オールステンレスのクリンチ組合せは、ハンドブックが除外しているほう
読了目安 7 分。セルフクリンチングナットを決めるのは強度ではなく硬さの差です。保持するのは板のほうだからです。PennEngineering のハンドブックは一ページ隔てて二つの表を載せています。ファスナー材質ごとに入れられる板の硬さの上限と、よくある板が実際にどれくらい硬いか。並べて読むと、オールステンレスの筐体——防食のために指定するまさにそれ——が成立しない組合せになります。
保持しているのは板のほう
セルフクリンチングナットは板にねじを切らず、溶接もしません。素の丸穴に圧入され、 板の材料がファスナー本体まわりのアンダーカットへ押し出されます。PennEngineering の ハンドブックは断面図にその機構を四語で記しています。母材がアンダーカットへ流れる、と。
その一文が残りすべてを決めます。板が流れなければならないなら、板は二つのうち軟らかい ほうでなければなりません。つまりこの部品を支配する仕様は強度でも等級でもなく、 買う部品とすでに選んである板との硬さの差であり、そのうち発注書に載るのは片方だけです。
一ページ隔てて印刷された二つの表
ハンドブックはまず上限を示します。ファスナー材質ごとに、どこまで硬い板に入れられるか。
| ファスナー材質 | 板の硬さ上限 |
|---|---|
| アルミニウム | < HRB 50 / HB 89 |
| 非硬化鋼 | < HRB 60 / HB 107 |
| 300 系ステンレス鋼 | < HRB 70 / HB 125 |
| 硬化鋼 | < HRB 80 / HB 150 |
| 硬化ステンレス鋼 | < HRB 88 (92) / HB 183 (202) |
次に、よくある板が実際に示す値を挙げます。
| 板材 | 代表的な硬さ |
|---|---|
| 5052-H32/34 アルミ | HRB 15–30 / HB 30–65 |
| 冷間圧延鋼 | HRB 40–75 / HB 80–140 |
| 6061-T6 アルミ | HRB 50–55 / HB 89–96 |
| 304 ステンレス鋼(焼鈍) | HRB 80+ / HB 150+ |
| HSLA 鋼 | HRB 80–85 / HB 150–169 |
使う前に二つ。ハンドブック自身が HSLA 鋼を「通常の規則に従わない」材料として印を付け、 理由は述べていません。したがって表の中で、普通の行ではなく警告付きの行として座って います。もう一つ、二番目の表の列見出しは「Fastener Material / Sheet Hardness」ですが、 並んでいるのは明らかに板材です。見出しは原典の時点で合っていません。 当サイトは印刷どおりに再現し、黙って直しません。当サイトの表をハンドブックと突き合わせる 読者が、当サイトが見たものを見られるようにするためです。
横に読むと、ある行が別の行を打ち消す
300 系ステンレスのファスナーは HRB 70 未満の板が対象です。焼鈍した 304 ステンレス板は HRB 80 以上。上限が下限を下回っているので、この組合せは他のどんな問いを立てる前に、 推奨の外にあります。
ここは立ち止まる価値があります。技術者が意図して選ぶ組合せだからです。ステンレスの 筐体にはステンレスの金物を。そうすれば組立てに二種の金属が入らず、留め具のところで 錆びない。この推論は正しく、防食の結果も本物です。失敗するのは取り付けのほうで、 それは供給者自身のハンドブックに印刷された数字の上で失敗します。
当サイトが推し量る必要はありませんでした。同じハンドブックが実務の一覧で結論を直接 述べています。
ステンレス鋼板には適切な合金(A286/400 系)のステンレスファスナーを使うこと。 300 系のファスナーは、最良の性能に十分な硬さの差を与えない。
同じ場所へ二つの道があります。読者は二つの表から自分で導けますし、メーカーは別のページで それを書き出しています。自分で結論に到達させたうえで確認してくれる文書は、必要な寸法だけ 拾って出るのではなく、通して読む価値のある文書です。
防食の選択が取り付けの窓を狭める
二つの表を材質で対応させると、この取引の形が見えます。ファスナー側の列を上へ行くほど 硬い板が買えますが、防食のために選ばれる材質は上のほうにはありません。
| このファスナーを選ぶと | 届く板の範囲 |
|---|---|
| アルミ、< HRB 50 | 5052 アルミのみ |
| 非硬化鋼、< HRB 60 | 6061-T6 と冷間圧延鋼の一部まで |
| 300 系ステンレス、< HRB 70 | 冷間圧延鋼の多く。ステンレス板は不可 |
| 硬化鋼、< HRB 80 | 冷間圧延鋼の全域 |
| 硬化ステンレス、< HRB 88 | ステンレスと HSLA にも届く |
人を捕まえるのは 300 系の行です。誰もそれ以上指定しないとき、「ステンレスのファスナー」は たいてい 300 系を意味するからです。それは防食の挙動を買いますが、硬さは買いません。 そしてこの二つは別々に売られていません。
その解決策は、それを求めた理由によって失格になる
次の一手は明らかで、ハンドブックの助言どおり 400 系を発注することです。PennEngineering は ステンレス製品カタログにそのための注記を置いており、最後の行まで読む価値があります。
セルフクリンチングファスナーが正しく働くには、ファスナーが取り付ける板より硬くなければ ならない。ステンレス板の場合、300 系ステンレス製のファスナーはこの硬さの条件を満たさない。 400 系ファスナーが提供されているのはこの理由による……しかし、これらの 400 系ファスナーは 300 系ステンレス板でよく取り付き、よく働くものの、最終製品が次のいずれかに該当する場合は 使用すべきではない。・相応の腐食環境に曝される。・非磁性のファスナーを要求する。 ・300°F(149°C)を超える温度に曝される。
最初の項目を、筐体がなぜステンレスだったのかに突き合わせてください。400 系の部品が存在 するのは 300 系がステンレス板に入らないからで、そしてそれは相応の腐食があるところでは 使うべきでないとされます。つまり、あなたのステンレス板に入るファスナーは、あなたが ステンレス板を選んだ当の理由によって除外されます。
これはハンドブックの自己矛盾ではありません。本当に制約された問題であり、部品を売る側が 正直に述べたものです。そして正直な結末は、カタログに答えがないかもしれないということです。 その注記は、他の選択肢については技術サポートへ連絡してほしいと締めくくられています。 表が尽きたときに供給者が書く文章です。腐食と並んで二つの失格条件があり、電子機器の筐体では どちらも見落としやすいものです。400 系は磁性を持ち、149 °C を超えると範囲外です。
指定したあとに板が範囲から出る二つの経路
どちらも同じ実務一覧にあり、どちらも図面承認の後に起きます。
硬質陽極酸化処理や窒化のような、板の硬さを上げうる処理に注意すること。 セルフクリンチングファスナーの取り付けが難しくなる場合がある。
指定された時点では窓の中にあった板が、組立てに来る頃には外に出ていることがあります。 ファスナーとは無関係な理由で表面処理が一つ足されたからです。結果を決めるのは 取り付け時点の硬さであって、発注した材料の硬さではありません。
表に載る板の数値は、もう一方向から同じ注意を運びます。焼鈍 304 の HRB 80+ はその材料の 代表値であって、あなたの板の測定値ではありません。そして成形はそれを動かします。 相互確認は PennEngineering のもう一つの警告を指し示しました。打ち抜き、レーザー切断、 曲げ、冷間加工は穴まわりを硬化させうる——まさにファスナーが流れさせたい領域です。
めっきが持ち込むのは硬さの規則ではなく順序の規則です。
鋼板を使う場合、板をめっきした後にめっき済みファスナーを取り付けること。あるいは、 組立て全体を後でめっきするなら、未めっきのファスナーを板に取り付けること。
どちらの順序でも成立し、混ぜると成立しません。つまりこれは二つの供給者のあいだの スケジュール制約であって、どちらかの部品の性質ではありません。当サイトの タップ穴が変えるものは、 同じ問題を別の側から扱っています。母材にねじを持たせるという選択そのものの話です。
このページが確定していないこと
- これは一社の指針ですが、一社だけではありません。上のすべての数値と 引用は PennEngineering が自社製品について公開したもので、規格ではありません。相互確認は 比較可能な上限を公開する他の二社を見つけました。アルミ約 50、300 系ステンレス 70、 炭素鋼 80。ただし製品系列により数点動き、一社は PEM が一般値 80 とするところを 85、 別の一社は PEM が 88(92)とするところを 90 としています。この二社は当サイトで 確認していません。形が一般的だと言える程度には一致し、正確な上限は実際に買う部品に 属すると言える程度にはばらついています。
- 板の硬さは代表値であって測定値ではありません。焼鈍 304 の HRB 80+ は 材料を記述するもので、手元の板を記述するものではありません。確かめるには測るしかありません。
- 板厚や縁距離の数値は載せていません。ハンドブックはそれらを個別の カタログ公報に置いており、当サイトは読んでいません。硬さは板の条件の一つにすぎず、 本ページはその一つだけを扱います。
- 「Do use」は指針であって保証ではありません。ハンドブックは ステンレス板に A286 または 400 系を推奨しています。結果を約束してはおらず、 ある組合せが貴社の試験に合格するとは本ページのどこにも書いていません。
- HSLA が違う理由は説明されていません。ハンドブックは通常の規則に 従わないと記して、そこで止めています。当サイトはその空欄を埋めません。
- 見出しの不一致は再現であって診断ではありません。二番目の表の列見出しが 組版の滑りなのか別の理由なのか当サイトは知らず、問い合わせてもいません。
この記事は六つの手順のどれか一つには収まりません。手順をまたいで出てくるか、組み付けたあとに出てくる話です。ここに行き着く判断がどこで下されているかはねじの決め方にまとめてあります。
よくある質問
セルフクリンチングファスナーはなぜ軟らかい板を必要とするのですか。
保持するのが板だからです。ファスナーは素の丸穴に圧入され、板の材料がファスナー本体まわりのアンダーカットへ押し出されます。PennEngineering のハンドブックはこの機構を「母材がアンダーカットへ流れる」と記しています。板が流れなければならない以上、板はファスナーより軟らかくある必要があり、支配的な仕様は強度ではなく硬さの差になります。
ステンレスのクリンチナットをステンレス板に使えますか。
300 系では使えません。PennEngineering の表は 300 系ステンレスのファスナーを HRB 70 未満の板に限り、同社の代表硬さ表は焼鈍 304 ステンレスを HRB 80 以上としています。ハンドブックは直接こうも述べています。ステンレス板には適切な合金 A286 または 400 系のステンレスファスナーを使うこと、300 系は最良の性能に十分な硬さの差を与えないため、と。
ファスナー材質ごとの板硬さ上限は。
PennEngineering のハンドブックでは、アルミが HRB 50 未満、非硬化鋼が HRB 60 未満、300 系ステンレスが HRB 70 未満、硬化鋼が HRB 80 未満、硬化ステンレスが HRB 88(92)未満です。これは同社が自社製品について示す数値であって規格ではなく、硬さは板の条件の一つにすぎません。
板に陽極酸化処理や窒化をすると影響しますか。
あります。しかも図面が終わった後に起きます。ハンドブックは硬質陽極酸化処理や窒化のような処理が板の硬さを上げうること、それがセルフクリンチングファスナーの取り付けを難しくしうることを注意しています。結果を決めるのは取り付け時点の硬さで、発注した材料の硬さではありません。
ファスナーはめっきの前と後、どちらで取り付けますか。
どちらの順序でも成立します。一貫していれば、です。ハンドブックは鋼板について、板をめっきした後にめっき済みファスナーを取り付けるか、組立て全体を後でめっきするなら未めっきのファスナーを板に取り付ける、としています。二つの供給者のあいだのスケジュール制約であって、どちらかの部品の性質ではありません。
HSLA 鋼も同じ規則ですか。
ハンドブックは HSLA 鋼を HRB 80 〜 85 に挙げ、通常の規則に従わない材料として印を付けていますが、理由は示していません。当サイトはその印を報告するだけで説明しません。出典が説明していないからです。
参考資料
このハンドブックは当サイトが pemnet.com からダウンロードし、pdftotext で全文を取り出して直接読んだもので、二つの表と四つの引用はすべてそこから取っています。これは一社が自社製品について公開した指針であって規格ではなく、他社のセルフクリンチングファスナーが同じ上限を公開しているかを当サイトは確認していないため、業界共通の数値として読むべきではありません。二番目の表は印刷どおりに再現しており、列見出しが「Fastener Material」でありながら並ぶ行が明らかに板材である点も含みます。理由は分からず、訂正もしていません。「HRB 70 未満に限られる 300 系ファスナーは HRB 80 以上の焼鈍 304 板に入らない」という観察は、ハンドブック自身の二つの表を突き合わせたものであり、ステンレス板には A286 または 400 系を使えという同ハンドブック別所の指示と一致します。二つの道を併せて報告しており、当サイトの独自発見として提示してはいません。板厚や縁距離は本ページにありません。ハンドブックはそれらを個別のカタログ公報に置いており、当サイトは読んでいないからです。
お問い合わせ
筐体がステンレスで金物もステンレスでなければならない場合、先に決めるべきはねじ径では なく合金です。何が発注でき、いつ届くかが変わります。
お見積り依頼
品名と数量をお知らせください。可否、納期、価格をご返信します。
直接メールでも承ります sales@tigerfasteners.com