3/8 インチのラグスクリューの横方向基準設計値が 201 ポンドから 403 ポンドまで変わる:一面せん断の木材接合部の値は六つの降伏モードの最小値で、すべて谷径で計算するか、すべて円筒部の径で計算するかで 2 倍の差になる
ラグスクリュー(lag screw)の仕様だけで、木材の中での横方向の値がわかるでしょうか。米国の木構造設計基準 NDS の計算では、わかりません。ファスナー 1 本あたりの横方向基準設計値 Z は、該当する降伏モードそれぞれの P/Rd の最小値で、二つの部材の支圧強さ、支圧長さ、すき間が式に入っており、ファスナーが渡すのは各位置の径と曲げ降伏強さ Fyb だけです。米国木材協議会(AWC)の Technical Report 12(TR12)には、3/8 インチのラグスクリューで、木材の条件を同じにしたまま(木材どうしの一面せん断、主材も側材も繊維に平行)、支圧とモーメントに円筒部の径と谷径のどちらを使うかを変えるだけで、Z が 201 ポンドから 403 ポンドになる例題があります。すべて谷径なら 201 ポンド、すべて円筒部の径で円筒部が主材に十分入るなら 403 ポンド。支圧はどちらも円筒部の径で、せん断面がねじ部を切る場合と円筒部を切る場合(円筒部は主材に十分入っている)を比べると 239 対 403 ポンドです。この記事では、この値がどう計算され、ねじが式のどこに入っているかを扱います。六つの降伏モード、ファスナーが渡す三つの入力、例 3.2 の四つの計算と当サイトの再計算(原表で 1 マス合わない値も含む)、Fyb が効かない場合、Fyb の出どころ、最後にこの報告書からはわからないことの順に見ていきます。読了まで約 8 分です。
六つの降伏モードの、いちばん小さいもの
TR12 の表紙には ANSI/AWC NDS-2012 とあり、著作権表示は 2015 年です。NDS 2012 年版の降伏限界式を一般形で書き、導出と例題を付けた報告書です。2.1 節が前提を説明しています。ヨーロッパ降伏モデル(European Yield Model、Soltis 1991)にもとづき、接合部の強さは二つのどちらかが起きたときに達したとみなします。ファスナーの下の部材の支圧が超えられたとき、またはファスナーに一つ以上の塑性ヒンジ(plastic hinge)ができたときです。
降伏モードはそれぞれ、ファスナーの受け方の一つの形に対応します。1.3 節は Z を、該当する全モードの P/Rd の最小値と定義しています。P は基準 5% オフセット降伏値、Rd は NDS Table 11.3.1B の低減項です。下の表の「側材」は、この記事のラグスクリューの一面せん断の例ではねじ頭がある材、「主材」はねじが深く入るほうの材で、厚さで決まるものではありません。
| モード | 何で決まるか | ファスナーの形(Figure 2-1 の一面せん断の模式) |
|---|---|---|
| Im | 主材の一様な支圧 | 塑性ヒンジなし、まっすぐ |
| Is | 側材の一様な支圧 | 塑性ヒンジなし、まっすぐ |
| II | 側材と主材の両方の支圧。ファスナーにモーメントは生じるが降伏しない | 塑性ヒンジなし、全体が回転するものとして理想化 |
| IIIm | 主材の支圧と、側材内でのファスナーの曲げ | 塑性ヒンジ 1 つ |
| IIIs | 側材の支圧と、主材内でのファスナーの曲げ | 塑性ヒンジ 1 つ |
| IV | 両方の部材内でのファスナーの曲げ | 塑性ヒンジ 2 つ |
式の材料は二つだけです。支圧抵抗 q=Fe·D は、部材のダボ支圧強さ(dowel bearing strength)に径を掛けたもので、単位は 1 インチあたりのポンドです。ファスナーのモーメント抵抗は Md=Fyb·D³/6 です。一面せん断では、Mode Im と Is は q に支圧長さを掛けるだけで(二面せん断の Is は 2qs·Ls)、II から IV は二次式の正の根です。係数 A、B、C の組み合わせがモードごとに変わり、各モードの支配機構に応じて支圧による最大モーメントか Md を入れ、すき間 g は B に入ります。TR12 が対称と仮定する二面せん断の接合部では、II と IIIm は該当しません。
報告書は、この式に入っていないものも書いています。2.1.1 節によれば、ファスナー端部の固定(ナットと座金の下の抵抗など)、横荷重を受けたファスナーに生じる引張力、部材間の摩擦は、どれも「保守的に無視」されます。摩擦は木材の収縮や接合部のゆるみで、そもそも存在しないこともあります。2.1.2 節は、予測されるモードが試験の観察と一致するのは、端あき、縁あき、断面、ファスナー寸法が割裂、木材のせん断栓(shear plug)、ファスナーの破壊、引抜けといった早期の破壊を防ぐのに十分な場合で、これらの限界状態は降伏式に入っていないとしています。
ファスナーが渡す三つの入力
六つのモードの中で、ファスナーが出てくるのは二か所です。q の中の径と、Md の中の径と Fyb です。当サイトはこれを三つの入力にまとめます。支圧位置の径、曲げ位置の径、曲げ降伏強さです。ねじ付きのファスナーでは、最初の二つが同じとは限りません。
2.2.2 節がこの点を扱っています。部材の中で径が一定でない場合、最小の径が最大モーメントの位置にあると仮定するのは保守的です。ファスナーの長さに沿って、各位置のモーメントと断面性能から計算してもかまいません。TR12 の記号表には Dr(fastener root diameter、谷径)もあり、例 3.2 の表の注は、NDS の式は一つの径しか使わないので、表の値は保守的に最小の径、たとえば Dr を使ってモーメントと支圧の抵抗を見積もっていると書いています。
言い換えると、NDS の表にあるラグスクリューの横方向の値は、支圧とモーメントの抵抗をどちらも谷径で見積もるという計算上の仮定にもとづいています。円筒部のあるねじでは、その位置と長さで、せん断面と最大モーメントの位置にどちらの径が来るかが決まります。木材側の Fe は、繊維方向と径の範囲で式が変わります。付録 Table A1 では、径 ¼ インチ以上の木材部材について、繊維に平行で Fe=11200G、繊維に直角で Fe=6100G1.45/D0.5(Fe は psi、D はインチ、G は全乾比重)で、後者は径を含みます。木質パネルと構造用複合材には別の規定があります。
同じ条件での四つの計算
例 3.2 は Fyb と木材の条件を固定し、支圧とモーメントに使う径を変えたときの影響を比べています。条件は木材どうしの一面せん断で、側材の支圧長さ Ls=1.5 インチ、主材の支圧長さ Lm=3 インチ、主材は繊維に平行に荷重を受けます。Fe∥=5600 psi、Fe⊥=3650 psi、Fyb=45,000 psi、D=0.375 インチ(3/8 インチ、約 9.53 mm)、Dr=0.265 インチ(約 6.73 mm)、すき間 0 です。報告書の Figure 3-2 は Case 1、2 を胴部を細くした(reduced body)ラグスクリュー、Case 3、4 を全径の胴部(full body)のラグスクリューとして描き、せん断面がねじ部を切るか円筒部を切るかを区別しています。
| 計算 | モーメントに使う径 | 支圧に使う径 | 側材が繊維に平行 | 側材が繊維に直角 |
|---|---|---|---|---|
| Case 1(NDS の表の値の基準) | Dr | 両方 Dr | 201 | 143 |
| Case 2 | Dr | 側材 Dr、主材 D | 218 | 152 |
| Case 3(せん断面がねじ部を切る) | Dr | 両方 D | 239 | 170 |
| Case 4(円筒部が主材に深く入る) | D | 両方 D | 403 | 249† |
† 原表のこのマスの Z 欄には 286 ポンドと印刷されていますが、これは同じ行の Mode IV の値です。同じ行の Mode IIIs は 249 ポンドで、原表は 249 の下に支配モードを示す下線を引いています。1.3 節の「最小値をとる」という定義にしたがえば、このマスの Z は 249 ポンド(IIIs で決まる)になるはずで、この記事ではそう記し、原表の 286 も対照のために残しています。
繊維に平行の列は、Case 1 から Case 4 で 201 ポンドから 403 ポンド(当サイトの換算で約 894 N から 1,793 N)、約 2.0 倍です。直角の列は 143 から 249 ポンドで、約 1.74 倍です。せん断面がねじ部を切るか円筒部を切るかだけ、つまり Case 3 から Case 4(支圧の径は変えず、モーメントを谷径から円筒部の径に替え、Case 4 では円筒部が主材に十分入っている)を見ると、平行で 239 から 403 ポンド、約 1.69 倍。直角では 170 から 249 ポンドで、決まるモードも IV から IIIs に替わります。
Case 3 から Case 4 でモーメント抵抗は 2.83 倍なのに、繊維に平行の Z が 1.69 倍にしかならないのはなぜでしょうか。モーメント抵抗は径の 3 乗に比例し、(0.375/0.265)³=2.83 で、例 3.3 の二つの値 395.5 と 139.6 in-lb もこの比です。すき間が 0 のとき、Mode IV の二次式では B=0 となり、qs と qm が同じなら、P は二つのモーメント抵抗の和の平方根に比例します。√2.83≈1.68 で、239 から 403 への 1.69 倍と一致します(当サイトの検算)。この条件では、モーメント抵抗の増加は平方根を通ってから Z に届きます。
当サイトは Table 1-1 の一面せん断の式で、原表の 48 のモード値(4 通りの計算×2 通りの繊維方向×6 モード)と、例 3.1 の 54 のモード値を再計算し、通常の四捨五入ですべて一致しました。例 3.2 では Is の 2 マスが計算値 556.5 で表は 557、例 3.1 ではいくつかのマスが 382.5 で表は 383 です。再計算に使った Rd の除数は、Im と Is が 4、II が 3.6、IIIm、IIIs、IV が 3.2 で、どちらかの部材が繊維に直角に荷重を受けるときは Rd にさらに 1.25 を掛けています。この除数の組は、例題を再現するために当サイトが表の数字から逆算したものです。TR12 自体は Rd の出どころを NDS Table 11.3.1B とし、例 3.3 で 3.2 を使っているだけで、この記事では NDS のその表を読んでいません。再計算が一致したのはモード値が再現できるという意味で、先ほどの Z 欄の食い違いは残ります。
Case 4 には条件があります。例 3.3 は繊維に平行の 403 ポンドを例に、主材内のモーメントを D で計算できるために、円筒部が主材にどれだけ入っている必要があるかを求めています。P=403×3.2=1289.6 ポンド、qm=5600×0.375=2100 lb/in で、最大モーメントの位置はせん断面から 0.61 インチ、円筒部は少なくとも 1.12 インチ(当サイトの換算で約 28.4 mm)入る必要があります。この数字はこの条件だけのものです。報告書の注は、円筒部が足りないときは主材のモーメントを Dr で計算すべきだとしています。
Fyb がまったく効かないこともある
例 3.2 を見ると、「ファスナーが強いほど Z は上がる」と考えがちです。例 3.1 はその反例です。½ インチのボルト(SAE J429 Grade 1)で、側材も主材も支圧長さ 1.5 インチ、Fyb=45,000 psi、Fe∥=4800、Fe⊥=2550 psi。繊維方向の組み合わせ 3 通り、すき間 3 通りの九つの Z が、すべて Mode II で決まっています。
| 主材/側材の繊維方向 | g=0 | g=¼ インチ | g=½ インチ |
|---|---|---|---|
| 平行/平行 | 414 | 370 | 333 |
| 平行/直角 | 250 | 224 | 202 |
| 直角/直角 | 176 | 157 | 142 |
Mode II の二次式には Md がなく、したがって Fyb もありません。ファスナーは曲げ降伏を起こさず全体が回転するものとして理想化されています。当サイトは仮の試算をしました。例 3.1 の平行/平行、すき間 0 の条件で、ほかの入力と Rd は変えずに Fyb だけを 2 倍の 90,000 psi にすると、IIIm と IIIs は 550 から 697 ポンドに、IV は 663 から 938 ポンドに上がりますが、Z は Mode II の 414 ポンドのままです。この径と支圧長さでは、Z を変えるのは部材の支圧強さとすき間で、平行/平行の列ではすき間が 0 から ½ インチになると Z は 414 から 333 ポンド、約 2 割下がります。
同じ仮定を例 3.2 の Case 1(側材が繊維に平行)に戻すと、結果は違います。この条件は Mode IV で決まっており、Fyb だけを 45,000 から 90,000 psi にすると Z は 201 から 284 ポンドに上がります。さらに 135,000 psi にすると Z は 312 ポンドになり、決まるモードは IIIs に替わります。ここでの Fyb は仮の値で、どの製品の値でもありません。同じ入力でも接合部によって重みが違い、決まるモードが入れ替わることを示すためのものです。
Fyb はどこから来るのか
Fyb は曲げ降伏強さを表し、引張の Fy、Fu とは別の量です。付録 Figure A2 には、3 点曲げを受ける釘の試験片と、荷重–変形曲線上の 5% 径オフセットの降伏点が描かれています。付録 A.4 によれば、釘と小径の木ねじ、ラグスクリューの Fyb は径が小さくなるほど大きくなり、鋼の硬さに左右されます。これらの経験式は、ASTM F1575(釘の曲げ降伏モーメントの試験方法)にしたがって炭素鋼の釘を試験した結果にもとづいています。
| 径 D(インチ) | NDS 基準値 Fyb(psi) |
|---|---|
| 0.099 ≤ D ≤ 0.142 | 100,000 |
| 0.142 < D ≤ 0.177 | 90,000 |
| 0.177 < D ≤ 0.236 | 80,000 |
| 0.236 < D ≤ 0.273 | 70,000 |
| 0.273 < D ≤ 0.344 | 60,000 |
| 0.344 < D ≤ 0.375 | 45,000 |
径 ⅜ インチ以上のボルトとラグスクリューは別の道をとります。Fyb=Fy/2+Fu/2、つまり引張降伏強さと引張強さの平均です。SAE J429 Grade 1(Fy 36 ksi、Fu 60 ksi)では式から 48,000 psi が出ますが、表の基準値は 45,000 psi です(当サイトの計算。TR12 は Table A2 の基準値を丸めた値とするだけで、丸め方は書いていません)。報告書はこの式が、鋼構造の設計基準が適用できる炭素鋼とステンレス鋼のファスナーに使えるとしています。Table A2 は ASTM A320 Class 1 Type B8、B8M のステンレス鋼について Fy と Fu を挙げ、NDS 基準値の欄は空欄です。
したがって、⅜ インチ以上のボルトでは Fyb を引張の性質から推定でき、小径の木ねじやラグスクリューでは、表の値は炭素鋼の釘の曲げ試験にもとづく経験式から来ています。TR12 は、いくつかの場合(0.344〜0.375 インチの釘、0.192 インチを超える硬化釘)には、式から出る Fyb が NDS の表の値の基礎に使われた数字よりわずかに大きいとも書いています。熱処理の違うねじの Fyb がこの表に収まるかどうかは TR12 は答えておらず、この記事でも推測しません。
先端の長さも入力を変えます。例 3.4 は、16 gage の ASTM A653 Grade 33 鋼板の側材(Ls=0.06 インチ、Fes=61,850 psi)と、径 0.131 インチ、Fyb=100,000 psi の釘を木材の主材(Fem=4700 psi、繊維に平行)に打ち込む例で、すき間 0、先端の長さは 2D です。NDS は支圧長さを L=p-E/2 と簡略化してよいとしています。12D、10D、8D 打ち込んだときは Z がどれも 97 ポンド(IIIs)、6D では詳しい導出で 79 ポンド、NDS の簡略化で 78 ポンド(Mode II)です。TR12 には中空断面の部材の式(Table 1-2、1-3)もありますが、この記事では扱いません。
横方向の値を出す側にとって、何を意味するか
冒頭の問いに戻ります。以下は TR12 から当サイトが引き出した問いで、設計上の助言ではありません。接合部の設計値は、適用される基準にしたがって構造技術者が決めるものです。
- ねじより先に、接合部を聞く。二つの部材の材料(Fe を決める比重や強さ)、支圧長さ、繊維方向、すき間がすべて式に入ります。ねじのデータだけでは Z は出ません。
- ねじ部の長さは設計の入力です。例 3.2 では、すべて谷径とすべて円筒部の径で、繊維に平行の Z が約 2 倍違います。支圧はどちらも円筒部の径で、せん断面をねじ部から円筒部に替え、円筒部を十分入れた場合は約 1.69 倍です。円筒部を主材にどれだけ入れるかは例 3.3 に計算方法があります。図面のねじ部長さと円筒部長さは、径と同じようにはっきり書く必要があります。木ねじの下穴と谷径の関係は下穴の規則は樹種を名指しし、谷径から測るを参照してください。
- Fyb は出どころを確認する。曲げ試験の 5% オフセットの値か、Fy/2+Fu/2 で引張の性質から推定した値か。引張強さや硬さそのものは Fyb ではありません。
- まず、どのモードで決まっているかを見る。ほかの条件と Rd を変えずに Fyb だけを上げる場合、もともと Mode I や II で決まっている接合部の Z は上がりません。
木材とねじの経験的な引抜き式は二を木の平方根で割るを参照してください。あの記事は Wood Handbook を読んだもので、降伏モデルは読んでいないと明記しており、この記事はその部分を補うものです。鋼構造で「ねじ部がせん断面にあるかどうか」を扱う別の規則は長いねじのほうが、継手が強くなることがある理由にあります。
この報告書からはわからないこと
TR12 が対応しているのは NDS 2012 年版です。その後の NDS でこれらの式や Fyb の基準値が変わったかは、この記事では読んでおらず判断できません。Rd の表全体、使用条件の補正(荷重継続時間、湿潤使用、温度)、複数本のファスナーの群効果、間隔と端あき・縁あきについて、TR12 はどれも NDS を参照しており、この記事は NDS 本文も読んでいません。例題の Z はどれも使用条件で補正していない基準値です。 例 3.2 の 286 と 249 の食い違いについて報告書は説明していません。同じ行のモード値、当サイトの再計算、最小値の定義からは Z は 249 ポンドになるはずで、この記事では原表の 286 も対照のために残し、誤植の原因は推測しません。ASTM F1575 と D5764 の試験の詳細は、TR12 の記述によっています。当サイトはどのねじの Fyb も横方向強さも試験していません。この記事では構造用ねじ製品の評価報告書を確認しておらず、これらの例題からどの製品の設計値も導けません。
この記事は手順 1、相手材を扱います。全体の順序は相手材、ねじ、頭部、駆動部、表面処理、書類で、これを崩すと微調整ではなく手直しになる理由はねじの決め方にあります。
よくある質問
ラグスクリューの仕様だけで、横方向の耐力がわかりますか。
NDS の計算では、ねじの寸法や材料の性質だけではわかりません。ファスナー 1 本あたりの横方向基準設計値 Z は、該当する降伏モードの P/Rd の最小値で、二つの部材の支圧強さ、支圧長さ、繊維方向、すき間が式に入ります。ファスナーが渡すのは径(円筒部と谷径)と曲げ降伏強さ Fyb です。ある資料に Z が載っている場合は、それが前提とする接合部の条件もあわせて確認してください。
谷径で計算するか円筒部の径で計算するかで、どれくらい違いますか。
TR12 例 3.2 の 3/8 インチのラグスクリュー(木材どうしの一面せん断、側材の支圧長さ Ls=1.5 インチ、主材の支圧長さ Lm=3 インチ、主材は繊維に平行に荷重を受ける)では、Case 1→4(すべて谷径→すべて円筒部の径、円筒部は主材に十分入る)を比べると、側材が繊維に平行で 201→403 ポンド、直角で 143→249 ポンドです(原表の Z 欄は 286 で、同じ行の支配値と食い違っています)。Case 3→4(支圧はどちらも円筒部の径、モーメントを谷径から円筒部の径に替える)では、それぞれ 239→403 と 170→249 ポンドです。例 3.3 では、繊維に平行のこの条件で円筒部は主材に少なくとも 1.12 インチ入る必要があると計算しています。
Fyb と引張強さは同じ数字ですか。
違います。Fyb は曲げ降伏強さです。⅜ インチ以上のボルトとラグスクリューでは、TR12 は Fy/2+Fu/2 で引張の性質から推定します。小径の釘、木ねじ、ラグスクリューでは、表の値は ASTM F1575 で炭素鋼の釘を試験して得た経験式から来ており、径が小さいほど大きくなります。
曲げ強さの高いボルトに替えれば、横方向の値は必ず上がりますか。
必ずではありません。TR12 例 3.1 の ½ インチボルトと 1.5 インチの部材 2 枚では、九つの組み合わせがすべて Mode II で決まり、このモードの式には Fyb がありません。当サイトの仮の試算で、平行/平行、すき間 0 の条件で Fyb だけを 2 倍にしても、Z は 414 ポンドのままでした。
参考資料
- American Wood Council —— Technical Report 12: General Dowel Equations for Calculating Lateral Connection Values, with Appendix A(NDS-2012 版、© 2015)
- 二を木の平方根で割る
- 下穴の規則は樹種を名指しし、谷径から測る
- 長いねじのほうが、継手が強くなることがある理由
- 斜めに入ったねじは、締付け力をほとんど失わない。そのかわり、継手を横へ押す
この記事は AWC Technical Report 12 の全文をもとに整理し、報告書の例題と当サイトの試算を分けて示しています。当サイトは報告書 Table 1-1 の式で例 3.1 と 3.2 のすべてのモード値を再計算しました。使った Rd の除数は例題を再現するために逆算したもので、NDS Table 11.3.1B は確認していません。例 3.2 の Case 4、側材が繊維に直角の行は、原表の Z 欄が 286 ポンドで、同じ行の IIIs の 249 ポンドに支配モードの下線があります。この記事では最小値の定義にしたがって 249 ポンドと記し、その旨を注記しました。Fyb を 2 倍にするなどの試算は仮の値で、どの製品も表しません。メートル換算は当サイトの計算です。この記事が引用する基準設計値と試算は、実際の製品や接合部の設計値としてそのまま使えるものではありません。
お問い合わせ
お問い合わせの際は、径、谷径またはねじの規格、ねじ部の長さと円筒部の長さ、材質と熱処理の要求、表面処理をお書きください。設計でファスナーの曲げ降伏強さ Fyb などの試験データが必要な場合は、必要な試験方法と報告の形式もあわせてお知らせください。接合部の横方向の設計値は、部材の材料、支圧長さ、すき間、適用される基準によって決まるため、構造設計者が確認してください。
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