めっき業者が使っていたのは 1998 年版だった:メキシコ湾で BOP 上部コネクターのボルト 36 本がすべて破断、34〜38 HRC のボルトは報告の読みでは 2007 年版 ASTM B633 でめっき後ベーキングが必要、旧版の基準は引張強さ 1200 MPa 超だった

仮に図面に「亜鉛めっき、ASTM B633 による」とだけ書けば、それで話は済んだように見えます。しかし規格には版があり、同じ番号でも年によって基準が違うことがあります。2012 年 12 月、メキシコ湾の掘削船で噴出防止装置(BOP)上部のコネクターが分離し、36 本のボルトがすべて破断しました。米国安全環境執行局(BSEE、Bureau of Safety and Environmental Enforcement)の後の調査で、このボルトに亜鉛めっきをした下請けは 1998 年版を使っていたことがわかりました。この版のめっき後ベーキングの基準は引張強さ 1200 MPa 超で、2007 年版では 31 HRC という硬さの基準が加わっており、このボルトは 34〜38 HRC でした。この記事では BSEE の QC-FIT 報告 2014-01 の全文を読み、事故とリコールの規模、二つの版の基準の違い、なぜ 4 年間誰も気づかなかったのか、報告がベーキング以外に疑問を呈した三つの点、わかっていること・争いのあること・まだわからないこと、図面と発注書の側で書き込めること、最後にこのページで言えないこと、の順に見ていきます。当サイトの見積もりで読了まで約 10 分です。

黄緑色の光沢を帯びた六角ボルト 4 本が作業台上の高い鋼塊の深穴に差し込まれ、ねじ部は穴の中にある。奥のベーキング炉は扉が開き、空の炉口を赤線で示している(電気めっき後の脱水素処理を示す模式図)。

2012 年 12 月 18 日:コネクターが外れ、36 本のボルトがすべて破断した

事故は 2012 年 12 月 18 日に起きました。Transocean の掘削船 Discoverer India がメキシコ湾 Keathley Canyon の KC-736 鉱区で作業中、ロワー・マリンライザー・パッケージ(LMRP)が BOP スタックから分離し、合成系掘削流体約 432 バレルが海に流出しました。 オペレーターの Chevron は BSEE に、原因は LMRP の H4 コネクターボルトの破損だと報告しています。報告本文はこれを GE Oil and Gas(報告の括弧書きでは formerly Vetco-Gray)の H4 コネクターボルトと呼び、付録 B はボルトの元製造者を US Bolt と記録しています。長さ約 9 インチ、直径約 2 インチ、材料は 4340 鋼です。報告の時系列図と模式図の説明には、このコネクターを締結していた 36 本のボルトがすべて破断したと書かれています。

その後の対応は、一件の事故よりはるかに大きな規模になりました。GE は 2013 年 1 月 25 日に安全通知を出し、影響を受けるボルトのロットと部品番号を示し、点検とトルク試験の手順を添えました。1 月 29 日の改訂版はリコールを世界規模に広げ、BSEE も同日に第 303 号の安全警報を出しています。 報告によると、GE は世界の LMRP コネクター 361 台に交換用ボルト 10,982 本を供給しました。GE の報告では、2013 年 8 月 1 日時点で、使用中または在庫の約 10,000 本のうち 1,318 本が返却され、そのうち 494 本はメキシコ湾からでした。 その後の比較分析と通知に沿った点検では、ほかの船の異常も記録されています。Discoverer Americas のボルトは点検とトルク試験で異常が見つかり不合格、Discoverer Clear Leader は磁粉探傷で不合格、Deepwater Champion のボルトには腐食生成物があり、Petrobras 10,000(P-10K)では約 2.5 年の使用で破断したボルトが見つかっています。

根本原因分析は二つあります。報告本文は、Chevron、Transocean、GE が 2013 年 3 月 21 日に共同の根本原因分析(Combined RCA)を始めたと書き、時系列図は同じ日をこの分析が BSEE に提出された日としています。分析は、ボルトの破損は主に水素ぜい化による応力腐食割れ(stress corrosion cracking)が原因だと結論しました。GE はその最終版に署名していません。 BSEE は 2013 年 1 月、品質管理・故障インシデントチーム(QC-FIT)に、ほかのボルトも壊れるおそれがあるかを評価し、リスクを下げる提言をまとめるよう指示しました。ページ番号が 55 まで振られたこの報告がその結果で、2014 年 8 月に公表され、独立した技術コンサルタントの査読を受けています。QC-FIT は水素ぜい化が主な破壊機構であること、また共同分析はまだ不完全だという GE の見方には同意しつつ、原因を一つに絞ることには同意していません。この点には後で戻ります。

同じ規格番号に、二つの版と二つの基準

二つの分析は同じ一点を指しています。ボルトはめっき後の水素除去ベーキング(post-bake)を受けていませんでした。報告は、抜けた主な理由を、めっき業者の手元にあった規格の版に求めています。報告の付録 E は ASTM B633(鉄鋼上の亜鉛電気めっき規格)の 1998 年版、2007 年版、2011 年版のベーキング基準を並べています。

BSEE QC-FIT 報告の表 E.4、E.5 がまとめた ASTM B633 のベーキング基準(当サイトは B633 の原文を読んでいません)
版めっき前ベーキング(応力除去)めっき後ベーキング(水素除去)
1998 年版硬さの記載なし;原表は 1000+ MPa(174+ ksi)で単位が合わず、本文は 174 ksi 超硬さの記載なし;引張強さ 1200 MPa(174 ksi)超
2007 年版硬さ欄 31 HRC;引張欄 1000+ MPa(145+ ksi)硬さ欄 31 HRC;引張欄 1000+ MPa(145+ ksi)
2011 年版硬さ欄 31 HRC;引張欄 1000+ MPa(145+ ksi)硬さ欄 31 HRC;引張欄 1000+ MPa(145+ ksi)

表 E.4 の 1998 年版の欄は MPa の値が 1000 で、同じ欄の 174 ksi と合わず、隣の本文は「174 ksi を超える」と書いています。2007 年版の基準の書き方も段落によって違い、本文は「硬さ 31 HRC 超、または引張強さ 1000 MPa 超」、付録は「31 HRC、かつ引張強さ 1000 MPa 超」です。報告が示す設計上の最低引張強さ 160 ksi(当サイトの換算で約 1,103 MPa)を使えば、硬さも強度も新版の値を上回り、報告自身もベーキングが必要と判定しています。

次にこのボルトと比べます。報告によると、H4 ボルトの設計仕様は硬さ 34〜38 HRC、最低引張強さ 160 ksi です。報告は、2007 年版より前は規格に硬さの基準がなかったため、めっき業者は引張強さで判断するしかなかったとしています。 報告は設計上の最低値 160 ksi を 1998 年版の 174 ksi と比べ、旧版ではめっき後ベーキングは不要と判定しています。2007 年版と 2011 年版なら、31 HRC の基準はボルトの硬さの下限 34 HRC より低く、ベーキングが必要です。これは報告の判定で、このページはそのまま記します。ただし最低規格は実測値でも上限でもなく、160 ksi だけでは実際の引張強さが 174 ksi を超えていた可能性を排除できません。

ここには注意して読むべき点が二つあります。一つ目に、2009 年の元製造者の試験報告を引く段落では、最低引張強さは 160 ksi ではなく 145 ksi と書かれています。報告の最低引張強さの記載は一致しておらず、どちらも最低値として書かれた数字で、どちらも 174 ksi を下回ります。 二つ目に、Section II の同じ項目は、まずボルトはめっき前・めっき後の二つの処理を両方は受けていない(did not receive both)と書き、次の文で「H4 ボルトはめっき前ベーキングは受けた」と明記しています。このページは後の文と要旨、ほかの段落に従い、欠けていたのはめっき後ベーキングだと書きます。

報告はもう一つ、本来なら埋められた道も示しています。ASTM B850 はめっき後の水素除去処理のガイドで、報告によると、硬さ 31 HRC を超え引張強さ 145 ksi を超える金属にめっき後ベーキングを推奨しており、報告は 1998 年版 B850 によれば 2007〜2009 年のこのボルトはベーキングすべきだったと判定しています。報告の原文は、設計仕様が ASTM B850 を明確に引用していれば、めっき後ベーキングの要求は明確だっただろう、というものです。 同じ付録は B633 の 6.4 項の推奨にも触れています。引張強さが 1700 MPa を超える素地には亜鉛めっきをすべきでない、という項目です。サイト内の〈1700 MPa 級ボルトの遅れ破壊〉は別の研究を読んだもので、もう一つの水素の入り口、つまり使用中の腐食を扱っています。別の事例であり、この H4 ボルトの証拠ではありません。

なぜ 4 年間気づかれなかったのか:めっきは三次にあった

版を取り違えたことが一つ目の誤りで、4 年間誰も見ていなかったことが二つ目です。このページが重く見るのは二つ目です。GE の当時の品質マネジメントシステムは業界の基準と認証を満たしていましたが、認定と監査の対象は一次サプライヤー、つまり GE が直接契約する業者だけでした。このボルトの亜鉛めっきは、三次の下請けが行っていました。 報告の付録 B は QC-FIT が訪問した会社を記録しています。元製造者の US Bolt、このボルトに亜鉛クロメートめっきをした Industrial Metal Finishing(IMF)、交換用ボルトのりん酸亜鉛処理を新たに担った S&S Plating です。

報告によると、IMF は 4 年間にわたり旧版の B633 を使い続けました。このことは GE の品質システムでも、API のような第三者の品質認証機関でも、Transocean や Chevron の請負業者の資格評価や設備の機械的健全性プログラムでも見つかりませんでした。報告によると、GE は下位のボルト製造、鍛造、熱処理のサプライヤーも認定・監査し始めています。 報告は皮膜そのものが一度変わったことにも触れています。2007 年より前、H4 ボルトにはりん酸亜鉛系の皮膜が使われ、海上環境での保管寿命を延ばす目的でした。2007 年以降は耐海水腐食を高めるため亜鉛クロメートに変わり、亜鉛が犠牲陽極として下の鋼を守ります。交換用ボルトはりん酸亜鉛に戻り、めっき後のベーキング時間が指定されました(報告に温度と時間の値はありません)。

下位の問題はこの一件だけではありません。報告は同じ船の 2012 年 11 月の別の破損を挙げています。ブラインドシアラムとシアラム(BSR/SR)のボルトが 15,000 psi の試験台での圧力試験中に破断したもので、原因は引張の過負荷と熱処理不良による硬さの問題、初期に特定された要因は GE と下請けの間の連絡と熱処理手順でした。ENSCO 8506 のライザーでも同様の破損がありました。 2014 年 7 月には、別の機器メーカーの海底コネクターのスタッドが破損したとの通知が QC-FIT に届き、初期の見立ては下請けの熱処理または硬さでした。分析は当時まだ終わっていません。このため報告は、API の品質規格 Spec Q1 で多段階の下請けの監査と承認を扱うよう求めることを提言しています。

言い換えると、「ASTM B633 による」は一次の手元では一つの要求でしたが、三次に届いたときにはその工場が手元に持っていた一冊の文書になっていました。既存の監査と資格評価は、その文書が何年版かを見つけられませんでした。

ベーキング以外に、報告が疑問を呈した三つの点

欠けていたのがベーキングだけなら、それを足せば終わりです。QC-FIT はそう見ていません。根本原因分析の結論の大部分には同意しつつ、めっき後ベーキングの欠如が唯一の根本原因だという点には同意せず、水素による破壊は四つの要因の任意の組合せかもしれないとしています。めっき後ベーキングがなかったこと、ボルトの硬さと強度が高いこと、迷走電圧、そして B633 に従い SC 2 等級の皮膜を海洋環境で使ったことです。後の三つにそれぞれ一節を割きます。

一つ目は硬さです。H4 ボルトは 4340 鋼、降伏強さ 145 ksi の等級で、硬さは 34〜38 HRC です。GE は、この強度はコネクターの二つの半体を締め合わせ、引張、曲げ、軸方向の荷重に耐えるのに必要だとしています。報告は海底用途のいくつかの規定を並べ、上限が互いに一致していないことを指摘しています。これらの規定は対象材料も用途も異なり、並べたことは本件に直接当てはまることを意味しません。

BSEE QC-FIT 報告が比較した硬さの要求(当サイトはこれらの規格の原文を読んでいません。各規定の適用範囲は異なります)
文書報告が引用した硬さの要求
GE の H4 コネクターボルト設計仕様34〜38 HRC(4340 鋼、Class 145)
API 17A、NACE MR0175、NORSOK M-001 の 5.6.1/5.6.3 項海底用途で最大 32 HRC、最低降伏強さ 92,000 psi
API 6A、API 16F(報告本文:陰極防食のある海底機器)35 HRC
NORSOK M-001 の 6.1 項(付録 F)陰極防食を受けうる水中部品のうち、オーステナイト系ステンレス鋼は 35 HRC 以下
API 16A(2004 年版、H4 設計の根拠)海洋用途の硬さの値は推奨されていない

付録 F はさらに、NORSOK M-001 の 5.6.3 項が、水中の構造用ボルトの強度区分を ISO 898 の 8.8 以下とするよう推奨していると伝えています。報告本文は NORSOK を API 6A、16F と一緒に 35 HRC としていますが、付録 F はこの値をオーステナイト系ステンレス鋼の項目の下に書いており、このページでは二行に分けました。 報告は、GE が送った交換用ボルト 10,982 本の硬さと強度が、破断したボルトと同じであることにも注目しています。QC-FIT は、硬さと強度が要因の一つなら、これらのボルトは状況によってはリスクが高いかもしれないとしています。GE は、交換用ボルトは第三者の審査を受けており、この懸念は当たらないと答えています。GE はまた、ボルトの硬さが 34 HRC の新しいコネクター設計を選択肢として提供し始めました。

硬さには前例がありました。2003 年 5 月 21 日、Transocean の Discoverer Enterprise(BP Thunderhorse の案件)でライザーの 39 番と 40 番の継手の間のボルトインサート(ナット)が破損し、ライザーは海面下約 3,200 フィートで分離、合成系掘削流体約 2,450 バレルが流出しました。インサートとボルトは同じく 4340 で、設計上の硬さ仕様も同じ 34〜38 HRC でした(付録 H には実測値として、破損したインサート 34〜39 HRC、破損したボルト 35〜37 HRC も記録されています)。 そのとき提案された対策は、硬さと強度を下げる、外部電源方式の陰極防食の電位を -950 mV より負にしない、溶射アルミ皮膜をやめる、ボルト径を大きくする、ボルトの荷重を約 10% 下げる、というものでした。報告本文はこれらの対策が「実施されたように見える」と書き、付録 H は GE が 14 基のリグで対策を実施したと述べたことを記す一方、2012〜2013 年に破損した船のボルトの材料仕様は変更されていなかったとも書いています。二つは別の事故と別の部品にかかわる記述で、このページは矛盾とは扱いません。2005 年の Vetco-Gray の製品通知は、溶射アルミ皮膜と外部電源方式の組合せが、34 HRC を超える中・高強度鋼の環境助長割れと強く相関すると指摘していました。

二つ目は皮膜の等級です。2007〜2012 年に製造された H4 ボルトは、B633 の Type II(有色クロメート化成皮膜)、SC 2 等級、最小厚さ 8 µm でした。報告がまとめた B633 の表では、SC 2 は「中程度」の使用条件で、主に乾いた屋内、ときどき結露や摩耗があり、例は工具、ファスナー(ジッパー)、引出し棚、機械部品です。最も厳しい SC 4 は 25 µm で、例は水回りの器具と電柱金具です。 QC-FIT はこれを根拠に、SC 2 が海底用途に適しているかは不確かだとしました。GE は同意せず、その例は強制ではないこと、また関連する API 規格のもとでは SC 2 より厚い皮膜では組立てが API の要求を満たせないことを挙げています。報告の付録 E は、2012 年に破損したボルトは 2007〜2009 年製だとしています。

三つ目は陰極防食と塗装です。根本原因分析は、一部のボルト頭に塗装の欠けがあったことを記録しています。BOP 側を向き坑井に面した部分に塗装がなく、破損したボルトの頭には LMRP コネクター本体側に腐食がありました。報告の説明では、露出した面は陰極防食の陽極からより多くの電流を引き、水素を生じます。陰極防食の電位が負であるほど、水素が入る可能性は高くなります。これが本件にどれだけ効いたかは、報告もわからないとしています。 根本原因分析は、陰極防食の電位はライザーを下るにつれて減衰するとして、3,000 フィートより下の電位には外部電源方式の影響はなかったとしましたが、QC-FIT は 2003 年に記録された値が 2005 年の通知が警告した値に近かったことを指摘し、さらなる分析が必要だとしています。GE は、H4 組立品の出荷前の 100% 目視と記録を検査計画に加えたとしています。

わかっていること、争いのあること、まだわからないこと

三つの点を並べたところで、この報告で確かなことと確かでないことを分けておきます。わかっているのは、二つの分析がともに、ボルトは主に水素ぜい化による応力腐食割れで破断したと認定していること、めっき業者が 1998 年版 B633 で作業し、報告が 2007 年版では必要と判定するめっき後ベーキングがボルトに行われなかったこと、GE の当時の品質システムの監査が一次までだったことです。

争いがあるのは次の点です。GE は共同の根本原因分析に署名しておらず、本当の根本原因はまだ特定されていない、また分析はジャーリング(坑内でジャーと呼ばれる工具で衝撃を加える作業)の影響を扱っていないと考えています。QC-FIT はベーキングの欠如が唯一の根本原因だという点に同意していません。SC 2 の皮膜が海洋用途に適するかは、GE と QC-FIT で読み方が違い、報告は ASTM に明確化を求めるよう提言しています。GE、Chevron、Transocean の三者が一致しているのは、ジャーリング作業と、すでにひどく劣化していたボルトの組合せが、コネクターの分離を早めたという点です。ジャーリングが破損の原因の一つだったかどうかについては、QC-FIT は結論を出せていません。

まだわからないのは、ジャーリング荷重の大きさ(GE の有限要素解析は報告の完成時点でも続いていました)、このコネクターの取付け手順、記録、実際のトルク(入手できず、取付けが GE の制限内だったかは判断できません)、そして陰極防食がボルトの劣化に与えた影響です。報告は複数の事例が Transocean の船で起きていることにも触れていますが、標本が小さく、その運用や保守が破損の可能性を高めたかどうかは判断できないとしています。

図面と発注書の側で、書き込めること

冒頭の一行「亜鉛めっき、ASTM B633 による」に戻ります。以下は当サイトの読み方で、BSEE が買い手やサプライヤーに求めていることではありません。用途に応じた硬さの上限、皮膜の等級、ベーキング条件は、設計を担当する部門が該当する規格に基づいて決める必要があります。

まず仮定の例で、あの一行に何が欠けているかを見ます。仮に図面に「亜鉛めっき ASTM B633 Type II、SC 2」とだけあり、ボルトの硬さが 34〜38 HRC だとします。この一行には版が書かれておらず、めっき後にベーキングするのか、何時間か、誰が行うのかもありません。書かれていない条件は下流の解釈に委ねられかねず、要求が伝わる途中でずれるリスクが増えます。

  1. 版を書く、またはどの版によるかを明記する。同じ番号でも 1998 年版と 2007 年版ではめっき後ベーキングの基準が違います。新版は硬さの判定を加え、強度の基準を下げており、報告の読みでは、まさにこの変更が本件でベーキングが必要かどうかを分けました。
  2. ベーキングを要求として書き、皮膜規格の基準から推測させない。報告自身の言い方では、設計仕様が B850 を明確に引用していれば、ベーキングの要求は明確でした。何時間焼くか、何時間以内に炉に入れるかは、サイト内の〈8 時間で足り、12 時間は余分〉と〈錆びなかったが折れた〉で扱っています。
  3. 要求が実際に作業する段階まで届くようにする。報告は、API が Spec Q1 で多段階の下請けの監査を扱うこと、部品単位の追跡を提言しています。買い手の側での当サイトの読み方は、めっきと熱処理を実際に誰が行うのか、各ロットの処理記録にどの版の規格とどのベーキング条件が書かれているのかを尋ねることです。
  4. 硬さと使用環境を一緒に書く。報告が比較した規定は対象材料も用途も異なり、32〜35 HRC の制限にわたります。H4 ボルトの仕様は 34〜38 HRC でした。どの上限が当てはまるかは、各規定の適用範囲を確かめたうえで設計側が決めることです。図面に硬さの範囲と使用条件を一緒に書けば、下流が要求を見分ける助けになりますが、具体的な皮膜とベーキングの条件は別に明記する必要があります。

最後に一点。サイト内の〈あの水素ぜい化試験は、受入試験ではないと規格自身が述べている〉で読んだ規格は、その試験を工程管理の道具と位置づけています。この事例ではっきり欠けていたのはめっき後ベーキングという処理で、受入れ時に検査を一つ増やしても、その処理を補ったことにはなりません。

このページで言えないこと

このページは BSEE QC-FIT Report #2014-01 の全文を読んでいます。ASTM B633、B849、B850、F1941、および API、NACE、NORSOK の各規格は原文を読んでいません。表の基準値と硬さは報告がまとめた、または引用した内容で、それらの規格の現行版を示すものではありません。引用する前に、契約と設計に適用される版を確かめ、各規格そのものを確認してください。 報告が 1990 年の応力腐食曲線から行った閾値の推論は、このページでは採用していません。報告の中にはいくつかの食い違いがあり(表 E.4 の 1998 年版の単位、2007 年版基準の「または/かつ」、最低引張強さ 145 か 160 ksi か、2013 年 3 月 21 日が共同分析の開始日か提出日か)、このページは本文でどの記述に従ったかを示しています。設計上の最低引張強さから導いた「旧版ならベーキング不要」は報告の判定で、このページはその限界も記しています。 160 ksi が約 1,103 MPa というのは当サイトの換算です。このページは GE、Transocean、Chevron、各サプライヤーの間の責任を評価するものではなく、報告自身もジャーリング、陰極防食、取付けトルクを結論の出せない項目としています。このページが示すのは書類と調達のやり取りについての読み方で、海底機器の材料、皮膜、ベーキング条件を選ぶものではなく、当サイトやいずれかのサプライヤーが特定のめっき、ベーキング、検査の能力を持つことを示すものでもありません。

この記事は手順 5、表面処理を扱います。全体の順序は相手材、ねじ、頭部、駆動部、表面処理、書類で、これを崩すと微調整ではなく手直しになる理由はねじの決め方にあります。

よくある質問

亜鉛めっきした高強度ボルトは、必ずめっき後ベーキングが必要ですか?

BSEE の報告のまとめでは、ASTM B633 の 2007 年版と 2011 年版は、硬さ 31 HRC、引張強さ 1000 MPa 以上の鋼にめっき後の水素除去ベーキングを求めています。1998 年版の基準は引張強さ 1200 MPa 超で、硬さの基準はありません。2007 年版の二つの条件を「または」「かつ」のどちらでつなぐかは、報告の段落によって違います。答えはボルトの硬さと強度、そして契約と設計にどの版が適用されるかで変わります。当サイトは B633 の原文を読んでいないため、実際の要求は適用される版で確認し、必要なら現行版と比べ、図面に明記してください。

ASTM B633 の 1998 年版と 2007 年版は何が違うのですか?

この報告が扱うベーキングの基準でいえば、1998 年版は引張強さだけで判断し(めっき後は 1200 MPa、174 ksi 以上)、2007 年版は硬さ 31 HRC を加え、強度の基準を 1000 MPa(145 ksi)に下げています。H4 ボルトは 34〜38 HRC、設計上の最低引張強さ 160 ksi で、報告はこの最低値から、旧版ならベーキング不要、新版なら必要と判定しています。最低値だけでは、実際の強度が 174 ksi を下回っていたことは証明できません。

交換用ボルトをりん酸亜鉛に戻せば、問題は解決したのですか?

報告はそう結論していません。GE は、りん酸亜鉛に戻しベーキングを指定したことで信頼できると考えており、その理由として過去に破損の記録がないこと、同じ BOP スタックの下部コネクターのりん酸亜鉛ボルトが無傷だったこと、交換用ボルトが第三者の審査を受けたことを挙げています。QC-FIT は、交換用ボルトの硬さと強度が破断したボルトと同じであることを指摘し、硬さ、皮膜、陰極防食の関係について業界でさらに研究するよう提言しています。

図面に「ASTM B633 による」とだけ書けば足りますか?

この事例は、足りないことがあると示しています。同じ番号でも版によってベーキングの基準が違い、実際にめっきをした下請けは旧版を使っていました。報告は、設計仕様が ASTM B850 を明確に引用していればベーキングの要求は明確だったとしています。当サイトの読み方は、図面か発注書に版、ベーキングの要求、硬さの範囲、使用条件を明記し、要求が実際に作業する段階まで届くことを確認することです。具体的な値は設計部門が該当する規格に基づいて決める必要があります。

参考資料

本ページは BSEE QC-FIT Report #2014-01(2014 年 8 月)に基づいています。事故の経過、版ごとの基準、硬さと皮膜等級の数値は、報告そのもの、または報告による各規格の紹介から取っています。ASTM、API、NACE、NORSOK の規格原文は当サイトでは読んでいません。表の単位、基準のつなぎ方、最低引張強さ、根本原因分析の日付の書き方といった報告内の食い違いは、本文でどの記述に従ったかを示しました。160 ksi の MPa 換算は当サイトの計算です。「図面と発注書の側で、書き込めること」は当サイトの読み方で、BSEE の要求ではありません。関連記事で扱う他の研究は本件の証拠ではありません。

お問い合わせ

図面や調達文書でめっきとベーキングに要求がある場合は、お見積りの際に引用している規格と版、ボルトの硬さまたは強度区分、必要なベーキング条件と書類をあわせてお知らせください。書類の要求に沿って検討し、供給できる範囲をお知らせします。用途に応じた硬さの上限、皮膜の等級、ベーキング条件は、設計を担当する部門が該当する規格に基づいて決める必要があります。

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