サンフランシスコ・ベイブリッジのアンカーロッド 96 本、緊張後 2 週間以内に 32 本の破断:冶金報告は ASTM A354 BD の基本要求に適合とし、調査報告書は契約に明記すべき要求を 4 つ挙げた
高強度ボルトや全ねじ棒を調達するとき、受入れでよく使われる書類はミルシートで、そこには「ASTM A354 BD に適合」や「ISO 898-1 に適合」と書かれています。受入れがこの一文で終わるなら、次の事例は読んでおく価値があります。2013 年 3 月、サンフランシスコ・オークランド・ベイブリッジ新東側区間の E2 橋脚で、溶融亜鉛めっきした直径 3 インチ(76 mm)のアンカーロッド 96 本を緊張したところ、2 週間以内に 32 本の破断が見つかりました。冶金調査チームの結論は二つです。破断の原因は水素ぜい化であること。そしてこのロッドは A354 BD の基本的な機械的・化学的要求を満たしていたこと。どちらもカリフォルニア州の有料橋プログラム監督委員会(TBPOC)が 2013 年 7 月 8 日にまとめた調査報告書に載っています。この記事ではその報告書を読み、四つの問いに答えます。「適合」は棒のどこを測った結果なのか。水素はどこから来たのか(報告書が確定したことと、していないこと)。溶融亜鉛めっきはどうして契約に書き込まれたのか。そして報告書が、規格に加えて契約に明記すべきだったとした 4 項目です。最後の節は、大径の高強度めっき全ねじ棒を買う側への当サイトの読み方と、このページで言えないことです。読了まで約 15 分です。
2 週間以内に、96 本のうち 32 本の破断
新東側区間の自定式吊橋(SAS)には、17 種類、計 2,306 本の ASTM A354 grade BD 高強度鋼棒が使われており、報告書はアンカーロッド、タイロッド、各種ボルトをまとめて「rod」と呼んでいます。問題が起きたのはそのうちの一群、E2 橋脚にあるせん断キー S1、S2 の下部ハウジングを留めるアンカーロッドです。 せん断キー 1 基あたり 48 本、計 96 本で、直径 3 インチ、長さ 10〜17 フィートで、報告書の総括表は張力を 0.7 Fu としています(Fu は設計上規定された最小引張強さ。表は小数 1 桁に丸めた値)。Dyson 社が 2008 年 6 月 4 日〜9 月 6 日に製造し、2008 年 10 月に設置しました。 下端はナットごとコンクリートの橋脚キャップに埋め込まれ、その後は触れることができません。
キャップ梁は 2009 年初めに完成し、上に載る箱桁が架設されるより 3 年早く仕上がっていました。ロッドの上部はダクトの中で次の工程を待っていましたが、報告書によれば、当初の設計にも設置手順にも排水や十分な雨よけの措置はなく、後からの仮の排水や封止も雨水の浸入を防げませんでした。 Caltrans の要請で何度か排水していますが、水がどれだけの期間たまっていたかは不明です。報告書はロッドがダクトの中で 5 年置かれてから緊張されたとしています(2008 年 10 月の設置から 2013 年 3 月までで約 4 年 5 か月)。
2013 年 3 月 1 日に S2、3 月 2〜5 日に S1 を緊張しました。契約どおり、まずジャッキで 0.75 Fu まで引き、荷重がジャッキからナットに移るときの定着損失で、最終的に 0.68 Fu に落ち着きます。 3 月 8〜14 日の間に、32 本の破断が次々に見つかりました。3 月 14 日までに Caltrans は、破断していない残りのロッドを 0.45 Fu まで下げると決め、表 9 の注は 3 月 15 日に張力を下げたと記しています。報告書は、下げなければさらに破断した可能性があるとしています。報告書の本文はこれを「約 30% が緊張後 3〜10 日で破断」とまとめていますが、図 6 が示すのは各ロッドの破断が見つかった日で、横軸は 14 日目まであります。
この張力はどのくらい高いのか。設計上の最小引張強さ 140 ksi で計算すると、0.68 Fu は 95.2 ksi(約 656 MPa)です。このロットの品質管理記録の平均降伏強さは 142 ksi なので、この公称応力はロット平均の降伏強さの約 67%、およそ 3 分の 2 です(当サイトの計算。1 本ごとの実測値でも、ねじ底の局部応力でもありません)。 報告書は、2008 年ロットが実際の降伏強さをかなり下回る張力で破断したこと自体が、水素ぜい化と靭性不足の証拠だとしています。
このロットは交換もできません。埋め込み側のねじはナットから抜けないようにつぶしてあり、上には箱桁がかぶさっています。交換するには橋脚キャップを大きく壊すことになり、報告書は直接の交換を現実的でないとしたため、失った締付け力は別の方法で補うしかありませんでした。
「A354 BD に適合」は、棒のどこを測った結果か
現場から破断ロッド 9 本を取り出し、冶金調査チームはそのうち 2 本(S1-G1、S2-A6)を詳しく分析しました。き裂はねじ底から始まり、S1-G1 では深さ 0.6 インチ、S2-A6 では 0.4 インチまで進んだところで最後の高速破断に至っています。 ねじ底付近の破面は粒界破壊で、最後に割れた領域はほぼすべてへき開でした。報告書はこれらを、破断が遅れて起きたことと合わせて、時間に依存する水素助長割れの証拠としています。
次は材料そのものです。品質管理記録と試験所の数字を並べると、次のようになります。
| 項目 | A354 BD(直径 2¾〜4 インチ) | 2008 年ロットの品質管理記録 | 破断ロッドの分析 |
|---|---|---|---|
| 引張強さ | 140 ksi 以上 | 平均 164 ksi(152〜173) | 適合。報告書は別に 159〜170 ksi とし、最小値より 20% 高いと概括(当サイトの計算では約 14〜21% 高い) |
| 降伏強さ | 115 ksi 以上 | 平均 142 ksi(127〜158) | 適合 |
| 伸び | 14% 以上 | 平均 14.3%(12.5〜16.2)。七つのヒートのうち二つが低め | 分析した試料は適合。ただし下限をわずかに上回る程度 |
| 硬さ | 31〜39 HRC | 平均 36.8 HRC(33〜37)。半径の中間点で測定 | 分析した 2 本:半径の中間点で 32.5〜36.2。中心は 25 まで低下、外周は 39 近く |
| 衝撃値(シャルピー V ノッチ) | 要求なし | 表 7 には記載なし | 3 組の試料の平均値で 13.5〜17.7 ft-lb(約 18〜24 J) |
| 化学成分 | 合金鋼としての要求 | — | 適合(個々の読みには範囲外もあったが、ASTM の統計的な扱いで許容)。AISI 4140 と一致 |
表の「適合」にはどれも根拠があります。問題は硬さの行です。報告書によれば、ASTM は棒やボルトの硬さを測る位置を半径の中間点(R/2)と定めており、SAS の品質管理と発注者側の品質保証も ASTM F606 に従って R/2 で測っていました。 分析した破断ロッド 2 本は、R/2 で 32.5〜36.2 HRC と合格でした。直径に沿って測ると、外周は 39 近く、中心は 25 まで下がっていました。報告書が示す当初の品質管理の要約には R/2 の硬さしかなく、こうした断面内の差は見えません。 報告書は、大径の棒を完全に焼き入れるのはもともと難しいとしつつ、中心と外周の差がこれほど大きいのは、鋼の焼入れ性が十分でなかったか、熱処理が適切でなかった可能性を示すと述べています。
その差を説明するのが組織です。大部分は焼入れ焼戻し後にあるべき焼戻しマルテンサイトでしたが、一部では変態が完全に進まず、フェライトとパーライトがマルテンサイトの間に帯状に挟まり、同じ向きに伸びた介在物もありました。 R/2 の合格した硬さだけでは、こうした断面内の組織と硬さの差は見えません。
靭性の行は別の穴です。報告書の紹介によれば、A354 の基本要求にはシャルピー衝撃試験が含まれないため、靭性はこのロッドの受入れ項目に入っていませんでした。報告書は一般の鋼でよく使われる室温での下限 20 ft-lb を背景として比べており、2008 年ロットの 3 組の試料の平均値は 13.5〜17.7 ft-lb で、報告書はこれを靭性不足としています。 (試験温度は報告書の中で食い違っています。p.19 の本文は 40 °F、表 12 はこの 3 組を 70 °F の欄に置き、p.55 は範囲を 13.5〜17.5 としています。温度が違うため、この値をそのまま室温での合否比較とみなすことはできません。)
品質管理記録には、ほかに二つのことがあります。七つのヒートのうち二つで伸びが低く、不適合報告(NCR 000199)が出され、2008 年 10 月 16 日に「fit-for-purpose」(用途に適合)として受け入れられました。 また、1 回目の熱処理の記録を製造者が提出できなかったため、2 回目の熱処理が行われています。報告書は、このロットの材料の状態からすると、2 回目の熱処理がさらに硬く強くし、水素ぜい化の感受性を高めた可能性があるとしています。 このロットは発注者側の試験所での試験が終わる前に出荷されましたが、すべての試験に合格してから設置されており、報告書はこれが破断に関係した証拠はないとしています。
水素はどこから来たのか:報告書が確定したこと、していないこと
材料が規格に適合しているのに折れた。次の問いは水素の出どころです。報告書はここをはっきり分けて書いており、このページもそれに従います。
冶金報告が判定したこと:冶金報告の結論は、ロッドを緊張したとき、水素は「already present and available in the rod material」(すでに棒の中にあり、作用できる状態だった)であり、それに加えられた引張荷重が重なって水素ぜい化が起きた、というものです。 根本原因は、この鋼の水素ぜい化感受性が通常より高かったことです。取り出した破断ロッド 9 本のいずれも、破面付近に表面の腐食はありませんでした。
可能性として挙げられていること:ダクト内の雨水は「may have been a contributing source」(水素源の一つだった可能性がある)とされていますが、水がどれだけの期間たまっていたかは不明だと報告書は書いています。 報告書はほかに「寄与した可能性がある」要因として、35 HRC を超える硬さ、最小値より 20% 高い強度、0.7 Fu の高い張力、溶融亜鉛めっき、追加の熱処理、環境にさらされた埋込み詳細を挙げています。 溶融亜鉛めっきについての報告書の一般的な説明は、亜鉛浴は約 850 °F(約 454 °C)で、熱が過剰だと鋼の中にある水素が放出され、亜鉛層に閉じ込められると水素ぜい化のリスクが高まる、というものです。これは一般的な仕組みの説明で、報告書の本文には、このロットのめっき前後の水素量を比べたデータはありません。
結論が出ていないこと:このロッドの水素のうち、どれだけが鋼材、熱処理、酸洗い、めっきから来て、どれだけが工事待ちの間にたまった水から来た可能性があるのか、報告書の本文は割合を示していません。 間接的な手がかりが一つあります。2008 年 10 月、Caltrans は変更指示(CCO #91)で、SAS 上部構造の契約のうち 0.5 Fu を超えて緊張する BD ロッドに磁粉探傷を追加で求め、その後の鋼材は真空脱ガスを行う製鋼所から来るようになりました。報告書は、これが鋼中の残留水素を減らした「可能性がある」としています。 2008 年ロットはその時点ですでにめっき済みで、磁粉探傷は行われていません。その鋼材が真空脱ガス材だったかどうかは、報告書の本文には書かれていません。
水素ぜい化の一般的な仕組みや、電気めっき品をなぜベーキングするのかは、当サイトの錆びなかったが折れた:水素ぜい化と、あのベーキングで書きました。使用中の腐食から来る水素は回収した切欠きボルト 11 本中 10 本は破断前 3 日以内に雨を参照してください。ここで付け加えるのは、その二つにないことだけです。このロッドでは三つの条件(感受性の高い材料、高い引張応力、水素)が同時にそろっており、基本的な機械的・化学的性能が合格していても、この張力と環境で十分な耐水素ぜい化性があることの証明にはなりませんでした。
溶融亜鉛めっきはどうして契約に書き込まれたのか
報告書によれば、設計者と Caltrans は 2003 年の時点で A354 BD の溶融亜鉛めっきに水素ぜい化の懸念があることを知っていました。それでもめっきしたのはなぜか。当初求めた機械めっきでは 3 インチ、4 インチのロッドを処理できず、別の橋の前例にならって溶融亜鉛めっきに切り替えたからです。報告書はこの経緯を年表にしており、一つひとつの手順にはそれぞれ理由があります。
| 時期 | 出来事 |
|---|---|
| 1998 年 1 月 | SAS の設計開始。1995 年版 Caltrans 橋梁設計基準に基づく。この版は A354 BD に触れていない |
| 2000 年 4 月 | 新版の基準が、A490 と A354 BD 高強度ボルトのめっきを水素ぜい化を理由に「認めない」と明記。この改訂は本件には遡及適用されず、報告書は新しい基準は通常、設計の途中では適用しないとしている |
| 2001 年 8 月 | Richmond–San Rafael 橋の耐震補強で、A354 BD を寸法が大きすぎるため機械めっきから溶融亜鉛めっきに変更し、酸洗いの代わりに乾式ブラストとした。そのロッドはスナグタイト(密着締め)までで、多くは水中 |
| 2003 年 1 月 | E2/T1 基礎工事の契約を公告。機械めっきを要求 |
| 2003 年 3 月 | 入札者から照会:3 インチと 4 インチのロッドは長く重すぎて機械めっきできない |
| 2003 年 4 月 | E2/T1 基礎工事契約の補遺 3 号:溶融亜鉛めっき前 4 時間以内に乾式ブラストを行い、ASTM A143 への適合を示す証明試験報告を提出すること |
| 2003 年 6 月 | SAS 上部構造契約の補遺 8 号:すべての A354 BD ロッドに同じ要求 |
通常の溶融亜鉛めっきでは、前処理として典型的には約 20 分の酸洗いを行い、この工程で水素が鋼に入ることがあります。報告書は、水素ぜい化のおそれがある高強度鋼では乾式ブラストと 30 秒未満のフラッシュ酸洗いに置き換えられると紹介しています。報告書が確認したプロジェクト文書では、SAS の BD ロッドは機械めっきの Item 6 を除き、この方法で処理してから溶融亜鉛めっきされました。 報告書が引く ASTM A354 の注意書きは、同様の材料と製法のボルトの研究から、溶融亜鉛めっきした grade BD ボルトに水素応力割れや応力腐食割れが起きうる、というものです。注意喚起であって、禁止ではありません。
問題は、持ち込んだ前例のほうにありました。Richmond–San Rafael 橋のロッドはスナグタイトまでしか締めていませんが、SAS には 0.7 Fu まで引くロッドがあります。報告書は、SAS の各位置で用途が違い、張力がはるかに高いことについて「little documented discussion」(文書に残る議論はほとんどない)と書いています。 TBPOC の所見 2 はさらに直接的で、一つの仕様を七つの異なる位置に当てはめたこと、そして低張力・水中・スナグタイトの仕様を、水上・高張力の位置に移したことは不適切だったとしています。
検査にも穴がありました。所見 8 によれば、ASTM A143 は水素ぜい化試験を求めていましたが、現場の監理技術者は直径 1½ インチ以下のロッドでしか試験せず、大径のものは試験されず、照会も出されませんでした。 報告書の表 6 は、試験方法の径の限界も指摘しています。ASTM F606 のくさび引張試験は 1½ インチまでしか規定がなく、それより太い径には対応する規定がありません。この案件の BD ロッドの多くは 1½ インチより太いものでした。 電気めっき品の水素ぜい化試験の性格についてはあの水素ぜい化試験は、受入試験ではないと規格自身が述べているで扱っています。
残りの 2,210 本はどう扱われたか
問題の 2008 年ロット 96 本は、全体の約 24 分の 1 です。残りの 2,210 本に同じ問題があるかどうかが開通の判断を左右し、報告書は「時間」と「ロット」で答えています。
いちばん近いのは、同じ橋脚にある 2010 年製の直径 3 インチのロッド 192 本です。2013 年 4 月 9 日に緊張を終え、30 日間の現地での持続載荷観察を行い、5 月 9 日までに 1 本も破断せず、水素ぜい化の兆候もありませんでした。 取り出した試験片の組織はほぼ均一なマルテンサイトでした。報告書の本文は 2010 年ロットの 40 °F でのシャルピー値を 36.6〜38.3 ft-lb(約 50〜52 J)としていますが、表 12 の 40 °F の組平均は 36.8〜37.7 で、完全には一致しません。表 12 の同じ 70 °F の欄で比べると、2010 年ロットは 37.3〜38.3、2008 年ロットは 13.5〜17.7 で、2 倍以上の差があります(抽出試料の組平均で、1 本ごとの値ではありません)。 残りの 2,018 本も、2013 年 7 月 1 日の時点で破断していません。緊張済みのものは表 9 で 91〜1,429 日緊張されており、自転車道用の 43 本だけはまだ緊張されていませんでした(表 9 の 91 日は 4 月 9 日に緊張を終えた 192 本の値で、7 月 1 日までを当サイトが数えると 83 日。報告書は差を説明していません)。 報告書の理屈は、水素ぜい化はふつう荷重を受けてから数日から数週間で起きるというもので、持続載荷での実績と材料試験を合わせて、ほかのロットの近い将来の水素ぜい化リスクは低いと判断しています。
長期のリスクは別の話です。報告書は応力腐食割れ(SCC)を次の課題としています。腐食が続くことが前提で、年から数十年の単位で進み、張力、直径、ねじ、表面硬さで決まります。表面硬さが 35 HRC 以上で張力も高いロッドは、さらに評価が必要です。 報告書は、亜鉛層に小さな傷があると、そこで電池反応が起き、水素の発生を早めるとも書いています。そのために五つの試験が組まれました。現地での硬さ試験、試験所での硬さと衝撃試験、実物大の引張試験、Townsend 促進 SCC 試験、Raymond 試験です。最初の三つは 6 月 21 日に終わり、Townsend 試験は装置の製作中、Raymond 試験は手順の作成中でした。
| 処置 | 対象 |
|---|---|
| 開通前に締付け力を補う | Item 1:破断した 2008 年ロットのせん断キー用アンカーロッド。鋼製サドルで補強 |
| 開通後に交換 | Items 2〜4:E2 のほかの 0.7 Fu のロッド。試験した表面硬さの範囲では SCC に「highly susceptible」(感受性が高い)とされ、本文では設計者が張力の低減か全数交換を検討しうるとも書かれている。ほかに Item 11(塔頂のアウトリガーブーム用ロッド。張力は 0.1 Fu で、報告書はブーム設置前に交換するとしている) |
| 張力低減 | Items 8、9(塔頂サドルのロッド)と Items 12、13(塔基部のアンカーロッド)。本文は 8、9 に除湿強化の選択肢も挙げる |
| 除湿の強化 | Item 7(主ケーブル定着部のロッド。張力は下げられず、交換も望ましくない) |
| 受け入れて監視 | Items 5、6(支承内で密封・潤滑)、Items 10、14、15、16(張力が低い)、Item 17(自転車道用。設計未確定で、将来の変更や交換の可能性あり) |
報告書は「開通後に交換」と「除湿の強化」を 2014 年末までに行う見込みとし、張力低減は設計者が確認し、工事による荷重分布が変わらなくなってから調整するとしています。いずれも 2013 年の報告書時点での予定で、その後の実績ではありません。 補強案は三つを比べ、鋼製サドルが選ばれました。キャップ梁の両側にかけたポストテンション鋼材でせん断キーの下部ハウジングを押さえる方式で、当時の見積りは約 1,000 万ドル。もう一つの鋼製カラー案は 1,500 万〜2,000 万ドルと見積もられていました。TBPOC は 2013 年 5 月 8 日に全会一致で承認し、サドルは開通前に完成させ、2008 年ロット全体の締付け力を置き換えます。 報告書によれば、Caltrans は交換用の新しいロッドに補足仕様を適用しています。引張強さの上限、最低靭性、最高硬さを定め、硬さは狭い公差で直径に沿って細かい間隔で測るというものです。さらに ASTM F606 の持続載荷引張試験と Townsend、Raymond 試験を行う予定で、めっき以外の防食方法も検討するとしています。
報告書が契約に求めた 4 項目と、買う側の聞き方
冒頭の二つの文に戻ります。報告書の所見 1 は、ロッドが水素ぜい化で破断したことと、同じ冶金報告がロッドは A354 BD の基本的な機械的・化学的要求に適合するとしたことを並べています。所見 6 は続けて、この案件の締結部品の仕様は汎用の ASTM 規格に頼りすぎており、特記仕様で次の 4 項目をもっと明確に扱うべきだったとしています。
- 最高硬さと、断面全体での硬さの一貫性。R/2 が 31〜39 HRC に入るだけでは足りない。報告書は、この種の高強度鋼棒について製造管理がある場合の妥当な範囲を 31〜35 HRC とする Fisher、Townsend らの見解を引き、ASTM F2329 は 33 HRC 以上でのぜい化リスクを示しているとしています。
- 最低靭性。A354 にはシャルピーの要求がありません。最低靭性が必要なら、試験条件と合否基準を補足仕様に書く必要があります。
- 磁粉探傷。CCO #91 で追加されたのは 2008 年 10 月で、2008 年ロットはすでにめっき済みだったため行われませんでした。
- 設置前に、引張荷重をかけたまま一定期間置く試験。報告書が紹介する F606 のくさび試験は 1½ インチまでで、大径のロッドの試験条件は契約に明記する必要があります。
報告書に引かれた審査委員の言葉は「National Standards are the minimum. You still need to do good engineering.」(国家規格は最低限で、それでも良いエンジニアリングが要る)です。所見 7 は別の技術者の言葉を引いています。「A good design should not be so sensitive to bad material.」(良い設計は、悪い材料にここまで左右されるべきではない)
以上の 4 項目は所見 6 によるものです。ここからの五つの質問は当サイトの読み方で、報告書の提言ではありません。大径・高強度で、めっきする全ねじ棒やアンカーロッドを買うときは、ミルシートの「適合」の先で、少なくとも次の五つを聞くことができます。
- 硬さはどこで測ったか。R/2 だけか、直径に沿った硬さ分布があるか。報告書が交換用ロッドに加えた補足仕様は、まさに「直径に沿って細かい間隔で、狭い公差で」測ることでした。
- シャルピー値はあるか。何度で測ったか。規格が求めていないデータは、証明書と一緒に提供されるとは限りません。受入れに必要なら、購入仕様に書き込みます。
- 熱処理の記録はそろっているか。何回行ったか。2008 年ロットの 2 回目の熱処理は、1 回目の記録が見つからなかったことがきっかけでした。
- めっき前処理は酸洗いか、ブラストとフラッシュ酸洗いか。その直径に使える水素ぜい化試験はあるか。規格の試験方法がその直径を扱っていないなら、契約に別に書く必要があります。
- そのロッドはどこまで引くのか。同じ材料等級や仕様でも、スナグタイトで使う位置と 0.7 Fu で使う位置ではリスク評価が違います。報告書のいちばん直接的な批判は、一つの仕様を七つの位置に当てはめたことでした。
ミルシートの型式の違いはミルシートの読み方:EN 10204 の四つの型式は何が違うのかを参照してください。こうした質問に答えが返ってきても、リスクが消えるわけではありません。水素ぜい化は三つの条件がそろって起きるため、材料、製造工程、試験、張力、防食環境を、調達、設計、施工が一緒に確認する必要があります。
このページから言えないこと
この報告書は発注者側の監督委員会が 2013 年 7 月にまとめたもので、処置区分は暫定です。報告書の公表時点で、Townsend 試験と Raymond 試験は終わっておらず、FHWA の独立レビューは進行中で、耐震審査パネルの書面意見は別途提出される予定でした。こうした後の結果は当サイトは読んでおらず、橋のその後の処置や開通の経緯も紹介しません。 冶金報告の全文は付録 H.13 にあり、このページでは報告書本文の要約だけを使っています。ASTM A354、A143、F606、F2329 の条文は当サイトでは原文を読んでおらず、報告書による紹介を引いています。現行版とも照合しておらず、現行の条文の解釈には使えません。 報告書の本文は水素の出どころと各源の割合を定量的に確定しておらず、このページでも推定しません。報告書は各当事者の責任を記していますが、このページでは紹介せず、そこから責任の所在を推論もしません。 報告書の中には食い違いがいくつかあります。2008 年ロットと 2010 年ロットのシャルピー値の範囲と試験温度、表 9 の緊張日数で、このページではそのまま注記しました。MPa、J、°C と比率は当サイトの換算です。 前の節の後半にある五つの質問は当サイトの読み方で、設計上の助言ではありません。大径の高強度アンカーロッドに溶融亜鉛めっきをしてよいか、どの防食方法を使うかは、張力と環境に基づいて設計担当の技術者が判断する必要があります。
この記事は手順 5、表面処理を扱います。全体の順序は相手材、ねじ、頭部、駆動部、表面処理、書類で、これを崩すと微調整ではなく手直しになる理由はねじの決め方にあります。
よくある質問
ASTM A354 BD に適合したアンカーロッドが、なぜ水素ぜい化で折れたのですか?
冶金報告によれば、ベイブリッジの 2008 年ロットの分析したロッドは A354 BD の基本的な機械的・化学的要求に適合していました(製造時に二つのヒートで伸びが低く、用途に適合として受け入れられています)。しかし報告書が紹介する ASTM の硬さの測定位置は半径の中間点で、断面全体の一貫性は対象外であり、A354 は衝撃試験も求めていません。分析した破断ロッドの中心は 25 HRC まで低く、外周は 39 HRC 近くで組織は不均一、シャルピー値は 3 組の平均で 13.5〜17.7 ft-lb でした。冶金報告は材料の水素ぜい化感受性が通常より高かったと判定しており、0.68 Fu の張力と棒の中にすでにあった水素が重なって、緊張後 2 週間以内に 32 本の破断が見つかりました。
A354 BD のボルトや全ねじ棒は溶融亜鉛めっきしてよいのですか?
2013 年の TBPOC 報告書が紹介する当時の版では、ASTM A354 は溶融亜鉛めっきした grade BD ボルトに水素応力割れや応力腐食割れが起きうると注意していますが、禁止はしていません。一方、Caltrans の 2000 年 4 月版の橋梁設計基準はめっきを認めないと明記しており、この改訂は本件には遡及適用されませんでした。報告書の所見 5 は、Geomet、グリース塗布とシース、塗装などの代替案をもっと検討し、ライフサイクルコストを比較すべきだったとしています。当サイトは一般的な可否は示しません。張力、直径、環境に基づいて設計担当の技術者が判断する事項です。
硬さが規格内なのに、なぜリスクがあるのですか?
報告書によれば、ASTM の硬さの測定位置は半径の中間点(R/2)です。ベイブリッジの分析した破断ロッドは R/2 で 32.5〜36.2 HRC と合格でしたが、直径に沿って測ると中心は 25 まで低く、外周は 39 近くで、当初の品質管理の要約にはこの分布が出てきません。報告書は、この種の高強度鋼棒について製造管理がある場合の妥当な範囲を 31〜35 HRC とする専門家の見解を引き、ASTM F2329 は 33 HRC 以上でぜい化リスクを示すとしています。品質管理記録ではこのロットの平均は 36.8 HRC でした。
大径の高強度アンカーロッドを買うとき、仕様に何を加えればよいですか?
TBPOC 報告書の所見 6 は 4 項目を挙げています。最高硬さと断面での一貫性、最低靭性、磁粉探傷、設置前の持続載荷試験です。報告書によれば、Caltrans が交換用ロッドに適用した補足仕様では、さらに引張強さの上限を定め、硬さは狭い公差で直径に沿って細かく測り、ASTM F606 の持続載荷引張試験と Townsend、Raymond 試験を行う予定としています。これはその案件での対応で、ほかの案件に当てはめるには設計担当の技術者の判断が必要です。
参考資料
- Toll Bridge Program Oversight Committee(2013)—— Report on the A354 Grade BD High-Strength Steel Rods on the New East Span of the San Francisco-Oakland Bay Bridge, With Findings and Decisions
- 錆びなかったが折れた:水素ぜい化と、あのベーキング
- あの水素ぜい化試験は、受入試験ではないと規格自身が述べている
- 回収した切欠きボルト 11 本中 10 本は破断前 3 日以内に雨:暴露中に折れた 1700 MPa 級ボルトの水素は腐食から、出荷前のベーキングでは除けない
- ミルシートの読み方:EN 10204 の四つの型式は何が違うのか
TBPOC 報告書の要約と本文(1〜102 ページ)は当サイトで読んでいます。付録(付録 H.13 の冶金報告全文を含む)は読んでいません。ASTM A354、A143、F606、F2329 の内容は報告書による紹介で、規格の原文も現行版も確認していません。ksi→MPa(×6.895)、ft-lb→J(×1.356)、°F→°C、0.68×140=95.2 ksi、95.2÷142≈67%、159〜170 ksi が 140 ksi より約 14〜21% 高いこと、4 月 9 日から 7 月 1 日までが 83 日であることは当サイトの計算です。報告書の中では、2008 年ロットのシャルピー値が 13.5〜17.7 と 13.5〜17.5 ft-lb、温度が本文で 40 °F、表 12 の欄で 70 °F となっており、2010 年ロットは本文で 36.6〜38.3 ft-lb、表 12 の 40 °F の組平均で 36.8〜37.7 です。このページではそのまま注記しました。張力の低減は 3 月 14 日までに決定し、表 9 の注では 3 月 15 日に実施です。「買う側の聞き方」の節の後半の五つの質問は当サイトの読み方で、前半の 4 項目は報告書の所見 6 によるものです。
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高強度の全ねじ棒やアンカーロッドのお見積りでは、直径、長さ、強度区分、表面処理、設置後の張力に加えて、直径に沿った硬さ分布、衝撃試験、水素ぜい化に関する試験が必要かどうかをお知らせください。その条件で対応できる選択肢と書類をご案内します。めっきの可否や緊張力は、設計を担当する技術者の判断が必要です。
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