規定トルクで締めても、締付け力が合っているとはかぎりません
先に結論を書きます。トルクは目的ではありません。締付け力が目的です。 両者は一つの係数でつながっていて、 その係数はねじの性質ではなく、接触面の組全体の性質です—— ねじ対の材質の組合せ、頭の下の座面、粗さ、めっき、潤滑、清浄度、そして二度目の締付けかどうか。 どれか一つを替えれば、同じトルクが違う締付け力になります。 そして M3 未満には、共通して認められた標準の参照条件がまだありません。
管理しているのはトルク、欲しいのは締付け力
継手が頼っているのは締付け力——被締結物が互いに押し付けられている力です。 しかしラインで測れて管理できるのはトルクです。 両者はよく使われる工学的な関係で結ばれていて、その式は同時に、 あるトルクの数字がそもそも予荷重を求めていない場合も教えてくれます。
T = K · D · F—— T は締付けトルク、D は呼び径、F は締付け力、K はトルク係数。 この式のなかで、あなたが直接測っていないのは K だけです。 そしてその K が、最もばらつく項でもあります。
入力したトルクがそのまま締付け力になるわけではありません。 大半はねじ面と頭の下の座面の摩擦に使われ、残りが部品を押し付ける力に変わります。 ですから摩擦が変われば、配分が変わります。
では K 値を調べる——K はねじに属する数字ではありません
ここが最も誤解されます。K 値はねじの仕様の横に書かれることが多く、材料の性質のように見えます。 しかしそれが記述しているのは接触面の組です。
- ねじ対の材質の組合せ(ねじと母材であって、ねじだけではありません)
- 頭の下の座面の材質と粗さ
- めっきとその厚さ
- 潤滑:有無、種類、量
- 清浄度:油、切りくず、残った接着剤
- 二度目の締付けかどうか——一度目が接触面の状態を変えます
ですから「供給者を替えたが仕様は同じ」は、トルク条件をそのまま使ってよいという意味ではありません。 仕様が同じでもめっきの工程が違えば K は違いえます—— それは報告書には出てこず、締付け工程の歩留まりに出てきます。
そしてトルクの大半を食べているその摩擦も、ねじに固定された性質ではありません。 一つのトルク値は、ある摩擦条件の組を前提にしています—— だからねじ山に油を差すと継手が変わり、図面の数字は一つも動いていません。
M3 未満:参照条件そのものがまだありません
トルクと締付け力の標準試験方法は ISO 16047 にありますが、 その標準参照条件は M3 からで、M3 未満は適用範囲の外です。
これは「小さいねじは測れない」という意味ではありません。 治具、センサ、合否基準を自分たちで決めるか、契約で取り決めることになるという意味です。 さらに文献は、微小締結部品の張力を現時点では定量的に測定・管理できないと述べています—— つまりこの寸法帯でできるのは、条件の組を固定して実測することであって、汎用の値を引くことではありません。
どの規格がどの寸法で止まるかは規格はどこで止まるかに整理しました。 極小ねじの寸法帯で、供給者にここを説明させる価値があるのはそのためです。
トルク管理以外の選択肢
ここまでは「締付け力を設計の根拠にしている」継手を前提にしています。 薄板に自分でめねじを作るタッピンねじでは、その前提が成り立たず、 トルクの出どころがまったく別の話になります。
| 方式 | 何に基づくか | 前提 |
|---|---|---|
| トルク法 | 設定トルクまで締める | 最も普及し、設備が最も簡単。ただし摩擦のばらつきがそのまま締付け力に入ります |
| トルク+角度 | 着座トルクまで締め、そこから決めた角度を回す | 摩擦の影響を減らします。着座点を確実に判定できることが要ります |
| 伸びの測定 | ねじがどれだけ伸びたかを直接測る | 最も直接的。両端を測れる必要があり、小さい寸法ではたいてい成り立ちません |
どれが正しいというものではありません。 選べるかどうかは、その方式の前提を満たせるかで決まります—— そして小さい寸法では、たいてい前提のほうが本当の制約です。
その締付け力が外力の下でどう分かれるかは剛性が決めます—— ボルトはばねで、被締結物もばねです。 各方式が予荷重をどれだけ悪く管理するかには VDI の数字があります—— あなたの締結方法はどれだけ予荷重を外すか。
供給者に何を求めるか
- あなたの実際の組合せで測ったトルクと締付け力の関係。カタログの汎用 K 値ではなく
- そのデータを取ったときのめっき、潤滑、被締結物の材質と表面状態
- 一度目の締付けか、繰り返しの締付けかのデータ
- 測定に使った治具とセンサ。とくに M3 未満で
この四つを聞き出せれば、相手があなたの条件で実際に試したことが確認できます。 聞き出せないこともまた一つの答えです—— 条件は自分たちで作ることになり、それは日程に入れるべき作業です。
この記事は手順 6、書類を扱います。全体の順序は相手材、ねじ、頭部、駆動部、表面処理、書類で、これを崩すと微調整ではなく手直しになる理由はねじの決め方にあります。
よくある質問
規定トルクで締めれば締付け力は合いますか。
かぎりません。T = K·D·F の K だけが直接測っていない項で、しかも最もばらつきます。入力したトルクの大半はねじ面と座面の摩擦に使われ、残りが締付け力になるので、摩擦が変われば配分が変わります。めっき、潤滑、相手材、清浄度、二度目かどうかが、いずれも K を動かします。
K 値はねじの仕様として使えますか。
使えません。K が記述しているのはねじではなく接触面の組です。ねじ対の材質の組合せ、頭の下の座面の材質と粗さ、めっきと厚さ、潤滑、清浄度、そして一度目か二度目かが含まれます。仕様が同じでもめっき工程が違えば K は違いえて、それは報告書ではなく締付け工程の歩留まりに出ます。
M3 未満のねじでトルクと締付け力は測れますか。
測れないわけではありませんが、ISO 16047 の標準参照条件は M3 からで、M3 未満は適用範囲の外です。治具、センサ、合否基準を自分たちで決めるか契約で取り決めることになります。文献は微小締結部品の張力を現時点では定量的に測定・管理できないとも述べているので、この寸法帯でできるのは条件の組を固定して実測することです。
トルク法とトルク+角度法はどちらがよいですか。
どちらが正しいというものではなく、前提を満たせるかで決まります。トルク法は設備が簡単ですが、摩擦のばらつきがそのまま締付け力に入ります。トルク+角度は摩擦の影響を減らしますが、着座点を確実に判定できる必要があります。伸びの測定は最も直接的ですが、両端を測れる必要があり、小さい寸法ではたいてい成り立ちません。
お問い合わせ
締付け工程のトルク条件が合わない、あるいはめっきを替えてから歩留まりが落ちたという状況ですか。 ねじの仕様、めっき、被締結物の材質をお知らせください。 その組のどれが K を動かすか、そして再現するには何を固定すればよいかをご説明します。
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