なぜ 5 個で 50 万個のロットを判定できるのか
何個検査するのかと尋ねると、たいてい AQL の表が出てきます。 けれども締結部品には締結部品のために書かれた規格があり、 その答えはしばしば 5 個です——そしてそのロットは 50 万個ありえます。 これは適当なのではありません。 しかもその規格は、その 5 個が何を告げて、何を告げないかについて 異例なほど率直です。
AQL は「あってよい不良率」ではありません
ISO 2859-1:2026——2026 年 1 月発行の第 3 版で、 1999 年版、2001 年の正誤、2011 年の Amd 1 を置き換えたもの——は §3.1.26 で合格品質限界をこう定義します—— ロットの連続した系列が合格判定抜取検査に提出されるとき、許容できる最悪の工程平均。
この定義のなかで二つの語が働いています。 工程平均——それが記述しているのは供給者のある期間の工程であって、 目の前のこのロットの中身ではありません。 連続した系列——それが保証している(それを保証と呼ぶなら)のは ロットの並びであって、一つのロットではありません。
§5.1 は直接こう書いています—— AQL を指定することは、生産者に不適合と知りながら供給する権利を与えるものではない。 ISO 3269 も導入部で締結部品について同じ原則をくり返します。 ですから「うちは AQL 1.0 以内です」は、「この一本が違っています」への答えになりません。
この語はかつて acceptable quality level と呼ばれ、ISO は 1999 年版で acceptance quality limit に改め、ANSI/ASQ Z1.4 も 2003 年に追随しました。 ⚠️ よくある説明は「旧称がその数字を不良の割当てのように読ませた」というものですが、 当サイトはその規範的な条文をたどれませんでした。 ですからそれは歴史の解釈であって、ISO が述べたことではありません。
ある方式が実際に受け入れてしまうもの
具体的な方式を取ります。通常検査水準 II、ロットの大きさ 10,001 から 35,000、 サンプル文字 M。1 回抜取、なみ検査、AQL 1.0 で—— n = 315、Ac = 7、Re = 8。 315 個を検査し、不適合が 7 個以下なら合格、8 個で不合格です。 規格が不良率について前提にしている二項のモデルで計算すると——
| 真の不良率 | このロットが合格する確率 |
|---|---|
| 1.0% | およそ 98.6% |
| 3.0% | およそ 27% |
AQL の 3 倍も悪いロットが、なお 4 回に 1 回ほど通ります。 これは方式の欠陥ではありません——これが抜取というものです。 抜取方式は、定義された危険のもとで合否を決める規則であって、 このロットを測っているとは一度も主張していません。
⚠️ この方式について、よく言われる二つを照らし合わせておく値打ちがあります。 AQL に対応する合格確率は 95% に固定されていません—— 規格の言葉は「high probability」で、ここで計算すると 98.6% です。 そして Ac は AQL にサンプルの大きさを掛けたものではありません—— 7 ÷ 315 = 2.22% で、これは AQL 1.0 と表示された方式です。 Ac は方式の OC 曲線から来るのであって、AQL から計算されるのではありません。
サンプルはロットに比例して増えません
通常検査水準 II で——
- ロット 1,201 から 3,200 → サンプル文字 K → n = 125
- ロット 10,001 から 35,000 → サンプル文字 M → n = 315
ロットの上限がおよそ 11 倍になって、サンプルは 2.52 倍です。 ロットがサンプルに対して十分に大きくなれば、OC 特性を主に決めるのは n と Ac であって、ロットの何分の一を見たかではありません。 ISO はより大きな判断により鋭い識別力を与えるためにサンプルを段階的に上げますが、 その関係は最初から比例ではありません。
ですから条件の付いていない数字には意味がありません。 「うちは 125 個抜きます」は、ロットの区間、検査水準、きびしさ、抜取形式、 AQL、Ac、Re と一緒でなければ読めません。
締結部品に当てはまるのは別の規格です
ISO 3269:2019《Fasteners — Acceptance inspection》第 4 版は、 当事者間に事前の取決めがないときの買主の受入検査の手順であり、 合意できないときや適合性に争いがあるときの参照手順でもあります。 ボルト、ねじ、植込みボルト、ナット、ピン、座金、リベットを扱います。 「締結部品とラベルを貼った ISO 2859-1」ではありません。独自の三つの類があります。
| 類 | 特性 | 方式 |
|---|---|---|
| 1 | 重要な機械的・物理的特性、破壊試験 | Ac = 0、Re = 1。サンプルはロットにより 1 から 8 個 |
| 2 | 主要な寸法、はめあい、機能の特性 | まず Ac = 0。ただし 1 個の不適合は同数の追加抜取であって、即不合格ではない |
| 3 | 副次的な寸法と一部の機能特性 | Ac は 0 より大きい。サンプルの大きさは ISO 2859-1 の特別水準 S-3 から |
ロットが 35,001 から 500,000 のとき、ISO 3269 の第 1 類のサンプルは5 個、 第 2 類と第 3 類は20 個です。 同じロットを ISO 2859-1 の通常水準 II で行えば、数百個になります。
附属書 A は、そのことを知らないふりをしていません。 これらの小さな方式は統計的な情報を与えないと明言し、 それらが依拠しているのは別の前提だと述べています—— 工程がいったん管理を外れれば、ロットのかなりの割合に影響するのであって、 不良が散発的に散らばるのではない、という前提です。
5 個はこのロットの測定ではありません。5 個は、そのとき工程が 供給者の言うとおりの状態だったかを確かめています。 すべての重みがその前提に乗っているので、ここではサンプルより書類のほうが重いのです。 溶解炉番号がたどれて工程が管理されていれば 5 個に情報があり、そうでなければ 500 個でも救えません。 証明書の側はミルシートの読み方にあります。
ISO 3269 は AQL の書き方さえ違います——§3.3 は AQL95 を 合格確率が 95% に等しいときの不良百分率として明確に定義し、§3.4 は同様に LQ10 を 10% に対応させます。附属書 B は OC 曲線をたどります。 ISO 2859-1 が「高い確率」を表のなかに置いているところで、ISO 3269 はその数字を定義に書き込んでいます。
⚠️ 境界にも注意してください。ISO 3269 は大量の機械組立て、特殊な用途、 より強い工程管理とロットの追跡を要する特殊な工学的用途を除外します。 それらは契約で定義しなければならず、製造者自身の工程管理と最終検査には ISO 16426 が別にあります。契約が上書きすることもよくあります。
本当の守りは切替えの規則にあります
ISO 2859-1 の方式は単体では、多くの人が思うより弱いのです。 この体系の守りは、ロットとロットのあいだで起きることから来ます。
- なみ検査からきびしい検査へ(§9.3.1):連続 5 ロット以内に 2 ロットが最初の検査で合格しなかったとき
- きびしい検査からなみ検査へ(§9.3.2):きびしい検査で 5 ロット連続して合格したあと
- なみ検査からゆるい検査へ(§9.3.3):切替点数が 30 に達し、生産が安定していて、権限をもつ者が適切と認めたとき
- 検査の中止(§9.4):きびしい検査の系列で累計の不合格ロットが 5 に達したとき
⚠️ §9.4 はよく読んでください。引き金は系列のなかの累計 5 ロットであって、連続 5 ロットではありません。 当サイトの下書きはここを書き誤っていました。 引き金が引かれたら、抜取による合格判定を止め、供給者が行動を取り、 かつ権限をもつ者がその行動が有効でありうると認めるまで再開しません。再開はきびしい検査からです。
§9.2 は、連続ロットの体系を引用したなら切替えの手順を実施しなければならないと定めています。 切替えの規則が働きようのない場面——孤立したロット、一回限りの注文——では、 体系の水準の守りは成り立ちません。そのときは ISO 2859-2(孤立ロットと限界品質のために書かれたもの)か、 OC 曲線から個別の方式を選ぶことになります。
「では全数検査すればよい」
ISO 28590:2017——ISO 2859 群の導入で、 廃止された ISO 2859-10 を置き換えたもの——は §4.3.4 でこう述べます—— 100% 検査は必ずしも完全に有効ではなく、疲労と境界的な特性が 見逃しと過剰な棄却を同時に生む。
人間工学の文献はこの向きを支持しますが、普遍的な数字は支持しません。 精密加工部品を対象としたある対照研究では検査員の平均検出率がおよそ 85%、 その研究が引く一般産業の目安がおよそ 80% で、欠陥の型によって大きく違いました。 効果の例として扱ってください。設計に使える定数としてではなく。 小さなねじの小さな特徴について実際の帰結はこうです—— 選別は「工程がそもそも正しく作ること」の信頼できる代わりにはなりません。 力を上流に置く理由でもあります——規格はどこで止まるか。
注文書に書く五行
- どの受入規格によるか、番号と年で書く。「AQL 1.0」だけでは手順になりません
- ISO 2859-1 なら——検査水準、抜取形式、開始のきびしさ、そして切替えの規則を実施するかどうか
- ISO 3269 なら——どの特性がどの類か。それがサンプルの大きさを決めるからです
- ロットをどう作るか。無作為抽出と合理的なロットの形成は要求です(§6.1、§8.1)——いちばん上の箱からひとつかみ取れば、ここまでの危険の議論は全部無効になります
- 不適合が出たときどうするか——起きる前に取り決めておくこと
この頁は第 6 段階、書類に属します。完全な順序は ねじを指定するにあります。
この記事は手順 6、書類を扱います。全体の順序は相手材、ねじ、頭部、駆動部、表面処理、書類で、これを崩すと微調整ではなく手直しになる理由はねじの決め方にあります。
よくある質問
AQL 1.0 は「不良品が 1% あってよい」という意味ですか。
違います。ISO 2859-1 は合格品質限界を、ロットの連続した系列が合格判定抜取検査に提出されるとき許容できる最悪の工程平均と定義しています。それが記述しているのは供給者のある期間の工程であって、あるロットの中身ではありません。§5.1 は、AQL を指定することが不適合と知りながら供給する権利を与えるものではないと明記し、ISO 3269 も締結部品について同じ原則をくり返します。
ISO 3269 は大きなロットから何個抜きますか。
ロットが 35,001 から 500,000 のとき、第 1 類の特性——破壊試験を含む重要な機械的・物理的特性——は 5 個、第 2 類と第 3 類は 20 個です。附属書 A は、これらの小さな方式が統計的な情報を与えないと明言し、依拠している前提は、工程がいったん管理を外れればロットのかなりの割合に影響するのであって不良が散発的に散らばるのではない、というものだと述べています。
AQL 1.0 の方式に合格したロットは、不良率が 1% 未満ということですか。
合格からその結論は立てられません。通常検査水準 II、ロット 10,001 から 35,000、AQL 1.0、1 回なみ検査なら、方式は 315 個を抜き 7 個以下で合格、8 個で不合格です。真の不良率が 1% のときこの方式はおよそ 98.6% のロットを合格させますが、真の不良率が 3% でもなお約 27% のロットを合格させます。この方式は定義された危険のもとで合否を決めているのであって、そのロットを測っているのではありません。
合格判定個数は AQL にサンプルの大きさを掛けたものですか。
違いますし、算数も合いません。315 個を抜いて合格判定個数 7 の方式では 7 ÷ 315 が 2.22% ですが、その方式の表示は AQL 1.0 です。合格判定個数は方式の OC 曲線から来ます。表の上での流れは、ロットの大きさと検査水準がサンプル文字とサンプルの大きさを決め、そのうえで AQL が合格判定個数と不合格判定個数を決める、というものです。
ISO 2859-1 で検査を止めなければならないのはいつですか。
§9.4 は、きびしい検査の系列で合格しなかったロットが累計 5 に達したときと定めています。その 5 ロットは連続している必要はありません。止めたあとは、供給者が行動を取り、権限をもつ者がその行動が有効でありうると認めるまで抜取による合格判定を再開せず、再開はきびしい検査からです。
参考資料
- ISO 2859-1:2026 第 3 版(2026 年 1 月)—— §3.1.26(AQL の定義)、§5.1(不適合品を供給する権利を与えない)、§6.1 と §8.1(ロットの形成とサンプルの抜取り)、§9.2–9.4(切替えと検査の中止)、§12.6(危険)、第 15 条 表 1(サンプル文字)、第 16 条 表 2(1 回なみ検査の方式)
- ISO 2859-2:2020(孤立ロット、限界品質)。ISO 28590:2017 §4.3.4(廃止された ISO 2859-10 を置き換え)
- ISO 3269:2019 第 4 版《Fasteners — Acceptance inspection》—— §1(適用範囲と適用の順序)、§3.3 と §3.4(AQL95、LQ10)、§5.3、表 1 と表 2、附属書 A、附属書 B
- ISO 16426 —— 製造者の工程管理と最終検査
- «Human Factors»、2015 —— 精密加工部品の目視検査
個々の注文の合否は、あなたの契約と図面が決めます。検出率のおよそ 85% と 80% は効果の例であって、設計に使える定数ではありません。AQL の旧称にまつわる説明は歴史の解釈で、規範的な条文はたどれませんでした。
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