せん断面がねじ部にかかると、ボルトのせん断強度は約 2 割下がる:RCSC 2020 は A325 の表の値を 68 ksi から 54 ksi に下げ、計 1,533 本のボルトを試験した研究で測られた平均の比は約 0.76 だった
2 枚の鋼板を 1 本のボルトでつなぎ、板を左右に引くと、ボルトは 2 枚の境目の面でせん断されます。多くの人が思い浮かべるのはボルトの強度区分と径ですが、設計規準はもう一つ問います。その面が切っているのは軸部か、ねじ部か。米国の鋼構造ボルト接合の仕様書 RCSC(2020 年版)は、同じ A325 に二つの数字を与えています(ボルト群の長さ 38 in. 以下)。軸部なら単位面積あたり 68 ksi、ねじ部なら 54 ksi で、約 2 割の差です。この記事では、この 2 割がどこから来て、いつ起き、それで十分に安全側なのかを見ます。表 5.1 の二つの数字の求め方、0.80 の根拠、ねじ部がせん断面にかかるかを決めるもの、2020 年版が短いボルトをすべてねじ部扱いにした理由、仮の継手での計算、そして 2010 年に計 1,533 本のボルトを試験した研究で測られた比です。読了まで約 10 分
同じボルトに、表 5.1 は二つのせん断値を与える
RCSC(Research Council on Structural Connections)の『Specification for Structural Joints Using High-Strength Bolts』2020 年 6 月版は、第 5.1 節でボルトの公称強度を Rn=Fn × Ab で求めます。 Ab は公称径による断面積、Fn は表 5.1 から読みます。設計強度は φRn(φ=0.75)、許容強度は Rn/Ω(Ω=2.00)です。表 5.1 はボルトを三つの強度グループに分けています。Group 120(ASTM F3125 の A325 と F1852)、Group 144(F3148)、Group 150(A490 と F2280)です。
| 表 5.1 の条件(せん断の行は Ls ≤ 38 in.) | Group 120(ksi) | Group 144(ksi) | Group 150(ksi) |
|---|---|---|---|
| 引張(静的) | 90 | 108 | 113 |
| せん断、ねじ部がせん断面にかかる(N) | 54 | 65 | 68 |
| せん断、ねじ部をせん断面から除外(X) | 68 | 81 | 84 |
メートル系にすると、A325 の 54 ksi は約 372 MPa、68 ksi は約 469 MPa です(当サイトの換算)。54 を 68 で割ると 0.794 で、同じボルト、同じ径でも、せん断面が切る位置が違うだけで公称せん断強度は約 2 割下がります。 Group 150 の列はもっと端的で、A490 のねじ部せん断は 68 ksi、ちょうど A325 の軸部せん断と同じ値です。 Ls は荷重方向に測った、継手片側の最も外側の二つのボルト孔の中心間距離です。Ls が 38 in.(約 965 mm)を超えると、Group 120 の N と X はそれぞれ 45 と 56 ksi に下がります。表の注 b によると、この低減は梁フランジの添板のような軸方向に端部載荷される継手だけに適用し、ウェブのせん断接合には適用しません。長い継手でなぜ低減するかは一列のボルトは荷重を等しく分担しませんで扱ったので、ここでは N と X だけを見ます。
二つの数字は同じ出発点から計算されている
表の数字はそれぞれ別に測ったものではありません。第 5.1 節の解説は、単体の高力ボルトの公称せん断強度をそのボルトの引張強さの 0.625 倍とし(Kulak ら、1987)、 38 in. 以下の継手ではさらに 0.90 を掛けると書いています。各ボルトが同じ力を受けるといった構造解析の一般的な単純化から来る二次的な影響を見込むためです。 A325 の最小引張強さは 120 ksi なので、0.625 × 0.90 × 120=67.5、丸めて表の 68 になります。
ねじ部の行にはさらに 0.80 を掛けます。解説によると、ねじ部がせん断面にかかる場合と除外した場合のせん断強度の比は平均 0.83、標準偏差 0.03(Frank と Yura、1981)で、仕様書は安全側に 0.80 を採り、計算には引き続き公称径の断面積を使います。ねじ部の断面積ではありません。67.5 × 0.80=54 です。Group 144 と 150 も同じ手順で 64.8(65)と 67.5(68)になります(当サイトの換算)。
混同しやすい点があります。引張の行は別の考え方です。解説によると、一般的な構造用ボルトの引張応力面積は公称断面積の約 75% なので、表の引張値は材料の引張強さの 0.75 倍(120 × 0.75=90)とし、やはり公称断面積に掛けます。 言い換えると、引張は「ねじ部は細い」ことを 0.75 に直接織り込み、せん断は二つの場合に分けて、軸部で切れるなら全断面、ねじ部で切れるときだけ 0.80 を掛けます。二つの係数は出どころが違い、0.75 は断面積の比、0.80 はせん断破断試験の比です。せん断と引張のどちらがより安全側かを、この二つで直接比べることはできません。
ねじ部がせん断面にかかるかは、ボルト長さで決まる
2 割違うなら、設計者は当然 X を選びたくなります。しかし X は図面に書けば成立するものではなく、ボルトを取り付けた後、せん断面の位置が軸部かねじ部かで決まります。確認するのは、ボルト長さ、完全ねじ部と不完全ねじ部の長さ、各板の厚さとせん断面の位置、座金の位置と厚さ、そしてボルトをどちら側から差し込むかです。
RCSC 第 2.7 節の解説は、構造用ボルトがなぜこう作られているかを説明しています。構造用の高力六角ボルトは一般用のボルトよりねじ部が短く、軸部の長さを管理寸法としているので、必要ならねじ部をすべてのせん断面から除外できます。例外はナット側の板が薄い場合です。 同じ段落によると、座金なしでは、完全ねじ部が締付け長さの中に最大 3/8 in.(径 1/2、5/8、3/4、7/8、1 1/4、1 1/2 in.)または 1/2 in.(1、1 1/8、1 3/8 in.)入り込むことがあります。ナット側の板がこれより薄い場合は、ボルト長さ、締付け長さ、座金枚数の組み合わせ次第で、必要なら一つ長いボルトにして ASTM F436 座金を足し、ねじ部をせん断面から押し出せます。
2020 年版はここで一歩厳しくしました。解説によると、各部品の公差が最大に積み重なると、ねじの切り上げ部がせん断面をまたぐことがあります。旧版はねじ移行部(不完全ねじ部、図 C-2.2 の Y、完全ねじ部から軸部に移る区間)にあるせん断面を「除外」と扱っていましたが、 Swanson ら(2020)によるこの区間と ASME B18.2.6 の許容ばらつきの評価を受けて、本版はより安全側の扱いに改め、第 5.1 節を参照させています。解説は新しい数値を示さず、より保守的にしたとだけ書いています。当サイトの読みでは、せん断面が不完全ねじ部にかかるときは、もう X とは扱わないということです。
メートル系ボルトの軸部長さは別の規格が決めています。ISO のメートル系六角ボルトの軸部長さと寸法関係は、別記事そのボルトの五ピッチ分は、ねじでも軸でもないを参照してください。この記事で引用する RCSC の表の寸法と強度は、仕様書が指定するインチ系の ASTM 構造用ボルトに関するもので、ISO のメートル系ボルトにそのまま当てはめるべきではありません。
2020 年版から、表 2.5 の短いボルトはすべてねじ部扱い
二つ目の厳格化は短いボルトです。ASME B18.2.6 は一定の長さより短い構造用ボルトを全ねじにするよう求めており、RCSC の表 2.5 がその長さを示しています。前文の変更点の第 6 項は、短い全ねじボルトはねじ部がせん断面にかかるものとして設計する、と明記しています。第 5.1 節にも同じ文があり、表 2.5 の長さは全ねじとみなし、せん断強度はねじ部がせん断面にかかるものとして求めます。
| 呼び径(in.) | 全ねじが求められる長さ L(in.) |
|---|---|
| 1/2 | 1 1/4(原表は「1¼」とだけあり、L ≤ が抜けている) |
| 5/8 | L ≤ 1 1/2 |
| 3/4 | L ≤ 1 3/4 |
| 7/8 | L ≤ 2 |
| 1 | L ≤ 2 1/4 |
| 1 1/8、1 1/4 | L ≤ 2 3/4 |
| 1 3/8、1 1/2 | L ≤ 3 1/4 |
なぜ一律にするのか。解説の理由は、現物の見た目が当てにならないことです。製造者ごとに製法が違うため、こうした短いボルトのねじが首下まで届いておらず、軸部が残っているように見えることがあります。しかし、その「軸部」があるか、どれだけの長さかは確実には予測できません。 そのため薄い板の継手に使う場合、構造設計者は使える軸部はないものとし、せん断面は必ずねじ部をまたぐと仮定すべきだとしています。言い換えると、首下に軸部があるように見える短いボルトを受け取っても、それを理由に X に変えることはできません。
ほかの二つのねじ長さは、買い手が自分で求めるものです。F3125 の A325 と F3148 は、補足要求で全ねじボルト(長さが径の 4 倍以下)を注文でき、頭部に「T」を表示します。解説によると、発注と在庫管理を簡単にするためのもので、ボルトのせん断ではなく薄い板の支圧で強度が決まる継手に特に向いています。 F3125 は任意のねじ長さの指定も認めており、「S」を表示し、特別に注文されたときだけ製造されます。どちらの記号も同じことを知らせています。このボルトのねじ長さは標準値ではなく、せん断面の位置を計算し直す必要がある、ということです。
仮の継手で一度計算する
仮の例で、ここまでの話をつなげます。2 枚の鋼板を 3/4 in. の A325 ボルトで一面せん断接合し、ボルトのせん断破断という一つの限界状態だけを見る(支圧、はしあき破断などの検討はいったん置く)とし、LRFD の係数付き必要せん断耐力を 100 kips(約 445 kN)と仮定します。各ボルトが均等に負担し、短い継手の表値が使え、せん断・引張の相関やフィラーによる低減は不要という条件です。 Ab=π × 0.75² ÷ 4=0.4418 in.²。ねじ部がせん断面にかかる場合:Rn=54 × 0.4418=23.9 kips(約 106 kN)、φRn=17.9 kips(約 79.6 kN)で、100 ÷ 17.9=5.6、6 本必要です。 ねじ部を除外する場合:Rn=68 × 0.4418=30.0 kips(約 134 kN)、φRn=22.5 kips(約 100 kN)で、4.4、5 本です(いずれも当サイトの換算)。X が本当に成り立つなら、1 本少なくて済みます。
X が成り立つかを、三つの板の組み合わせで確認します。一つ目は 5/16 in. の板 2 枚で、締付け長さ 5/8 in.。解説の表 C-2.2 によると、3/4 in. ボルトは締付け長さに 1 in. を足し、F436 座金 1 枚ごとに 5/32 in. を足して、最も近い 1/4 in. に丸めます。5/8+1+5/32=1.78、1 3/4 in. です。 この長さはちょうど表 2.5(3/4 in. は L ≤ 1 3/4)に入るので、仕様書上は全ねじで、N としてしか計算できず、6 本です。この長さの選び方では、X の約 26% 高い表の値(68 対 54)は使えません。もっと長いボルトと座金でねじ部をせん断面から外せるかは、別に確認が必要です。
二つ目は 3/4 in. の板 2 枚で、締付け長さ 1 1/2 in.:1 1/2+1+5/32=2.66、2 3/4 in.、頭は上の板側、座金はナット側です。図 C-2.2 では不完全ねじ部 Y が完全ねじ部 LT と軸部の間にあるので、 公称の軸部長さは 2 3/4-1 3/8-1/4=1 1/8 in. です(表 C-2.1:LT 1 3/8、Y 1/4)。せん断面は 2 枚の境目で首下から 3/4 in.、不完全ねじ部の始点まで 3/8 in.(約 9.5 mm)あり、公称値で見る限り X として計算できます(当サイトの換算)。 三つ目は、締付け長さが同じ 1 1/2 in.、同じ 2 3/4 in. のボルトで、上の板 1 in.、下の板 1/2 in. の場合です。せん断面は首下から 1 in.、不完全ねじ部の始点まで 1/8 in.(約 3 mm)しかありません。 板の合計厚さもボルトも同じなのに、せん断面とねじ部の距離は 3 倍違います。合計厚さではなく一枚ずつの板厚を見る理由がここにあり、この 1/8 in. は後の節の実測ねじ長さと合わせて見る必要があります。いずれも公称値で、各部品の寸法公差はまだ入れていません。
二面せん断、予張力、よく聞かれる二つの規定
二面せん断の継手(3 枚の板で、ボルトが二つの面で同時にせん断される)では、もう一つ問題が生じます。一方のせん断面が軸部に、もう一方がねじ部にある場合です。解説は、この場合は仕様書の対象外だと明記し、理由を二つ挙げています。二つの異なる断面の間で荷重がどう分担されるか不確かであること、 そして図面を描く人には施工でボルトがどちら側から差し込まれるか分からず、両方の面がねじ部にかかるかもしれないことです。そのため仕様書は安全側に仮定します。一つでもせん断面がねじ部にかかるなら、すべてのせん断面がねじ部にかかるものとします。
もう一つよく聞かれるのは予張力です。強く締めたボルトは、それでせん断強度が下がる、あるいは上がるのか。解説の答えはどちらでもありません。継手がせん断、引張、またはその両方を受けると、ボルトは破壊の前に大きく変形し、取付け時のわずかな軸方向の伸びを打ち消してしまいます。 実験室の測定でも、せん断破断の直前に残っている予張力は実質ゼロでした(Kulak ら、1987)。したがってせん断強度と引張強度は初期予張力の影響を受けません。予張力は継手のすべりや板が離れる前のボルトの力には関わりますが、この節の破断強度を高めるものではありません。すべりは別の継手(RCSC の slip-critical joint、すべり限界接合)の設計で、両者の違いは締まっていないボルトは、別の継手であるで扱いました。
1,533 本で測られた比:0.83 ではなく 0.76
冒頭の問いに戻ります。その 0.80 は十分に安全側なのでしょうか。2010 年に AISC Engineering Journal に掲載された Moore、Rassati、Swanson の論文は、1,533 本の構造用ボルトを試験しています。 A325、F1852、A490、F2280 の 4 種類、径 5/8〜1 1/4 in.、100 ロットで、7 社の製造者または販売店から集めました(メーカーが選んだものに偏らないよう、約半分は寄贈、約半分は販売店で購入)。論文はロットごとに 5 本を引張、5 本を軸部でせん断、5 本をねじ部でせん断と書いており、実際の内訳は引張 515 本、軸部せん断 512 本、ねじ部せん断 506 本です。せん断は引張式の治具で行い、論文が引用する Kulak ら(2001)のデータによるとこの治具で測ったせん断強度は圧縮式より 8〜13% 低くなりますが、安全側で、ばらつきも小さくなります。
| Moore ら(2010)の測定 | 結果 | 規準で使う値 |
|---|---|---|
| 軸部せん断強さ/引張強さ(実測同士) | 60.4%(標準偏差 1.49 ポイント) | 0.625(Kulak) |
| ねじ部せん断/軸部せん断(実測同士) | 76.2%(標準偏差 2.36 ポイント) | 0.83 → 0.80 を採用 |
| ねじ部でせん断し、論文の単体基準(0.50 Fu)を下回った本数 | 506 本中 162 本(約 32%) | — |
| 軸部でせん断し、論文の単体基準(0.625 Fu)を下回った割合 | 512 本中約 3.91%(すべて A490) | — |
| 実測ねじ長さと公称値の差 | 平均 +4.82%、範囲 −1.34%〜+10.4% | ASME B18.2.6 の公称値 |
表の第 1・2 行は実測強度同士の比、第 3・4 行は実測値が論文の単体ボルト基準を下回った統計、第 5 行はねじ長さの偏差です。ねじ部せん断と軸部せん断の比は 0.762(約 76%)で、仕様書の根拠である 0.83 より低く、採用値 0.80 よりも低い値でした。著者らは、現行値はずっと少ないデータ点に基づいていると考えています。 等級別に見ると、A325 と F1852 のねじ部せん断 228 本は平均で論文の単体基準より 12.1% 高い一方、A490 と F2280 の 278 本は平均で基準の 99.4% しかなく、A490 の 228 本のうち 132 本が基準を下回りました。著者らは本研究の試験体とこの単体基準を比べて、ねじ部がせん断面にかかる場合の式はしばしば安全側でないと考え、単体ボルトの式を軸部 0.60 Fu × Ab、ねじ部 0.46 Fu × Ab に改めることを提案しています。 抵抗係数の提案は二段階で、どちらも信頼性指標 4.0、活荷重と固定荷重の比 3 を解析条件としています。従来の式を使う場合は軸部せん断 0.85、ねじ部せん断 0.80、新しい式に改めた場合は両方とも 0.85 です。いずれも研究の提案で、RCSC 2020 は採用していません。
ここでは三つを分けておきます。分かっていること:論文が比べたのは単体ボルトの基準(軸部 0.625 Fu、ねじ部 0.50 Fu、A325 なら 75 ksi と 60 ksi)で、RCSC 2020 年版の解説も同じ単体基準を使っています。ただし表 5.1 の 54 ksi と 68 ksi には、さらに継手係数 0.90 が掛かっています。 そのため 32% は「継手係数を掛ける前」の基準に対する数字で、表の 54 ksi を下回ったという意味ではありません。表の値に対して何本が下回ったかは論文で計算されておらず、この記事でも推定しません。 これも分かっていること:RCSC 2020 年版の解説は今も 0.83 と 0.80 と書き、同時に Moore ら(2008)、Taylor ら、Tide、Roenker らの信頼性研究を引用して、多くの場合、活荷重と固定荷重の比が 3 のとき、ボルトのせん断接合の信頼性指標はおおむね 4.0〜5.0 で、ねじ部を除外した場合のほうがやや高いとしています。 分からないこと:RCSC がなぜ 0.76 を採らなかったのか、この記事で読んだ解説には書かれていません。当サイトの読みでは、1 本ごとの試験値が単体基準を下回ることだけで継手設計の安全性は判断できず、継手モデル、荷重、抵抗係数も見る必要があります。この試料の平均 N/X 比は 0.80 より小さいものの、それだけで RCSC 2020 の信頼性が不足するとは言えません。
ねじ長さの行は、前の節の二つの板の組み合わせにつながります。論文はロットごとに 1 本を測り、ねじ長さは公称値に対して平均 4.82% 長く、範囲は −1.34%〜+10.4% でした。この試料では径が大きいほど差が大きく、1 1/4 in. は平均 7.41%、5/8、3/4、7/8 in. の平均差は 5% 以内です。 著者らは、X と指定したボルトでせん断面が公称のねじ切り上げ位置に近い場合、このばらつきが決定的になりうると書いています。以下は一つの寸法だけを変える例です。L=2 3/4 in.、Y=1/4 in.、板厚を固定し、LT=1 3/8 in. だけを 10.4% 長くすると、不完全ねじ部の始点は頭部側へ約 0.14 in. 移ります。3/4 in. の板 2 枚では約 0.23 in. の余裕が残り、上 1 in.・下 1/2 in. の組み合わせではせん断面が不完全ねじ部に約 0.02 in. 入ります(当サイトの換算)。論文で実測したこの板の組み合わせではなく、論文の 3/4 in. の平均差は 5% 未満(5% なら約 0.07 in.)で、ほかの寸法公差もまだ入れていません。
ボルトの側から持ち帰れること
以下には、仕様書そのものの要求(表 2.5 の短いボルト、二面せん断の安全側の仮定)と、当サイトが追加する設計・調達上の提案が混ざっています。私たちがこうした継手を設計または購入するなら、次のようにします。
図面に各継手が N か X かを明記します。仕様書は「ねじ部をせん断面から除外しなければならない場合」を構造設計者が指定しうる事項の一つに挙げており(第 1.6 節の解説のリストの第 2 項)、継手ごとに書くのは当サイトのやり方です。X を選んだら、径と強度区分だけでなく、ボルト長さ、座金の枚数と位置、一枚ずつの板厚を一緒に書きます。 選んだボルト長さ L が表 2.5 の範囲に入るものは仕様書どおり N として計算し、首下の軸部らしく見える部分には頼りません。せん断面とねじの切り上げが 1〜2 ピッチしか離れていない場合は N として扱うか、解説のとおり一つ長いボルトに座金を足します。 T や S の表示があるボルトを注文した場合は、受入れ時に頭部の記号を確認します。ねじ長さが標準値ではないという印だからです。
冒頭の、2 枚の境目でせん断されるボルトに戻ると、強度区分と径はそのボルトがどれだけ強くなれるかを決め、せん断面がどこを切るかは仕様書がどこまで使わせてくれるかを決めます。それは設計の段階でボルト長さ、座金、板厚の組み合わせとして決めておき、施工で確認するものです。 この記事の表 5.1 の数値、係数、解説の内容は RCSC 2020 から、試験データは Moore ら 2010 から取りました。ksi とメートル系の換算、例題の本数、三つの板の組み合わせの余裕、10.4% の仮の状況は当サイトの計算です。
この記事は六つの手順のどれか一つには収まりません。手順をまたいで出てくるか、組み付けたあとに出てくる話です。ここに行き着く判断がどこで下されているかはねじの決め方にまとめてあります。
よくある質問
ねじ部がせん断面にかかると、ボルトのせん断強度はどれだけ下がりますか。
米国 RCSC 2020 年版の表 5.1 では、Ls(荷重方向に測る継手片側の最外側二孔の中心間距離)が 38 in. 以下の A325(Group 120)ボルトの単位面積あたりの公称せん断強度は、ねじ部がせん断面にかかる場合 54 ksi、除外する場合 68 ksi で、比は約 0.79 です。これは 0.80 という係数によるもので、根拠は 1981 年の Frank と Yura の試験の比 0.83 です。2010 年の Moore らによる計 1,533 本の構造用ボルトの研究では、この比の平均は 0.762 でした。
自分のボルトが N(ねじ部がせん断面にかかる)か X(除外)か、どう判断しますか。
取り付けた後のせん断面の位置が軸部かねじ部かで決まります。確認するのは、ボルト長さ、完全ねじ部と不完全ねじ部の長さ、各板厚とせん断面の位置、座金の位置と厚さ、ボルトの挿入方向です。RCSC の解説によると、座金なしでは完全ねじ部が締付け長さに 3/8 in. または 1/2 in.(径による)入り込むことがあり、2020 年版は不完全ねじ部を旧版より安全側に扱うとしています。当サイトはこれを受けて、せん断面が全径の軸部にあると確認できない場合は N として計算することを提案します。
短い全ねじボルトの首下に軸部があるように見えます。X として計算できますか。
RCSC 2020 年版ではできません。表 2.5 の長さ(例えば 3/4 in. ボルトで L ≤ 1 3/4 in.)は全ねじとみなし、せん断強度はねじ部がせん断面にかかるものとして計算します。解説の理由は、製造者ごとに製法が違い、短いボルトのねじが首下まで届かず軸部があるように見えることがあるが、その有無や長さは確実に予測できないためです。
二面せん断で一方のせん断面が軸部、もう一方がねじ部の場合はどう計算しますか。
RCSC はこの組み合わせを扱いません。二つの断面の荷重分担が不確かで、施工でボルトがどちら側から差し込まれるかも分からないためです。仕様書の安全側の仮定は、一つでもせん断面がねじ部にかかるなら、すべてのせん断面がねじ部にかかるものとする、というものです。
強く締めるほど、ボルトのせん断強度は上がりますか。
上がりません。RCSC の解説は Kulak ら(1987)の試験を引き、せん断破断前のボルトの変形が取付け時の軸方向の伸びを打ち消し、破断直前に残る予張力は実質ゼロになるため、せん断強度と引張強度は初期予張力の影響を受けないとしています。予張力は継手のすべりや板が離れる前の力に影響しますが、破断強度を高めるものではありません。
参考資料
- Research Council on Structural Connections(2020)Specification for Structural Joints Using High-Strength Bolts(June 11, 2020)
- Moore, A. M., Rassati, G. A., & Swanson, J. A.(2010)An Experimental Analysis of Strength and Ductility of High-Strength Fasteners. AISC Engineering Journal, 47(3), 161–174
- 一列のボルトは荷重を等しく分担しません
- そのボルトの五ピッチ分は、ねじでも軸でもない
- 締まっていないボルトは、別の継手である
仕様書の数値と解説は、RCSC 2020 年版の前文の変更点、第 2.7 節と表 2.4、2.5、C-2.1、C-2.2(PDF の分数はページ画像から読み取り)、第 5.1 節と表 5.1 およびその解説によります。試験データは Moore、Rassati、Swanson(2010)の全文によります。ksi とメートル系の換算、例題の断面積・強度・本数、三つの板の組み合わせの余裕、10.4% の仮の状況は当サイトの計算です。論文の 162/506 は単体ボルト基準 0.50 Fu に対する比較で、当サイトはこれを 2020 年版の表の値に対する割合に換算していません。「ボルトの側から持ち帰れること」は、仕様書の要求と明記した部分以外は当サイトの提案です。
お問い合わせ
ボルトのねじ長さ、軸部長さ、全ねじの指定が必要な場合は、お見積りの際に図面にこれらの寸法と適用規格を記入してください。その寸法で供給できるかを個別に確認します。継手が N か X か、ボルトが何本必要かは、お客様の構造設計者が適用規準に基づいて決める必要があります。
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