8 µm の亜鉛:電気めっきで 200 時間、機械めっきで 120 時間
当サイトは電気めっき、溶融亜鉛めっき、機械めっきをそれぞれ別々に書いてきましたが、 数字を並べたことはありませんでした。 鋼製ファスナーのめっきを扱った 2019 年の総説は、数ページ離れた二つの表でそれを行っています。 横に読むと、同じ公称八マイクロメートルの亜鉛に同じ黄色クロメートを載せた条件で、 赤錆までが一方の表では二百時間、もう一方では百二十時間です。 この差は知っておく値打ちがあります。そして、その二つの数字をそのまま引き算できない理由も同じくです。
電気めっき亜鉛、8 µm、有色黄クロメート:赤錆まで 200–250 時間。 機械めっき亜鉛、8 µm、黄クロメート:120 時間。 これは同じ総説の中の、別々の二つの表から取った二行です。 総説自体はこの二行を並べていません。並べたのはこのページで、 そのうえで紙幅の大半を「この比較にどんな条件が付いているか」に使います。
出典は〈Deposition processes and properties of coatings on steel fasteners – A review〉、《Friction》第 7 巻第 5 号、389–416 ページ、2019 年、 著者はオーストラリア・スウィンバーン工科大学の三名です。 クリエイティブ・コモンズで公開されており、 電気めっき、溶融亜鉛めっき、イオンプレーティング、機械めっきを比較しています。
合金化は厚さより数字を動かす
一つ目の表は電気めっき亜鉛合金で、厚さは 8 µm に固定、 いずれも有色黄クロメート。つまり変わるのはめっきの中身だけです。
| めっき、すべて 8 µm | 赤錆までの時間 |
|---|---|
| Zn | 200–250 |
| Zn–Fe、Fe 1 % | 350 |
| Zn–Co、Co 0,8 % | 500 |
| Zn–Ni、Ni 8 % | 1000 |
| Sn–Zn、Sn 70 % | 1000 |
通して八マイクロメートルです。コバルト 0,8 % で時間は倍になり、 ニッケル 8 % で純亜鉛の四倍から五倍に届きます。 めっきの指定を厚さの決定として扱ってきたのであれば、 この表は「合金のほうが大きなてこである」という論拠になります。
Zn–Ni のこの行は、ベーキングの研究(英語版のみ)で 使われたボルトと同じ系統です。そこでのめっきはアルカリ性亜鉛ニッケル、ニッケル約 14 % でした。 耐食性は 12.9 のボルトにそれを施す理由であり、水素はその代償です。
この表は、総説が 1994 年の ASM International の資料から転載したものです。 このページが読んだのは総説であって、1994 年の原典ではありません。 またこの表には、試験片が何であったかが書かれていません。
機械めっきの表と、その中の食い違い
二つ目の表は機械めっきした鋼製平座金で、5 % 中性塩水噴霧、ASTM B-117 によります。
| めっき | 厚さ | 赤錆までの時間 |
|---|---|---|
| Zn | 8 µm、クロメートあり | 120 |
| 12 µm、クロメートあり | 140 | |
| 20 µm、クロメートあり | 180 | |
| 20 µm、別の出典 | 212 | |
| 30 µm、別の出典 | 296 | |
| 40 µm、別の出典 | 379 | |
| 75 µm、クロメートなし | > 600 | |
| Zn–Al | 20 µm | 260 |
| 30 µm | 420 | |
| 40 µm | 490 |
亜鉛は 20 µm に二回現れ、二つの異なる参考文献から 180 時間と 212 時間です。同じ金属、同じ公称厚さ、二つの出典、差は一割八分。 この表に不備があるわけではありません。試験所間のありふれたばらつきであり、 そして図面に時間を書くべきでない理由(英語版のみ)として、 当サイトがこれまでに見つけた中でいちばん短い論拠です。
75 µm の行は逆の理由でもう一度見る値打ちがあります。 クロメート処理をせずに六百時間を超えており、 めっき自身だけで支えている唯一の行です。
200 と 120 をそのまま引き算できない理由
どちらの行も亜鉛、八マイクロメートル、黄クロメートと書いてあります。 その背後で四つのことが違います。
| 200–250 の行 | 120 の行 | |
|---|---|---|
| 工程 | 電気めっき | 機械めっき |
| 試験片 | 記載なし | 鋼製平座金 |
| 試験 | 中性塩水噴霧 | 5 % 中性塩水噴霧、ASTM B-117 |
| 出所 | ASM の編集、1994 年 | 別の二つの参考文献 |
ですからこれは、成膜工程だけを変数にした対照実験ではありません。 他者の結果をまとめた二つの編集物が、同じ論文の数ページ違いに印刷されているだけで、 著者もそれらを突き合わせて試験したとは主張していません。
支えられるのは方向であって、比ではありません。 同じ公称厚さ、同じ後処理という条件で、この総説が集めた数字の中では、 機械的に析出させた亜鉛は電気めっきの亜鉛より低く出た、ということです。 それは ISO 12683 が自らについて述べていることと整合します —— 当サイトにその頁があります。 機械的に析出しためっきは、露出した縁や鋭い突起で薄く、平面や遮蔽された部分で厚くなる傾向がある。 平座金の上の公称厚さと、ねじ山の上の公称厚さは、分布の仕方が同じではありません。 そして赤錆は、めっきがいちばん薄いところから始まります。
この種の表の使い方
図面に載せないことです。この点での当サイトの立場は変わっておらず、 上の一割八分のばらつきがその理由です。時間とは試験槽と試験片と試験所が共同で出す結果であり、 それを使用寿命に換算してくれる人はいません(英語版のみ)。 この表が本当に役に立つのは、仕様を書き下ろす前に、どのてこを引くかを決める場面です。
- 同じ厚さでもっと耐食性が要るなら、合金を変える。 一つ目の表は、一マイクロメートルも足さずに 200 から 1000 時間まで動いています。
- ねじ山の都合で厚くできないなら、残るてこは合金だけです。 小径になると、めっきは表面処理である前に寸法です。
- 工程を変えるなら、時間を一緒に持ち越さない。 同じ公称厚さでも、析出のさせ方が違えば部品上の金属の分布は別物です。
- 試験は完成したファスナーで行うよう求める。 平座金や試験板ではなく。カタログの数字と受入検査が合わない、ありふれた原因がそこです。
この記事は手順 5、表面処理を扱います。全体の順序は相手材、ねじ、頭部、駆動部、表面処理、書類で、これを崩すと微調整ではなく手直しになる理由はねじの決め方にあります。
よくある質問
8 µm の亜鉛は塩水噴霧で何時間もちますか。
どう析出させたか、その上に何を載せたかによりますし、同じ公称厚さでも公表値は食い違います。ファスナーのめっきを扱った 2019 年の総説では、電気めっき亜鉛 8 µm に有色黄クロメートで赤錆まで 200〜250 時間、機械めっき亜鉛 8 µm に黄クロメートで 120 時間と、二つの別々の表に載っています。出典も試験片も異なる編集値であって一つの実験ではないので、差は方向として扱い、比として扱わないでください。
亜鉛を合金化するのは、厚くするより効きますか。
電気めっきの表ではそうです。厚さを 8 µm に固定し同じクロメートで、純亜鉛が 200〜250 時間、鉄 1 % で 350、コバルト 0,8 % で 500、ニッケル 8 % で 1000 時間です。厚さを増やさずに四倍から五倍になります。厚さが先に公差で制限される小径のねじでは、これが効いてきます。
同じめっきなのに出典によって時間が違うのはなぜですか。
その数字がめっきの性質ではなく、試験片と試験槽と試験所が共同で出す結果だからです。機械めっきの表では、亜鉛 20 µm が二つの参考文献から二回現れ、180 時間と 212 時間、一割八分の差があります。それはありふれたことで、図面には時間数ではなくめっきの規格と厚さ等級を指定すべき理由そのものです。
機械めっきは電気めっきより劣りますか。
この総説が集めた数字では、同じ公称厚さで機械めっきのほうが低く出ています。ただし出典も試験片も異なるため、比を立てることはできません。方向と整合する機構はあります。ISO 12683 は、機械的に析出しためっきが露出した縁や鋭い突起で薄く、平面や遮蔽部で厚くなる傾向があると注記しており、赤錆はいちばん薄いところから始まります。また機械めっきには電気めっきに出せない理由もあります。電流を一切使わないことです。
参考資料
- Chung P. P., Wang J., Durandet Y.〈Deposition processes and properties of coatings on steel fasteners: a review〉《Friction》7(5) 389–416、2019 年。表 5 と表 6、および耐食性の各節
- ISO 12683——機械的に析出させた亜鉛めっき。縁と遮蔽部の厚さに関する注記
この総説は公開されている出版版を全文読んでおり、抄録からの引き写しではありません。これは総説であり、ここで引いた二つの表は他者の結果の編集であって、著者自身の測定ではありません。表 5 は総説が 1994 年の ASM International の資料から転載したもの、表 6 は三つの別々の参考文献によります。それらの原典はこのページでは読んでおらず、一文も引用していません。二つの表は試験片が異なり(一方は記載なし、一方は鋼製平座金)、試験の記述も異なります(中性塩水噴霧と、5 % 中性塩水噴霧 ASTM B-117)。そのため 200〜250 時間と 120 時間の差は、方向としてのみ示し、比や換算係数としては決して示していません。総説には溶融亜鉛めっきとイオンプレーティングの数字もありますが、本文中に条件を変えて散在しているため再掲していません。表にまとめれば、それはこのページが比較を作り出したことになります。総説第 5 節の摩擦係数はすべり値であり、締付けトルクが依存するねじ山と座面の摩擦ではないので使っていません。このページは厚さも合金も時間数も推奨しません。
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めっきを選ぶ理由が耐食時間であるなら、お送りいただいて役に立つのは、 使用環境と必要な寿命、部品上のいちばん小さいねじ、 そしてその表面処理が別の理由で電気めっきでなければならないかどうかです。 小径では厚さがまずねじ山に制限されます。その時点で動かせるてこは、 マイクロメートルではなく合金のほうです。
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