同じ直径になぜ複数のピッチがあるのか
先に結論を。ピッチはほとんど強度の決定ではありません。 細目がねじに与えるのはおよそ 6–9% 多い引張応力面積で、 これは本当ですが幅は小さい。そして継手の反対側ではほとんど何も増えません—— 標準のねじ剝がれの幾何を計算しきると、 ピッチの項は基本山形のもとで完全に打ち消し合い、 限界寸法に替えても残るのは公差の組合せ次第の小さな差だけです。 ですから継手がすでにぎりぎりなら、ピッチを替えることはそのてこではありません。 ピッチが本当に決めているのは、このねじが工場のなかでどう生きるか—— 打痕、めっき、タップ立てをどう切り抜けるか、そしてどれだけ速く組めるか、です。
まずこの選択そのものを見る
M8 はどのピッチと組んでも呼び径は 8 mm です。 変わるのは一回転でどれだけ進むか。並目 1.25 mm、細目 1.0 または 0.75 mm。 有効径、谷の径、ねじ山の深さがそれについて動きます——下の数字がああなるのは、まさにそれらが動くからです。
| 呼び | 並目 | 細目 |
|---|---|---|
| M6 | 1.0 | 0.75 |
| M8 | 1.25 | 1.0、0.75 |
| M10 | 1.5 | 1.25、1.0、0.75 |
| M12 | 1.75 | 1.5、1.25、1.0 |
どの直径にも並目が一つ、細目が一つ以上。 ⚠️ ISO 261 は並目系列を各直径で現在実務上使われている最大のピッチとして定義していて、 並目が既定だとは規定していません——並目がふつう勝つ理由は下で導かれるもので、規格が書いていることではありません。
ねじ側:細目はたしかに少し強い
引張の能力は応力面積から来ます。それは有効径と谷の径から計算されるもので、呼びの 8 mm からではありません。 ピッチが細いほど溝は浅く掘られ、その二つの径はどちらも大きくなり、面積も大きくなります。
| 呼び | 並目 | 細目 | 差 |
|---|---|---|---|
| M8 | 36.6(×1.25) | 39.2(×1) | +7% |
| M10 | 58.0(×1.5) | 61.2(×1.25) | +6% |
| M12 | 84.3(×1.75) | 92.1(×1.25) | +9% |
本当のことで、知っておく値打ちもありますが、一桁の百分率にすぎません。 これより多くを必要とする継手が要るのは、より大きな直径かより高い強度区分であって、ピッチの変更ではありません。
めねじ側:ピッチは打ち消し合う。ここがいちばん間違えやすい
直感的な言い方はこうです。ピッチが細いほど同じ深さの穴により多くの山が入り、切るべき金属が増えるので、めねじは強くなる。 ⚠️⚠️ この論証は誤りで、しかも誤り方に教育的な値打ちがあります。
めねじの標準的な幾何せん断面積は A = π·Le·d·[0.5 + (0.57735/P)(d − d2)]。 そして ISO の基本山形では d − d2 = 0.649519 P なので、 括弧のなかのピッチと括弧の外のピッチが互いに消えます。
0.5 + 0.57735 × 0.649519 = 0.875、 どのピッチでも同じです。つまり A = 0.875 π·Le·d ——M8 はかみ合い長さ 1 mm あたり 21.99 mm²、 ピッチが 1.25 でも 1.0 でも 0.75 でも同じです。
山の数は確かに増えます。けれども 1 山あたり切れる軸方向の厚さが同じ比率で薄くなります。 山の数だけ数えて、1 山のせん断幅が同じ倍率で縮むことに気づかなければ、向きを間違えます。
⚠️ ここで一つはっきりさせます。よくある出典が上と反対に見えるからです。 それらは細目が「引張でもせん断でも強い」と言いますが、上の結果に反論しているのではありません—— 別の壊れ方の話をしています。そちらのせん断はねじが横に切断されることで、 だから谷の径に帰着するのです。ねじ剝がれのほうは、めねじが一つの円筒に沿って押し切られることです。 ある同業の頁はこの区別をはっきり書いていて、同じ頁で「ねじ剝がれに強い」を並目の利点に、 「引張とせん断に強い」を細目の利点に挙げています。
細目がどちらで勝つかはせん断面がどこに落ちるかによりますし、規準によって採る面積が一致していません。 ユーロコード 3 はせん断面がねじ部を通るとき引張応力面積を使い、細目におよそ 7% の値打ちがあります。 ねじのない軸部を通るときは全断面で、細目に優位はありません。 AISC は公称の軸部面積で計算し、せん断面にねじがあるかどうかは許容応力側で扱うので、ピッチは何も買いません。 VDI 2230 はせん断面の位置に応じた直径を選びます。 ですからボルトの横せん断では細目に優位があることもないこともあり、 ねじ剝がれの側では基本山形の幾何せん断面積はどのピッチでも同じです。
これは基本山形での結果です。⚠️ 完全な計算は基本寸法ではなく限界寸法を使い、 それが公差等級を通じてピッチに関係する項を再び持ち込みます。 そして実際のねじ剝がれ強さは、二つの材料の相対強度、ナットの膨らみ、 そして最初の一山に荷重の大半を負わせる不均一な分配にもよります。 どれも「細いほど強い」という単純な規則には戻りません。 かみ合い長さの決め方はかみ合い長さ、 ねじの残りの部分が何をしているかは長さと締付け長さ、 実際になめたときどちら側が先に壊れるかはねじ山がなめたときにあります。
では何がピッチを決めているのか
強度が片側で数パーセント、もう片側でゼロなら、ピッチを決めているのは 製造と使用の条件です——そしてその条件は本当に両側に理があります。
| 並目が勝ちやすいのは | 細目が勝ちやすいのは |
|---|---|
| ねじがぶつけ回されるとき。同じ深さの打痕でも、深い山にとってはねじ山高さに占める割合が小さい | 肉厚やナット高さが浅いとき。すでにある軸方向の深さにより多くの山が入る |
| 切りくず、塗料、さびの生成物があるとき。深い溝は固着する前の余裕が大きい | このねじが調整に使われるとき。一回転の送りがそのままピッチで、ターンバックルやマイクロメータが細目なのはこの理由 |
| 組付けが速いか、見えないとき。同じ送りに要る回転数が少なく、かじり始めが起きにくい | 相手材が硬いか、壁が特別に薄いとき。⚠️ NASA のファスナ手引きは極細目を硬材料のタップ穴と薄肉に適するとしている。ただし機構の説明はない |
| 製造公差が緩いとき。並目は絶対値としての公差が大きく、めっきの余裕を入れやすい | 条件が清浄で管理されているとき。ラインの鋳物ではなく、機械加工した鋼どうしの組合せ |
⚠️⚠️ 捨てるべき俗説が一つあります。 「並目のタップは芯が太いから折れにくい」とよく聞きます。基本の幾何は逆向きです。 M8×1 の谷の径は 6.77 mm、 M8×1.25 は 6.47 mm で、 溝を切る前の包絡径は細目のほうが大きいのです。 ⚠️ ただしそれはタップの芯とは違います——切りくずの溝がそこへ食い込み、 最弱断面は溝の数、溝の深さ、メーカーの設計で決まります。 芯の断面は確かに効きます——材料と長さとともにねじり剛性を決め、それは強度の側です。 それが決められないのは荷重のほうです。切りくずの量、1 刃あたりのトルク、穴の深さ、潤滑、同期の誤差がタップの耐えるトルクを決めますし、 これらを固定して並目と細目を直接比べたデータは見つかりませんでした。
めっきの条、正しい言い方
めっきに残される空間は、すべてのピッチが共有する固定のすきまではありません。 決めているのは公差位置——6g のあの文字——で、 その文字が公差域を基準寸法の下側へ意図的に置いています。域の幅は等級が決めます。 めっき後のねじも最大実体の境界を超えてはいけません。
ピッチは間接に入ってきます。ISO の方式では公差がもともとピッチとともに拡大するので、 並目の公差域は絶対値として広く、使える絶対的な空間が大きいのです。 これは本物の優位ですが、機構は世間の言い方とは違います。 ねじ公差等級と 余裕を使い切ったときにあります。
振動の条、数字を添えて
細目はリード角が浅いから緩みにくい、とよく聞きます。角度は M8×1.25 が 3.17°、 M8×1 が 2.48°。 けれどもそれが自立するかどうかは摩擦しだいで、⚠️ この言い方はたいてい摩擦を省いています。 60° ねじの等価摩擦角は arctan(μ/cos 30°) で、 μ = 0.04 なら 2.6°、μ = 0.05 なら 3.3°。
⚠️ よく潤滑された低摩擦の条件では、並目に自立の余裕はほとんどありません ——3.17° 対 3.3° は余裕とは呼べません。 乾いた例として μ = 0.12 を取れば 7.9° で、どちらのピッチもそれよりはるかに下です—— ⚠️ ただし μ は材料、表面、めっき、潤滑、繰返し締付けで変わり、「乾いた」を代表できる値はありません。
もっと大事なことに、この静的な比較は実際の使用中の緩みの原因ではありません。 横方向の変位がねじ面と座面を繰返しごとにすべらせ、 静的な自立の条件が成り立ったままで初期締付け力を少しずつ逃がします。 浅いリード角は限界的には効きますが、その機構を扱えません。 ねじが緩む理由にあります。
細目の六角部品には、自分の番号が二つある
細目にすると決めたら、図面の規格番号も替わります。 六角頭の族では、並目と細目は四つの別々の文書で、 しかも切り方は「並目に一つ、細目に一つ」ではなく、それぞれさらに全ねじと半ねじに分かれます。
| 全ねじ(screw) | 半ねじ(bolt) | |
|---|---|---|
| 並目 | ISO 4017 | ISO 4014 |
| 細目 | ISO 8676 | ISO 8765 |
ISO 8676 の範囲は M8×1 から M64×4、製品等級 A と B、鋼とステンレス。 第 4 版は 2022 年で 2011 年の第 3 版を置き換えていて—— ⚠️ その改訂が表題を bolts から screws に替えました。
この語の選択は修辞ではありません。この族では screw が全ねじ、bolt が半ねじを指し、 日本語の「ねじ」と「ボルト」と同じ切れ目ではありません—— その線はねじかボルトかの頁にあり、 結論は違いは継手にあって部品にはないでした。 仕様を書くときは、言葉で選ぶより上の表で番号を選ぶほうが安全です。
六角穴付きの族も同じく分かれ、しかも細目の半分は M8 からしか始まらない
分かれるのは六角頭だけではありません。六角穴付きボルトにも番号が二つあります。 並目が ISO 4762、細目が ISO 12474。 違いは頭ではなくピッチで、⚠️ 二つの寸法範囲は同じ広さではありません。
| 六角穴付き | 規格 | 直径範囲 |
|---|---|---|
| 並目 | ISO 4762:2004 | M1,6 – M64 |
| 細目 | ISO 12474:2010 | M8 – M36 |
⚠️⚠️ 細目のほうは M8 から始まります。 ですから「M5 の細目の六角穴付き」という要求には、この族の標準品のなかに対応する文書がありません—— ピッチ自体は ISO 261 に存在しますが、 それをこの頭部形状と組み合わせた製品規格が一つもないのです。 それが要るなら特注で、特注なら寸法と公差を自分で図面に書くことになります。 反対の端も同じで、細目は M36 まで、並目は M64 まで行きます。
ISO 12474 の適用範囲は公開プレビューの第 1 節の原文を読みました。 メートル細目ねじの六角穴付きボルト、呼び径 d は 8 mm から 36 mm、製品等級 A。 ISO 4762 の M1,6–M64 と A 級は、当サイトが 製品等級の頁で読んだものです—— ⚠️ その頁には、当サイトが一度この件を逆に書いたことも記されています。
⚠️ 上の表と ISO 8676 の範囲・版次は ISO の目次と公開の要約から読んだもので、 当サイトは六角頭の四つの条文を読んでいませんし、寸法の値も一つも出しません。 ISO 12474 はプレビューの目次、第 1 節の適用範囲、引用規格までしか読んでおらず、 寸法表も表示例もプレビューの外なので、本頁は数値を一つも引きません。 並目の二つについては DIN 933 の頁(中国語)に DIN 側の対照があり、そちらには**一つの寸法で出典が食い違っていて意図的に空白にした**ところがあります。
決定の順序のなかでの位置
ピッチは第二段です。めねじ側について決まり、めねじは第一段で決まっているからです。 ラインでタップを立てる鋳物や、自分ではねじ山を保持できない樹脂のボスは、 たいてい並目に傾きます——理由はタップ立てと損傷への耐性です—— ⚠️ たいていであって、かならずではありません。 硬い相手材や浅い肉厚は答えを反対へ引きますし、その二つは同時に現れることがあります。
⚠️ 荷重だけで決めるべきでもなく、山の数で決めるべきでもありません。 細目が継手の片側で買うのは一桁の百分率、基本山形のもとで反対側はゼロですから、 それだけでぎりぎりの設計を救えることはめったにありません。 動くてこは直径、強度区分、かみ合い長さです。 強度区分の数字が言っていることと 決定の順序の全体にあります。
もう一段上へ行くと、「条は何本か」という問いの答えの形も同じです—— そしてその答えがほとんどいつも一本である理由。
この記事は手順 2、ねじを扱います。全体の順序は相手材、ねじ、頭部、駆動部、表面処理、書類で、これを崩すと微調整ではなく手直しになる理由はねじの決め方にあります。
よくある質問
細目は並目より強いのですか。
ねじについては強く、よくある寸法で応力面積がおよそ 6% から 9% 多くなります。ただしめねじ側では、ピッチが基本のねじ剝がれの幾何のなかで打ち消し合い、そのモデルでは増加がありません。限界寸法に替えると公差の組合せ次第の小さな差が戻ってきますが、向きはどちらにもなりえます。強度のために引く値打ちのあるてこではありません。
ピッチが細ければ、穴のなかに切るべき金属が増えるのでは。
山の数は増えますが、1 山が同じ比率で薄くなり、二つの効果は基本山形のもとでちょうど打ち消し合います。幾何せん断面積は 0.875 × π × かみ合い長さ × 直径で、ピッチに依存しません。
並目のタップは芯が太いから折れにくいのですか。
少なくともその理由ではありません。M8×1 の基本の谷の径は 6.77 mm、M8×1.25 は 6.47 mm で、溝を切る前の包絡は細目のほうが大きいのですが、切りくずの溝を切ればそれはタップの芯とは違います。芯の断面はねじり剛性に確かに効きますし、切りくずの量、1 刃あたりのトルク、穴の深さ、潤滑も効きます。そしてこれらを固定した比較データは見つかりませんでした。
細目は振動による緩みに強いですか。
限界的にだけです。リード角は 3.17 度と 2.48 度で、摩擦係数 0.04 のときの等価摩擦角はおよそ 2.6 度ですから、低摩擦では並目の自立の余裕はごく小さいのです。実際の使用中の緩みは横方向のすべりが初期締付け力を逃がすことで起き、浅いリード角はそれを扱えません。
どんなときに細目を指定すべきですか。
肉厚やナット高さが並目の山を十分な数だけ収められないとき、一回転の送りで調整をするとき、NASA が硬材料と薄肉に極細目を勧めている状況、あるいは清浄な機械加工の組合せのときです。それ以外では並目のほうが安全な既定です。
お問い合わせ
図面が指定している細目が本当に必要かどうか、確信が持てませんか。 ねじの表示、相手材、そして肉厚かナット高さを一緒にお送りください。 その継手で細目が実際に仕事をしているのかを判断します—— していなければ、並目の対応品の費用と納期も併せてお返しします。
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