ワッシャーが 1 枚ないと、ナットは穴を通り抜ける:那覇で炎上した中華航空 120 便、ダウンストップ・アセンブリーのナット外径 0.408 インチは押さえるはずの穴より小さかった
ワッシャーは組立品の中で最も目立たない部品で、座面の圧力を分散し表面を保護する脇役と見られがちです。しかし組立品によっては、部品をその場にとどめる役を担っています。2007 年 8 月 20 日、中華航空 120 便(ボーイング 737-800、B18616)は沖縄の那覇空港に着陸し、スポットに停止した後、右主翼から漏れた燃料に火がつきました。搭乗していた 165 人は全員が脱出して死傷者はなく、機体は焼損しました。運輸安全委員会(JTSB)の報告書は、その起点を右主翼スラットのメイン・トラック後端にあるダウンストップ・アセンブリーまでたどっています。その部品群の中で、ナットの直径は実測 0.408 インチで、押さえるはずのダウンストップの穴 0.414 インチより小さく、ナットとその穴の間で穴の口をまたいでいたのは 1 枚のワッシャーでした。この記事では報告書に沿って、これを締結部品の積み重ねとして読みます。8 個の部品の並び、ワッシャーが 1 枚ないとなぜナットが通り抜けるのか、ワッシャーがなくてもトルク・レンチがなぜ設定値に達し得るのか、そのワッシャーがどの作業で落ちたのか、報告書がこの設計をどう評価したのか、の順に見ていきます。読了まで約 9 分です。
燃料が漏れた穴は、タンクの中のアルミの箱にあった
まず、締結部品が登場するところまで経過をたどります。報告書の時系列では、同機は 10 時 26 分 52 秒に滑走路 18 に着陸し、右主翼の最も内側にある第 5 スラットが 10 時 27 分 49 秒に格納を始め、10 時 28 分 09 秒に格納を終えました。 10 時 31 分 57 秒に 41 番スポットで停止し、10 時 32 分 53 秒ごろ右エンジン後方で火災が発生しました。燃料の左右差も、着陸後に漏れたという推定を支えています。着陸時には右翼タンクが左翼より 10 ポンド多く、スポット停止時には 70 ポンド少なくなっていました。
スラットが動くと、湾曲した 2 本のメイン・トラックが前後に動きます。スラットを完全に格納すると、メイン・トラックの後端は主翼前桁の穴を通って後ろへ下がります。前桁は燃料タンクの前壁なので、 各メイン・トラックの後ろには燃料タンクの中へ突き出した箱があり、報告書はこれをトラック・カンと呼んでいます。今回損傷したものはアルミ合金製で、長さ 220 mm、最大高さ 80 mm、最大幅 65 mm です。 メイン・トラックの後端にはダウンストップ・アセンブリーが付いていて、スラットが最も前に出たとき、主翼前縁の固定側にある別のダウンストップに当たってスラットを止めます。
事故の 2 日後の 8 月 22 日、第 5 スラット内側メイン・トラックのトラック・カンの下面に破孔が見つかりました。後端から約 60〜100 mm の位置で、き裂を含めて最大長さ 41 mm、最大幅 23 mm、内側から押し出された跡がありました。 ナットを先端にした部品が破孔から燃料タンクの中へ突き出していました。報告書の推論は確度の段階が分かれています。「ダウンストップ・アセンブリーがメイン・トラックから外れてトラック・カンの中に落ち、スラットを格納したときメイン・トラックに押されて、ナット側の端がカンの底を突き破った」部分は、最も確度の高い「認められる」です。 破孔ができたのが那覇着陸後の地上走行中であること、漏れた燃料が停止後に右エンジンの高温部に触れて発火したことは、一段低い「推定される」です。
つまりこれは、ボルトとナットの組がメイン・トラックから外れた事故です。回収時にナットはまだボルトに付いていて、ナットがボルトから回り外れて落ちたのではありません。ナット側のワッシャーとダウンストップは別々に見つかっています。ナットが付いたまま外れた理由を知るには、まず部品の並びを見る必要があります。
8 個の部品のうち、ナットは穴より小さく、穴の口をまたぐのはワッシャー
報告書 2.17.3 によれば、ダウンストップ・アセンブリーは 6 品目 8 個の部品からなり、ボルト頭側から順に、ボルト、ワッシャー、ダウンストップ、スリーブ、ストップ・ロケーション、ダウンストップ、ワッシャー、ナットです。 六角形のダウンストップはボルト穴が偏心していて、回転角度によってスラットが止まる位置を 3 段階に調整できます。スリーブは両端で 2 個のダウンストップの角度をそろえ、ストップ・ロケーションはダウンストップがメイン・トラックに対して回らないようにします。
宇宙航空研究開発機構(JAXA)が回収部品を計測しています。「通り抜けるかどうか」に関わる寸法を並べると次のとおりです。
| 部品と部位 | 計測値 | 規格 |
|---|---|---|
| ナットの直径 | 0.408(約 10.4) | 0.386〜0.420 |
| ナット側ダウンストップの穴(位置決め部、最も狭い部分) | 0.414(約 10.5) | 0.410〜0.420 |
| メイン・トラックの穴 | 0.433(約 11.0) | 0.4395 ± 0.0025 |
| ナット側ワッシャーの外径 | 0.625(約 15.9) | 0.620〜0.640 |
| ナット側ワッシャーの内径/厚さ | 0.256/0.103 | 0.250〜0.270/0.100 |
言い換えると、ナットはナット側ダウンストップの穴の最も狭い部分より 0.006 インチ(約 0.15 mm)小さく、ダウンストップの穴はメイン・トラックの穴より小さい。ナット側で穴の口をまたぎ、ナットがダウンストップとスリーブを受け止められるようにしていたのは、外径 0.625 インチのワッシャーでした。 報告書は規格値でも比べていて、ナットが規格の最大値なら穴の狭い部分より 0.000〜0.010 インチ大きいものの、規格値どうしでも通る可能性があり、回収された実物では実際に通ることが確認されています。
仮の場面で考えると分かりやすくなります。仮に二面幅が 10.5 mm より大きいナットで 10.5 mm の穴を押さえるなら、ナット自身が穴の口をまたげます。しかしナットの外形そのものが穴より小さければ、ナット自身ではその穴を止められず、ワッシャーに頼るしかありません。 このアセンブリーのナットは後者でした。報告書はナットの寸法を「直径」で記録しており、このページはナットの形状には立ち入らず、0.408 が 0.414 より小さいという数字だけを使います。
報告書は JAXA の調査結果(2.16.1 ⑦)で、ワッシャーが欠落していると、ナット外径、ダウンストップ内径、メイン・トラック孔径の関係から、ナットがボルトに付いていてもナット側のダウンストップがアセンブリーから外れ、アセンブリーがメイン・トラックから脱落する、としています。 報告書 3.9 はこれを、ナット側ワッシャーの欠落、ナット側ダウンストップの脱落、アセンブリーのメイン・トラックからの脱落、という 3 段階にまとめ、「推定される」(断定できないが、ほぼ間違いない)としています。
ワッシャーがなくても、トルク・レンチはなぜ設定値に達するのか
ここで疑問がわきます。ワッシャーがなければ、ナットを締めるときに気づくのではないか。報告書の答えは、トルク・レンチはそれでも設定値に達し得る、というものです。
回収時、ボルト頭部座面とナット座面の間隔は 1.242 インチ(約 31.5 mm)で、ナットはアセンブリーが正常にメイン・トラックに取り付けられた場合より外側にありました。報告書 3.8 は二つのケースを挙げています。 一つは取付時にこの位置で締付けを終えた、もう一つは取付時にトルクを掛けたが運航中に緩んでこの位置へ移動した、というものです。後者について報告書は、ワッシャーが入っていない状態でナットを締めると、 ダウンストップとスリーブに当たることなくボルトのねじ部の端まで締め付けることになり、「セットされたトルクで締めたようになる」と書いています。
報告書は、ナットがねじ部の端まで進み、設定トルクで締めたように見える状態になると書いているだけで、端での抵抗がどう生じるかは説明しておらず、レンチの形式も記載していません。以下は当サイトの工学的な読み方です。トルク・レンチが読むのは回転抵抗で、 その読みだけでは、抵抗が部品を締め付けた結果か、ナットがねじの終わりまで進んだ結果かを区別できません。したがってトルクの読みだけでは、部品がそろっているか、想定どおり締め付けられているかは確認できません。 回収時に締付け方向で計測したトルクは 26.55 in-lb(約 3.0 N·m)で、台湾の飛航安全委員会(ASC)は報告書に添付された意見書で、これはアセンブリーが外れて締付け状態にないまま計測した残留トルクだと書くよう提案しています。
二つのケースのどちらだったか、報告書は判定しておらず、このページも判定しません。口述によればレンチは 70 in-lb にセットされ、作業記録に不具合等は記録されていません。当サイトがここから言えるのは、このアセンブリーでは、この二つの記録だけではワッシャーがその時点で入っていたことを証明できない、という点です。 トルクと締付け力の関係は規定トルクで締めても、締付け力が合っているとはかぎりませんを参照してください。
報告書の推定:ワッシャーは「ナットの緩み止め」の作業中に落ちた
報告書は、このワッシャーを製造時に取り付けられたものと推定しています。いつなくなったのか。報告書が推定する答えには皮肉な面があります。ナットの緩みを防ぐための作業中に、です。
話はもっと前から始まります。航空機製造会社によれば、平成 17 年(2005 年)12 月までにダウンストップ・アセンブリーのナット脱落の報告が 2 件あり、うち 1 件は第 5 スラット内側トラック・カンからの燃料漏れでした。 緩んだナットがトラック・カンの中に落ち、メイン・トラックに押されてカンに破孔を作ったものです。ボーイング社はこれを受けて 2005 年 12 月 15 日付でサービスレター 737-SL-57-084 を出し、 適当な整備の機会にナットを外し、ボルトのねじ部に緩み止めを塗り、新品のナットを 50〜80 in-lb(約 5.6〜9.0 N·m)で締め付けることを推奨しました。
中華航空は改訂版 737-SL-57-084-A(2006 年 3 月 28 日付、実施内容の変更なし)にもとづいて作業指示書を作成し、2007 年 7 月 6 日、桃園での C 整備の期間中に第 5 スラット内側のメイン・トラックについてこの作業を行い、作業記録に不具合等は記録されていません。他のメイン・トラックへの作業指示は出されていませんでした。 台湾民用航空局の調査で、整備士と整備監督者の口述によれば、作業の経過は次のとおりです。整備士はトルク・レンチを 70 in-lb にセットした(指定値は 50〜80 in-lb)。作業指示書には示されていなかったが、補助者とともにメイン・トラックの前端を外してトラックを動かせるようにし、ダウンストップ・アセンブリーをアクセス孔の位置に合わせた。 補助者がボルト・ヘッドを固定し、整備士がナットを外し、ボルトと新品のナットにブラシでロッキング・コンパウンドを塗り、ナットを 70 in-lb まで締めた。アセンブリー全体は外していない。アクセス孔はとても小さく、作業中にアセンブリーは見えない。 作業終了後はワッシャーにはもう注意を払わず、何かが落ちたかどうかも気付かなかった。作業時にフロント・ボルトを外す必要があったことは監督者に報告せず、作業終了後に緩みや隙間があったかどうかは思い出せない。整備士は作業指示書にスタンプを押して署名し、監督者に渡しました。作業区域はすでに復旧していたので、監督者は作業指示書を点検し、スタンプを押して署名しました。
回収されたワッシャーは、メイン・トラックが前桁を通る穴の直下で見つかりました。形状は正常で、片面にはナットとほぼ同じ大きさ、反対側の面にはスリーブ端面とほぼ同じ大きさの接触跡がありました。この使用の痕跡はアセンブリーに組まれていたことを裏付けますが、7 月 6 日の作業の後もそこにあったことまでは示しません。 製造会社には機体組立以降にこのアセンブリーを扱った記録がなく、中華航空にもこのナット交換以外の作業記録がないため、報告書 3.10 は、製造時に取り付けられたワッシャーが 7 月 6 日の緩み止め作業時に脱落したものと「推定される」としています。作業から事故までは約 1 か月半でした。
報告書 3.11 はこの作業について、アセンブリーは作業しにくい位置にあり、ナットの取り外しと取り付けは手探りで行わざるを得ず、作業中に部品が落ちやすかったと考えられる、と書いています。 サービスレター自体の問題にも触れています。作業指示の項目にはどのトラックで行うかが明示されておらず、直前の項目に第 5 スラットへの言及がありました。背景の項目には他の全ての箇所も同様に影響を受け得るとの記述があったものの、注意深く読まない限り第 5 スラットだけの作業と誤認する余地があった、と報告書は見ています。 また 2007 年 7 月 10 日付の改訂版 084-B では、第 5 スラットに言及した部分とナットの取り外しを指示した部分が削除されました。中華航空の作業の 4 日後のことで、改訂の理由は報告書に書かれていません。報告書は、ナットの取り外しを指示するサービスレターを作る時点で製造会社が作業の困難性を評価すべきであり、 運航者も自社の作業指示書を作る際に自ら評価し、作業後の部品状態の確認などの具体的な指示が必要かを検討すべきだった、としています。
ワッシャー 1 枚が欠けると組立品がとどまらない:報告書はこの設計をどう評価したか
作業でミスが起きることと、ミスが事故になることは別の話です。前の寸法表に戻ると、ナット側ではナットが穴より小さく、穴の口をまたぐのはワッシャーなので、ワッシャーが欠落すればアセンブリーをナットでその場にとどめることはできません。
報告書 3.12 は、ナット側ワッシャーが欠落するとダウンストップがアセンブリーから外れ、さらにアセンブリーが脱落する可能性があり、それがトラック・カンに破孔を作り、燃料漏れから火災につながる可能性があることが本事故で明らかになったとし、 ワッシャーが欠落するとアセンブリーの脱落を防止できない設計となっていたと考えられる、と結論づけています。「4 原因」では、この設計がアセンブリーの脱落に関与したと「推定される」と書いています。 ワッシャーがなぜ落ちたかについては一段低い「考えられる」で、作業しにくい位置であったにもかかわらずサービスレターと同社の作業指示でその点に十分な注意が払われず、作業者、検査者から作業の困難性について作業指示者に報告がなかったことを挙げています。
報告書に添付された台湾の飛航安全委員会(ASC)の意見書は、さらに踏み込んでいます。設計要因を「フェイルセーフ設計がなく、ワッシャー 1 枚の脱落による破局的な結果を防げなかった」と書き直すよう提案し、 サービスレターを受け取った運航者は、このダウンストップに独立した固定装置がない(did not provide separate locking devices)ことを知らなかった、と主張しています。これは ASC の意見で、JTSB の本文はこの文言どおりには書き換えられていません。
事故後の対応は早いものでした。米国連邦航空局は 2007 年 8 月 25 日に緊急耐空性改善命令 AD2007-18-51 を出し、同国の 737-600/700/700C/800/900/900ER 型の運航者にダウンストップ・アセンブリーの一斉点検を指示し、作業対象のトラックを全て(each)と明記しました。 台湾民用航空局は 8 月 24 日(CAA-2007-08-010)、日本の航空局は 8 月 23 日(TCD-7152-2007)にそれぞれ点検を指示しています。ボーイング社はダウンストップ・アセンブリーの設計を変更し、2008 年 8 月から新規製造機に適用し、既存機には 2008 年 12 月 15 日のサービスブリテン SB737-57A1302 で改修を指示しました。 新しい設計がどのようなものかは報告書に書かれておらず、このページでも推測しません。
締結部品の側から持ち帰れる四つのこと
以下は当サイトの読み方で、報告書が締結部品の利用者向けに書いた勧告ではありません。報告書の安全勧告は二つで、一つは米国連邦航空局に、ボーイング社がサービスレター等の整備作業指示を作る際に作業範囲を明確にし、アクセス性を含む作業条件を評価するよう指導することを、もう一つは台湾民用航空局に、中華航空が整備作業の計画と実施に当たって範囲を確認し、条件を評価し、誤作業防止策を着実に実施するよう指導することを求めています。
- その接合部で、ナットやボルト頭と穴の口の間を受け止めているのがワッシャーだけになっていないかを確かめる。ナットやボルト頭そのものが押さえる穴より小さいなら、ワッシャーは脇役ではなく、部品をその場にとどめている一枚です。ワッシャーの三つの寸法(内径、外径、厚さ)の読み方は座金の仕様の読み方を参照してください。
- トルクが設定値に達しても、部品がそろっているとは限らない。報告書が挙げた一つのケースでは、ワッシャーがなければナットはねじの端まで進み、設定トルクで締めたように見えます。これを補うには、構造とアクセス性に応じて部品の有無を確かめる方法を決める必要があり、積み重ねの高さ、ねじの突き出し量、部品の数はその候補です。もう一度締めても確認にはなりません。
- 緩み止めの作業そのものが、分解の機会になる。このアセンブリーには事故前からナット脱落の報告があり、対策はナットを外して緩み止めを塗り、新品に替えることでした。それは見えない場所で行われ、報告書はその工程でワッシャーが落ちたと推定しています。ねじ固定剤がどちらの緩みを止めるのかはねじ固定剤が直すのはどちらの緩みかを参照してください。
- ワッシャーがナットやボルトと一緒に動くかどうかは、設計で扱える問題である。工場でワッシャーを組み込んでおくねじについては組込みねじ:座金がなぜ工場で入っているのかで取り上げています。これは一般的な対比で、ボーイング社の新設計がこの方式かどうかは報告書に書かれていません。
このページから言えないこと
報告書は事故調査であって責任を問うためのものではありません。このページは報告書の安全上の分析を紹介するもので、個人の過失や法的責任を独自に判断しません。ナットが外側の位置にあった二つのケースのどちらだったかは、報告書が判定しておらず、このページも判定しません。 この作業が中華航空の規定する二重確認の対象(RII)だったかどうかは報告書に明記がなく、このページでは書きません。ナット BACN10YR4CM がどの種類の緩み止めナットか、12.55 mg の金属片がどこから来たかも、報告書は説明していません。 ボーイング社の新設計の内容は報告書に書かれていません。各国の命令は報告書の要約にもとづいて整理したもので、命令の全文や報告書公表後の改訂は確認していません。報告書は消火、管制、避難も詳しく扱っていますが、この記事の締結部品の分析の範囲外です。 インチとミリ、in-lb と N·m の換算は当サイトの計算です。「二面幅が 10.5 mm より大きいナット」の場面は仮定で、このアセンブリーの仕様ではありません。
この記事は六つの手順のどれか一つには収まりません。手順をまたいで出てくるか、組み付けたあとに出てくる話です。ここに行き着く判断がどこで下されているかはねじの決め方にまとめてあります。
よくある質問
中華航空 120 便の那覇での炎上は、ねじとどう関係しますか?
運輸安全委員会の報告書は、燃料が漏れた破孔は、右主翼第 5 スラット内側メイン・トラックの後端にあるダウンストップ・アセンブリー(もともとボルト、ワッシャー、ダウンストップ、スリーブ、ストップ・ロケーション、ナットなど 8 個の部品で構成)が外れてトラック・カンの中に落ち、スラット格納時にメイン・トラックに押されて底を突き破ったものと認めています。脱落の起点は、ナット側のワッシャーが緩み止め作業中に落ちたことと推定されています。
ワッシャーが 1 枚ないと、なぜナットが穴を通り抜けるのですか?
このナットが、押さえるはずの穴より小さいからです。実測でナットの直径は 0.408 インチ、ナット側ダウンストップの穴の最も狭い部分は 0.414 インチ、メイン・トラックの穴は 0.433 インチ、ナット側ワッシャーの外径は 0.625 インチでした。ナット側で穴の口をまたいでいたのはワッシャーで、報告書は、それがないとナットがボルトに付いていてもナット側ダウンストップが外れ、アセンブリーがメイン・トラックから脱落するとしています。回収された実物で、ナットがダウンストップを通ることが確認されています。
ワッシャーが欠けていたら、締めるときにトルク・レンチで必ず分かりますか?
分かるとは限りません。報告書 3.8 は二つのケースのうちの一つについて、ワッシャーがない状態でナットを締めると、ダウンストップとスリーブに当たらずにボルトのねじ部の端まで進み、セットされたトルクで締めたようになると書いています。本件がどちらのケースだったかは判定されていません。当サイトはここから、トルクの読みだけではワッシャーの有無を確認できないと考えます。口述によればこの作業ではトルク・レンチは 70 in-lb にセットされ、作業記録に不具合等は記録されていません。
事故の後、この設計は変わりましたか?
変わりました。報告書によれば、ボーイング社はダウンストップ・アセンブリーの設計を変更して 2008 年 8 月から新規製造機に適用し、既存機には 2008 年 12 月 15 日のサービスブリテン SB737-57A1302 で改修を指示しました。米国、台湾、日本の航空当局は 2007 年 8 月にそれぞれ点検を指示しています。新しい設計の具体的な内容は報告書に記載がありません。
参考資料
- 運輸安全委員会(2009)航空事故調査報告書 AA2009-7(中華航空公司所属 B18616)
- Japan Transport Safety Board(2009)Aircraft Accident Investigation Report AA2009-7, China Airlines B18616(英語版)
- 座金の仕様の読み方:「M4 の座金」は一つの仕様ではなく、三つです
- 規定トルクで締めても、締付け力が合っているとはかぎりません
- ねじ固定剤が直すのはどちらの緩みか
- 組込みねじ:座金がなぜ工場で入っているのか
運輸安全委員会の報告書は日本語版と英語版を対照しています。英語版の序文に、日本語版のみが正本で、相違がある場合は日本語版が優先されると明記されているため、確度を表す用語(認められる、推定される、考えられる)は日本語版に従っています。寸法は 2.16.1(メイン・トラックの穴は 2.16.1(2))と付図 9-1、9-2、作業の経過は 2.13.1(台湾民用航空局の調査による整備士と監督者の口述。アクセス性は 2.13.4 の ASC による試行も参照)、サービスレターの経緯は 2.17.4 によります。インチとミリ、in-lb と N·m の換算は当サイトの計算です。台湾の飛航安全委員会の意見は報告書第 7 章に添付された草案への修正提案で、JTSB の結論ではありません。トルクの読みと抵抗の出どころに関する説明は当サイトの工学的な読み方です。「締結部品の側から持ち帰れる四つのこと」は当サイトの読み方で、報告書の勧告ではありません。
お問い合わせ
ワッシャーが「穴より大きい部品」の役割を担っている組立品については、お見積りの際に穴径、ナットまたはボルト頭の寸法、ワッシャーをねじとあらかじめ組み込む必要があるかをお知らせください。その条件に合わせて選択肢をご案内します。部品が 1 点欠けても組立品がその場にとどまるかどうかは、設計を担当する技術者の判断が必要です。
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