「Y 形」と呼ばれる駆動は二つあります

溝が三本のねじを手に工具を探すとき、最初に確かめるべきことがあります。 それが、互いに無関係な二つの駆動のどちらなのか。 Tri-Wing の溝は偏心していて、背後に航空規格があります。 tri-point は中心から対称に放射し、公開された規格がありません。 二つは互換に設計されていません。 そして店頭の名前では、どちらなのか分かりません。

形状の違い、そして唯一信頼できる見分け方

どちらも溝は三本です。違いは、その溝が中心を通るかどうかです。

二つの Y 形駆動
Tri-Wingtri-point
半径方向にずれており、中心で交わりません中心を通り、およそ 120° 対称
見た目風車のよう。中央に小さな三角の領域が残ることが多い本当の Y 字の輪郭
作用面非対称対称

Phillips Screw Company は Tri-Wing を tri-slot 形状と定義し、Wera は三つの作用面を非対称配置と説明しています。 中心から対称な Y のほうが、iFixit と Apple の公式資料が tri-point と呼ぶものです。

名前では分かりません。日本語でも同じです

英語の読者には、少なくとも二つの安定した語があります。 日本語にはありません。 工具の販売ページと修理情報で流通しているのは Y 型ネジ、Y 字ネジ、トライウィングで、 これらは二つの形状を区別せずに同じ対象を指しています。 精密ドライバー側は先端幅 1.3、1.6、1.8、2.1 mm のようにミリで並べられることが多く、 その並べ方自体が、どちらの形状かを言わずに済ませています。

区別に使える見方は形のほうです。 穴をのぞいて「溝が三本」なら Y 系「面が三つ」なら三角ネジで、これは別の駆動です。 そのうえで、三本の溝が中心で交わるかどうかを見ます。 交わらないものが Tri-Wing、交わるものが tri-point です。

供給者に書くときは、英語の名称に括弧で形状を添えてください—— Tri-Wing(偏心、tri-slot)tri-point(中心対称の Y)。 「Y 型」とだけ書いた場合、相手に渡る情報はゼロです。

⚠️ この節で日本語の呼び方について書いたのは、 工具販売と修理情報の公開ページで実際に使われている語までです。 業界団体や規格が定めた日本語名があるかどうかは調べていません。

片方には規格があり、もう片方にはまったくありません

調べて最も意外だった点であり、実務上の最大の違いでもあります。

  • Tri-Wing には規格があります。 NAS 4000「Recess, Tri-Slot, Dimensions of Recess and Gages」が 凹部とゲージを定義し、recess dash number は 0 から 15、ほかに 4J。 ゲージメーカーは今も penetration と go/no-go ゲージを供給しており、 これを引用する NAS 部品規格も多数あります
  • tri-point には公開規格が見つかりません—— ISO、ANSI/ASME、NAS、JIS のいずれにもありません。 Y000、Y00、Y0、Y1 は修理工具市場の事実上の慣行であって、発行された仕様ではありません。 iFixit 自身が自社の tri-point ドライバーを Apple のねじに合わせた custom drive と呼び、 日本の ANEX はミリ表示に切り替えています

購買での違いはここに出ます。 Tri-Wing なら recess 番号とゲージを指定できます。tri-point ではできません。 寸法はブランドを越えて安全に互換とは言えず、 その製品の修理文書に従うか、現物を持って合わせるしかありません。

二つの限定を明記します。Tri-Wing® は Phillips Screw Company の登録商標なので、 一般的な形状の呼び方は tri-slot 凹部です。また、この凹部を使う複数の NAS 部品規格には 1986 年 1 月 1 日以降、新規設計には供給しない旨の記載がありますが、 NAS 4000 自体が現在有効か、停止か、撤回かは公開情報では確認できませんでしたので、断定しません。

ISO も ASME も収めていません。それ自体が情報です

先に ISO 番号を探す習慣があるなら、ここにはありません。

汎用規格がそれぞれ収めているもの
規格対象
ISO 4757十字穴。H 形と Z 形のみ
ISO 10664ヘキサロビュラ内駆動部
ASME B18.6.3凹部 Type I、IA、III、VI とそのゲージ

三つとも、いずれの Y 形も収めていません。 したがって「Y 形駆動」とだけ書かれた図面は、供給者に従うべきものを何も与えていません。

Tri-Wing の出どころと、トルクの話がどこまで言えるか

Tri-Wing は航空由来で、一次記録があります。 NASA の 1970 年の締結部品調査報告は、当時の主要な航空機メーカー三社が Tri-Wing 凹部を航空規格にすることを提案していたと記録しており、理由として 大きい駆動面が、固着または腐食した締結部品を外すときに有利だと挙げています。

これを「接触面が三つあるから、小さい寸法では十字よりトルクに強くカムアウトしにくい」と 一般化して書くつもりでした。調べた結果、その一般化を支える証拠は見つかりませんでした。 頭の径、材料、凹部の深さ、押し付け力を揃えて、微小な Tri-Wing、tri-point、十字穴を並べて測った 公開比較が見つかりません。そして逆方向の手がかりがあります。

  • Phillips 系の特許は、三溝の版が小さい寸法でドライバーの rock-out や spin-out を起こすことがあると述べています。「小さいほど滑りにくい」の逆です
  • 同じ NASA の報告も、この種の凹部を軸方向の力と正しい心出しを要する系として挙げており、カムアウトを無くしたとは書いていません
  • tri-point 側の資料はむしろ反対を指します。尖った傾斜の輪郭はドライバーを押し出しやすいと説明され、それが現れる微小ねじは、そもそもメーカー指定の締付けトルクが低いのです

言えることはずっと狭くなります。 Tri-Wing のまっすぐな作用壁と大きい駆動面には、もともとトルク伝達を高める意図が含まれ、 とくに取外しのためにあり、同時に専用工具以外での操作を制限する効果もあります。 ただし「三」という数字から、あらゆる Y 形ねじへは推論できません。

供給者が数字を出してきたなら、測る正式な方法はあります。 NASM 1312-25、driving recess torque quality conformance test。 これは試験手順であって、「どの駆動が強いか」の公表比較ではありません。

間違ったほうのドライバーで、実際どうなるか

「違うドライバーを使えば凹部をなめる」と書くつもりでしたが、その言い方は強すぎます。 ただし下にある結論は正しいままです。

二つは互換に設計されていません。 片方の溝は偏心し、もう片方は中心を通るので、翼の位置、中央の輪郭、側壁の接触点、 挿入の深さがすべて違います。違うドライバーはたいてい底まで入らず、 翼の先か側壁の一部にだけ噛みます。本当に緩めるトルクが必要になったとき、 その局所的な高応力とカムアウトが、凹部をなめる機構です。

低いトルク、すでに緩んでいるねじ、摩耗したねじなら、違うドライバーで回ることもあります。 それは二つの仕様が互換だという意味ではありません。 互換使用の破損率を測った公開試験も見つからなかったので、 この危険は機構として理解してください。測定された数字としてではなく。

取り違えやすい相手

最も多い取り違えには決まった向きがあります。 tri-point のねじが、販売者や修理記事で Tri-Wing と表示されるほうです。 iFixit が任天堂のハード向けに識別の頁を作っているのは、この二つの名前が長年混用されてきたからです。

同じ箱に入っていることのある他の形式
駆動実際は何か
三角ネジ / TP3三角の穴、または円弧のついた三角
Tri-groove頭の外周に三本の短い溝。中心で交わらないので、中心対称の Y ドライバーはまったく使えません
Torq-Set四本のずれた溝。航空の現場では Y より「ずれた十字」と間違われます
ヘキサロビュラ六葉
Pentalobe五葉

tri-point が実際に現れる場所は案外決まっていて、覚えておくと役に立ちます。 Apple Watch と新しめの iPhone が Y000、Apple Pencil が Y00、 一部の MacBook Pro のバッテリーが Y1、任天堂 Switch と Joy-Con もこれです。

図面にどう書くか

「Y 形駆動」は仕様ではありません。 Tri-Wing なら凹部の名称と番号を書きます。 tri-point は、指せる公開規格が存在しないため現物で定義するしかありません

ねじを決める順序のどこに駆動が来るかはねじの決め方に、 凹部がなぜカムアウトするかはドライバーが滑る理由に、 何が駆動を縛るかは駆動を縛るものにあります。

この記事は手順 4、駆動部を扱います。全体の順序は相手材、ねじ、頭部、駆動部、表面処理、書類で、これを崩すと微調整ではなく手直しになる理由はねじの決め方にあります。

よくある質問

Y 形のドライバービットは何と呼べばよいですか。

手元のものがどちらかによります。三本の溝が偏心していて中心で交わらないなら Tri-Wing、tri-slot 凹部で、規格は NAS 4000 です。三本の腕が中心を通っておよそ 120 度対称なら tri-point で、市場では Y000、Y00、Y0、Y1 として売られています。一見よく似ていますが、互換に設計されていません。

Tri-Wing に規格はありますか。

あります。NAS 4000「Recess, Tri-Slot, Dimensions of Recess and Gages」が凹部とゲージを定義し、recess dash number は 0 から 15 と 4J、これを引用する NAS 部品規格も複数あります。Tri-Wing は Phillips Screw Company の登録商標なので、一般的な呼び方は tri-slot 凹部です。この凹部を使う複数の NAS 部品規格には 1986 年以降は新規設計に供給しない旨がありますが、NAS 4000 自体の現在の状態は公開情報では確認できませんでした。

tri-point のねじに規格はありますか。

見つかりません。ISO、ANSI/ASME、NAS、JIS のいずれにも現れません。Y000、Y00、Y0、Y1 は修理工具市場の慣行であって発行された仕様ではなく、ブランドを越えて安全に互換とも言えません。寸法はその製品の修理文書から取るか、現物を持って合わせてください。

溝が三本の駆動は、十字よりトルクを伝えられますか。

一般論としては、支える証拠が見つかりませんでした。Tri-Wing が航空で提案された理由の一部が大きい駆動面、とくに固着した締結部品の取外しにあることは記録されています。しかし頭の径、材料、凹部の深さ、押し付け力を揃えた公開比較が見つからず、Phillips 系の特許は三溝凹部が小さい寸法で rock-out や spin-out を起こしうると述べています。「三」という数字だけでは決まりません。

tri-point のドライバーを Tri-Wing のねじに使えますか。

互換に設計されていません。片方の溝は偏心し、もう片方は中心を通るので、翼の位置、中央の輪郭、側壁の接触、挿入の深さが違います。違うドライバーはたいてい底まで入らず、翼の先か側壁の一部にだけ噛みます。本当に緩めるトルクをかけた時点で、それが凹部をなめる原因になります。緩んでいるねじや低トルクなら回ることもありますが、互換という意味ではありません。

参考資料

  • NAS 4000 — Recess, Tri-Slot, Dimensions of Recess and Gages
  • NASA MCR-69-410(1970)— 航空側の提案と「大きい駆動面」という理由を記録した締結部品調査
  • US 4,187,892 — 三溝凹部の小寸法での rock-out と spin-out に言及
  • NASM 1312-25 — driving recess torque quality conformance test
  • ISO 4757(十字穴 H、Z)、ISO 10664(ヘキサロビュラ)、ASME B18.6.3(凹部 Type I、IA、III、VI)
  • Phillips Screw Company Tri-Wing® 駆動系;Wera の Tri-Wing 技術頁;iFixit の駆動識別とビット資料
  • 日本語の呼び方は、工具販売と修理情報の公開ページで実際に使われている語まで。規格が定めた日本語名の有無は未調査
  • Tri-Wing® は Phillips Screw Company の登録商標です。本頁は駆動の形状と引用した規格の内容を説明するもので、個々の部品の合否はあなたの図面が決めます。

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受け取った図面に「Y 形駆動」とだけ書かれているなら、相手部品の写真と一緒にお送りください。 工具を手配する前にどちらの凹部かを確かめるほうが、あとで確かめるよりはるかに安く済みます。

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