簡略図示のねじには、一般公差が届かない

ある機械工が欧州の供給者から届いた図面を掲示し、自分の知らないところで世の中が変わったのかと尋ねた。距離寸法に公差の正負が付いていない。十七個のタップ穴に位置度と大量のデータムが生えている。これは本当に新しい規格なのか、それとも自分だけが取り残されているのか。規格は実在し、番号があり、そしてその文書を読むと、十七個の穴は謎ではなくなる。

ISO 2768-2:1989廃止されている。 引き継いだのは ISO 22081:2021 で、 締結部品の図面に効いてくる違いが二つある。 実体形体にだけ適用され誘導形体には適用されないこと。 そして規則 D が四つの例外を挙げ、その最後が 「簡略図示で示され、かつ CAD モデルに含まれていない実体形体。たとえばエッジ、 フィレット、ねじ」であることだ。

これを言い切れるようになったのは今回が初めてで、 標題欄について書いた前の頁ではまだ書けなかった。 本サイトが標題欄について書いた先の頁は、 廃止は広く報じられているが出典から確認できていない、と書いていた。 いまは二つの経路で確認できている。 ISO 自身の目録で ISO 2768-2:1989 の状態は Withdrawn、 段階は 95.99、そして改訂した文書として ISO 22081:2021 が挙がっている。 ISO 22081 の前書きも同じことを反対側から述べている。 「この初版は ISO 2768-2:1989 を取り消して置き換える。同規格は技術的に改訂された」。 先の頁は訂正済みである。

去ったのは ISO 2768 の半分だけ

この変更が読みづらいのは、ここに理由がある。 ISO 2768 には二つの部があり、廃止されたのは第 2 部だけである。

  • 第 1 部、長さ寸法と角度寸法の公差、四等級、三ページ。状態 Published2022 年に見直して現行と確認、段階 90.92、要改訂。ISO の頁にはさらに「今後数か月のうちに ISO 2768 に置き換えられる見込み」とあり、その案件は開発中である。分かっているのはここまでで、書くのもここまでにする。
  • 第 2 部、幾何公差、三等級、八ページ。状態 Withdrawn、ISO 22081:2021 により改訂。

つまり見慣れた ISO 2768-mK という文字列は、 いま半分が生きていて半分が死んでいる。 m は現行の文書を指し、K は廃止された文書を指す。 すでに量産に入っている部品には何の影響もない。 図面がどの文書によるかを明記しており、その記述は期限切れにならないからだ。 これから出す図面なら、どちらの文字がどちらなのかは知っておく価値がある。

二つの要約のあいだにもう一つ違いがある。第 2 部は 「主として材料除去によって作られる形体に適用する」と述べ、 第 1 部は「金属除去加工で作られる、または板金から成形される工作物」に適用する。 ISO 22081 の適用範囲にはこの種の制限がない。 一般仕様の書き方を定める規則であって、 切削部品用の数値表ではない。

三つの文字を引き継いだもの

規則 C:一般幾何特性仕様は、面の輪郭度の仕様で指示しなければならない。 特性はこれ一つで、規格は二度そう言う。Table 1 の下の一文が括弧で繰り返す。 この特性は「面の輪郭度でしかありえない」。 ただし ISO 5459 と ISO 1101 の仕様要素は、 本文書の規則に反しないかぎり併用してよい。

Table 1 にある唯一の例は、 面の輪郭度、0,12、A、B、C と書かれた公差記入枠である。 そして Figure 1 は、それを標題欄ごと描いている。

General tolerances ISO 22081
面の輪郭度 | 0,5 | A | B | C
Linear sizes: ±0,25 のうしろに包絡の条件の記号
Angular sizes : ±0,5°

これを ISO 2768-mK と並べれば、 理論を一行も読まずに変化のかたちが見える。 古い指示は二文字の文字列一本で、データムを一つも指定しない。 新しいものは四行あり、実際の数値を持ち、 三平面のデータム系を要求する。 古い仕組みでは、あの文字は他人の表から一行を選ぶためのものだった。 新しい仕組みでは、数値は自分で書く。

最後の点は一文を立てるに値する。ここでつまずく人がいちばん多いからだ。 ISO 22081 に公差の数値は一つも入っていない。 Table 1 は「どう指示するか」の表であって「どれだけか」の表ではない。 規格は、公差値は「単一の値でも、変化する値でもよい」と述べ、 変化する値は形体の寸法に依存してもよいし、 形体からデータム系までの距離に依存してもよいと述べる。 そして変化させる場合は、図面一式の表や別の文書から値を得るための あいまいでない規則を定めるべきだとする。 Figure 2 の例は端的に「文書 123456 の表 1 を参照」と書いている。 古い規格は三つの等級を渡してきた。この規格が渡してくるのは空欄と、 その埋め方の規則である。

規則 D と、ねじが出てくる例外

規則 D は、一般幾何特性仕様が各実体形体に独立して適用されるとし、 四つの例外を置く。並びとして読むと四つは似ている。 何をしているかで読むと、二つに割れる。

  1. 寸法仕様(個別または一般)で指定された実体形体
  2. 個別の幾何特性仕様で指定された実体形体、またはその誘導形体
  3. 一般幾何特性仕様のデータム欄で、データム系に用いられているデータム形体
  4. 簡略図示で示され、かつ CAD モデルに含まれていない実体形体。たとえばエッジ、フィレット、ねじ

はじめの二つは優先順位であって除外ではない。 すでに個別に指定した形体については個別の指定が勝つ、と言っているだけで、 床下に落ちるものはない。 形体を本当に一般公差の外に出すのは三番目と四番目であり、 締結部品が出てくるのは四番目だ。

条件の読み方に注意がいる。二つの条件が「かつ」で結ばれているからだ。 その形体は簡略図示で示されかつCAD モデルに含まれていない必要がある。 ふつうの描き方をされたねじ、つまり実線の円と切れた円、 あるいは軸のわきの二本線で、モデルに実際のらせんがないもの。 これは二つとも満たす。 したがって現実の図面のほとんどで、一般幾何特性仕様はねじにまったく届かない。 そのねじで押さえたいものがあるなら、自分で指定することになる。

この規則は、締結部品の側からすでに反対向きに守られてきたものでもある。 ねじには 6g や 6H といった独自の公差体系があり、 その体系は周囲の面に載る一般の輪郭度公差とは干渉しない (ねじの許容差がどれだけ小さいか)。 ISO 22081 は、推論に任されていたこの切り分けを明文にした。

タップ穴十七個が自前の指示を持った理由

話をあの図面に戻す。ISO 22081 の適用範囲は、 目が滑りやすいところで狭くなっている。

「この文書で定義する一般幾何特性仕様および一般寸法仕様は、 実体形体(サイズ形体を含む)にのみ適用する。 これらの仕様は誘導形体および実体線には適用しない。」

実体形体は第 3.3 項で、 工作物の実表面または表面モデルに属する幾何形体と定義される。 面である。プローブで触れるもののことだ。

穴の軸線は面ではない。 この推論は本サイトのものであって規格の一文ではない。 規格は実体形体と誘導形体の正式な定義を ISO 17450-1 に委ねており、 それは読んでいない。 しかし一般幾何特性仕様が面にしか届かないのなら、 穴の軸線の位置はそれが押さえられるものではなく、 タップ穴の位置を押さえたい設計者には、 データム付きの個別の位置度を書く以外の道がない。 あの図面に現れたのはまさにそれであり、十七回現れた。

つまり欧州側の癖に見えた二つのことは、同じ一つのことである。 距離寸法から正負が消えたのは、位置がサイズではないから。 タップ穴に位置度とデータムが生えたのは、 位置は個別に指定するしかなく、しなければ指定されていないことになるから。 増えたデータムの山も水増しではない。 一般仕様が参照を求められているデータム系であり、 かつて H、K、L の三等級がデータムなしでやっていた仕事をしている。

測定の側から同じ場所にたどり着く第二の規格がある。 穴群を作っているもの、すなわち二つの誘導形体のあいだの距離は そもそもサイズではなく、 それに ± 公差を与えることは実際の部品の上では曖昧である、と述べている。 同じ結論への別の道である。軸線の位置は、ふつうの寸法で押さえられるものではない。

図面そのものは評価しない。手元にないし、 規則が正しく引用されていても運用がまずいことはありうる。 言えるのは、供給者が拠っている枠組みは実在し、現行で、発行済みだということだけだ。

規格が自分の使い手に出している二つの警告

第 4.1 項は、一般仕様を使うと何を払うことになるかを設計者に告げるところから始まる。 挙げられている危険は「重要な機能要求を見落とすこと」と、 「機能要求に対して不必要に厳しい公差を選ぶこと」である。 そのうえで責任を置くべきところに置き直す。 「部品全体、すなわちすべての幾何形体が、完全かつあいまいでなく指定されている」 ことを保証するのは設計者の責任だ、と。

これは本サイトが購買の側から古い標題欄の文字列について述べてきたのと同じ理屈で、 規格自身の言葉のなかに見つかるのは喜ばしい。 一般公差とは、個別に公差を入れる価値がないと当時判断したすべてについての宣言であり、 それは部品全体に対して行使される。

もう一行、持ち帰る価値がある。規則 D の下の注記 2 は、 一般幾何特性仕様が独立の原則および形体の原則に従うと述べている。 独立の原則とは、別段の指定がなければ寸法の偏差と形状の偏差は別々に検査される、という意味だ。 だからこそ Figure 1 の例は、長さ寸法のうしろに包絡の条件の記号を手で足している。 この図面で寸法と形状を結びつけたいなら、自分で求めることになる。

持ち帰る点

  • ISO 2768-2:1989 は廃止。段階 95.99、ISO 22081:2021 により改訂。ISO の目録と、引き継いだ文書自身の前書きの二経路で確認した
  • ISO 2768-1:1989 はなお現行。2022 年に確認、段階 90.92 要改訂、後継は開発中。だから ISO 2768-mK という指示は半分が生きていて半分がそうではない
  • 新しい一般幾何特性仕様は、データム系を参照する面の輪郭度公差である。特性はこれ一つで、データム系は指示の一部である
  • ISO 22081 に等級はなく、公差の数値もない。数値は図面か、参照された文書のなかで自分が与える
  • 適用されるのは実体形体だけ。面と、サイズ形体。誘導形体にも実体線にも適用されない
  • 規則 D はねじを除く。条件は簡略図示で示されかつ CAD モデルに含まれていないことで、これはほとんどの図面のほとんどのねじにあてはまる
  • したがってタップ穴群には自前の位置度とデータムが要る。一般公差は軸線を位置づけられない

あの掲示板の機械工は、取り残されているのは自分だけかと尋ねた。 そうではなかったし、取り残されていた話には文書番号がある。 きまりが悪いのは、この変更が三十一年かけて起き、 落ち着いた先が十四ページの規格で、 そこには何をどれだけ厳しくすべきかがほとんど書かれていないことだ。

この記事は手順 6、書類を扱います。全体の順序は相手材、ねじ、頭部、駆動部、表面処理、書類で、これを崩すと微調整ではなく手直しになる理由はねじの決め方にあります。

よくある質問

ISO 2768-2 はまだ有効ですか。

いいえ。ISO は状態を Withdrawn、段階を 95.99 とし、改訂した文書として ISO 22081:2021 を挙げています。ISO 22081 も反対側から同じことを述べ、初版が ISO 2768-2:1989 を取り消して置き換えると前書きに書いています。すでに ISO 2768-2 に拠って出された図面の意味は変わりません。図面がどの文書によるかを明記しているからです。

ISO 2768-1 も廃止されましたか。

いいえ。現行で、2022 年に見直して確認され、段階は 90.92、要改訂です。ISO の頁には、今後数か月のうちに ISO 2768 という番号の規格に置き換えられる見込みとあり、その案件は開発中です。草案は読んでおらず、それについては何も述べません。

H、K、L の三等級は何に置き換わりましたか。

データム系を参照する面の輪郭度公差に置き換わり、標題欄の中または近くに書き出されます。ISO 22081 の規則 C は、一般幾何特性仕様を面の輪郭度の仕様で指示しなければならないと定め、Table 1 の下の説明が、この特性は面の輪郭度でしかありえないと補っています。

ISO 22081 は使うべき公差値を教えてくれますか。

いいえ。この規格が与えるのは、一般仕様をどう指示しどう解釈するかの規則であって数値ではありません。公差値は単一でも変化するものでもよく、変化する場合は形体の寸法や、形体からデータム系までの距離に依存してよいとされます。変化させるときは、図面一式の表か参照された別文書から値を得るための、あいまいでない規則を定めることが求められます。

一般公差はねじに適用されますか。

簡略図示で示され、かつ CAD モデルに含まれていないねじには適用されません。これは規則 D の四番目の例外で、ほとんどの図面でのねじの描き方にあてはまります。二つの条件が同時に成り立つ必要があります。ねじで押さえたいものは個別に指定することになります。

ISO 22081 に拠った図面にデータムが多いのはなぜですか。

一般幾何特性仕様が輪郭度公差であり、輪郭度公差はデータム系を参照するからです。Figure 1 の例では三つのデータム文字が示されています。ISO 2768-2 の一般幾何等級はデータムを一つも必要としなかったので、新しい文書に移った図面は、以前は宣言しなくてよかったデータム系を持つことになります。

一般公差でタップ穴の位置を押さえられますか。

本サイトの読みでは押さえられません。ISO 22081 は実体形体にのみ適用され、誘導形体には適用しないと明記しており、第 3.3 項は実体形体を工作物の実表面に属する幾何形体と定義しています。軸線は面ではありません。規格はこの帰結を書いておらず、正式な定義は ISO 17450-1 に委ねられていて、それは読んでいません。結論は当方の読みとして扱ってください。

ここで独立の原則は何をしていますか。

規則 D の下の注記 2 が、一般幾何特性仕様は独立の原則および形体の原則に従うと述べています。Figure 1 の例では長さ寸法に包絡の条件の記号が明示的に付いており、既定が独立で、設計者が寸法と形状を結びつけたければ自分で書く、という姿と一致します。

CZ や UZ のような記号はどの規格が定めていますか。

この規格ではありません。ISO 22081 は、特性そのものを除けば ISO 5459 と ISO 1101 の仕様要素を用いてよいと述べています。どちらも読んでおらず、この頁はそこにある記号を一つも説明しません。

参考資料

ISO 22081:2021 は公開されている iTeh プレビューから読んだ。プレビューは印刷四ページ目までを収め、目次、前書き、序文、適用範囲、引用規格、用語、第 4 項の全体、第 5.1 項と 5.2 項をふくむ。第 5.3 項(データム系の規則)、第 6 項(一般寸法仕様)、Table 2、三つの附属書はプレビューの外にあり、そこからは引用も説明もしていない。三つの規格の目録情報は、ブラウザで ISO 自身の頁を読んで得た。ISO 22081:2021 は初版、2021 年 2 月、十四ページ、ISO/TC 213、ICS 17.040.40、段階 90.93、2026 年に確認。ISO 2768-2:1989 は廃止、段階 95.99、八ページ、ISO 22081:2021 により改訂。ISO 2768-1:1989 は現行、段階 90.92、三ページ、2022 年に確認、後継は開発中。次の各項は当方の計算または読みであり、これらの文書の記述ではない。規則 D のはじめの二項が除外ではなく優先順位であるという見方、二文字の ISO 2768 指示と Figure 1 の四行の指示の対比、ページ数の比較、そして何よりも一般幾何特性仕様が穴の軸線の位置を押さえられないという結論である。これは適用範囲が誘導形体を除いていること、および第 3.3 項が実体形体を実表面に属するものと定義していることから導いたもので、規格はそう書いていない。実体形体と誘導形体の正式な定義がある ISO 17450-1 は読んでいない。ISO 2768-2 の等級と数値はこの頁に一つも書いていない。その文書は読んでおらず、記述は ISO の公開要約による。掲示板の投稿が尋ねていた記号は ISO 1101 と ISO 5458 に属し、どちらも読んでおらず、この頁では説明しない。見ていない図面を評価はせず、企業名も書かない。読んだのは投稿本体であって返信ではない。Figure 1、Figure 2、Table 1、規則 D の字句は、抽出テキストではなく印刷頁を描画した画像と照合した。この頁は先の一頁を訂正する。ISO 2768 の標題欄の頁(英語版と中国語版のみ)は、第 2 部の廃止が広く報じられているが確認できていないと書いていた。その記述は差し替えた。

お問い合わせ

図面に一般公差があるなら、それがどの文書を指しているかをお知らせください。 ISO 22081 なら、輪郭度の枠に入る値と、どの形体がデータムかもあわせてお願いします。 まだ ISO 2768 に二文字という書き方でも構いません。読めます。 ただ一言そえてください。その文字列の二つの半分は、いま状態が違うからです。

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