食い違う話は the engagement rules disagree(英語)にあります。 手元で動かせる変数は長さであって、谷の径の最後の数百分の一ミリではありません。

あのねじ山率は、規格のどこにも出てきません

現場の表にはねじ山率が書いてあり、たいてい 75% です。 この件について ISO は百分率を一度も使いません。 あれは業界の慣習で、しかも深さをとがりねじ山、 つまり切り取られていない三角形に対して測っています。 メートルねじの式は % = 76.98 ×(D − 穴径)÷ P

ISO の基準山形はその三角形を切り取ります。めねじの基準の谷の径は D − 1.0825 P にあり、 とがりねじ山の谷底なら D − 1.299 P。 両者の比は 5/6で、呼び径によりません。

ですから 83% が、適合するメートルねじすべての天井です。 M6×1 の行を換算すると、6H の帯は 谷の径最小の側で約 83%、最大の側で 65%、 ISO 2306 のドリルは 77% に落ちます。 「ねじ山率 100%」を掲げる表が提示しているのは 4.70 mm の穴で、 これは谷の径の最小値を下回ります。攻めた選択ではありません。 ゲージが通らないねじです。

M8×1.25 も同じ形です。6.647 mm で 83%、6.912 で 67%、 6.80 mm のドリルで 74%。数字は動きますが、天井は動きません。

ドリルは穴ではない。理由は二つ

ISO 2306 の最初の一文は、実際の穴径をドリルの表示寸法から動かすものの一覧です。 ドリルの先端をどれだけ正確に研いであるか、被削材、潤滑剤、 そして加工時の心出し、送り、回転数。 表はそのどれも知りようがなく、規格自身が自分の表を「指針」と呼んでいるのはそのためです。

二つめのほうが妙で、覚えておく価値があります。 比較的軟らかい材料をタップするとき、材料は谷のほうへ押し下げられる傾向があり、 タップした穴の谷の径が、それを開けたドリルより小さく仕上がることがある。 規格は、硬い材料ではこの傾向はずっと弱く、まったく現れないこともある、と付け足しています。

これで、よくある午後の説明がつきます。ドリルは正しく、 プラグゲージが入らず、部品はアルミ。 穴は開けた時点では正しかった。動かしたのはタップのほうです。 そして谷の径の帯の大きい側へ寄せるというのは、 規格が別の理由ですでに勧めていた向きでもあります。

以上は自分でねじを立てるねじには当てはまりません。 タッピンねじやタップタイトねじの穴は谷の径ではなくトルクの窓で決まります。 pilot hole sizing(英語)、 おにぎり断面については the hole is the variable(英語)にあります。

表の数値がきりのいい理由

ドリルの列は帯の中央でもなければ、計算の結果でもありません。 標準のツイストドリル系列にある、いちばん近くて使える寸法です。 ISO 2306 は、アスタリスクの付いた四つを除いてすべて ISO/R 235 から選んだ、と述べています。 序文はさらに、用途によっては自分でドリル径を選ぶことに利があるかもしれないが、 その場合でも可能なかぎり在庫のある直径を使うこと、と続けます。

5.03 mm と計算してドリルを探し回っている人に言う価値のある一文です。 その表はすでに同じ妥協をしています。5.00 に落ち着いたのは 5.00 が買えるからで、 そして規格としては、買えない数値にぴったり合わせるより帯の中でやや大きいほうを選んでほしいからです。

穴を図面に入れる前に決めること

  • 図面にはねじの等級を書く。ドリルではなく。 成立させるべきはタップ後の谷の径で、6H はその帯を述べています。 図面上のドリル寸法は工程指示であり、誰かの材料に対しては必ず外れます。
  • 帯のどちら側を狙うかを、意識して決める。 規格は加工コストとタップ寿命を理由に大きい側を勧めます。 小さい側を選ぶなら、それは習慣ではなく理由の付いた判断であるべきです。
  • 材料を伝える。軟らかい合金はタップ中に谷の径を縮めます。硬いものは縮みません。
  • 穴の位置は別の話として指定する。 一般公差は簡略図示のねじには届かず、軸線の位置も押さえられません。 タップ穴の位置が効くなら、データム付きの位置度を書くことになります。
  • ねじ山率は書かないか、どの慣習かを明記する。 ISO の量ではありませんし、83% を超えるとゲージの通らないねじを指しています。
  • その穴に入るのが止めねじなら、先端も書く。 寸法からは決まりませんし、規格は軸側について何も言いません。 止めねじの規格は、軸について一度も触れません
  • その穴の外側にもねじがあるかを伝える。 同じ肉の外側にもねじが走るなら、残る材料はおねじの谷の径とめねじの谷の径で決まり、 並目では二つの呼び径から思うより早く尽きます

この記事は手順 2、ねじを扱います。全体の順序は相手材、ねじ、頭部、駆動部、表面処理、書類で、これを崩すと微調整ではなく手直しになる理由はねじの決め方にあります。

よくある質問

M6 のねじの下穴は何ミリですか。

ISO 2306 は 5.00 mm を挙げ、規則としてはドリル径は呼び径からピッチを引いた値にほぼ等しい、としています。より役に立つ答えは、6H のねじなら谷の径は 4.917 から 5.153 mm のどこでもよく、5.00 mm はその帯の中の一点で、在庫のあるドリル寸法だから選ばれている、というものです。どの点を狙うかは、表があなたの代わりに黙って決めている判断です。

下穴は小さいほうが強いのですか。

ねじ山の材料は増えますが、ISO 2306 が勧める向きは逆です。谷の径の公差の範囲内であれば下穴が大きいほどタップ加工は経済的になり、タップ折損のおそれも下がる、と述べています。設計目標はめねじがなめる前にねじが折れることで、それを買う変数ははめあい長さであって谷の径の最後の数百分の一ミリではありません。帯の中で失われる強度を定量化した公表資料は見つからなかったので、ここでは数値を挙げません。

下穴表が出典ごとに違うのはなぜですか。

公差を一つの数値に圧縮していて、しかも全員が同じ点を選んでいるわけではないからです。それに多くの表は谷の径の限界からではなく、ねじ山率という慣習から組み立てられています。あの百分率は業界の慣習で、深さをとがりねじ山に対して測っており、ISO はこの件で百分率を使いません。

ねじ山率 100% は本当に無理なのですか。

あの慣習の上では無理で、しかも理由はタップの側にありません。あの慣習はとがりねじ山の三角形を分母にしていますが、ISO の基準山形はめねじを D − 1.0825 P の谷の径で切り取ります。両者の比は 5/6 なので、どの呼び径でも 83% が適合するねじの天井です。その尺度で 100% まで削った穴は谷の径の最小値を下回り、ねじはゲージを通りません。

タップ前は正しかったのにゲージが入りません。何が起きましたか。

部品が軟らかい合金なら、ISO 2306 の序文がその機構を書いています。タップ中に材料が谷のほうへ押し下げられる傾向があり、タップした穴の谷の径がそれを開けたドリルより小さく仕上がることがある、と。硬い材料ではこの傾向はずっと弱く、まったく現れないこともある、とも付け足されています。谷の径の帯の大きい側へ寄せるのが通常の対応で、それは規格がタップ寿命を理由に勧めているのと同じ向きです。

参考資料

ISO 2306:1972 は公開されているプレビュー PDF から読みました。この年代の規格は短く、序文、適用範囲、表 1 が全部入っており、本稿の寸法はすべてその表からのものです。百分率の換算はこちらで計算したもので、根拠は ISO 68-1 の基準山形、検算は ISO 2306 表 1 に対して行いました。D − 1.0825 P は M6×1 で 4.9175 mm となり、表の印字は 4.917 mm です。76.98 という定数と、ねじ山率を書く習慣は業界の慣習であり、規格文書までは追っていません。ISO に帰すべきものではありません。ISO 965-1、ISO 68-1、ISO 235 のカタログ番号は第二の情報源では照合していません。表 1 は並目系列で、細目は同じ規格の表 2 ですが、その数値は本稿には載せていません。内部リンクの多くはまだ英語版のみです。

お問い合わせ

お問い合わせにタップ穴が含まれる場合は、ドリル寸法ではなくねじの等級と相手材をお知らせください。 満たすべきは帯のほうですし、軟らかい合金ではドリルが抜けたあとにタップが穴をもう一度動かします。

sales@tigerfasteners.com