ねじ固定剤は二つ目のロックで、効き方は塗布工程で変わる:NASA のユンカー振動試験の一つで Loctite 242 を塗ったねじは予荷重の低下が平均 42% と三組で最も良かったが、ばらつきも最大で、12 回のうち 3 回は 8〜9 割を失った
ねじ固定剤を塗れば、ねじは緩まないのでしょうか。少なくとも NASA の地上試験ではそうではありませんでした。国際宇宙ステーションの一部のハードウェアでは液状のねじ固定剤を二次ロックとして使っていましたが、地上振動試験で、固定剤を塗った継手が緩みました。ジョンソン宇宙センターはこの使い方を制限し、宇宙ステーション計画は NASA 技術安全センター(NESC)に、どの条件なら信頼できるのかの調査を依頼しました。2011 年に公開された報告書(NESC-RP-04-092)は Loctite 242 と 271 で一連の試験を行い、答えは二つに分かれました。横振動の比較試験の一つでは、固定剤を塗ったねじは平均で最も良い結果でしたが、同じ組の結果は大きくばらつきました。別の無予荷重試験では、塗り方、洗浄、アクチベータといった工程が固定剤そのものの強度を変えることが測定されました。当サイトが付け加えると、これらの工程が正しく行われたかは、締めたねじの外観からは通常確認できません。この記事では報告書を順に読みます。なぜ始まったのか、なぜ先にねじを止めているのは予荷重なのか、外したときの戻しトルクがなぜ単独の判断材料にならないのか、どの工程が結果を変えたのか、「平均で最良、ばらつきも最大」の数字、そして規格どうしの食い違いと NESC が最後に付けた条件です。読了まで約 10 分です。
地上試験の不具合から始まった評価
まず、この報告書がなぜあるのかです。報告書の第 4 節と第 6 節によると、国際宇宙ステーション(ISS)の一部のハードウェアは、液状ねじ固定剤(liquid locking compound、LLC)で締結部品の「二次ロック」(secondary locking feature)の要求を満たしていました。 一次ロックは予荷重そのもので、固定剤は硬化した後に予荷重の低下に抵抗する役目です。地上振動試験で、固定剤を使って組み立てた継手が緩みを防げませんでした。報告書は、これらの不具合が、正しい手順で塗布されず硬化が不完全だったことに関連していたと書いています。 ジョンソン宇宙センター(JSC)の技術部門は、とくに安全上重要な箇所で固定剤を二次ロックとして使うことを制限しました。一方、宇宙ステーション計画は自分たちの使用実績は信頼できると考え、どの条件なら予測どおりの結果になるかを知りたいとしました。評価計画は 2004 年 4 月に NESC の審査委員会で承認され、最終報告は 2010 年 12 月に提出、2011 年 3 月に NASA/TM-2011-217068 として公開されています。
報告書の第 7.1.2 節は、JSC が宇宙ステーションの外部搭載機材で見つけた三つの問題を挙げています。これがほぼそのまま、後の試験の題目になっています。製造者の製作文書は固定剤の塗布工程を指定しておらず、重要工程にも指定していなかったこと。 製造者の社内工程が、チタン合金のインサートに先にアクチベータを塗ることを求めておらず、これはサプライヤーの推奨に反していたこと。そして、この用途が二次ロックとして個別に適格性確認されていなかったことです。報告書は、JSC の担当者がこの製造者の技術者による適格性試験用の組立てを観察して高く評価し、その試験が実質的に組立て後の適格性確認になったとも記しています。また、ほとんどの緩み止めナットは NASM 1312-7 の振動試験で検証されるのに対し、ロッキングインサートと固定剤はそうではないとも指摘しています。 試験の対象は Loctite 242(中強度)と 271(高強度)の二製品だけで(Loctite は Henkel の登録商標です)、ほかの固定剤は評価されていません。
先にねじを止めているのは予荷重
最初の試験(報告書では Phase Zero)で、順序ははっきりしました。アルミ試験片のステンレス製ねじインサートにねじを締め、一方には Loctite 242、もう一方には真空用グリース Braycote 601 だけを塗り、NASM 1312-7 で振動させました。予定は 8 分間で、緩みが明らかなら途中で止める手順です。両群のインサートは品番が異なり、比べているのは固定剤とグリースの違いだけではありません。 242 を塗って約 1,000 lb(約 4.4 kN)まで締めた 3 本は、振動後も合マークが動きませんでした。グリースだけで同じく約 1,000 lb の N6〜N10 は、開始から 45 秒以内に治具から抜け出しました。 ところが 242 を塗っても約 500 lb(約 2.2 kN、25 in-lb、約 2.8 N·m)までしか締めなかった 3 本は、1 本が回転し、残る 2 本は完全に緩んで治具から抜けました(約 2,000 lb まで締めた固定剤の組は、アルミのスペーサがかじったため無効とされています)。報告書の結論は、予荷重(つまり一次ロック)が高いほど振動による緩みに強く、この構成の約 500 lb では 242 は緩みへの抵抗にならなかった、というものです。これはすべての継手に共通する最低予荷重ではなく、Henkel も付録 B で、手締めで足りるかは用途しだいだと答えています。
その後の大規模な振動試験も同じ方向を示しています。報告書の表 7.7-2 は「30,000 回の振動で回転しない」ことを合格としています。1/4-28 のねじに 242 を塗り、60 in-lb(約 6.8 N·m)、座面潤滑なしで締めた 142 本では、合格は 77 本(約 54%、当サイトの計算)でした。 同じく 242 を塗り、105 in-lb(約 11.9 N·m)で座面にグリースを塗った 33 本は全数合格です。グリースだけで同じ 105 in-lb・座面潤滑ありの二組は、11 本中 1 本、22 本中 0 本しか合格しませんでした。 報告書の読みは、242 の性能は試験したロッキングインサートと少なくとも同等で、固定剤、フリーランニングインサート、ロッキングインサートのいずれも予荷重が高いほど良くなるように見える、というものです。ただしこれらの行は締付けトルクと座面潤滑の条件が同時に違うので、合格率だけで予荷重単独の効果は分けられません。固定剤は予荷重の上に足すもので、予荷重の代わりにはなりません。緩みには二種類あり、ここで扱うのはそのうちの「回転による緩み」です。違いはねじが緩む理由で書いています。
締めたねじの戻しトルクは、主に締付けトルクに従う
固定剤がよく硬化したかを知るには、戻しトルクを測るのが直感的です。報告書の第 7.3 節は、それがうまくいかないことを示しました。14 の構成、三つの径で、Johnson の 3 分の 2 法による推定降伏荷重を基準に 25%、50%、75%、100% まで締め、各列 8 本に固定剤、3 本にグリースだけを塗って対照にしました。これらの試験片は振動も繰返し荷重も受けていません。 100% まで締めたとき、1/4 インチの固定剤塗布試験板 10 群の間の差は、通常の 5% 水準では有意ではありませんでした(p=0.084。この分析は固定剤とグリースの差を検定したものではありません)。報告書は、試験片が振動を受けていないため、固定剤とグリースのボルトの間に差が見られなかった可能性があるとも書いています。報告書は、締付けトルクが戻しトルクを左右する圧倒的な因子だと書いています。
そこで NESC は測り方を変えました。締めて固定剤を硬化させてから、くさび式の治具で予荷重を抜き、固定剤そのものの破壊トルクを測る方法です。結果は、試験条件の範囲で初期予荷重は除荷後の破壊トルクに有意な影響を与えない(教訓 LL-8:硬化は予荷重の関数ではない)一方、 穴の種類は影響し、同じ条件で止まり穴の破壊トルクは通し穴よりはっきり低い、というものでした。そのため第 7.5 節の感度試験は無予荷重で行われ、1/4-28 のねじで固定剤そのものの破壊トルクを測っています。対照群の平均は約 14 in-lb(約 1.6 N·m)です。 この値は試験の締付けトルクよりずっと小さい値です。当サイトはここから、締結した継手の戻しトルクだけでは十分な硬化を確認できないと読みます。報告書は別途、ハードウェア開発者に硬化を検証する手順と試験の整備を勧めています。
破壊トルクを変えていたのは、締めた後には見分けにくい工程
予荷重を取り除くと、各工程の影響が見えてきます。報告書の第 7.5 節から、ステンレスのインサートと A286 のねじでの結果です。
| 条件(無予荷重、Loctite 242) | 平均破壊トルク(in-lb) | 標本分散((in-lb)²) |
|---|---|---|
| 対照(洗浄・活性化済み、84 本) | 14.6 | 6.1 |
| インサートに古い固定剤が残り、ねじは活性化済み | 13.8 | 8.2 |
| 入荷状態のねじを洗浄せず(活性化あり) | 13.2 | 4.3 |
| Braycote が付いたインサートを MEK で洗浄 | 12.3 | 15.7 |
| 乾燥被膜潤滑(DFL)のねじ | 7.9 | 24.3 |
乾燥被膜潤滑のねじは、平均破壊トルクが対照より約 46% 低く、分散は約 4 倍でした(当サイトの計算)。報告書は、平均の低下よりも分散の増加のほうが目立つと書いています。同じ節のほかの結果は次のとおりです。 アクチベータを使わないと、本文の要約では平均で約 10% 低い(二つの試験のどちらでも)。ただし図 7.5-3 の平均値から計算すると、低下率は約 13〜15% です。A286 のめねじ加工穴では、きつい H2 のほうが H4 より平均破壊トルクが 14% 高い。ただし報告書は、その一部はきつい嵌合によるかもしれないとしています。 通し穴は 6〜24 時間で全強度に達し、止まり穴は 96 時間まで強度が増え続けました。90 °F・相対湿度 90% では、ねじだけに塗った組は強度が下がり、雄ねじと雌ねじの両方に塗った組は影響を受けませんでした。
報告書のこの試験の結論は、塗り方が調べた因子のなかで最も影響が大きく、雄ねじと雌ねじの両方に塗ると破壊トルクが高くなり、十分に行き渡らせるために必要と見られる、というものです。付録 B に収められた Henkel の技術回答(2006 年)は、止まり穴で起こりうることを説明しています。 雄ねじだけに塗って止まり穴に締め込むと、閉じ込められた空気が固定剤を押し出しすぎて行き渡らず、固定剤は架橋を始めても完全には硬化しません。Henkel によれば、そうした継手を外すとねじ山の白い粉に固定剤の元の色が混じり、正しく塗られたものは白い粉だけが残ります。これは Henkel が示した観察の手掛かりで、報告書が定めた硬化の判定基準ではありません。 報告書の止まり穴の繰り返し試験には、解けていない点も残っています。そのうち一組は以前の結果を再現できず、ばらつきが大きく、報告書は未知の因子が影響したとだけ書いています。
これらの工程には共通点があります。洗浄したか、アクチベータを塗ったか、どちら側に塗ったか、ねじ山に乾燥被膜潤滑があるかは、締めたねじの外観からは通常確認できません(これは当サイトの注意で、試験が測ったのはトルクであって外観ではありません)。そしてこの試験で変わったのは、平均だけでなくばらつきもでした。
平均で最良の組は、ばらつきも最大
ばらつきの大きさを最もはっきり示すのが、付録 F のユンカー試験です。横方向の往復変位を与える試験機(DIN 65151)で、条件は 1/4-28 UNJF-3A のねじをねじインサートに締め、目標予荷重 2,400 lbf(約 10.7 kN、ねじの降伏荷重の約 66%。各試験開始時の実測値は 2,315〜2,385 lbf)、15 Hz、偏心設定 0.12 インチです。 構成ごとに 12 回、2,300 回後に予荷重が何パーセント下がったかを比べました。全群で頭部下面とワッシャに Braycote を使い、固定剤の組は、ねじとインサートにアクチベータを吹き付けて 5 分乾かし、242 を 2〜3 滴で両方のねじ山を覆い、24 時間硬化させてから試験しています。
| 構成 | 12 回の予荷重低下(%) | 平均 | 標本分散(パーセントポイント²) |
|---|---|---|---|
| 標準インサート+Braycote グリース | 12 回とも 100 | 100 | 0 |
| ロッキングインサート+Braycote グリース | 95, 99, 89, 91, 90, 93, 94, 52, 95, 86, 82, 99 | 88.8 | 159 |
| 標準インサート+Loctite 242 | 91, 89, 22, 39, 44, 24, 22, 15, 23, 81, 28, 22 | 41.7 | 814 |
この構成と条件では、平均で見れば 242 がはっきり最良で、報告書の結論もそうです。ただ、分散 814 を標準偏差にすると約 28.5 ポイントで、ロッキングインサートの組(約 12.6)の 2 倍以上です(当サイトの計算)。中身を見ると、固定剤の 12 回のうち 9 回は 15〜44% の低下、残る 3 回は 81%、89%、91% で、ロッキングインサートの組とほぼ同じでした。
仮の基準でこの違いを見てみます。ある継手が予荷重の半分までの低下を許容するとします(50% は当サイトが置いた仮の基準で、報告書の判定基準ではありません)。固定剤の組は 12 回中 9 回が基準内、3 回が基準外です。ロッキングインサートの組は 12 回とも基準外で、最も良い回でも 52% 低下しました。 つまり平均値が言っているのは「この試験では固定剤はふつう良い」ということで、個々の値が言っているのは「固定剤を塗ったうちの何回かは、ロッキングインサートの組と同じくらい予荷重を失った」ということです。平均値だけでは、各試験で十分な予荷重が残るとは保証できません。この 3 回がなぜとくに悪かったのか、報告書は説明しておらず、前の節の工程によるものかどうかも、当サイトは報告書からは判断できません。 付録 F の表 4 には、242 構成の試験番号 29 でねじが 2,324 サイクル目に破断したという記録もあります。表 5 は 2,300 サイクル時点の値です。
規格どうしが違うことを言っている
工程が結果を左右するなら、次の問いはその工程をどの文書に従って行うかです。以下は報告書が扱った当時の版の比較で、一部は品質試験用の試験片作製手順の違いであり、現在の一般的な取付け規定を示すものではありません。報告書の付録 H は三つの規格を比べています(MIL-S-22473E は 2004 年に廃止、MIL-S-46163A は 2001 年から新規設計に使われていません)。MIL-S-22473E は塗布位置の指示があいまいです。MIL-S-46163A はナットとボルトの両方に塗るよう求めています。ASTM D5363-03 はボルトにだけ塗り、ナットを固定剤の上に回し通して両側に付くようにしています。 三つとも、適用材料としてステンレスやチタンを挙げていません。また MIL-S-46163A が指定する F 級プライマーは、Henkel によれば 1995 年 6 月に販売をやめています。
請負業者の文書もそれぞれ異なります。付録 I は、宇宙ステーションの製造拠点に関する五つの塗布文書を比べています。Rockwell の 1985 年の文書はチタン部品で Grade T プライマーを省くとし、Boeing Huntington Beach の 2004 年の文書は固定剤を直径 1/4 インチ以下の飛行ハードウェアに限り、二硫化モリブデンの乾燥被膜潤滑との併用を認めていました。最後の点は、Henkel の意見や、乾燥被膜潤滑の上では使わないという報告書の結論と食い違います。 NESC は宇宙ステーションの改修作業を行う業者の現場も観察しています。教室での訓練を受けた技術者が塗布を実演したとき、プライマーもアクチベータも塗りませんでした。実演用のボルトとナットは新品なので、「クリーナー/プライマー」は要らないと考えたためです。一回の実演の観察ですが、報告書は、アクチベータの本当の役目(不活性な金属の上で固定剤を硬化させること)の説明と理解が不十分だったことの表れだと見ています。
NESC の結論:二次ロックに使える、ただし工程が前提
報告書の勧告 R-1 は、Loctite 242 と 271 を宇宙ステーションのハードウェアの二次ロックとして認める、ただし塗布する基材で十分に硬化する塗布工程ができていることを前提とする、というものです。R-2 はこの前提を七つに分けています。
- 硬化が十分であることを確認する手順と試験をつくる。
- 塗布の前・最中・後の汚染を防ぐ。
- 不活性または活性の低い基材(ステンレス、チタンなど)ではアクチベータを使い、雄側と雌側の両方の部品に塗る。
- 固定剤を使う締結部品の系のトルクと軸力の関係を、取付けに必要な荷重を超える範囲まで求める(報告書が挙げる典型的な取付け水準は締結部品の耐荷重の 50〜75%)。
- 固定剤は雄ねじと雌ねじの両方に塗る。
- 固定剤を塗る前に、雄側と雌側の表面を洗浄し活性化する。
- どちらかのねじ山に乾燥被膜潤滑があるハードウェアには固定剤を使わない。
R-3 は、NASA の主任技術者室がこの報告書に沿って NASA-STD-6016 の液状ねじ固定剤の節を改訂するよう勧めています。報告書の教訓 LL-1 は全体を一文にまとめています。固定剤が十分に硬化したとき、二次ロックとしての性能はプリベリングトルク形の緩み止め締結部品と少なくとも同等である。要点は「十分に硬化したとき」です。
ねじの側から持ち帰れること
以下は当サイトの読みで、報告書が一般の利用者に向けた勧告ではありません。報告書の勧告の対象は NASA の技術部門で、適用範囲も Loctite 242 と 271 だけです。
- 二次ロックの前に予荷重を確かめる。Phase Zero と NASM 1312-7 の振動試験では、試験範囲内で予荷重が高いほど緩みにくい傾向が見られました(一部の構成では締付けトルクと座面潤滑も同時に違い、予荷重単独の効果は分けられません)。Phase Zero の約 500 lb の構成では、固定剤は予荷重不足を補えませんでした。予荷重が摩擦や締付け方法にどう左右されるかは一つのトルク値は、ある摩擦条件の組を前提にしていますをご覧ください。
- 図面に「ねじ固定剤塗布」と書くだけでは足りず、工程を書く。どちら側に塗るか、アクチベータを使うか、洗浄の方法、荷重をかけられるまでの硬化時間は、報告書に出てくる規格や請負業者の文書でそれぞれ違い、それがまさに結果を変える工程です。
- ねじの納入時の表面状態も工程の一部。付録 B の 2006 年の Henkel の回答は、めっき、陽極酸化アルミ、亜鉛めっき鋼を不活性な表面に挙げ、プライマーは室温 24 時間での完全な硬化を助け、使わなければずっと長くかかりうるとしています。多くの固定剤は油のない表面を推奨し、亜硝酸塩を含む防錆剤は硬化を妨げる場合があります。乾燥被膜潤滑の上では強度の低下もばらつきも最大でした。購入仕様に表面処理と油の有無を書くことが、その後の塗布工程に直接かかわります。
- 平均だけでなく、ばらつきも見る。ユンカー試験の平均 41.7% は事実で、12 回のうち 3 回が 8〜9 割を失ったのも事実です。緩み止めの方法を比べるとき、試験条件が結論にどう効くかは「振動試験に通った」が言っていないことで書いています。
タイトルに戻ります。ねじ固定剤は二つ目のロックです。この報告書はそれを否定していません。補ったのはその文の後半です。そのロックがどれだけ効くかは塗布の前後の工程に大きく左右され、その工程が正しかったかは、締めた後には通常見えません。
このページで言えないこと
ページ冒頭の図は止まり穴での被覆不足を示す概念図で、固定剤が「上半分にあり下半分にない」という整った境界は、報告書で観察された分布ではありません。このページは Loctite 242 と 271 だけを扱っています。報告書はほかの固定剤を評価しておらず、プレコート型のねじ固定剤も試験していません。Henkel が挙げた新しい製品についても、報告書は説明を一文引くだけで試験データはありません。 試験ごとに組合せは異なり、航空宇宙規格の A286 締結部品、ステンレスのねじインサート、アルミ、A286 または 15-5 PH ステンレスの母材などが使われています。結果を炭素鋼の亜鉛めっきねじやほかの材料の組合せにそのまま当てはめることはできません。 ユンカー試験の固定剤の組で 3 回がとくに悪かった理由を報告書は説明しておらず、このページでも推定しません。熱真空環境での温度保持試験では組内の変動係数が最大 25% に達し、報告書は未知の因子の影響を示唆しています。 報告書の表 7.7-2 は表題に 0.250-28 とありますが、そのうち第 6 構成は表 7.7-1 によれば 0.164-32 で、このページは表 7.7-1 に従っています。表 7.7-1 と付録 F の表 5 は PDF 内の画像で、当サイトがページ画像から一つずつ書き写しました。表 7.7-2 は文字を直接抽出でき、原表と照合しました。Henkel の説明は付録 B に収められた 2006 年の回答で、現在の製品資料と一致するとは限りません。 予荷重低下率、平均、分散は報告書の値で、インチ系とメートル系の換算、標準偏差、約 46% の低下率、合格率、倍率は当サイトの計算です。50% の許容基準は仮の値です。「ねじの側から持ち帰れること」は当サイトの読みで、NASA の要求ではありません。
この記事は六つの手順のどれか一つには収まりません。手順をまたいで出てくるか、組み付けたあとに出てくる話です。ここに行き着く判断がどこで下されているかはねじの決め方にまとめてあります。
よくある質問
ねじ固定剤を塗れば、ねじは緩まないのですか?
必ずしもそうではありません。NASA 技術安全センターの報告書 NESC-RP-04-092 では、Loctite 242 を塗っても約 500 lb の予荷重までしか締めなかった 3 本のうち、振動試験で 1 本が回転し、2 本が完全に緩んで抜けました。これはその構成での結果で、すべての継手に共通する最低予荷重ではありません。報告書の結論は、予荷重が一次ロックで、固定剤はその上に足す二次ロックだというもので、試験範囲内では、予荷重が高いほど、固定剤の有無にかかわらず継手は緩みに強くなる傾向でした。
ねじ固定剤はロッキングインサートより良いのですか?
この報告書の付録 F の試験条件と構成では、平均で見ればそうです。ユンカー式横振動を 2,300 回与えた後、242 を塗った 12 回の予荷重低下は平均 41.7%、ロッキングインサートにグリースは平均 88.8%、標準インサートにグリースはすべて 100% でした。ただし固定剤の組は 15% から 91% まで広がり、標本分散 814(パーセントポイント²)で三組のなかで最も大きく、12 回のうち 3 回は 81〜91% 低下しました。
ねじ固定剤が効かなくなる一番の原因は何ですか?
報告書の無予荷重試験で最も影響が大きかったのは塗り方です。雄ねじと雌ねじの両方に塗ると破壊トルクが高くなり、Henkel の回答では、止まり穴でねじだけに塗ると閉じ込められた空気が固定剤を押し出し、硬化が不完全になることがあります。乾燥被膜潤滑のねじは平均破壊トルクが対照の約半分で分散は約 4 倍、アクチベータなしでは本文の要約で平均約 1 割低く(図の平均値からの計算では約 13〜15%)、グリースが付いたインサートは洗浄してもばらつきが大きくなりました。
戻しトルクで固定剤が硬化したかを確認できますか?
締め付けたねじでは難しいと言えます。報告書の第 7.3 節では、振動を受けていない試験片を推定降伏荷重の 100% まで締めたとき、戻しトルクは主に締付けトルクに従って変わりました。報告書は、振動を受けていないために固定剤とグリースの違いが見えなかった可能性もあるとしています。固定剤そのものを測るために、NESC はくさび式の治具で先に予荷重を抜いています。当サイトはここから、戻しトルクだけでは十分な硬化を確認できないと読みます。報告書は別途ハードウェアの開発者に、硬化が十分であることを確認する手順と試験を自らつくるよう勧めていますが、汎用の方法は示していません。
亜鉛めっきのねじにそのまま固定剤を塗ってよいですか?
この報告書は亜鉛めっきのねじを試験していませんが、注意点は示しています。付録 B で、Henkel の技術回答はめっきや亜鉛めっき鋼を不活性な表面に挙げ、プライマー(アクチベータ)はこうした表面で固定剤を室温 24 時間以内に完全に硬化させるためのものだと説明しています。使わなければ、ステンレスで 2〜3 週間かかることもあり、時期は予測できないとしています。2006 年の回答です。この報告書には亜鉛めっきねじの直接の試験結果はありません。実際の工程は、製品資料とご自身の試験で確認してください。
参考資料
- Dube, M. J., & Gamwell, W. R.(2011)Performance Characterization of Loctite® 242 and 271 Liquid Locking Compounds (LLCs) as a Secondary Locking Feature for International Space Station (ISS) Fasteners. NASA/TM-2011-217068, NESC-RP-04-092
- ねじが緩む理由:一つの語に、別々の二つのことが入っています
- ねじ固定剤が直すのはどちらの緩みか:二つの壊れ方のうち一つだけ
- 「振動試験に通った」が言っていないこと
- 一つのトルク値は、ある摩擦条件の組を前提にしています
試験データと結論は、NESC-RP-04-092 の第 1、4、6 節、第 7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.7.1、7.7.2、7.7.3、7.7.4 節、第 8 節の観察・所見・勧告、第 11 節の教訓、付録 B の Henkel の回答、付録 F のユンカー試験報告(D. P. Hess、2007 年 7 月)、付録 H と I の規格・工程の比較によります。表 7.7-1 と付録 F の表 5 は PDF では画像で、当サイトが一つずつ書き写しました。予荷重低下率、平均、分散は報告書の値で、インチ系とメートル系の換算、標準偏差、約 46% の低下率、合格率、倍率は当サイトの計算です。50% の許容基準は仮の値です。「ねじの側から持ち帰れること」は当サイトの読みで、報告書の勧告ではありません。
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組立て工程でねじにねじ固定剤を塗る場合は、お見積りの際に必要な表面処理と、ねじ部に許容される残留物・許容されない残留物(油、防錆剤、乾燥被膜潤滑)を明記してください。供給条件を個別に確認するための情報になります。固定剤の種類、アクチベータ、塗り方は、お客様の工程と試験に基づいて決めていただく必要があります。
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