ねじ軸より軟らかく作ったナットは、どこまで摩耗したら交換か:MD-80 のトリム用ジャックスクリューの基準はエンドプレイ 0.040 インチ。アラスカ航空 261 便は 0.033 インチと測った後、9,000 時間近く飛んだ
ナットを選ぶときに見るのは、どれだけ耐えられるかです。強度区分や保証荷重は仕様に書かれた公称の要求です。MD-80 旅客機の水平安定板トリム機構にあるアクメねじのナットは事情が違います。鋼製のねじ軸がその中で回り続け、ナット自体はアルミニウムニッケル青銅製でねじ軸より軟らかく、設計文書にはねじ山が摩耗するように設計されていると書かれています。2000 年 1 月 31 日、アラスカ航空 261 便が太平洋に墜落し、搭乗していた 88 人全員が亡くなりました。米国国家運輸安全委員会(NTSB)は、このナットのねじ山が飛行中に破損し、その原因は潤滑不足による過度の摩耗だったと結論づけています。この記事では NTSB 報告書に沿って、ねじの問題として次の点に答えます。摩耗する前提のナットの摩耗を何で測るのか、どこまで減ったら交換するのか、そして 0.040 インチの交換基準がなぜこのナットを止められなかったのか。ナットの設計、エンドプレイが測るもの、基準から破断までの距離、最後の計測の後に起きたこと、潤滑間隔の延長、二条ねじが摩耗を防げない理由の順に見ていきます。読了まで約 13 分です。
削られることを前提にしたナット
MD-80 の水平安定板は垂直安定板の頂部に取り付けられ、後縁側は 2 か所のヒンジ、前縁側は 1 組のジャックスクリューで上下します。ジャックスクリュー組立品の上端は安定板の前桁に、 下端はアクメねじのナットを通り、ナットはジンバルリングで垂直安定板に固定されています。トリムモーターがねじ軸を回すと、ねじ軸がナットの中を上下し、安定板の前縁を動かします(NTSB 報告書 §1.6.1、p.13–14、p.18)。
報告書は 1965 年の DC-9 飛行操縦系統故障解析報告(1997 年改訂)を引いています。ナットはねじ軸より軟らかい材料で作られ、ねじ山は摩耗するように設計されていました。ナットのねじ山はアルミニウム青銅で、新品の厚さは約 0.15 インチ(3.81 mm)、 ねじ軸のねじ山は表面硬化鋼です(p.22)。この 0.15 インチの測定位置は、p.22 では谷の径、p.129 の注では外径と書かれ、報告書の中で基準が一致していません。回収された破片の分析では UNS C95500 アルミニウムニッケル青銅で、図面どおりでした(p.76)。組立品の中で目立って摩耗するのはこのナットだけです(§1.6.3.3.1、p.37)。
| 項目 | 報告書の記述 |
|---|---|
| ナット | アルミニウム青銅(破片の分析では UNS C95500 アルミニウムニッケル青銅)。ねじ軸より軟らかく、ねじ山は摩耗する設計 |
| ねじ軸 | 表面硬化鋼。1967 年以降、Douglas が摩耗を減らすため熱処理と窒化を強化 |
| ねじ山 | ねじ軸とナットにそれぞれ独立した 2 本のねじ山(二条ねじ)。ナット内は各 16 巻き、計 32 巻き |
| 新品のねじ山の厚さ | 約 0.15 インチ(3.81 mm)。測定位置は p.22 では谷の径、p.129 では外径 |
| 新品のエンドプレイ | 0.003〜0.010 インチ(0.08〜0.25 mm) |
| 交換基準 | エンドプレイが 0.040 インチ(1.02 mm)を超えたとき |
| 想定摩耗速度 | 約 0.001 インチ(0.025 mm)/1,000 飛行時間 |
| 当初の設計寿命 | 30,000 飛行時間。当初は定期的な摩耗点検なし |
型式証明の文書は、いくつかの損傷を想定しています。ねじ軸が折れても内側のトルクチューブが荷重を受け、トルクチューブが折れるとトリム作動はただちに止まり、荷重はねじ軸とナットが受け続ける。ねじ山の 90% を失う場合は「構造上必要な数より多くのねじ山」で、ねじ山 1 本が丸ごと壊れる場合は 2 本目のねじ山で対応する(p.22)。 同じ故障解析には、ナットのねじ山がすべて失われる場合の対策はありませんでした(p.22)。当初の設計には定期的な摩耗点検がなく、就航後に摩耗の管理が整備に任されました。潤滑で摩耗を遅くし、計測でまだ基準に達していないことを確かめる、という分担です(p.22–24)。
エンドプレイが測るのはすきまで、ねじ山の厚さではない
報告書が述べる機上の摩耗点検は、ナットのねじ山の厚さを直接測るものではありません。測るのはエンドプレイ、つまりねじ軸とナットのねじ山の間で軸方向にどれだけ動けるかです。ねじ山が薄くなれば両側のすきまが広がるので、 報告書はエンドプレイをナットのねじ山摩耗の間接的な計測と呼んでいます(p.22 fn48)。
機上での測り方は、拘束治具で安定板を下に引き、ねじ軸にかかる荷重を引張から圧縮に切り替えるものです。荷重の向きが反転すると、ねじ山のすきまの分だけねじ軸が動き、下側ストッパーに付けたダイヤルゲージがその移動量を読みます。 アラスカ航空の作業カードでは、治具に 250〜300 in-lb のトルクをかけ、前後の読みの差が 0.001 インチ以内になるまで繰り返し、エンドプレイが 0.003〜0.040 インチの範囲にあることを確認します(§1.6.3.3.2、p.39、§1.6.3.3.2.1、p.43–44)。
この点検は後から加わったものです。DC-9 は 1965 年に就航し、翌 1966 年には摩耗の速いものが数組見つかりました。1967 年の Douglas 設計メモは 6 組の飛行時間とエンドプレイを挙げ、NTSB はそこから摩耗速度を 0.0056〜0.0073 インチ/1,000 時間と計算しています。 DC-8 の約 0.001 の 5.6〜7.3 倍です。Douglas は実物大の試験を行い、0.040 インチまでならフラッターなどの構造上の問題を起こさないと判断してこれを基準とし、同時にねじ軸の熱処理と窒化を強化しました(p.38–39)。
起点、基準、速度がいずれも一定なら、摩耗速度が何倍になれば、基準に届くまでの時間は何分の一になります。仮の数字で計算してみます。新品のエンドプレイを 0.010 インチ、1,000 時間ごとに 0.001 インチ増えるとすると、0.040 インチまで 30,000 時間で、数字は当初の設計寿命と同じです(報告書にある当初の設計の想定は、30,000 時間後のエンドプレイ 0.0265 インチで、これはメーカーの計算方法ではありません)。 速度を 1967 年の数組と同じ約 0.006 にすると、約 5,000 時間で届きます(当サイトの仮の計算。速度は一定と仮定)。点検間隔がこれより長ければ、エンドプレイは 2 回の計測の間に交換基準を越えてしまいます。
エンドプレイ自体も安定した読みではありません。事故後に耐空性改善命令に基づいて報告された 3,174 件の計測では、同じ機体の連続した 2 回の相関係数は +0.553 と +0.416 にとどまり、 機上と取り外した後のベンチでの計測を比べた 64 組では、外れ値 1 件を除いて +0.442 でした。報告書は、機上計測の誤差は最大 0.030 インチに達し、どちらの方向にもずれうると見積もっています(§1.18.2、p.108–109、§2.4.3、p.157)。 アラスカ航空が自作した拘束治具はメーカー図面に合っておらず、NTSB がこの種の自作治具で試したところ、メーカー製治具より低く読むことがあり、差は最大約 0.005 インチでした。報告書は、治具のねじのかみ合い長さが長く摩擦が大きいため、より大きなトルクが必要になったと推測しています(p.45、p.158 fn263)。 計測器自身のねじの条件が、測られる側のねじの読みに影響した可能性があります。
0.040 インチから破断まではどれだけあるか
報告書はエンドプレイをねじ山の厚さに換算しています。エンドプレイ 0.040 インチは約 0.030〜0.037 インチの摩耗に相当し、新品 0.15 インチに対してねじ山の厚さの約 22%です。事故機のナットの破片は、残りがせん断される前にねじ山の厚さの約 9 割が摩耗していたことを示しています(§2.2.2.1、p.129)。交換基準と破断の間には、ねじ山の厚さの約 7 割の差があります(当サイトの引き算)。公聴会で Boeing の構造技術マネージャーは、新品のナットのねじ山強度は設計荷重の 15 倍を超え、エンドプレイ 0.040 インチまで摩耗しても 10 倍、 0.080 インチでも 5 倍あると述べています。通常の飛行でねじ軸とナットを通って垂直安定板に伝わる力は約 4,000〜5,000 lb(約 18〜22 kN)です(p.23)。
| ねじ山の厚さ | 1 巻きあたり | 32 巻き合計 |
|---|---|---|
| 0.15 インチ(新品) | 68,781 lb(約 306 kN) | 2,200,999 lb |
| 0.0174 インチ(破片 No.6) | 6,806 lb(約 30 kN) | 249,782 lb |
| 0.0131 インチ(破片 No.4) | 5,977 lb(約 27 kN) | 191,263 lb |
表の 32 巻きの合計は、1 巻きごとのせん断容量を足し合わせたもので、外力が実際に各巻きへ均等に分かれることを意味しません。Boeing の解析と、NTSB がニューヨーク州立大学ストーニーブルック校と共同で行った有限要素解析は、いずれもナットの上下両端に近い巻きが中央より多く受けるとし、 1 巻きが受ける最大値は外力の約 30%(Boeing)または約 23%(NTSB)でした(§1.16.4、p.78)。ねじ山が均等に分担しないことは、当サイトの最初の数山がいちばん多く受けるでも扱っています。
NTSB とストーニーブルック校の解析は、摩耗の進み方も調べています。摩耗は層ごとに進み、各層は付け根から先端へ進みます。交換基準を超えて摩耗しても、ナットの応力は降伏応力を下回ったままで、軸方向の摩耗が約 0.090 インチ(1 巻きあたり 2,000 lb)になってようやく最大応力が降伏に近づきます。 0.09265 インチで、ねじ面の半径方向の約半分が失われると、荷重に対する先端のたわみが急に増えます。ねじ面の半径方向の約 75% を失うと、残る接触面が小さすぎて解析は有効な値を出せなくなり、研究はこの時点でねじ軸のねじ山が回転ではなく軸方向にナットのねじ山を滑り越え始めると判断しています(p.78、p.155 fn257)。 報告書はさらに、破片と同じ程度に摩耗した 32 巻きを同時にせん断するには 19 万 lb を超える力が必要で、事故当日の上昇中の飛行荷重は 4,000〜5,000 lb にすぎなかったため、ねじ山は一度に切れたのではなく、らせんに沿って段階的にせん断された可能性が高いとしています(p.129–130)。 当サイトの読み方では、初期の強度の倍率は摩耗の監視の代わりになりません。倍率はある摩耗状態で余裕がどれだけ残っているかを示しますが、どれだけ速く減っているかは示しません。
1997 年に 0.040、測り直すと 0.033
摩耗の速さは 2 回の計測の差から計算するしかなく、事故機の最後の計測はちょうど 0.040 インチ付近でした。1997 年 9 月 26 日、機体はオークランドの整備施設で C チェックに入り、累積 17,699 飛行時間でした。 9 月 27 日の最初のエンドプレイ点検の後、不具合カードが起票されました。記載は「acme screw and nut has maximum allowable end play limit (.040 in.)」で、交換が計画されました。 9 月 30 日の深夜勤務で交換の行が線で消され、別の整備士と検査員が測り直して「.033」と記入し、「Rechecked five times with same result」として、この項目は 0.033 インチで完了しました。機体全体の出場は 10 月 2 日 23 時です(§1.6.3.4.1、p.50–52)。
当時のアラスカ航空の間隔では、次のエンドプレイ点検は 30 か月後の 2000 年 3 月の予定で、当時の利用率では 30 か月が約 9,550 飛行時間に相当しました(p.152)。メーカー推奨は 7,000 または 7,200 飛行時間か 30 か月の、どちらか早いほうです(p.47)。 1997 年 9 月から事故までに、この機体は 28 か月、9,000 時間近く飛んでいます。NTSB は、間隔を延長していなければ、事故の少なくとも 1,800〜2,000 時間前にもう一度計測があったはずだと指摘しています(§2.4.1、p.152–153)。
当時アラスカ航空が持っていた拘束治具は 1 本だけで、オークランドの整備施設にありました。NTSB はこれを自作で Boeing の仕様に合わないものと認定し、アラスカ航空は Douglas 製だったと主張しましたが、NTSB は証拠がその主張を支持しないとしています。その治具は使用できない状態で、NTSB の試験には事故後に同じ設計で作られた自作治具が使われました(p.44–45 fn88、fn90、p.157 fn262)。 NTSB は 0.040 と 0.033 の読みがどちらも実際より小さかった可能性を挙げつつ、治具が読みを狂わせたのか、事故に寄与したのかは判断できなかったとしています(p.157–158、finding 33)。
摩耗速度は推定値です。報告書は 1997 年に最後に記録された 0.033 インチと、破損時の総摩耗を 0.133 インチと仮定した値を使って、この期間の平均を約 0.012 インチ/1,000 飛行時間と計算しています。想定値は約 0.001 で、 報告書は速度が一定だったとは限らないとも述べています(§2.3、p.140)。
| 場所 | 報告書の観察 |
|---|---|
| ねじ軸の中央部 | ナットのねじ山の破片 12 本が巻き付いていた。長さの合計は元のねじ山全長の約 75% |
| 破片の厚さ | 代表的な 2 本の破片の外縁せん断部で 0.0131 インチと 0.0174 インチ。新品 0.15 インチの 8.7% と 11.6%(比率は当サイト換算で、ねじ山全体の平均の残り厚さではない) |
| ナット内面 | 比較的なめらかで平らな面に、幅 0.013〜0.020 インチの小さな稜線が元のねじのらせんに沿って残るだけ |
| グリース | ナット内とねじ軸の作動範囲には、潤滑の役に立つグリースはなく、一部の破片に乾いて固まったグリースの小片が付いていただけだった。グリースニップルの通路には黒く乾いた粘土状の残留物とナット材の摩耗粉 |
潤滑間隔は 1987 年の 5 倍あまりに延びていた
なぜそれほど速く摩耗したのか。報告書はまず 4 つの可能性を除外しています。1997 年末に切り替えた Aeroshell 33 グリース、ねじ軸のねじ山の表面粗さ、異物、ナットへの異常な荷重は、いずれも要因ではありませんでした。 ブロックオンリング摩耗試験では、Aeroshell 33 の摩耗速度は従来の Mobilgrease 28 より低く、摩耗が目立って増えたのは潤滑なしの場合だけで、最大で潤滑ありの約 10 倍でした(§2.3.1–2.3.5、p.141–143、§1.16.8.3、p.86)。
残るのは潤滑不足です。ナット内とねじ軸の作動範囲に有効なグリースはなく、グリースニップルの通路には乾いた古いグリースが残っていました。報告書は、事故時には「ねじ軸とナットの間に有効な潤滑がなかった」と結論づけ、 摩耗の量から、抜けたか不十分だった潤滑は最後の 1 回だけではなかった可能性が高いと推定し、それ以前の回数は判断できないとしています(§2.3.6、p.144–146)。この機体のジャックスクリューの最後の潤滑記録は 1999 年 9 月です。
| 出典と年 | 間隔 |
|---|---|
| Douglas 工程標準(1964) | 300〜350 飛行時間 |
| メーカー初版の整備計画 | 600〜900 飛行時間 |
| メーカー MSG-3 整備計画 | C チェックごと(3,600 飛行時間) |
| アラスカ航空 1985 | 700 飛行時間 |
| アラスカ航空 1987 | 500 飛行時間 |
| アラスカ航空 1988/1991/1994 | 1,000/1,200/1,600 飛行時間 |
| アラスカ航空 1996〜事故時 | 最長 8 か月、飛行時間の上限なし(約 2,550 飛行時間) |
| 事故後の耐空性改善命令 | 650 飛行時間 |
報告書は、事故時の間隔は 1987 年より 400% 以上長かったとしています。2,550 を 500 で割ると約 5 倍です。間隔が長いほど、1 回潤滑が抜けたときに古いグリースが持ちこたえなければならない期間も長くなります。 報告書はさらに、1996 年に潤滑間隔を 8 か月に変えた時点で、アラスカ航空は暦月だけで管理し飛行時間の上限を設けていない唯一の米国航空会社だったと指摘しています。摩耗は飛行時間に連動するので、機体の使用頻度が上がれば、同じ 8 か月でも摩耗は大きくなります(§2.3.6.2、p.146–148)。 潤滑間隔とエンドプレイ点検間隔は同時に延びていて、報告書は、過度の摩耗を見つける機会がそのぶん減っていったと述べています(p.148)。
二条ねじは亀裂には効くかもしれないが、摩耗には効かない
最初の節の設計前提に戻ります。ねじ山 1 本が丸ごと壊れたら、2 本目が引き継ぐ。この設計は 1 本のねじ山の亀裂がもう 1 本に広がるのを防げるかもしれませんが、摩耗には成り立ちません。NTSB によれば、2 本のねじ山は飛行中つねに同時に荷重を受け、同じ摩耗を受けます。 二条ねじは 1 本の亀裂がもう 1 本に広がるのを防ぐかもしれませんが、2 本とも一緒に削られます。報告書の結論は一文で「does not provide redundancy with regard to wear」です(§2.6.1、p.163、finding 39)。 一般の標準ボルトがほとんど一条ねじである理由については、標準のボルトがほとんど一条ねじなのはなぜかをご覧ください。
ねじ山の数が必要より多いことにも限界があります。型式証明では 90% のねじ山損失を「必要より多いねじ山」で扱っていました。一方、報告書の解析は、荷重と摩耗が 32 巻きの間を少しずつ移っていくと述べており(p.130)、余分なねじ山は同じ摩耗を受けない独立した荷重経路ではありません。 FAA の型式証明技術者は公聴会で、摩耗はシステム安全解析でも構造上の検討でも故障モードとして扱われないと証言し、NTSB は SAE の規格が故障モード影響解析(FMEA)で摩耗を考慮するよう求めていると指摘しています(p.24、p.164、p.167)。 報告書の結論は、設計がナットのねじ山全損を致命的な単一故障として扱っておらず、フェールセーフ機構がなかったことが事故の一因だというものです(finding 40)。
事故後の耐空性改善命令は、潤滑を 650 飛行時間ごと、エンドプレイ点検を 2,000 飛行時間ごとにし、計測値の報告を求めました(p.105–106)。それでも NTSB は 2,000 時間では足りない可能性があるとしています。 ハワイアン航空では、ブラスト材が混入したナットの摩耗速度が約 0.015 インチ/1,000 時間でした。NTSB は、仮にこれが 0.040 インチの基準をぎりぎり下回って出場し、その速度で摩耗し続けたとすると、2,000 飛行時間後にエンドプレイは約 0.069 インチ、次の点検が抜けるか不適切に行われて使われ続ければ、さらに 2,000 時間後に約 0.099 インチになると試算しています。 報告書は別に、解析ではナットのねじ山が摩耗量約 0.093 インチでたわみ始め、ねじ軸のねじ山を滑り越え始めると注記しています。これは摩耗量で、エンドプレイではないため、両者をそのまま比べることはできません(§2.4.2、p.154–156、fn257)。報告書によれば、破損のメカニズムがわかっている場合の業界慣行は、予測される破損までに少なくとも 2 回の完全な点検周期を残すことで、メカニズムが不確かなら余裕をさらに大きくします(p.155)。
報告書は結論の中に、点検間隔より根本的な原則も書いています。単一の故障が致命的な結果を招きうる場合で、その結果をなくす実用的な設計があるなら、故障の防止を整備と点検だけに頼るべきではない、というものです(finding 41、p.180)。
一般の摩耗するねじの組み合わせに当てはめるなら
ここからは当サイトの読み方で、報告書の勧告ではなく、航空機の整備指針でもありません。報告書が扱っているのは飛行操縦系統の 1 組のジャックスクリューで、その結論をほかの機械のねじの組み合わせに当てはめるのは当サイトの推論です。
- 強度の倍率は計測の代わりにならない。Boeing の証言にある新品で 15 倍超、基準で 10 倍という数字は、ある摩耗状態で残る強度を示します。その状態に達するまでの時間は摩耗速度で決まり、この事例では期間平均の摩耗速度が想定の約 12 倍と見積もられています。
- 間隔は使用量に合わせる。報告書は、使用量に応じて劣化し、最大使用量も別に定めていない項目を、暦月だけで管理すべきではないと判断しています(p.148)。ほかの機械なら、運転時間、ストローク数、回転数がこれに当たります。これは当サイトの推論です。
- 読みはすべて残す。事故前は、基準内のエンドプレイの読みを記録する必要がありませんでした(p.39 fn82、p.23 fn49)。0.033 インチという 1 つの読みからは速度を計算できず、比べられる過去の読みがなければ、それまでの変化を確かにさかのぼることもできません。NTSB は、機番とジャックスクリュー組立品の製造番号ごとにエンドプレイを追跡し、機体ごとの摩耗速度を計算・記録するよう、FAA が事業者に求めるべきだと勧告しています(p.156)。「基準を超えたかどうか」だけでは速度は見えません。
- 計測器もねじの組み合わせである。一部の試験で自作治具の読みが低く出ており、報告書はねじのかみ合いが長く摩擦が大きいことが原因と推測していますが、毎回低かったわけではありません。トルクで力をかけて変位を測るとき、間にあるねじの摩擦が結果に入り込む可能性があります(当サイトの推論)。
- 二条ねじは摩耗の冗長性にならない。この組立品の 2 本のねじ山は同じ摩耗環境にあり、報告書は摩耗による破損に対して独立した冗長性を持たないと結論づけています。
一般の締結部品の再使用について、この報告書は結論を出していません。計測の観点からは、当サイトの再使用は測るものであって、数えるものではないで扱っています。
このページから言えないこと
このページは報告書のうち、ねじ山の摩耗に関わる部分だけを扱っています。運航乗務員の対応、自動操縦、運航管理、航空会社の組織や FAA の監督については報告書に多くの記述がありますが、このページでは論じず、評価もしません。 0.012 インチ/1,000 時間は、報告書が 0.033 インチと仮定した総摩耗 0.133 インチを使って見積もった期間平均で、計算式の全体は書かれておらず、期間中の実際の速度が一定だったとは限りません。 最後のエンドプレイの読みが治具のせいで狂っていたかどうかも、報告書は判断できないとしています。このページで使った資料の中にも、食い違う記載があります。8 か月に相当する飛行時間が約 2,550(p.32、p.146)と約 2,250(p.142)、 最後の潤滑日が 1999 年 9 月 24 日(p.50)と 9 月 14 日(p.145)です。このページは 2,550 を使い、日付は 9 月とだけ書いています。新品のねじ山の厚さ 0.15 インチの測定位置も、谷の径(p.22)と外径(p.129 fn213)で食い違い、表 4 の 0.0174 インチの行は 1 巻きの値と合計が合いません。摩耗率の別の表し方(p.146 fn246)は 0.15 インチのねじ山の厚さを基準にすると合わないため、引用していません。 耐空性改善命令、MSG-3 文書、Douglas のメモは原文を読んでおらず、内容は NTSB 報告書からの孫引きです。アクメねじのねじ山規格は読んでいないため、ねじ山の角度、ピッチ、基本寸法は挙げていません。 インチと mm、lb(重量ポンド)と kN の換算、破片が新品の 8.7% と 11.6% という比率、30,000 時間と 5,000 時間の仮の計算は当サイトによるものです。7 番目の節は当サイトの読み方で、報告書は航空機以外の機械について結論を出していません。
この記事は手順 2、ねじを扱います。全体の順序は相手材、ねじ、頭部、駆動部、表面処理、書類で、これを崩すと微調整ではなく手直しになる理由はねじの決め方にあります。
よくある質問
エンドプレイ 0.040 インチという基準はどこから来たのですか?
DC-9 の就航から 1 年でナットの摩耗が想定より速いことがわかり、Douglas が実物大の試験を行って、エンドプレイ 0.040 インチ以内ならフラッターなどの構造上の問題を起こさないと判断し、交換基準にしました。新品のエンドプレイは 0.003〜0.010 インチです。報告書の換算では、エンドプレイ 0.040 インチはねじ山の厚さの約 22% の摩耗に当たります。公聴会で Boeing は、0.040 インチまで摩耗してもねじ山の強度は最大設計荷重の 10 倍あると述べています。(NTSB/AAR-02/01、§1.6.3.3.2、p.38–39、証言 p.23、22% は p.129)
なぜナットをねじ軸より軟らかい材料にするのですか?
報告書が引く 1965 年の故障解析には、設計がそうなっていることしか書かれていません。ナットはねじ軸より軟らかいアルミニウム青銅で、ねじ山は摩耗するように設計され、組立品の中で目立って摩耗するのはナットだけです。材料選定の理由は報告書に書かれておらず、このページでも補いません。当初の設計には定期的な摩耗点検がなく、就航後に摩耗が速いとわかってからエンドプレイ点検が加わり、潤滑と合わせて摩耗を管理するようになりました。
ねじ軸とナットは二条ねじなので、冗長性があるのでは?
亀裂の進展を隔てる働きはあるかもしれませんが、摩耗に対してはありません。NTSB は、2 本のねじ山は飛行中つねに同時に荷重を受け、同じ摩耗を受けるので両方とも摩耗で破損しうると指摘し、二条ねじは摩耗に関して冗長性を持たないと結論づけています。
グリースの銘柄を変えたことが原因ですか?
報告書はその可能性を除外しています。摩耗試験では、新たに使った Aeroshell 33 の摩耗速度は従来の Mobilgrease 28 より低く、摩耗が目立って増えたのは潤滑なしの場合だけで、最大で約 10 倍でした。事故機のナット内にはグリースがまったくなく、報告書は原因を潤滑不足としています。
参考資料
- National Transportation Safety Board(2003。2002-12-30 採択)—— Loss of Control and Impact with Pacific Ocean, Alaska Airlines Flight 261, McDonnell Douglas MD-83, N963AS, About 2.7 Miles North of Anacapa Island, California, January 31, 2000. NTSB/AAR-02/01
- 最初の数山がいちばん多く受けるが、その割合は誰にも言えない
- 標準のボルトがほとんど一条ねじなのはなぜか
- 再使用は測るものであって、数えるものではない
NTSB 報告書は全文を当サイトで読んでいます。ページ番号は報告書自体のものです。耐空性改善命令、メーカーの整備計画文書、Douglas のメモは報告書からの引用で、原文は読んでいません。インチと mm、lb(重量ポンド)と kN の換算、および「仮」と記した計算は当サイトによるものです。「一般の摩耗するねじの組み合わせに当てはめるなら」の節は当サイトの読み方で、報告書は航空機以外の機械について結論を出していません。
お問い合わせ
一般機械用のねじやナットについてのお問い合わせでしたら、ねじの種類、寸法、材質、使用条件をお知らせください。その条件をもとに対応の可否をご案内します。航空機部品は耐空性に関する規定に従って調達する必要があり、このページの範囲外です。
お見積り依頼
品名と数量をお知らせください。可否、納期、価格をご返信します。
直接メールでも承ります sales@tigerfasteners.com