線材がよそから来ているので、原産地が問題になる
直感はこう働きます。工場は台湾にある、だからこのねじは台湾製だ。
たいていの場合、この直感は正しい答えにたどり着きます。
⚠️ けれどそれは、間違った理由で正しい答えに着いています。
そして理由が間違っているとき、答えのほうも一緒に間違います。
見つかるのはたいてい、貨物がもう港に着いてからです。
原産地は地理の事実ではなく、法的な認定だからです。 下すのは輸入側の当局で、よりどころはその措置自身の規則です。 ⚠️ ふつう税関が関わりますが、税関だけとはかぎりません。 たとえば米国では、アンチダンピング税と相殺関税の対象範囲や原産地の問題を 商務省が判断することがあり、しかもそれは税関の一般的な原産地・表示の裁定に拘束されません。
たいていの場合、どこで作ったかがそのまま答えです
一本のねじが原料から完成品まで同じ国のなかで仕上がっているなら、争いはありません。 問題が起きるのは原料がよそから来ているときで、 ねじの業界ではそれがかなりふつうにあります。
そこで本当の問いはこう変わります。 台湾で行った加工は「実質的変更」にあたるのか。 成形、転造、熱処理、表面処理。これらはこの物を新しい産品にするのに足りるのか。
この問いには拠るべき制度があります。WTO の原産地規則に関する協定が 非特恵原産地を扱っています。 ⚠️ 用途を挙げたその条文は「例示」であって網羅ではありませんが、 そこには最恵国待遇、アンチダンピング税と相殺関税、セーフガード、原産地表示、 そして差別的な数量制限と関税割当、政府調達、貿易統計が含まれています。
⚠️⚠️ けれど協定のなかの調和作業は、いまも完了していません。 主要な貿易体はそれぞれ自分の立法と解釈のしかたを維持しています。 ですから厳密にいえば、同じねじが仕向地ごとに違う認定を受けることがありえます。 「原産地はどこか」という問いは、「どの国に対して」を指定しないかぎり、問いとして完成していません。
実質的変更:判定は一つではなく三つ
「最後の実質的変更」は広く採られている中心の考えかたです。 ⚠️ ただし WTO 自身が、すべての加盟国が特定の非特恵原産地規則を 制定または適用しているわけではないと述べています。 そしてどう判定するかは制度ごとに違います。よくあるのは三種類です。
| 基準 | 何を問うのか |
|---|---|
| 関税分類変更 | 加工のあとで HS の分類が別の項に移ったか |
| 付加価値割合 | その国で加えた価値の割合がしきい値に届いたか |
| 指定加工工程 | 規則が名指しした工程が、その国で行われたか |
⚠️⚠️ EU のところは正確に書く値打ちがあります。「EU は関税分類を見る」は単純化しすぎだからです。 EU 関税法典が基礎に置いているのは最後の、実質的で経済的に正当な加工であり、 公式の附属書は列挙された産品に拘束力のある産品別規則を定め、列挙されていないものは個別に判断されます。 ほかに軽微な加工についての規定、「加工の唯一の目的が措置の回避であるとき」の規定、 そして主たる規則が成立しないときに適用される残余規則があります。
⚠️ ただしねじ・ボルトという品目——HS 7318——について EU が公表している主たる規則は、 たしかに「関税分類変更」です。 ですからこのページが扱う産品にかぎれば、関税分類という基準が適用されるその一つです。 これは「EU は主として関税分類を見る」より狭く、そして狭いぶん実務で使えます。
そして各制度に広く共通する一点があります。 詰め替えのような軽微な処理は実質的変更にあたりません。
この共通点は下限を引いてくれるので有用です。 「台湾で小分けして箱に詰める」と「台湾で成形・転造・熱処理まで終える」は、 この問いの上では程度の違いではなく、桁の違いです。
ずっと混同されつづける三つのもの
混乱の多くは、この三つが同じものとして扱われることから来ています。同じではありません。 そして同じ一本のねじの上で、この三つの欄に別々の国が入ることがあります。
- 溶製・鋳造国。その鋼が最初にどこで溶かされ鋳込まれたか。 これは材料の来歴という事実で、慣例としてミルシートに記されます。 そのあとの加工は見ません。
- 原産地。完成品についての認定で、そのあとの加工を数に入れます。 ⚠️ 非特恵原産地は、多くの関税や貿易措置が適用されるかどうかを決める重要な要素の一つです。 ほかに関税分類、課税価格、特恵原産地、そして個々の措置自身の適用範囲があります。
- 「Made in ___」の表示。包装や製品の上の表示という主張で、 表示には別の規則があり、市場ごとに違います。 ⚠️⚠️ ただしそれは好きに書いてよいという意味ではありません。 米国の表示規定は原則として、表示が法的に認定された原産地を反映することを求めますし、 「Made in USA」にはそれ自身の判定基準があります。 補足的な「designed in/finished in」で別の工程を述べることはできますが、誤認させないことが前提です。
輸入した線材を使い、台湾で成形と熱処理をしたねじなら、 溶製・鋳造国が甲国、税関上の原産地が台湾ということがよくあり、 表示は仕向地の表示規則にしたがいます。 前の二つは適法に違いえます。答えている問いが違うからです。 ⚠️ けれどこれを「箱には無関係な三つ目の国を刷ってよい」と読まないでください。
ついでに一つ。常備でない材質を指定すると MOQ が上がる理由で書いた 「あなたのために一巻開くことになる」には、ここで第二の意味があります。 その一巻がどこから来たかが、この問いのなかに入ってきます。
なぜ発注前に訊いておくのか
お金の帰結があり、しかもその帰結が買い手側に落ちるからです。
- アンチダンピング税、相殺関税、セーフガードが見るのは、貨物の原産地とその措置自身の適用範囲で、 売り手がどこにいるかではありません。 実務としては具体的な命令を読むことになります。産品の範囲、対象国、除外規定の有無、迂回防止の認定の有無。 セーフガードはとくに全世界を対象としうるもので、別に国別の除外があります。
- 申告の責任は多くの制度で輸入者にあり、供給者にはありません。 供給者から「台湾製造」と一言もらっても、責任は移りません。
- 見つかる時機はたいてい最悪です。 貨物は港に着き、ラインは待っていて、追徴も遅延もこちら側にあります。
ですからこれは価格や納期と同じく、 見積の段階で埋めておく欄に属します。 事故が起きてから扱う項目ではありません。
供給者に何を求めるか
「台湾製造」の一言だけを求めないでください。それは結論であって、 必要なのは自分で判断に使える事実です。
- ⚠️⚠️ 線材の出どころは、いくつもの問いに割って訊いてください。 「出どころ」は一つの欄ではありません。 買い付けた国、出荷された国、製造された国、線材自身の非特恵原産地、そして溶製・鋳造国。 これらは全部違いえます。ひとまとめの「どこから来たのか」では訊かないこと
- どの工程がどの国で行われたか。 成形、転造、熱処理、表面処理を一つずつ。 とくに表面処理は外注であることが多く、同じ国にないことがあります
- 加工の前後の HS 番号。仕向地が関税分類変更の道を採っているなら、この二つの番号が要です
- 根拠を書いた原産地申告書。結論がどの国で、どの基準によってそうなったのかを書いたもの
- 各材料の原産地、価値、そして計算のしかた。 適用される規則が付加価値のしきい値を使う場合、あるいは 「最も価値の高い材料で決める」といった残余規則に落ちる場合、 原価の資料が要になります。上の四つだけでは判断が足りません
このページが説明しているのは、この問いがどう決まるのかであって、 あなたのその貨物の答えではありません。 仕向地ごとに規則は違い、しかも改正されます。 通関業者や関税のコンサルタントは現行規則にもとづく評価と申告を助けてくれますが、 ⚠️⚠️ 当局の代わりにはなれません。 法的な確実性が要るときの正しい道は、税関当局に拘束力のある事前教示を申請することです。 EU には Binding Origin Information があり、米国税関も binding ruling を出します。 上の項目をそろえておくのは、誰が見ても判断する材料があるようにするためであって、 「台湾製造」の一言を前に当て推量をしないためです。
同じ「供給者に一通の書類を求める」種類の要求には炭素排出のデータもあります。 その一言が実際に何を求めていて、相手に出せるのかどうかは 御社の炭素排出データをくださいにあります。
この記事は手順 6、書類を扱います。全体の順序は相手材、ねじ、頭部、駆動部、表面処理、書類で、これを崩すと微調整ではなく手直しになる理由はねじの決め方にあります。
よくある質問
工場が台湾にあれば、原産地は台湾ですか。
かぎりません。原料がよそから来ているとき、問いは「台湾で行った加工が実質的変更にあたるか」に変わります。そして WTO の調和作業は完了しておらず、貿易体ごとに規則が違うので、同じねじでも仕向地によって答えが違うことがあります。
実質的変更はどう判定するのですか。
よくあるのは三種類です。関税分類変更、付加価値割合、指定加工工程。⚠️ EU については「関税分類を見る」と単純化しないでください。EU 関税法典が基礎に置いているのは最後の、実質的で経済的に正当な加工で、列挙産品には拘束力のある産品別規則、未列挙は個別判断、ほかに軽微加工と回避目的の規定、残余規則があります。ただしねじ・ボルト(HS 7318)について公表されている主たる規則は、たしかに関税分類変更です。詰め替えのような軽微な処理は、どの制度でも一般に実質的変更にあたりません。
溶製・鋳造国が原産地ですか。
違います。溶製・鋳造国は材料の来歴という事実で、ミルシートに記されます。原産地は完成品についての認定で、そのあとの加工を数に入れます。同じ一本のねじで、この二つの欄に別の国が入ることがあります。
第三国から買えば原産地は変わりますか。
売り手を変えても、請求書を出す会社を変えても、輸送経路を変えても、原産地は変わりません。ただし第三国で実際の加工があるなら、仕向地の規則によって原産地が変わることはありますし、迂回防止の認定でもとの措置に取り込まれることもあります。これは別々に確認すべき二つの問いです。
供給者が台湾製造と言っています。それで足りますか。
足りません。それは結論です。必要なのは、線材の出どころ(買い付けた国、出荷された国、製造された国、線材自身の非特恵原産地、溶製・鋳造国を分けて)、どの工程がどの国で行われたか、加工前後の HS 番号、そして根拠を書いた原産地申告書です。⚠️ 付加価値のしきい値や残余規則が効く場合は、各材料の価値と計算のしかたも要ります。
お問い合わせ
原産地の申告書が要る場合は、仕向地がどの国かを先にお知らせください。 線材の出どころと、どの工程がどこで行われたかを一覧にしてお出ししますので、 通関業者に判断する材料が渡ります。 M6 以下は成形、転造、検査を自社内で行っているので、 その三つについては外注先の回答を待つ必要がありません。
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