MDF の木口にねじは効くか:ある試験では 18 mm MDF の木口の木ねじ保持力が 2,774 N でパーティクルボードの 2.4 倍、ただし壊れるときの割れは大きい

2021 年、Yahoo!知恵袋に、大きさの違う 2 枚の MDF の板をねじで止めたいが、MDF は「ねじ止めには不向き」と聞いた、あとで緩んだり外れたりしないか、という質問が載りました。回答には、MDF は粘りがなく欠けやすい、木口はねじが効かない、というものがありました。2014 年にトルコのムーラ大学の Yuksel 氏らが BioResources に発表した試験は、ちょうど木口の木ねじ保持力を測っています。18 mm MDF の木口は 2,774 N、同じ厚さのパーティクルボードは 1,139 N でした。ただし同じ論文には、接合部が壊れるとき、MDF のほうがねじの周りで木口が大きく割れたことも記録されています。読了まで約 8 分。

板の端面にねじがねじ込まれ、周りの木口に沿って割れが入っている(模式図)。

2021 年の質問

質問は 2021 年 2 月 9 日、Yahoo!知恵袋の DIY カテゴリに投稿され、当サイトが読んだ時点で 18,728 回閲覧されていました。 大きい板が 19.5 × 30 cm、小さい板が 6 × 30 cm の MDF をねじで止めたいが、MDF はねじ止めに向かないと聞いた、あとで緩んだり外れたりしないか、という内容です。 写真が付いていますが、当サイトが読んだテキスト版では見えないため、どの面に止めるのかはここでは断定しません。板厚も書かれていません。

回答は 3 件で、どれも慎重です。ベストアンサーは、MDF は木の繊維と合成樹脂を押し固めたもので粘りがなく、欠けたり剥げたりしやすいので、 ねじ止めで割れるおそれがあり、うまく止まっても部分的に力が加わると穴の周囲にヒビが入る、としています。 下穴をあけてダボと接着剤で結合するか、小さい方を木材にして大きい板に貫通穴をあけて止める方法を勧めています。 2 件目は、MDF の木口(断面方向)はねじが効かない、木口に限らず MDF はねじが苦手だ、という回答です。3 件目は、下穴をあけて接着剤を注入してからねじ止め、の一文でした。

どれも経験にもとづく回答です。Yuksel 氏らの論文には数字があり、回答を裏づける部分と、一見逆に見える部分があります。

試験の方法

この論文の主題はキャビネットの剛性です。3 種類の板で L 字型コーナー接合部と 4 枚構成のキャビネットを作り、接合はすべて木ねじのみで接着剤は使っていません。 その準備として、各板の木口と板面の木ねじ保持力も測っています。

試験条件(Yuksel ほか 2014、EXPERIMENTAL と Methods)
項目条件
板パーティクルボード(PB)と MDF は各 18 mm・16 mm、オクメ合板(PW)は 18 mm・15 mm
木ねじ4 × 50 mm 鋼製十字穴付き木ねじ、谷径 2.4 mm、外径 4.0 mm、ピッチ 1.8 mm
下穴径は谷径の約 80%、深さはねじ込み深さの約 75%
接合部面材 320 × 200 mm。ねじは突付け材の板厚中心に 1 接合部あたり 3 本、接着剤なし。各条件 5 体
保持力試験Erdil ほか(2002)の手順による。下穴は組立てと同じ。2 mm/min で引き抜き、最大荷重を保持力とする
調湿20 ± 2 °C、相対湿度 65 ± 3%

ここでいう木口は板の切断面(端面)、板面は広い面です。L 字型接合部では、ねじは面材の板面を貫通して突付け材の木口にねじ込まれます。破壊には面材側のねじ頭のめり込みと、突付け材側の引抜け・割れの両方が関わり、論文はそれぞれの寄与を分けていません。

木ねじ保持力:木口では MDF がパーティクルボードを上回る

木ねじ保持力(Yuksel ほか 2014、Table 4。括弧内は変動係数 %)。比は当サイトの換算
板木口(N)板面(N)木口/板面密度(g/cm³)はく離強さ(N/mm²)
18 mm PB1,139(21)912(13)1.250.580.27
16 mm PB1,711(9)1,030(6)1.660.660.47
18 mm MDF2,774(8)1,779(8)1.560.750.75
16 mm MDF2,623(4)1,420(10)1.850.730.97
18 mm 合板3,017(14)2,367(9)1.270.590.85
15 mm 合板3,614(22)2,151(16)1.680.591.14

18 mm 同士では、MDF の木口はパーティクルボードの 2.4 倍です(当サイトの換算)。16 mm 同士では 1.5 倍にとどまります。 この 16 mm のパーティクルボードは 18 mm のものより密度もはく離強さも高く、密度 0.66 対 0.58、はく離強さ(IB、板の層間を引きはがす強さ)0.47 対 0.27 N/mm² でした。厚さと板の試料が同時に変わっているため、差が厚さ、密度、IB、その他の製品差のどれによるのかはこの論文では分けられません。 つまり「2.4 倍」はこの 2 ロットの 18 mm 板の差で、別のパーティクルボードなら違う値になりえます。MDF の 2 つの厚さの木口の差は有意でないと著者は書いています。

著者は Vassiliou(2005)を引用し、同じ種類のねじで MDF の保持力はパーティクルボードより最大 40% 高いとしています。当サイトはこの文献を読んでいないので、引用の紹介にとどめます。

表にはもう一つ、よく言われることと逆の結果があります。6 種類すべてで木口の値が板面より 1.25〜1.85 倍高いのです。これは後の節で取り上げますが、そのまま読むことはできません。

接合部の強さは保持力に連動する

L 字型コーナー接合部の曲げモーメント容量とキャビネットの剛性(Yuksel ほか 2014、Table 5、平均値)
板引張(N·m)圧縮(N·m)キャビネット剛性(N/mm)
18 mm PB47.4936.6868.91
16 mm PB58.0656.0083.25
18 mm MDF91.6088.4199.18
16 mm MDF96.1982.36103.1
18 mm 合板96.1899.4879.53
15 mm 合板99.0079.61196.6

18 mm MDF の接合部の引張側モーメントは同じ厚さのパーティクルボードの 1.93 倍、圧縮側は 2.41 倍で(当サイトの換算)、木口の保持力の差と同じ桁です。 著者は、キャビネットの剛性には板のせん断弾性係数よりも木口の木ねじ保持力とはく離強さのほうが強く影響する、つまり板そのものより接合部がキャビネットの剛さを決める、と解釈しています。

剛性の欄は注意して読む必要があります。論文の多重比較では 15 mm 合板だけが別のグループで、残り 5 種類は同じグループです。 16 mm と 18 mm の PB・MDF のあいだで、キャビネット剛性の差は統計的に区別されていません。

壊れ方:MDF は割れ、パーティクルボードはえぐれる

論文が記録した破壊の経過は 3 種類の板で共通です。接合部は 60〜90 秒かけてゆっくり開き、急に壊れることはありませんでした。 まずねじ頭が面材にめり込み、続いてねじが心材の一部を伴って突付け材の木口から抜け、ねじの周りの木口が割れました。

3 コマの断面図。上下 2 枚の板が 1 本のねじで T 字形に止められている。左はねじ頭が上の板にめり込み周りに細いひび、中央は下の板が下へ引き離されてねじ山に屑が付き、上下に矢印、右は下の板にねじに沿った赤い割れ。
L 字型コーナー接合部が荷重で壊れる順序:ねじ頭が面材にめり込み、続いてねじが心材を伴って突付け材の木口から抜け、ねじの周りで木口が割れる。論文では目視で MDF の割れがパーティクルボードより大きいと記録されており、割れの寸法は測られていない。模式図・縮尺不同。

違いは後半です。パーティクルボードでは抜けたねじに付いてくる心材が多く、MDF ではねじの周りの割れがパーティクルボードより大きくなりました。 言い換えると、パーティクルボードはねじ山が内層をえぐり取る形、MDF はより大きな力に耐えるものの、耐えきれなくなると木口に沿って割れる形です。 知恵袋のベストアンサーが書いた「穴の周囲にヒビ」と同じ現象です。ただし論文は割れの長さや幅を測っておらず、「大きい」は著者の目視による記述です。

パーティクルボードの木口については、当サイトのカラーボックスを組み直したらねじが効かないで別の論文を読みました。 木口ではねじ部の大半が密度の低い内層に入り、同じ径で長くするほうが太くするより効果的でした。そちらには MDF がないので、この頁で補います。

木口のほうが板面より強い?まず方法を確認する

知恵袋では木口はねじが効かないと答えていますが、Table 4 ではすべての板で木口が板面を上回っています。字面どおりなら「MDF は板面より木口のほうがよく効く」ことになります。 原文で試験方法を探すと、木口と板面の保持力は「Erdil ほか(2002)の手順により」測定し、下穴の径と深さは組立てと同じ、という一文しかありません。 ねじ込み深さ、試験片の寸法、各条件の本数は書かれていません。Erdil ほかの原文は当サイトでは読めていません。

問題はねじ込み深さです。板面側ではねじは最大でも板厚、つまり 15〜18 mm しか入りませんが、木口側ではもっと深く入れられます。 少なくとも以前の試験に、そう設計したものがあります。当サイトが読んだ藤元・森(1983)のパーティクルボード試験では、50 mm の木ねじを木口に 30 mm、板面には板厚と同じ 20 mm ねじ込んでいます。 Yuksel 氏らも木口側を深くしていたのなら、Table 4 は同じ深さどうしの比較ではなく、木口が高い理由の一部は深く入った分かもしれません。板の方向や密度分布も同時に影響している可能性があります。 原文に記載がないため、当サイトにはそうだったかどうか判断できません。

Table 4 は同じ欄の中で板どうしを比べる(木口どうし、板面どうし)のには使えますが、木口と板面を比べるのには使えません。

現場での判断手順

DIY で MDF どうしをねじ止めする方

  1. ねじが入るのが木口か板面かを確認します。大きい板の板面から小さい板の木口へねじ込むなら、論文の L 字型接合部と同じ形で、ねじは小さい板の木口に効いています。
  2. ねじは板厚の中心に打ちます。論文では突付け材の板厚中心にねじ込んでいます。4 mm のねじを 18 mm の木口に入れると両側に 7 mm ほどしか残りません(当サイトの換算)。中心からずれると側面へ割れやすくなるかどうかは論文で試験されておらず、当サイトの幾何的な注意です。
  3. 下穴をあけます。論文の試験体はすべて下穴ありで、下穴なしの比較はないため、論文の条件に合わせた手順であり、効果が論文で示されたわけではありません。論文の下穴は谷径の約 80%、深さはねじ込み深さの約 75% です。論文の 4 × 50 mm の木ねじなら下穴は約 1.9 mm、18 mm の面材を貫通して頭が面一になれば木口へのねじ込みは約 32 mm、下穴の深さは約 24 mm です(当サイトの換算。論文は実際のねじ込み深さを書いていません)。
  4. ねじ頭をめり込むまで締めません。論文の接合部が荷重で壊れるとき、最初に起きたのはねじ頭の面材へのめり込みでした。取付け時にめり込ませると接合部が弱くなるかは論文で試験されていません。頭が面一になったら止めることを当サイトは勧めます。着座からねじ山破壊までのトルクの幅はカラーボックスを電動ドライバーで組むとねじ山はなめるのかで扱っています(パーティクルボードの板面)。
  5. 荷重がかかるなら接着剤の併用や接合方法の変更を検討します。ベストアンサーと 3 件目の回答は下穴と接着剤を勧め、ベストアンサーはさらにダボや木材への変更も挙げています。2 件目は MDF はねじが苦手だと述べただけです。Yuksel 氏らの接合部はすべて接着剤なしで、接着剤でどれだけ上がるかは試験していません。藤元・森(1983)はパーティクルボードの L 字型接合部で、接着剤と木ねじの併用により強度・剛性とも向上したと報告していますが、MDF のデータはありません。

板物家具を設計する方

  1. 木口の木ねじ保持力とはく離強さで板を比べます。論文はこの 2 つがせん断弾性係数よりキャビネットの剛性を反映するとしています。厚さだけでなく、この 2 項目の実測値をメーカーに求めます。
  2. 厚さから強さを推定しません。この論文では 16 mm のパーティクルボードが 18 mm より保持力も接合部強度も高く、そのロットは密度とはく離強さも高めでした。厚さと板の試料が同時に変わっているので、原因が厚さか板そのものかはこの論文からは判断できません。
  3. MDF の接合部は割れ対策を考えます。MDF は保持力が高い一方、壊れるときは木口に沿って割れます。板端からどれだけ離せば足りるかは論文の本文に書かれていないので、自社の板とねじで試験します。
  4. 自社で保持力を測るときは、木口と板面を同じねじ込み深さにそろえます。そうしないと Table 4 のように比較できない 2 列になります(当サイトの提案。論文は木口と板面を同じ深さにしたかどうかを報告していません)。

無垢材の下穴の規則は測り方が異なります。下穴の規則は樹種を名指しし、谷径から測るをご覧ください。 無垢材の木口での引抜きの低減は釘とねじの引抜き式にまとめています。

この頁から言えないこと

MDF は板面より木口のほうがねじが効く、とは言えません。論文は保持力試験のねじ込み深さ、試験片寸法、本数を書いておらず、木口と板面の深さが違っていた可能性があります。 MDF の保持力がパーティクルボードの 2.4 倍だとも言えません。それは 18 mm の 2 ロットの比で、16 mm では 1.5 倍です。各板に何製品・何ロットを使ったかも論文には書かれていません。 2,774 N はこのロットの MDF、この 4 × 50 mm の木ねじ、この下穴、不明な深さでの値で、MDF の設計値ではありません。 「MDF の割れが大きい」は目視の記述で、寸法はありません。試験は静的荷重のみで、接着剤なし、分解と再組立てなし、湿度の変化もありません。 論文の要旨は 16 mm のキャビネットが 18 mm より剛いとしていますが、Table 5 のグループ分けでは PB と MDF の厚さによる差は有意ではありません。 L 字型接合部とキャビネットは各条件 5 体だけで、キャビネットの剛性は終局荷重の 70〜80% までしか載荷していません。 Vassiliou(2005)の 40% は原文を読んでいません。ねじの縁距離や許容荷重について、当サイトが示せる数字はありません。

この記事は手順 1、相手材を扱います。全体の順序は相手材、ねじ、頭部、駆動部、表面処理、書類で、これを崩すと微調整ではなく手直しになる理由はねじの決め方にあります。

よくある質問

MDF の木口にねじを打っても大丈夫ですか。

Yuksel ほか 2014 年の試験条件(下穴あり、板厚の中心)では、MDF の木口でも相応の保持力が測られていますが、そのまま使える許容荷重は論文にありません。この試験では、18 mm MDF の木口の木ねじ保持力は 2,774 N、同じ厚さのパーティクルボードは 1,139 N で、4×50 mm の木ねじで組んだ L 字型接合部の曲げモーメント容量は MDF がおよそ 2 倍でした。ただし壊れるときは MDF のほうが木口に沿って大きく割れました。

論文ではなぜ木口の保持力が板面より高いのですか。

原文に説明はなく、ねじ込み深さも書かれていません。板面には最大でも板厚(15〜18 mm)しかねじ込めませんが、木口にはもっと深く入れられます。深さが違えば同じ条件の比較にならないので、この列は木口のほうが効く証拠にはなりません。

MDF にねじ止めするときの下穴の径は。

この論文では谷径の約 80%、深さはねじ込み深さの約 75% の下穴を使っています。論文の 4×50 mm の木ねじは谷径 2.4 mm なので、下穴は約 1.9 mm です(当サイトの換算)。ほかのねじでこの比率に合わせるなら、そのねじの谷径から計算します。この比率がほかのねじと MDF の組合せに合うかは、論文では検証されていません。

ねじで組むなら MDF とパーティクルボードのどちらが向いていますか。

この試験では、同じ厚さなら MDF のほうが保持力も接合部の強さも高く、合板はさらに高い値でした。ただし 16 mm では MDF はパーティクルボードの 1.5 倍にとどまり、差は購入したロットの密度とはく離強さで変わります。

参考資料

論文全文は当サイトで読み、試験条件と Table 3・4・5 の数値は原文どおりです。木口/板面の比、MDF/パーティクルボードの比、モーメントの比、1.9 mm の下穴と 32 mm のねじ込み深さは当サイトの換算です。論文が引用する Erdil ほか(2002)と Vassiliou(2005)は読んでいません。藤元・森(1983)は、木口と板面でねじ込み深さが違う試験の例と、パーティクルボード接合部での接着剤併用の結果として挙げています。「現場での判断手順」は論文の条件をもとに当サイトが整理したもので、論文による検証はありません。

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