周方向の荷重は本来リベットを通らなかった:アロハ航空 243 便の胴体重ね継手は設計上、接着で荷重を伝え、はく離すると荷重は 3 列の皿リベットに移った。0.036 インチ外板の皿穴の底はナイフエッジになっていた

2 枚の板を 1 列のリベットで留めれば、力はリベットが伝えていると考えるのが普通です。ところが 1960 年代末のボーイング 737 初期型の胴体重ね継手は、与圧で生じる周方向の荷重を接着層で伝える設計で、リベットは主な荷重経路ではありませんでした。1988 年 4 月 28 日、アロハ航空 243 便は高度 24,000 フィート(約 7,300 m)で爆発的減圧を起こし、客室入口ドアの後方、床面より上の外板と構造が長さ約 18 フィート(約 5.5 m)にわたって飛行中に失われました。米国家運輸安全委員会(NTSB)の報告書は、破壊が左側 S-10L の重ね継手の上列リベット穴に沿った多数の疲労き裂から始まり、き裂は皿穴のナイフエッジから発生したと認定しています。ナイフエッジに集中した応力は、継手の接着がはがれたためにリベットを通して伝わってきたものでした。この記事では報告書を締結部の問題として読みます。継手は本来どう役割を分けていたか、はく離後に荷重がどうリベットへ移ったか、0.036 インチの外板がなぜ皿穴をナイフエッジにしたか、寿命 2 倍の疲労試験がなぜそれを捉えなかったか、穴が 1 列まとめて割れるとなぜフェイルセーフ設計が働かないのか、最後にどう直したか、そして NTSB の結論と一人の委員の異なる意見です。読了まで約 11 分です。

薄いアルミ板 2 枚の重ね継手の断面模式図:外側の板が内側の板の上に重なり、3 本の皿リベットの頭は上面と面一で、円すい形の穴は上の板を貫通し、下の板の穴はまっすぐ。リベットの端は下側でつぶされている。板の間には不規則な細い隙間があり、接着層の部分的なはがれを示している。左のリベット穴の底の鋭い縁から、赤い細いき裂が上の板に入っている(模式図、厚さは誇張)。

高度 24,000 フィートで、客室上部が約 18 フィートなくなった

まず締結部品が登場するところまで事故を追います。NTSB の報告書(AAR-89/03)によると、1988 年 4 月 28 日 13 時 46 分、アロハ航空のボーイング 737-200(N73711)がハワイ島ヒロからホノルルへ向かう途中、 高度 24,000 フィートで爆発的減圧と構造破壊を起こしました。搭乗者は乗客 89 人、乗員 6 人です。客室乗務員 1 人が機外に吸い出され、死亡したと推定されています。乗客 7 人と客室乗務員 1 人が重傷を負いました。乗員は緊急降下し、マウイ島のカフルイ空港に着陸しました。

この機体は 1969 年製造、生産ライン番号 152 で、事故時の累積は 89,680 飛行サイクル(離着陸回数)でした。報告書は、アロハ航空の一部の路線では最大差圧 7.5 psi に達しないため、全与圧に換算したサイクル数はこれよりかなり少ないとも注記しています。 失われた構造は回収されず、破壊の起点は機体に残った構造から推定されました。NTSB の結論は、胴体は左側 S-10L の重ね継手に沿って、胴体ステーション BS 440 付近から裂けた可能性が最も高いというものです。 二つの証拠が同じリベット列を指しています。機体に残った BS 520 では、S-10L の継手で少なくとも 7 つの隣り合うリベット穴の両側に疲労き裂がありました。また乗客の一人が搭乗時に、S-10L 継手の上列リベットに沿った縦方向のき裂を見ており、事故後にそれを申し出ています。

報告書の所見 7 と 8 は、メカニズムを二つの文で書いています。破壊は S-10L の重ね継手で始まり、そのメカニズムは継手上列のリベット穴に隣接する外板の多数の疲労き裂と、ティアストラップのはく離であり、これが胴体のフェイルセーフ特性を失わせた。 疲労き裂は皿リベット穴のナイフエッジから始まり、ナイフエッジに集中した応力は「継手のはく離のためにリベットを通して伝わった」。所見 8 の後半を読むには、この継手が本来どう役割を分けていたかを先に知る必要があります。

この重ね継手は、設計上、接着で力を伝えていた

報告書 1.6.2 節によると、事故の起きた 43 セクションの上半分の外板は、0.036 インチ(約 0.91 mm)のアルミ板 2 枚を加熱硬化の接着で貼り合わせてから化学ミーリングしたもので、10 インチごとに周方向のティアストラップ(き裂を止める帯)が残されています。 隣り合う外板は長手方向に重ね継ぎされ、上側の外板の縁が下側の外板の外側に約 3 インチ(約 76 mm)重なります。3 列のリベットと接着で結合し、中央の列のリベットは継手を内側のストリンガーにも固定しています。

生産ライン番号 1 から 291 の機体では、この継手にコールドボンド(常温硬化の接着)が使われていました。エポキシを含浸させた織布(スクリム・クロス)を単板 0.036 インチの外板 2 枚の間に挟み、さらに 3 列の皿リベットで機械的に固定します。 この接着材は室温で反応が進むため、ドライアイスの温度で保管し、組立直前に室温に戻していました。報告書はこの設計の狙いをこう書いています。 胴体の周方向荷重(与圧による円周方向の荷重)は「リベットではなく接着継手を通して伝える設計であり」、そのため疲労寿命を落とさずに、より軽く薄い外板を使えた(原文 intended to be transferred through the bonded joint, rather than through the rivets)。N73711 のライン番号は 152 で、この範囲に入ります。

問題は接着にありました。報告書はボーイングの技術者の説明を引いています。初期の生産では、洗浄とエッチングが均一な表面酸化膜を作れていなかったこと、スクリムに付いた結露を除き切れなかったこと、スクリムを室温に置きすぎて早く硬化してしまったことが、いずれも接着の品質を下げました。 その結果、環境耐久性が低い接着、腐食しやすい接着、さらにはまったく接着していない部分が、ランダムに生じていました。水が入ると、腐食生成物の蓄積、毛細管現象による水の浸入、凍結融解の繰り返しによって、はく離はさらに広がりました。 コールドボンドの重ね継手は 1972 年に生産を終え、ライン番号 292 以降は、接着をせず合わせ面をクロム酸塩入りポリサルファイドでシールしたリベット継手に変わりました。継手部の外側の板は 2 層のまま残され、0.036 インチ厚くなっています。

報告書の付録 C に収められたボーイングのサービス・ブレティン 737-53-1039 第 2 次改訂(1974 年 2 月 8 日)には、7 社の運航者が 30 機で接着材の劣化を報告したとあります。累積飛行時間が 3,000 時間しかない機体でも見つかっており、範囲は小さな孤立部分から 6 フィート以上までさまざまでした。 多くの場合、腐食で外板がふくらむか、き裂が出るか、締結部品の頭が欠けるまで確認できなかったとされています。接着がはがれれば、主な荷重経路ではなかったリベットが代わりに荷重を受けることになります。

接着がはがれると荷重は 3 列の皿リベットへ移り、穴の底はナイフエッジだった

報告書はボーイングの技術者の説明を引いています。継手の接着がはがれると、継手を通る周方向荷重は、2 枚の外板を機械的に留めている 3 列の皿リベットが受け持つ。接着構造のおかげで外板を単板にできたため、 皿リベットの頭を沈める皿もみは外側の 0.036 インチの板を厚さ全体にわたって貫通し、穴の底にナイフエッジができて応力を集中させた。その応力は与圧のたびに繰り返され、最終的にそこで疲労き裂が生じた。

ナイフエッジがどうできるかは、仮の寸法で考えるとわかります。皿リベットの頭は円すいなので、平らに沈めるには板に同じ深さの円すい穴をあけます。報告書にある 0.036 インチの外板を例に、仮に深さ 0.04 インチの皿もみをあけるとします(この深さは仮定の値で、報告書にあるリベットの寸法ではありません)。 円すい面は板の裏面まで切り抜け、穴の壁には円筒部が残らず、円すい面と裏面が交わって鋭い縁が一周できます。板が十分厚ければ皿もみの下にまっすぐな穴壁が残って支圧を受けられますが、板が薄すぎるとその鋭い縁しか残りません。 この幾何学的な結果は、当サイトの板が薄すぎると、ねじ山を保持できなくなりますで規格をもとに取り上げました。ここで加わるのは、事故で得られた実証です。

き裂がどの列に出たかについても、報告書は理由を書いています。円筒形の胴体では周方向の応力が長手方向の応力の 2 倍なので、き裂は胴体の長手方向、つまり周方向の荷重に直角な向きに進みます。外側の外板は継手の上列の穴で最も大きな応力を受け、しかもすべての穴にナイフエッジがあるため、き裂は主に外側外板の上列に出ます。 内側の外板で応力が最も大きいのは下列の穴ですが、内側の板の穴は皿もみされていないため、そこからはき裂が出にくいとされています。

では、板がどれだけ厚ければよいのか。少なくともこの継手については、ボーイングの 1974 年のサービス・ブレティン第 2 次改訂が一つの線を示しています。ブレティンによると、試験室の試験では、最も薄い 0.036 インチの外板で継手に広いはく離があると理論疲労寿命が下がり、 その原因は「締結部品の頭の皿もみの底にある鋭い縁」にある。厚い外板では、同じように広くはく離していても、皿もみの底の縁がそれほど鋭くないため疲労強度が高い。外側の外板が 0.056 インチ以上の継手は、完全にはく離した状態でも疲労寿命は満足できる。すぐ次の文は、それでもこれらの継手は腐食による損傷を受けると注意しています。 そのためこの版のブレティンでは、年 1 回の外部からの近接目視による疲労検査が、外側の外板が 0.056 インチ未満の継手を対象に、客室与圧 30,000 サイクルから始まることになっていました。指定の方法で再リベット留めした継手には、別の扱いが定められています。 言い換えると、この種の継手では、外側の外板が 0.036 インチか 0.056 インチか(差は約 0.5 mm、約 1.56 倍。当サイトの換算)で、ボーイングの疲労寿命の判断が変わります。これは板厚による疲労の判断であり、ある継手を厚くすれば十分だと言えるものではなく、皿頭締結部品一般の厚さの基準でもありません。

寿命 2 倍の疲労試験でき裂が出なかったのは、接着が良好だったためかもしれない

これだけの弱点があったのに、型式証明の疲労試験はなぜ捉えなかったのでしょうか。報告書 1.17.2 節によると、737 では機体全体の疲労試験は行われず、胴体の上から下までの半分の区画(報告書では「かまぼこ兵舎」を意味する quonset hut と呼ばれています)を全差圧で 150,000 回繰り返し与圧しました。 これは経済設計寿命の目標 75,000 サイクルの 2 倍です。試験区画には疲労き裂もはく離も出ませんでした。報告書は続けて、疲労評価でははく離の可能性も、腐食が重ね継手の強度に及ぼす影響も考慮されなかったと書いています。

NTSB の分析は、試験で疲労き裂が出なかったのは、試験体の重ね継手とティアストラップの接着がはじめから良好だったためである可能性が高いとしています。所見 10 はもっと直接的で、試験条件は就航中の継手のはく離、腐食、疲労き裂の長期的な影響を考慮していなかったため、実際の機体の疲労性能を反映していなかったとしています。 試験室で成り立つ寿命は、試験体の状態に対してだけ成り立ちます。試験条件が結果の意味をどう決めるかについては、当サイトの「疲労限度」は試験の取り決めであって、約束ではありませんもご覧ください。

報告書にはもう一つの対照も記録されています。1986 年、ボーイングはライン番号 90、実飛行約 59,000 サイクルの 737 を購入しました。点検では重ね継手とティアストラップの接着は良好で、そこに 70,000 回以上の試験サイクルを加えています。 報告書の記録では 79,000 サイクルで初めて外板き裂 7 本が見つかり、89,000 サイクルでは 20 インチの区画に約 15 本、100,000 サイクルでつながって約 32 インチになり、100,673 サイクルで 40 インチ近くに達したところで外板がめくれて制御された減圧が起きました。 試験の途中、ボーイングは 89,000 サイクル以降に BS 760 と BS 820 へ追加のストラップを付けました。報告書によれば、ボーイングは試験体を守るためで疲労試験の結果は変わらないと説明しています。そのためここでは報告書に記録された挙動を対照するだけで、2 機を同じ条件とは見なしません。 この試験機では、き裂は最後に設計どおりめくれました。243 便ではそうなりませんでした。違いを見るには、ティアストラップとあの 1 列の穴に戻る必要があります。

穴が 1 列まとめて割れると、フェイルセーフは働かない

737 の胴体のフェイルセーフ設計は、き裂が 10 インチごとのティアストラップに当たると向きを変え、外板がフラップのようにめくれて圧力を制御された形で逃がすというものです。メーカーの基準は、胴体が 40 インチ(約 1 m)のき裂に耐えて破局的な破壊を起こさないことでした。 報告書は、この基準では長期間の使用で生じうる隣り合うき裂の連結は考慮されておらず、当時の「通常の」疲労評価しか行われていなかったと書いています。

NTSB はこの状態を多発損傷(multiple site damage、MSD)と呼んでいます。リベット列に沿って生じる多数の疲労き裂のことです。最悪の場合は、列全体の締結部品の穴の両側に目視では見えない小さなき裂があり、どれか一つが目に見える前に胴体が破局的に壊れることがありえます。 ティアストラップもはく離していれば補剛の働きを失い、き裂はティアストラップがないかのように進みます。報告書の結論は、S-10L の継手には、設計が意図した制御減圧を無効にするだけの疲労き裂かティアストラップのはく離(あるいはその両方)がすでにあり、多数の小さなき裂がすばやくつながったというものです。

小さなき裂がなぜ 1 本につながるのかは、仮の数字で見るとはっきりします。仮に穴の間隔 1 インチ、穴径 0.16 インチで、各穴の両側に 0.1 インチずつき裂があるとします(いずれも仮定の値で、報告書は穴の間隔を示していません)。 穴と穴の間に本来 0.84 インチあった材料は 0.64 インチしか残りません。列全体の穴がこうなっていれば、弱くなるのは 1 か所ではなく、列全体の残り断面がいっせいに小さくなります。付録 J に収められた FAA の 1986 年の報告書は、MSD を、隣り合う締結部品の穴のき裂が正味断面の降伏を引き起こすか、フェイルセーフ能力を損なうほどに多い状態と定義し、 約 0.2 インチの小さなき裂は運航中の機体で見つけるのが難しい場合があると指摘しています。

外側から見下ろした重ね継手の模式図:面一の丸いリベット頭が 3 列並び、いちばん上の列ではどの頭の左右にも赤い細いき裂が列の方向に短く伸びている。向かい合うき裂の間にはまだ割れていない金属が残っている。下の直線は外側の板の縁。
多発損傷の模式図:継手上列(いちばん上の列)のどのリベット頭の両側にも、列の方向に短いき裂が伸びているが、まだつながっていない。中央列と下列にはき裂を描いていない(NTSB 報告書の図 6a と 2.3 節の記述をもとにした模式図で、実物の縮尺ではありません)。

事故機に残った証拠は、まさにこの姿でした。NTSB の材料試験所が切り出した S-4L の 2 つの試料にはそれぞれ継手の長手方向に 18 組のリベット位置(各組が上・中・下の 3 列にまたがる)があり、上列のほぼすべての穴の隣の外板に疲労き裂がありました。長いものは 2 本のティアストラップの間の中央部に集まっていました。 S-4L の BS 519 から 536 では上列の連続する 16 個の穴に疲労き裂があり、片側の最長は皿もみのナイフエッジから測って 0.18 インチ(約 4.6 mm)、穴をまたいだき裂の端から端までが最長 0.53 インチ(約 13.5 mm、中央のリベット穴を含む値)でした。 右主翼に食い込んでいた S-4R の破片には 0.27 インチ(約 6.9 mm)のき裂があり、機体全体で最も長いものの一つでした。この区間のコールドボンド継手は全体がはく離していました。ボーイングが比較的大きな 7 本のき裂(S-4R の 5 本と S-10L の 2 本)のストライエーション(疲労縞)を数えたところ、0.105〜0.161 インチのき裂は 23,628〜37,148 サイクル(±20%)かけて成長したと推定されました。

これほど小さいき裂は、検査そのものにも限界があります。事故後の現場の渦電流検査が確実に見つけられたのは 0.08 インチ(約 2.0 mm)を超えるき裂だけでしたが、ボーイングの非破壊検査マニュアルには、皿頭締結部品の頭の下にある 0.040 インチ以上のき裂を見つけられると書かれていました。 NTSB はストライエーションから、1987 年 11 月に耐空性改善命令に基づく検査をした時点で、S-4R の大きい 5 本のき裂は約 0.09〜0.13 インチあり、渦電流で検出できる範囲に入っていたはずだと推定しています。 事故後、FAA は検査と報告を求め、18 社から 49 件の発見が報告されました。そのうち 14 機では多発き裂(6 個以上の隣り合う締結部品から出るき裂)が見つかっています。

恒久対策:上列の皿リベットを突出頭リベットに替える

き裂が見つかったあとどう直すか。この報告書で締結部品の選び方に最も近いのがこの部分です。ボーイングの 1987 年 8 月 20 日付のアラート・サービス・ブレティン 737-53A1039 第 3 次改訂の修理指示は、き裂を補修したうえで、 「上列に残る皿頭の継手締結部品をすべてオーバーサイズの突出頭ソリッド締結部品に替える」(replace all remaining upper row flush joint-fasteners with oversized protruding head solid fasteners)というものでした。 その後 FAA が出した耐空性改善命令 AD 87-21-08(1987 年 11 月 2 日発効)は、ブレティンの継手検査の範囲に比べ、ライン番号 1 から 291 で義務づける検査位置を S-4 左右 2 本の継手に絞りました。期限は累積 30,000 回の着陸までか、発効後 250 回の着陸以内のどちらか遅いほうで、き裂が見つかれば渦電流検査とブレティンに沿った修理も求めていました。

アロハ航空は構造修理マニュアルに従って S-4R の 2 か所のき裂を補修しましたが、同じ列に残る皿リベットは替えませんでした。所見 19 は、その原因を耐空性改善命令の指示が明確さを欠いていたことにしています。 NTSB の分析は、既存のリベットをドリルで抜いて突出頭リベットに替える恒久対策は、繰り返しの検査と当て板補修より優れているとしています。検査そのものに消しきれない人的な誤りがあるからです。報告書は、FAA が突出頭リベットを義務的な解決策としたことに NTSB は全面的に同意すると書いています。 報告書 1.17.9 節によると、継手上列のリベット交換を義務づけた AD 89-09-03 は 1989 年 5 月 8 日に発効しました。

この恒久対策は頭の形を替えるだけではありません。報告書に収められたブレティンによると、修理にはき裂の補修、指定の方法による検査と穴の拡大、ティアストラップの機能の確保も含まれ、交換する「上列に残る締結部品」はき裂の出た外板の継手に限られます。 以下は当サイトの推論で、報告書に文字どおり書かれてはいません。突出頭の締結部品は頭が板の表面に座るので、新しくあける穴に皿もみは要りません。ただし既存の皿穴でナイフエッジやき裂が取り除けるかどうかは、指定された拡大と修理の形状によるもので、このページは修理全体の効果を頭の形だけで説明しません。 ただし NTSB は、上列を替えれば問題が終わるとは限らないとも注意しています。S-4R の試料では中央の列の多くの穴にも疲労き裂があり、NTSB は内側外板の下列の穴が次のき裂発生位置になることを懸念しました。そこは外側の外板に覆われて外からは見えないため、突出頭の締結部品に替えた機体について、内外の外板の中央列と下列の穴、および隣接するティアストラップの締結部品の穴を対象に、検査の方法、間隔、是正措置を定めた継続検査を設けるよう FAA に勧告しています(A-89-58)。

NTSB の推定原因と、一人の委員の異なる意見

NTSB が認定した推定原因(probable cause)は、アロハ航空の整備プログラムが重大なはく離と疲労損傷を検出できず、それが最終的に S-10L の重ね継手の破壊と胴体上部の分離につながったことです。 寄与要因は四つです。アロハ航空の経営陣が整備要員を適切に監督しなかったこと。FAA がアロハ航空の整備プログラムを適切に評価せず、検査と品質管理の欠陥も評価しなかったこと。FAA が AD 87-21-08 で、ボーイングのアラート・サービス・ブレティンが提案したすべての重ね継手の検査を求めなかったこと。 そして、初期のコールドボンド継手の生産上の問題が低い接着耐久性、腐食、早期の疲労き裂を招いたことが判明したあとも、ボーイングが完全な恒久対策を示さず、FAA も求めなかったことです。

委員の Joseph T. Nall は、一部賛成・一部反対の意見を付けました。業界で最も優れた技術者たちがこの航空会社の記録を見て、高サイクル運用を知り、737 の何機かを検査までしていたのに、 ボーイングも、アロハ航空も、FAA の主任整備監督官も、誰一人として多発き裂の重大さに気づかず予測もしなかった、と彼は書いています。機体を設計し、検査し、整備した人たちが、当時の知識でこの事故が起きようとしていることを合理的に予見できたか、と彼は問い、できなかったと思うと答えています。 彼は多数意見の推定原因は狭すぎるとし、「失敗」があったとすればそれはシステムの失敗だとして、推定原因は「検出されなかったはく離と疲労き裂」とし、各組織の仕組みや判断は寄与要因とするほうがよいとしました。

二つの版が争っているのは、「整備プログラムが損傷を検出できなかったこと」と「検出されなかったはく離と疲労き裂そのもの」のどちらを推定原因と書くかです。物理的なメカニズムについては両者に食い違いはありません。はく離と疲労き裂が S-10L の継手を壊した、という点です。

締結部品の側から持ち帰れる四つのこと

以下は当サイトの読み方であり、報告書が締結部品の使い手に向けて書いた勧告ではありません。報告書の正式な安全勧告の宛先は、FAA、アロハ航空、航空運送協会です。

  1. まず、この継手の荷重が設計上どの経路を通るかを確かめる。この重ね継手は接着が荷重を伝える前提で、リベットははく離した「あと」に主な荷重経路になりました。その「あと」の就航中の状態は、当初の型式証明の疲労評価では十分に扱われていませんでした。継手が接着や摩擦など別の要素で主な荷重を受けるなら、その前提が崩れたときに締結部品と穴が耐えられるかを、別に問う必要があります。継手の形が変われば荷重の受け方も変わることは、締まっていないボルトは、別の継手であるで摩擦接合と支圧接合の違いとして取り上げました。
  2. 皿頭の締結部品を皿もみより薄い板に使うと、穴の疲労の振る舞いが変わる。この継手について、ボーイングは外側外板 0.056 インチに線を引きました。それはこの継手についてのブレティンの疲労の判断で、ほかの場所に持ち出せる数字ではありません。皿もみの角度や深さを何で測り、何が測れないかは、皿もみの角度は、実は測れていませんをご覧ください。
  3. 1 つの穴が割れたなら、同じ列のほかの穴も同じサイクルを経験している。アラート・サービス・ブレティンが交換を求めたのは、き裂の出た外板の継手で上列に「残る」皿頭締結部品すべてで、割れた数本だけではありませんでした。見えるき裂だけを直せば、見えない隣の穴はそのまま残ります。これは当サイトがこの事例から引き出した一般的な注意であり、報告書がほかの継手について判断したものではありません。
  4. 頭の形は変えられる設計パラメーターである。この事例の恒久対策には、皿リベットをオーバーサイズの突出頭ソリッド締結部品に替えること(ほかにき裂の補修とティアストラップの修復)が含まれ、その代わりに外表面は平らでなくなりました。平らな外観が求められ、しかも薄板しか使えない設計で、突出頭の締結部品に替えるか局部的に板を厚くするかは、設計を担当する技術者が自分の荷重条件で判断することです。

このページで言えないこと

このページは、事故箇所にもともと付いていた皿リベットの完全な型式、頭部角度、頭の高さ、皿もみの深さ、穴の中心間隔を報告書から確定していません。付録 C には修理用の締結部品の型式と加工の資料がありますが、それは元の部品の実測寸法ではないので、混同しません。応力集中係数や強度の計算もしていません。「深さ 0.04 インチの皿もみ」と「穴の中心間隔 1 インチ、穴径 0.16 インチ、両側 0.1 インチのき裂」は、メカニズムを説明するための仮定の値です。 0.056 インチの線は、ボーイングの 1974 年のサービス・ブレティンがこの種の 737 の継手について示した疲労の判断で、このページは試験そのもののデータを読んでおらず、ほかの継手には広げません。突出頭の締結部品とナイフエッジの関係は当サイトの推論です。 報告書はスキャン画像のため、当サイトは光学文字認識で全文を読み、引用した数字はスキャンされた原ページに従っています(報告書の印刷ページで 14、16、18、20、30、31、32、35、45、46、50、71、73、89、90 ページ。PDF のページ番号はおおむね印刷ページに 6 を足した値)。インチ、フィートとメートル法の換算は当サイトの計算です。 報告書は整備プログラム、当局の監督、検査員の人的要因、エンジン操縦ケーブルの腐食、緊急対応についても詳しく述べていますが、この記事の締結部の分析の範囲外です。このページは報告書の安全上の分析を紹介するもので、個人の過失や法的責任を独自に判断するものではありません。 ライン番号 292 以降と現行の 737 の重ね継手については、報告書に書かれた内容だけを記しています。

この記事は六つの手順のどれか一つには収まりません。手順をまたいで出てくるか、組み付けたあとに出てくる話です。ここに行き着く判断がどこで下されているかはねじの決め方にまとめてあります。

よくある質問

アロハ航空 243 便の胴体はなぜはがれたのですか?

NTSB の報告書は、破壊が左側 S-10L の胴体重ね継手から始まったと認定しています。継手上列のリベット穴に隣接する外板に多数の疲労き裂があり、ティアストラップもはく離していたため、多数の小さなき裂がすばやくつながり、本来は制御されためくれで圧力を逃がすはずだった胴体がフェイルセーフ特性を失いました。その結果、客室上部の約 18 フィートが高度 24,000 フィートで失われました。報告書が推定原因としたのは、整備プログラムが重大なはく離と疲労損傷を検出できなかったことです。

皿リベットの「ナイフエッジ」とは何で、なぜそこからき裂が始まるのですか?

皿リベットの頭は円すいなので、平らに沈めるには板に同じ深さの円すい穴をあけます。737 初期型の継手の外側外板は 0.036 インチしかなく、報告書が引くボーイングの技術者の説明では、皿もみが板の厚さ全体を貫通し、穴の底に鋭い縁(ナイフエッジ)ができて応力を集中させました。接着がはがれて周方向荷重がリベットを通るようになると、この縁の応力が与圧のたびに繰り返され、そこから疲労き裂が生じました。

同じ型の飛行機なのに、なぜすべての機体で問題にならなかったのですか?

報告書によると、コールドボンドが使われたのは生産ライン番号 1 から 291 だけで、しかも初期の接着の品質はランダムで、よく接着したものもあれば、まったく接着していない部分もありました。ボーイングの 1974 年のサービス・ブレティンは、疲労き裂の危険は広いはく離のある部分にだけあり、外側外板が 0.056 インチ以上の継手は完全にはく離しても疲労寿命は満足できると書いています。これはこのブレティンの記述で、疲労き裂一般を除外する条件ではなく、ブレティンはこれらの継手も腐食による損傷を受けると注意しています。報告書はまた、アロハ航空の機体が厳しい腐食環境で運航され、ほかの運航者より速くサイクルを積み上げていたことも指摘しています。

その後、どう直されたのですか?

ボーイングのアラート・サービス・ブレティンの修理指示は、き裂を補修し、き裂の出た外板の継手で上列に残る皿頭締結部品をすべてオーバーサイズの突出頭ソリッド締結部品に替え、ティアストラップの機能を回復させるというものでした。FAA の AD 89-09-03 は 1989 年 5 月 8 日に発効し、継手上列のリベット交換を義務づけました。NTSB は突出頭リベットによる恒久対策に全面的に同意したうえで、中央列と下列、隣接するティアストラップの締結部品の穴の継続検査も勧告しています。内側外板の下列のき裂は外側の外板に覆われ、外からは見えないためです。

参考資料

事故の経過と数字は、NTSB 報告書の要約、1.3.2、1.6.1、1.6.2、1.16.2、1.16.3、1.17.2、1.17.3、1.17.9、2.2、2.3、2.4.1、2.5.1 節、所見 7〜10 と 19、推定原因、勧告 A-89-58、Nall 委員の意見書によります。0.056 インチの線と 30 機の劣化報告は、報告書の付録 C に収められたボーイングのサービス・ブレティン 737-53-1039 第 2 次改訂(1974 年 2 月 8 日)によります。MSD の正味断面による定義は、付録 J に収められた FAA の 1986 年の報告書によります。報告書はスキャン画像のため、当サイトは光学文字認識で全文を読み、ページ番号と数字はスキャンされた原ページに従っています。インチ、フィートとメートル法の換算、倍率は当サイトの計算です。皿もみの深さと穴の間隔の例は仮定の値です。突出頭の締結部品とナイフエッジの関係は当サイトの推論です。「締結部品の側から持ち帰れる四つのこと」は当サイトの読み方で、報告書の勧告ではありません。

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皿頭の小ねじを薄板に締結する設計については、お見積りの際に板厚、必要な頭部角度と頭部寸法、その継手が主に何で荷重を伝えるかをお知らせください。その条件に合わせて選べる頭の形をご案内します。繰り返し荷重のもとで継手が使えるかどうかは、設計を担当する技術者の判断が必要です。

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