めっきとねじ公差:M1–M1.4 には、めっきの置き場がありません

めっきのあとでねじゲージが通らない。 公差等級は図面に書かれていて、そこに数字が一つあるので、 誰もが最初にその数字を厳しくしようとします。 しかし皮膜が食べるのは公差帯の幅ではなく、その下にある空間です。 等級を厳しくしても帯は動かず、位置 h には、そもそも空間がありません。

等級を厳しくするのが最も直感的なてこです

めっき後にゲージが止まる。図面には公差等級があり、数字が一つ書かれている。 その数字は、まさにこのために存在するように見えます。

問題は、皮膜が食べるものが帯の幅ではないことです。 食べるのは帯の下にある空間で、等級を厳しくしてもその空間は増えません。

邪魔をしているのは、その寸法ではありません

ここが最も抜け落ちる一歩です。めっきはねじの両方のフランクに付き、 有効径はねじ山どうしの関係を測るものなので、幾何としてはこうなります。

60 度のおねじで、片側の皮膜厚さが t なら、 有効径は 4t 増えます。 片側 5 µm のめっきで、有効径は 20 µm 増えます。

M1.2×0.25-6h のおねじの有効径公差帯はおよそ 53 µm なので、20 µm が帯を丸ごと食べるわけではありません。 本当の問題は、位置 h の上の許容差がゼロだということです。 めっき前の寸法が最大実体に寄っていると、皮膜には行き場がありません。

判断の基準は最悪条件でのめっき後の有効径めっき後の GO ゲージであって、 皮膜の厚さを公差帯の幅と比べることではありません。

皮膜はフランクの法線方向に t 増え、ねじ線はそれによって 2t 移動し、直径方向では両側を足して 4t になります。 ですから「使える有効径のすきまは少なくとも 4t 必要」は保守的な見積りではなく、 幾何が与える下限です。 ISO 4042 が扱っているのはこの件で、 防食性能だけを規定する文書ではありません。 皮膜とねじ寸法の干渉も規定しており、ISO 965 の公差と合わせて読むものです。

ISO 4042 の附属書 D:理論上の最大厚さは、思っているより薄い

附属書 D は、ピッチとめっき前の公差位置に応じた理論上の最大皮膜厚さを挙げています。 当社の範囲に近い例を二つ。

ISO 4042:2022 附属書 D の理論最大厚さ(おねじ)
呼びピッチ公差位置理論最大厚さ
M1.60.35g4 µm
M20.4g4 µm
M1 – M1.40.25 – 0.36h余地なし

4 µm は理論値です。実際にはさらに二つ差し引かれます。

  • 厚さのばらつき。電気めっきは均一ではなく、ラックとバレルで分布がまるで違います。仕様に平均値を書いても意味がありません
  • 端部の dog-bone 効果。電流密度は角と端で高く、皮膜は厚くなります。ねじの山頂と端の数山はまさに厚くなりやすい場所で、しかもそこが最初に穴へ入る場所です

だから最後は、めっき後の GO ゲージで機能を確かめます。 厚さの報告が合格だったことを理由に出荷することはできません。

M1–M1.4 で何が起きているか:6h には基礎寸法許容差がない

ISO 965-2 の適用範囲は区間で分かれています。 6H/6g は M1.6 から M100M1 から M1.4 は 5H/6h

  • 位置 g には負の基礎寸法許容差があり、その負の値がそのままめっきの空間になります
  • 位置 h の基礎寸法許容差はゼロで、その空間がありません

したがって M1.6 以上なら「6g で作り、皮膜は基礎寸法許容差を使う」と言えます。 M1–M1.4 では言えません。 めっきするなら、図面の側で公差を配分するか、寸法を変える必要があります。 たとえばめっき前の有効径の上限を指定するか、めっき後に GO ゲージを通ることを直接指定します。

ここが実務で最も事故になりやすい場所です。試作では出てこないからです。 試作はめっきしないことが多く、するとしても管理の行き届いた小ロットです。 問題は量産の最初のロットで現れます。

ついでに:小さい寸法だから水素の危険が低い、ということはありません

部品が小さければ表面積と体積の比が大きく、水素は抜けやすいはずだから、 ベーキングは短くてよい——直感的にはそう思えます。 ISO 4042 はこの例外を与えていません。

  • M6 以下では、酸洗が唯一実用的な洗浄方法になることがあります。そして酸洗は水素が入る主要な経路の一つです
  • 薄い断面では硬化層が全体に占める割合が高く、感受性をむしろ上げる可能性があります
  • ベーキング時間を短くするなら、持続荷重試験か工程資格で検証しなければなりません。推論ではなく

ISO 4042ASTM B850 は同じ分類体系ではありません。写し替えないでください。 ISO は硬さで区分し(芯部 390 HV 超を感受性ありとする)、典型条件は 190–220 °C で 8–10 時間。 そして 185–195 °C で 4 時間だけでは通常足りないと明記し、 時間はロット全体が実際に温度に達してから数えるもので、炉に入れた時点からではありません。

図面に何を書くか

  • ねじの表示には公差位置と等級を含めます。「M1.2」だけでは足りません
  • 公差がめっき前かめっき後かを明記します。最も争いになる一項です
  • めっきが要るなら、M1–M1.4 では皮膜の空間を明示的に配分します
  • 合否の方法にめっき後の GO ゲージを書きます。厚さの報告だけにしません
  • 高強度品(芯部 390 HV 超)には脱水素の条件と、時間の数え始めを書きます

これらは試作段階では表に出ません。 試作はめっきしないか、小さく管理された条件でめっきされることが多く、 問題は量産の最初のロットまで待ちます。 だからこそ、試作品が何を証明したのかを、承認の前に決めておく価値があります。 試作は形状、材質、頭の形、駆動、そして組み付くかどうかを証明します。 証明しないのは、皮膜の分布と、めっき後にねじゲージを通るかどうかです—— 量産の工程と量産の速度でめっきされたものでないかぎり。

どの表面処理のために公差を空けるのかは、もっと早い決定です。 M6 以下の表面処理の選び方の、 厚さが無料でなくなる節を見てください。 水素側は水素ぜい化にあります。

参考資料

  • ISO 4042:2022 — Fasteners — Electroplated coating systems(第 6.2 項と附属書 D)。Amendment 1:2026(2026 年 4 月発行)があり、本頁はその改正内容を取り込んでいません。引用の前に現行版を確認してください
  • ISO 965-2 — ISO general purpose metric screw threads — Tolerances — Part 2
  • ISO 965-1 — ISO general purpose metric screw threads — Tolerances — Part 1
  • ASTM B850-98(2022) — Standard Guide for Post-Coating Treatments of Steel for Reducing the Risk of Hydrogen Embrittlement

規格の原文は有償です。本頁が引くのは条文が規定している内容で、数値は各規格の現行版によります。 購買と受入れは、図面の取り決めと規格の原文を根拠にしてください。

この記事は手順 5、表面処理を扱います。全体の順序は相手材、ねじ、頭部、駆動部、表面処理、書類で、これを崩すと微調整ではなく手直しになる理由はねじの決め方にあります。

よくある質問

めっきで有効径はどれだけ増えますか。

60 度のおねじでは、片側の皮膜厚さ t に対して有効径がおよそ 4t 増えます。皮膜はフランクの法線方向に t 増え、ねじ線が 2t 移動し、直径方向では両側を足して 4t になるからです。片側 5 µm のめっきなら 20 µm です。判断は皮膜厚さと公差帯の幅を比べるのではなく、最悪条件でのめっき後の有効径とめっき後の GO ゲージで行ってください。

なぜ M1 から M1.4 だけ別扱いなのですか。

ISO 965-2 の適用範囲が区間で分かれており、6H/6g は M1.6 から M100、M1 から M1.4 は 5H/6h だからです。位置 g には負の基礎寸法許容差があり、その負の値がそのままめっきの空間になります。位置 h の基礎寸法許容差はゼロなので、その空間がありません。M1.6 以上なら皮膜が基礎寸法許容差を使えますが、M1 から M1.4 では図面の側で空間を配分するか、めっき後に GO ゲージを通ることを直接指定する必要があります。

ISO 4042 の附属書 D は何を与えていますか。

ピッチとめっき前の公差位置に応じた、理論上の最大皮膜厚さです。M1.6 のピッチ 0.35、位置 g で 4 µm、M2 のピッチ 0.4、位置 g でも 4 µm。理論値なので、実際にはめっき厚のばらつきと、端部で電流密度が高くなる dog-bone 効果をさらに差し引く必要があります。

小さいねじはベーキングを短くできますか。

ISO 4042 はその例外を与えていません。M6 以下では酸洗が唯一実用的な洗浄方法になることがあり、酸洗は水素が入る主要な経路の一つです。薄い断面では硬化層の割合が高く、感受性を上げる可能性もあります。時間を短くするなら持続荷重試験か工程資格で検証してください。なお ISO 4042 と ASTM B850 は同じ分類体系ではなく、ISO は芯部 390 HV 超を感受性ありとし、典型条件は 190–220 °C で 8–10 時間、時間はロットが実際に温度へ達してから数えます。

お問い合わせ

図面が M1–M5.0 の範囲で、しかもめっきが要るという場合は、図面をお送りください。 まず公差の配分に問題がないかをお伝えし、それから見積りの話をします。 この一歩を試作の前に済ませるほうが、量産の最初のロットのあとで済ませるよりはるかに安く付きます。

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