止め輪の推力値は二つの計算のうち小さいほうで、先に負けるのはたいてい溝
読了目安 7 分。止め輪のカタログは品番の隣、強度の数字が来るべき場所に推力荷重を印刷します。それはその部品の強度ではありません。二つの計算のうち小さいほうであり、片方は自分で加工した溝の話で、どちらもその数字を使う前に確認する価値のある角部の形状を前提にしています。
ページ上は一つの数字、背後には二つの計算
止め輪メーカーが公開しているのは同じ一組の計算です。Smalley の書き方では次のとおりです。
| 壊れるもの | 式 | 安全率 |
|---|---|---|
| 環がせん断する | PR = (π × D × T × SS) / K | K = 3 |
| 溝が変形する | PG = (π × D × d × SY) / K | K = 2 |
D は軸径または穴径、T は環の厚さ、SS は環材料のせん断強さ、d は溝深さ、 SY は溝材料の降伏強さです。設計値は小さいほうを取ります。
Rotor Clip は同じ構造をもう一項多い形で公開しています。表から取る換算係数 Gf が両式に入ります。つまり同じ式が二度書かれているのではありません。 何が支配するかでは一致し、何を含むかでは異なる。一社の出力をもう一社に突き合わせる 前に知っておく価値があります。
それぞれの式に何が入っているかを見てください。一つ目は環の話です。厚さと材料。 二つ目には環が一つも入っていません。変数は溝の深さと、その溝を削り込んだ材料の 降伏強さの二つで、どちらもあなたのものです。
たいていどちらが先に来るか
Smalley はこれに直接答えています。
溝の変形は、止め輪の設計上の制約として群を抜いて多い。
つまり組立てを制限するのは、たいてい買ってきた部品ではありません。溝であり、溝は 自分の軸や穴にある特徴で、自分が決めた深さで、自分が選んだ材料に刻まれています。 浅い溝と軟らかい軸の組合せは容量が低く、そのことは環の品番のどこにも現れません。
これは繰り返し現れる形です。定格を持つ部品が数字を持ち、実際の限界は相手側の特徴に あり、発注書に載るのは片方だけ。一種類のピンだけに 定格せん断値があるのと同じ理由であり、使用荷重限度が 予測ではなく許可であるのと同じ理由です。
その数字は直角を前提にしている
Rotor Clip は、表のすべての値の背後にある前提を明記しています。
上記のすべての式、および各形式のデータ表に示す Pr の値は、被保持部品が 直角の角部を持つ組立てについて計算されている。
直角の角部は、環が支持されているまさに溝の位置で荷重を環に入れます。接触点を外側へ 移すと、環は支持から遠い位置で荷重を受け、その場でせん断するのではなく溝から めくれ出し始めます。被保持部品の面取りがそれを起こします。丸みも同じです。
次の一文が人を捕まえます。すきまを幾何の誤りに変えてしまうからです。
被保持部品と軸または穴との間に半径方向のすきまがある場合、そのすきまは被保持部品に 面取りがあるものとして扱わなければならない。
角部が完全に直角でも、軸に対してゆるく嵌まっている被保持部品は、直角の組立てでは ありません。そのすきまは等価な面取りであり、同じように定格から差し引かれます。 この条件はどちらの部品図にも現れず、両者の嵌合の中に住んでいます。
安全率は定まっていない
三つの公開資料が同じ二つの計算を示しながら、何で割るかについては一致していません。
| 出典 | 環のせん断 | 溝の降伏 |
|---|---|---|
| Smalley | 3 | 2 |
| Rotor Clip | 4 | 2 |
| Engineers Edge | 3 | 2 |
溝の列は一致しています。環の列は一致せず、この差は飾りではありません。同じ入力に対し、 3 ではなく 4 で割ると許容推力は 25% 低くなります。これは当サイトの算術で、 3 ÷ 4 = 0.75。どこかの環が弱いという話ではなく、安全率の性質です。
実務上の帰結は比較に関わります。二社のカタログの推力値は同じ基準に立っているとは 限らず、両者の差が単に割る数の違いということもあり得ます。選定がその比較にかかるなら、 各社に聞くべきことは、印刷された数字の中にどの係数が既に入っているか、です。
もう一つ、説明せずに記録しておく不一致があります。Engineers Edge のページは本文で 環のせん断に 3 を示す一方、同じページの表の脚注は「Thrust Load Safety Factors: Ring, 1; groove, 2」と書いています。両者は合いません。どちらの意図か当サイトには 分からず、推測もしません。
本ページの相互確認では、Rotor Clip が環の形式ごとに異なる係数を用いる(テーパー断面に 4、スパイラルに 3)との報告もありました。当サイトは同じページを二度読み、二度とも同じ 答えを得ています。環に 4、溝に 2、形式による区別なし。上の表は当サイトが読んだ内容です。 この問いが今も開いていること自体が、論点の一部です。
規格はこうしていると言われている
DIN 471 は軸用止め輪と、それが収まる溝を扱います。規格の要約と供給者の説明によれば、 この規格もメーカーと同じように容量を二つに分けています。FN は溝の容量で、 溝材料の降伏点 200 MPa で評価され、FR は鋭角の当たりにおける環自体の 容量です。
この記述が正しいなら、固定された 200 MPa は注目に値します。表に載る溝の容量が、 自分の材料ではなく仮定された材料強度に結びついていることを意味するからです。 相互確認はさらに進んで、規格の方法はこの基準から線形に換算する、つまり溝材料が違う 場合は換算で扱われ表が誤っているわけではない、と報告しました。これは確認できていま せん。根拠として挙げられた技術表は当サイトに 403 を返しました。手がかりとして記します。 DIN 471 は有料文書で、読んでいません。
このページが確定していないこと
- 推力の数値は一つも載せていません。メーカーのデータ表を当サイトは 持たず、値は環の形式、材料、寸法によって変わります。このページにあるのは式と構造で、 設計に当てる数字ではありません。
- 規格は一つも読んでいません。DIN 471 と DIN 472 は有料です。 DIN 471 の全文の転載がファイル共有サイトに出回っていますが、当サイトはダウンロードも 閲覧も引用もしていません。本ページが DIN 471 に帰している内容は要約と供給者資料に よるもので、本文に明記しています。
- 面取りの低減量は示していません。Rotor Clip は最大許容値未満の 面取りと丸みに対する補正式を公開していますが、計算例とともに公開しています。当サイトは同じ ページを二度読み、二つの異なる計算例を得たため、どちらも引用しません。方向だけを 述べ、大きさは述べません。二度目の読みで再現できない数字は、印刷してよい数字では ありません。
- 「最も多い」は「必ず」ではありません。Smalley が言うのは、溝の変形が 最も多い設計上の制約だということです。硬化軸の硬い溝に薄い環なら逆転し得ます。 両方を計算する理由がそこにあります。
- 静的な推力だけの話であり、出典もそう述べています。以上はすべて、 被保持部品を止め輪へ押しつける軸方向荷重の話です。Rotor Clip は、急激な荷重は許容 静的推力(Pr と Pg の小さいほう)の 50% を超えるべきでないと し、相対回転には独自の上限式 Prr ≤ (s t E²) / (μ 18 Ds) を与えています。静的定格は動的定格ではなく、 メーカー自身もそう扱っていません。
小さくなるほど効いてくる理由
溝深さは溝の式が最も直接さらされている変数であり、小径軸で最初に圧迫されるものでも あります。大径軸では溝は断面の中の丸め誤差ですが、小径軸では残り直径のうち目に見える 割合を占めるので、容量が求める深さと軸が譲れる深さが逆方向へ引き合います。止め輪の カタログにそれを調停するものはありません。カタログが記述しているのは環で、 圧迫されるのは溝だからです。本ページはそれに尽きます。二つの計算のうち勝つほうは、 発注書に載っていません。
この記事は六つの手順のどれか一つには収まりません。手順をまたいで出てくるか、組み付けたあとに出てくる話です。ここに行き着く判断がどこで下されているかはねじの決め方にまとめてあります。
よくある質問
止め輪はどれだけの推力に耐えますか。
環の単一の性質ではなく、二つの計算値のうち小さいほうです。メーカーが公開しているのは環のせん断容量 PR = (π × D × T × SS) / K と、溝の容量 PG = (π × D × d × SY) / K で、D は軸径または穴径、T は環の厚さ、SS は環材料のせん断強さ、d は溝深さ、SY は溝材料の降伏強さです。設計値は小さいほうを取ります。
先に壊れるのは環ですか溝ですか。
Smalley は、溝の変形が止め輪の設計上の制約として群を抜いて多いと述べています。つまり限界はたいてい、自分で加工した特徴の側にあり、自分の溝深さと自分の材料で決まります。ただし法則ではありません。どちらも支配し得るからこそ、計算が二つあります。
被保持部品の面取りは影響しますか。
します。ゆるい嵌合も同様です。Rotor Clip は、すべての式とデータ表の Pr 値が被保持部品の角部が直角である組立てについて計算されていること、そして被保持部品と軸または穴との半径方向すきまは、その量の面取りがあるものとして扱わなければならないことを明記しています。角部が直角でも嵌合がゆるい部品は、直角の組立てではありません。
なぜ二社で近い仕様なのに容量が違うのですか。
一因は安全率が統一されていないことです。Smalley は環のせん断を 3 で、Rotor Clip は 4 で割るよう推奨し、溝はどちらも 2 です。同じ入力なら、3 ではなく 4 で割ると許容推力は 25% 低くなります。二社のカタログ値を比べる前に、印刷された数字にどの係数が既に入っているかを各社に確認してください。
止め輪はゆるみ止め部品ですか。
違います。軸方向の位置決め部品で、部品を軸方向の推力に対して所定の位置に留めます。予張力を保持するものではなく、ねじのゆるみ止め手段でもありません。本ページで扱う破損形態は環のせん断か溝の変形で、いずれも軸方向荷重下のものです。
DIN 471 に容量の値はありますか。
規格の要約と供給者の説明ではあるとされ、FN と FR に分かれます。FN は溝の容量で溝材料の降伏点 200 MPa で評価され、FR は鋭角の当たりにおける環の容量です。当サイトは DIN 471 を読んでいません。有料文書だからです。その記述にある固定の 200 MPa は、表の溝の値が自分が削っている材料ではなく仮定された材料に結びついていることを意味します。
参考資料
- Smalley〈Load Capacity〉— 環のせん断と溝の変形の二式、記号の定義、推奨安全率、および「溝の変形が最も多い設計上の制約」という記述
- Rotor Clip〈Formulas: Retaining Ring Load Capacity〉— 同じ二式、データ表の背後にある直角前提、および「半径方向すきまは面取りとして扱う」規則
- Engineers Edge〈Thrust Load Capacity〉— 三つ目の安全率の記述と、自身の本文と合わない表の脚注
- DIN 471 軸用止め輪 — カタログページのみ。規格本文は未読
三つの技術資料はいずれも上記リンクのページから直接読み、式、記号の定義、安全率、引用した二つの前提はそこから取っています。これらは規格ではなくメーカーおよび技術参考資料です。DIN 471 と DIN 472 は読んでいません。どちらも有料で、DIN 471 の全文転載がファイル共有サイトに出回っていますが、当サイトはダウンロードも閲覧も引用もしていません。本ページが DIN 471 に帰している内容は要約と供給者説明によるもので、本文に明記しています。本ページ唯一の算術は当サイトによるもので、同じ入力に対する安全率 3 と 4 の比は 3 ÷ 4 = 0.75、したがって厳しいほうの係数は許容推力を 25% 低くします。推力の数値は公開していません。メーカーのデータ表を持たず、表の値は環の形式、材料、寸法によって変わるためです。
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軸方向の位置決めを行う組立てで、限界が環にあるのか溝にあるのか分からない場合、 送っていただきたい二つの数字は溝深さと軸の材料です。その二つが決めることは、 環の品番より多くあります。
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