ねじの許容差は、積層一層のおよそ八分の一しかない
r/3Dprinting には同じ問いが二つ、繰り返し戻ってきます。ひとつは率直に、印刷したねじの公差は旋盤に比べてどれだけ悪いのかと尋ねます。もうひとつは、ある設計者が数週間かけて CAD のなかでねじ山の形状から公差のオフセットまで作り直した、という報告です。接着剤も金属部品も使わずに、道具一式を組み立てられるようにするためでした。そして最初の問いに対して最も票を集めた二つの返信は、どちらも言い方を変えた同じ答えでした。ねじを使わないこと。この全部を説明する数字が一つあり、それは公差の規格のなかにあります。
規格が確保している量
ねじの等級のなかの文字は公差域の位置であり、仕様として意図的に置かれたすきまです。 そこまでは別のページの話になります。そこで与えていないもの、 そしてここで決め手になるのは、そのすきまが実際にどれだけかという点です。
ISO 965-1 はそれを直径ではなくピッチで表にしています。単位はマイクロメートルです。
| ピッチ | G(めねじ) | H | g(おねじ) | h |
|---|---|---|---|---|
| 0,5 mm | +20 | 0 | −20 | 0 |
| 0,8 mm | +24 | 0 | −24 | 0 |
| 1 mm | +26 | 0 | −26 | 0 |
| 1,25 mm | +28 | 0 | −28 | 0 |
| 1,5 mm | +32 | 0 | −32 | 0 |
| 2 mm | +38 | 0 | −38 | 0 |
M6 の並目はピッチ 1 mm なので、6g のねじに与えられる設計上のすきまは 26 マイクロメートルです。それが許容差の全部です。 めっきしたボルトがナットで固着しないようにしているのがこれであり、 小さい寸法でめっきがねじ公差を食ってしまう理由もここにあります。
それをプリンタの単位に置き換える
広く使われている積層ピッチは 0,2 mm、つまり 200 マイクロメートルです。 M6 における ISO の許容差の全部が 26。 規格が確保しているすきまは、一層のおよそ八分の一です。 そしてピッチが 1 mm なので、ねじ山ひとつぶんの高さは五層しかありません。
この比較はどちらの側への批判でもありません。 公差の体系は材料を除去する工程のために書かれており、 そこでは四分の一層はもう粗い刻みで、体系はうまく働いています。 プリンタは材料を離散的なビードとして置いていくもので、 垂直方向の最小の一歩がすでにねじ側面の大半にあたります。 単に同じ単位で書かれていないだけで、その差は周辺的なものではありません。
同じ計算は小さいほうへ行くともっと悪くなります。M3 はピッチ 0,5 mm で許容差は 20 µm、 一層の十分の一であり、ピッチは二層半です。 だいたいそのあたりで、皆やめます。
皆が使うオフセットがああなっている理由
よくある対処はねじを拡大するか、CAD ですきまのオフセットを足すことで、 落ち着く数字はコンマ数ミリメートルの桁にあります。 26 µm の許容差に対しては、規格が確保している量の 八倍から十五倍です。
これは雑なのではありません。工程が実際に出せる最小の修正がそれだからです。 一層より小さい修正は置けません。ただし図面の上で正直にしておく価値のあることが一つあります。 0,3 mm 足したから通るようになった印刷ねじは、 6g/6H のはめあいではありません。 試行で到達した、呼び方のないはめあいです。 確認なしに市販の締結部品と互換になることはありません。
モデリング側にも関連する落とし穴があります。 ねじを呼び寸法で描くことは、基本許容差がゼロの h と H で描くことです。 それはこの体系で最もきつい位置であり、あとからめっきを載せる場合に意図して選ばれるものです。 呼び寸法のまま印刷すれば、すきまゼロを要求したうえに階段を足したことになります。
置き方でどちらの階段になるかが変わる
| 軸 | 側面が近似される場所 | ほかに変わること |
|---|---|---|
| 垂直 | Z 方向、分解能は積層ピッチ。0,2 mm と M6 並目なら一ピッチあたり五段 | ねじは層間の結合を横切って荷重を受ける。そこが弱い方向 |
| 水平 | XY 平面、分解能は積層ピッチではなく押出し幅 | 張り出した側面にサポートかブリッジが要り、ねじはもう丸くない |
両方に共通するのは、ねじ底が応力集中であり、 その材料がもともと層と層のあいだで最も弱いということです。 元のスレッドで 84 点を集めた返信は、同じ物理を反対側から指しています。 ボルトの中心を抜くと荷重の走る方向に外壁が増え、 外壁こそが印刷された断面のなかで実際に荷重を持つ部分だからです。
経験のある人たちが返した答え
旋盤との公差の比較を尋ねたスレッドで、最も票を集めた二つの返信は、 言い方を変えてどちらもここではねじを使わないと言っていました。 素の円柱を印刷して削って合わせる。ナットを部品に圧入してねじには鋼を噛ませる。 しまりばめにして一度で決める。
その勘は正しく、当サイトが成形樹脂について書いてきた段階そのものです。 いちばん下に一段だけ足したかたちになります。
| 選択肢 | 得るもの | 代償 |
|---|---|---|
| 印刷したねじ | 二つめの部品も金型も要らず、手で組める | 呼び方のないはめあい、低く予測しにくい荷重、着脱の回数にも耐えない |
| 印刷したボスへのねじ込み | 仕事をするのは金属のねじで、買う部品は一種類 | ねじは樹脂のなかで成形されるので、仕様はトルクの窓になる |
| 圧入インサート | 樹脂部品のなかに金属のねじがあり、繰り返し分解できる | 工程が一つ増え、穴径は押しのけ体積を勘定に入れる必要がある。押しのけられた樹脂は、どこかへ行く |
| ねじを使わない | 圧入、スナップフィット、埋め込みナット。いちばん安くて正しい答えであることが多い | 一度で決まるので、その接手は「一度きり」に耐えなければならない |
この記事は手順 2、ねじを扱います。全体の順序は相手材、ねじ、頭部、駆動部、表面処理、書類で、これを崩すと微調整ではなく手直しになる理由はねじの決め方にあります。
よくある質問
ISO のねじの体系は実際にどれだけのすきまを確保していますか。
ISO 965-1 はピッチごとに表にしています。ピッチ 1 mm、つまり M6 の並目では、位置 g がおねじに 26 マイクロメートル、位置 G がめねじに同じ量を与えます。ピッチ 0,5 mm では 20 マイクロメートル、2 mm では 38 マイクロメートルです。位置 h と H は基本許容差がゼロ、すなわちすきまがまったくありません。あとからめっきを載せる場合にそれらが選ばれるのはそのためです。
印刷したねじに大きなオフセットが要るのはなぜですか。
修正量が、その工程で置ける最小の造形より小さくてはならないからです。よく使われる積層ピッチは 200 マイクロメートル、M6 の ISO 許容差は 26 なので、規格が確保しているのは一層のおよそ八分の一であり、プリンタが狙える対象がそこにありません。皆が落ち着くオフセットはコンマ数ミリメートルで、ISO の許容差の八倍から十五倍です。それは工程が語っていることで、雑さではありません。
よく通る印刷ねじでも、6g/6H のはめあいと言えますか。
言えませんし、図面の上で明示する価値があります。0,3 mm のすきまを足したから通るようになったねじは、試行で到達したはめあいで、背後に呼び方がありません。調整した組立のなかでは問題なく使えるかもしれません。市販の締結部品と確実に互換になることはなく、下流の誰もそれが何なのかを調べられません。
ねじは呼び寸法でモデリングすべきですか。
呼び寸法でのモデリングは、基本許容差がゼロの h と H でのモデリングです。それはこの体系で最もきつい位置で、あとからめっきを載せる場合のために存在します。そのまま印刷すると、すきまゼロを要求したうえに積層の階段を足すことになり、そう作った部品は固着します。
ねじを印刷する向きは影響しますか。
どちらの近似になるか、そして荷重がどの方向に走るかが変わります。軸が垂直なら側面は積層ピッチで段になり、M6 並目と 0,2 mm なら一ピッチあたり五段で、ねじは層間の結合を横切って荷重を受けます。軸が水平なら側面は XY 平面で押出し幅によって近似され、張り出した側面にはサポートかブリッジが要り、ねじはもう丸くありません。
参考資料
- ISO 965-1:2013 —— ISO 一般用メートルねじ、公差、原則及び基礎データ。第 1 節適用範囲と Table 1、めねじ及びおねじの基本許容差
- r/3Dprinting —— ねじ山の形状から公差のオフセットまで数週間かけた報告と、外壁が荷重を持つという返信
- r/3Dprinting —— 印刷したねじの公差は旋盤に比べてどうか。最良の答えはどれもねじを避けるものだった
ISO 965-1:2013 は公開されているプレビュー PDF から読んだ。プレビューには第 1 節とTable 1 が全文入っており、ここに引いた基本許容差はすべてその表から取っている。その表は直径ではなくピッチで編まれている。プレビューは 7 ページ目、Table 4 の途中で終わっているため、基準となる呼び径 2,8 mm を超える範囲の有効径の公差等級はその外にあり、このページは公差等級の値を一つも引用していない。0,2 mm の積層ピッチは広く使われている設定であって規格ではなく、この比較は実際に使う積層ピッチに比例して動く。実務で使われているとしたオフセットは、元のスレッドと広く共有されている報告に基づくもので、このページはオフセットの値を推奨していない。プリンタ、材料、押出し幅によって変わり、私たち自身の試験も行っていないからである。印刷したねじの強度について引用するに足る発表された測定も見つからなかったので、荷重に関する主張もしていない。版について一つ注記がある。ここで読んだプレビューは ISO 965-1:2013、第 4 版である。2026 年の第 5 版がこれを置き換えており、2021 年の追補 1 を取り込んでいる。上でリンクし、当サイトの他ページでも使っているのはその現行版の目録項目である。第 5 版は読めていないので Table 1 が変わったかどうかは確認できない。ここに挙げた値は 2013 年版のものであり、図面に載せる前に現行版と照合すべきである。
お問い合わせ
印刷部品が市販の締結部品と組み合わさる場合は、寸法だけでなく、 金属側にどのねじ等級を求めるかもお知らせください。 印刷側は何をしても試行で到達したはめあいになりますが、 相手側がどの呼び方に縛られているかが分かってはじめて、その組を検査できます。