最も信頼できる予張力導入法の原点は、鉄骨工が全力を出すことである
鉄骨のボルト締結には、トルクより信頼できると広く認められている方法があり、それは回転数を数えることで働く。ではどこから数えるのか。それを定めている文書は用語集で答えており、その答えは数値ではない。人であり、名指しされた手工具であり、そして全力という語である。それは杜撰さではない。この規範は一度もっと精密なものを試し、それがこの方法を壊すと分かって、古い文言を戻したのである。
2020 年版 RCSC 高力ボルト構造継手規範の用語集から。 「密着状態(Snug-Tight Condition)。板が互いにしっかり接触するまで引き寄せられ、 かつ各ボルト組立体が、インパクトレンチで数回打つこと、適切な非インパクト式レンチに対して 抵抗を示すこと、あるいは鉄骨工が普通のスパッドレンチを用いて全力を出すこと、 そのいずれかで得られる締まりを少なくとも有している継手の状態。」 トルクもなく、力もなく、角度もない。そしてその状態こそ、 ナット回転法が数え始める原点である。 同じ文書がトルク制御より信頼できると述べている、あの方法の。
文書は百十八ページ、2020 年 6 月 11 日付、構造接合研究協議会(RCSC)の発行で、 全文が無償で手に入る。2014 年版に取って代わっている。 対象は合衆国の鉄骨構造継手である。国際規格ではなく、一般の機械ねじも扱わない。 だからここにあるものを別種の継手に持ち込んではならない。
それでも自分の分野の外で読む価値があるのは、 この文書が「自分が知らないこと」をどれだけ口に出しているかで、 この頁が扱うのは主にそういう箇所である。
変えられ、そして戻された定義
第 8.1 項は密着継手の要件を四つ挙げ、そのどれも数値ではない。 ボルトがねじに過度の損傷を与えずに入るよう孔を揃えること。すべての孔にボルトを入れ、 座金を配置し、ナットをねじ込むこと。継手の締め固めは 最も剛な部分から系統的に進めること。そして継手を、 十分なねじのかみ合いをもって密着状態まで施工すること。
解説が実務版を足す。同じ人の動作の並びに、もうひとつ加えて。 電動トルクレンチでレンチが遅くなり始めるまで締めること。 そして注意がひとつ。ボルト配列を一巡以上まわる必要があることもある。
そして、すべてを説明する段落が来る。
「密着継手の定義は 2009 年版で一時的に変更され、 2014 年版で 2004 年版に規定されたのと同じ定義に戻された。 2009 年の定義は、密着継手や他の方法で施工されたせん断・支圧継手の検査には適していたが、 ナット回転法の適切な出発点を定義するには不十分であることが分かった。」
つまり委員会は文言を締めることを試みた。それは五年もった。 問題は、密着が検査される状態であるだけでなく、同時に 測定の原点でもあるということだった。 片方の仕事に十分な定義が、もう片方には十分でなかった。 あいまいな出発点から半回転しても、得られるのはあいまいな予張力である。 生き残った文言は、トルクについて意図的にあいまいで、物理状態については具体的である。 板がしっかり接触していること、そして定義された量の人力が加えられていること。
同じ解説は、しっかり接触が何を意味しないかについても率直である。 厚い材料や大きなばりのある材料では、 「すべてのボルト孔位置で接触面の接触を達成できないことがある。これは通常、 継手の性能にとって有害ではない。」 すきまが残ることは許されており、文書はそれを現場に発見させるのではなく書いている。
回転量の表は六分の一の格子である
表 8.1 は密着状態から必要なナット回転量を与える。ボルト長さ三区分、 外側面がどれだけ平行かの三通り。
| ボルト長さ | 両面ともボルト軸に直角 | 一面が直角、他面が 1:20 以下の傾斜 | 両面とも 1:20 以下の傾斜 |
|---|---|---|---|
| 4db 以下 | 1/3 回転 | 1/2 回転 | 2/3 回転 |
| 4db 超 8db 以下 | 1/2 回転 | 2/3 回転 | 5/6 回転 |
| 8db 超 12db 以下 | 2/3 回転 | 5/6 回転 | 1 回転 |
格子として読めば、規則はひとつしかない。これは規格の記述ではなく当方の観察である。 三分の一回転から始める。長さの区分を一段下がるごとに 六分の一、傾斜を一段横へ動くごとに六分の一を足す。 表のどのマスも、上下左右の隣とは六分の一回転だけ離れている。
そこで脚注 a を見る。すべての必要回転量の公差は プラス 60 度、すなわち六分の一回転、そしてマイナス 0 度である。
つまり許される回しすぎはちょうど表の一マスにあたる。 一マス回しすぎてもまだ公差の内側であり、一マス足りなければ外側で、余裕はまったくない。 仕組み全体がひとつの単位の上に建っており、片方向には寛容で、 もう片方向には容赦がない。失敗の形が予張力の不足である方法にとって、それは正しい形である。
ほかに二つの脚注が効く。ナット回転量は どちらの要素を回すかにかかわらずボルトに対する相対量なので、 頭を押さえるかナットを押さえるかは問わない。そしてこの表は つかみ長さの中の材料がすべて鋼である継手にのみ適用される。 積層に別のものを入れれば、この表は適用されない。
表が十二直径で止まるのは、研究がそこで止まるからである
第四行はない。脚注 c は、ボルト長さが十二直径を超える場合、必要なナット回転量は 適切なボルト張力測定装置による実際の試験によって決定されなければならない と述べる。解説は理由を、飾らずに述べている。
「表 8.1 に示すとおり、12db を超えるボルト長さについて必要な ナット回転量を確立する利用可能な研究は存在しない。」
この表が止まるのは、長いボルトが珍しいからでも、委員会の紙面が尽きたからでもない。 証拠が尽きるところで止まり、代わりに手順を渡す。 工事に用いるボルトとナットのロットの組合せごとに三つの試料を取り、 張力測定装置で試験して、回転量を自分で確立せよ、と。
同じ解説は、この方法の根拠も率直に述べている。 トルクレンチのほうが科学的な計器だと考える人に示すべき一文である。
「ナット回転法による予張力導入は、 トルク制御式の予張力導入法が一般に与えるものより信頼できるボルト予張力をもたらす。 ボルトの非弾性挙動域に達するひずみ制御は、 完全にトルク制御に依存する方法より本質的に信頼できる。」
非弾性域に達するひずみ制御。回転を数えるのは、ボルトが制御されたかたちで降伏を越えて 引かれているからであり、長さは回転で制御できる量だからである。トルクはそうではない。 その大半が摩擦に費やされるからである。この論は本サイトに 別の方向から現れており、同じ論である。
手でできる再使用の判定
第 2.11 項は 2020 年版で新設され、解説から本文へ移されて拡張された。三文しかない。
- 素地仕上げの Group 120 の重六角ボルトは再使用してよい。密着継手では設計責任技術者の承認なしに、予張力継手とすべり耐力継手ではその承認を得て
- どの Group、どの等級であれ、亜鉛めっきまたは被覆されたボルト、同じくめっきまたは被覆されたスプライン端組立体、そして Group 150 の重六角ボルトは再使用してはならない
- 増し締めは再使用とみなさない
そして解説が、理由と現場での判定を一段落で与える。予張力導入の施工は、 ナットとねじ切り上がり部とのあいだのねじ部の非弾性伸びを伴う。 素地仕上げの Grade A325 ボルトはそれを二度以上受けるだけの延性をもつ。 Grade A490 は一度分の延性はあるが、 二度目を受けるだけの延性を一貫してはもたない。 亜鉛めっきはナットの回転能力を下げる。被覆ボルトが外される理由はそこにある。
「単純な目安として、素地仕上げの Grade A325 ボルトは、 ナットが手でねじ部の端まで回し上げられるなら再使用に適している。」
規範の中に印刷された、手でできる判定。しかもそれが問うている性質は、 本来なら張力測定装置がなければ問えないものである。 成り立つのは、探している欠陥がねじの永久伸びであり、伸びたねじは食いつくからである。 この文書の中で、これほど使いやすいものはほかにない。
座金が実際に要るのはどこか
第 6 項は、ひとつの思い込みを外すところから始まる。 密着継手に座金は要らない。そして 予張力継手にもすべり耐力継手にも要らない。 そのうえで例外を並べる。そして例外こそが面白い。荷重ではなく方法に紐づいているからである。
- 外側面の傾斜が 1:20 を超えるときは、平行でない分を補うためにテーパ座金を用いる
- 外側の板に長孔があるときは、その孔を完全に覆う大きさの座金を用いる
- 校正レンチ法ではナットの下に座金を用いる
- トルシア形高力ボルト法では組立体の一部としてナットの下に用いる
- 併用法ではナットの下に用いる
- 直接張力指示装置法では、指示装置が回される側の下にあるとき、回される側と指示装置のあいだに用いる
六つのうち三つがそこにあるのは、ある方法が、回す相手として制御された摩擦面を必要とするからである。 その座金は鋼材を守っているのではない。計器の一部なのである。
鉄骨の外の人が読む価値
持ち出せるものはごくわずかである。等級は米国のもの、継手の型式は構造のもの、 そして回転量の表は、つかみ長さがすべて鋼である場合に明示的に限られている。 この頁のどれも、機械の中の一本のメートルねじボルトに当ててはならない。
ひとつだけ持ち出せる考えがあり、いまは自分の頁を持っている。 同じ仕様書はすべり限界継手とせん断・支圧継手を並べて定義しており、 すべりの式は導入軸力を掛ける。だから 軸力のないボルトが残す継手は、 弱いのではなくすべり耐力がゼロである。 それは荷重経路についての言明であって米国の等級についてのものではなく、 二枚の板が締め付けられているところならどこでも成り立つ。
この仕様書が定義する語は、米国の労働安全基準が、 クレーンが部材から手を離す前にどこまで留めておくかを述べるときに使う語とは別である。 その基準はレンチ締めを求めながらどこでも定義せず、図に押印した技術者に定義を委ねる。 別の文書が別の道筋で近い場所に着いている。
持ち出せるのはこの文書の形である。上の各節で三度、規範がふつう隠すことを述べている。 ある定義が変えられ、戻さざるをえなかったこと。ある表が研究の尽きるところで終わること。 そしてその規則のひとつの実務判定が、ナットが手で回るかどうかであること。 そう口に出す規範は、なめらかな表面を見せる規範より正しく使いやすい。 どこが測定でどこが慣行かが見えるからである。
そして、すべてを始めるあの一文がやはり最良である。 利用できる最も信頼できる予張力導入法は、 鉄骨工が普通のスパッドレンチを用いて全力を出すことと定義された状態から始まる。
座金にも型がある。仕様書はこれらの座金の型(Type 1 又は Type 3)をボルトと同一にすることを求めており、 ボルトの型を誰も述べなければ、どちらも供給されうる。
この記事は六つの手順のどれか一つには収まりません。手順をまたいで出てくるか、組み付けたあとに出てくる話です。ここに行き着く判断がどこで下されているかはねじの決め方にまとめてあります。
よくある質問
密着(snug tight)とは実際に何を指しますか。
RCSC 規範は密着状態を、板が互いにしっかり接触するまで引き寄せられ、かつ各ボルト組立体が、インパクトレンチで数回打つこと、適切な非インパクト式レンチに対して抵抗を示すこと、あるいは鉄骨工が普通のスパッドレンチを用いて全力を出すこと、そのいずれかで得られる締まりを少なくとも有している状態と定義しています。定義にトルク値はありません。
なぜ密着はトルクで定義されないのですか。
検査される状態であると同時に、ナット回転法の出発点でもあるからです。解説は、この定義が 2009 年版で一時的に変更され、2014 年に 2004 年の文言へ戻されたことを記録しています。2009 年の版は検査には適していたものの、ナット回転法の適切な出発点を定義するには不十分だと分かったためです。
ナット回転法ではどれだけ回すのですか。
表 8.1 は、長さ四直径以下で両面がボルト軸に直角なら三分の一回転、八から十二直径で両面が傾斜しているなら一回転までを与えます。その表を格子として読むと、これは当方の観察ですが、どちらの方向にも一段動くごとに六分の一回転が加わります。
回転量の公差はどれだけですか。
プラス 60 度、すなわち六分の一回転、そしてマイナス 0 度です。当方の対照によれば、許される回しすぎはちょうど表の一マスにあたり、足りない側には余裕がまったくありません。
ナット回転法の表はなぜ十二ボルト直径で止まるのですか。
解説が理由を述べています。十二直径を超えるボルト長さについて必要なナット回転量を確立する利用可能な研究が存在しないからです。それを超える場合、脚注 c は適切なボルト張力測定装置による実際の試験で決めることを求め、解説は工事に用いるボルトとナットのロットの組合せごとに三つの試料を試験することを示しています。
ナット回転法はトルクレンチより優れていますか。
規範がそう述べています。解説は、ナット回転法がトルク制御式の方法の一般に与えるものより信頼できる予張力をもたらすとし、ボルトの非弾性挙動域に達するひずみ制御は、完全にトルク制御に依存する方法より本質的に信頼できると述べています。
構造用ボルトは再使用できますか。
第 2.11 項では、素地仕上げの Group 120 重六角ボルトは、密着継手では設計責任技術者の承認なしに、予張力継手やすべり耐力継手では承認を得て再使用できます。どの Group、どの等級であれ亜鉛めっきまたは被覆されたボルト、および Group 150 重六角ボルトは再使用してはなりません。増し締めは再使用とみなされません。
ボルトが再使用できるかを手早く判定する方法はありますか。
解説がひとつ与えています。単純な目安として、素地仕上げの Grade A325 ボルトは、ナットが手でねじ部の端まで回し上げられるなら再使用に適しています。理由は、予張力導入がナットとねじ切り上がり部のあいだのねじ部を非弾性的に伸ばし、伸びたねじは食いつくからです。
構造用ボルトに座金は必要ですか。
一般には不要です。第 6 項は、密着継手にも、予張力継手にもすべり耐力継手にも座金は要らないと述べ、そのうえで例外を挙げます。1:20 を超える傾斜にはテーパ座金、外側板の長孔にはそれを覆う大きさの座金、そして校正レンチ法、トルシア形、併用法はいずれもナットの下に一枚、直接張力指示装置法は指示装置が回される側の下にあるとき一枚を要します。
参考資料
- Specification for Structural Joints Using High-Strength Bolts、2020 年 6 月 11 日、構造接合研究協議会。用語集、第 2.11、6、8.1、8.2.1 項、表 8.1
- RCSC の文書ページ。この規範は全文が無償で公開されている
これは構造接合研究協議会が発行する百十八ページの完全な無償 PDF であり、プレビューではない。2020 年 6 月 11 日付で、2014 年版に取って代わっている。合衆国の鉄骨構造継手のための規範である。国際規格ではなく、一般の機械ねじを扱わず、この頁のいかなる内容も別種の継手やメートルねじの締結部品に当ててはならない。次の各項は当方の観察であり、規範の記述ではない。表 8.1 が六分の一回転を単位とするひとつの格子であること、どちらの方向にも一段で六分の一が加わること、そして脚注 a のプラス 60 度の公差がしたがって表のちょうど一マスにあたること。表 8.1 は印刷された頁を描画した画像と照合した。分数の字体は文字抽出で残らないためである。RCSC 規範がそれらを名指しした文を超えて、ASTM F3125、F1852、F2280、F3148、F436、F959 からは何も引用していない。表 5.2(最小ボルト予張力)は引用しておらず、第 7 項(施工前確認)と第 9 項(検査)も引用していない。今回それらは精読していない。この頁は文書を記述している。施工や検査の指示ではない。本シリーズの多くの記事と異なり、この記事は掲示板の質問から始まっていない。今月の構造および建設関係の板に適切な締結部品の質問がなかったため、題材は本サイト自身の網羅の空白から選んだ。RCSC、direct tension indicator、load indicating、F959、A325、F3125 はいずれもサイト内で一件も見つからなかった。
お問い合わせ
図面上の継手に予張力を導入するなら、どの方法かを明記してください。 座金の要求も検査も、荷重ではなく方法から出てくるからです。 ナット回転法であれば、現場で何を出発状態とみなすのかも書いてください。 測定はそこから始まります。