亜鉛が一度も溶けないめっきがある
ISO 17668 の序文は、別名の一覧のように読めます。ドイツでは拡散亜鉛めっき。ロシアでは熱拡散被覆。ウクライナでは熱拡散亜鉛めっき。英国では蒸気亜鉛めっき。合衆国では亜鉛拡散被覆。ロシアにはもう一つ、亜鉛金属間化合物被覆という呼び方もある。イスラエルでは亜鉛熱拡散亜鉛めっき。これらはすべて一つの工程で、中国と欧州と合衆国では、規格が最後まで説明しない名前で呼ばれます。シェラダイジング。これほど多くの名前を集めた理由は、その四ページを費やして述べる値打ちがあります。
「The normal processing temperature is below the melting point of zinc (419 °C).」 通常の処理温度は亜鉛の融点、すなわち 419 °C より低い。 この一文が、この工程をほかのあらゆる「亜鉛めっき」から切り離す。 部品は亜鉛の粉とともに、密閉されたゆっくり回る容器に入り、 温度はおよそ 300 から 500 °C、そして亜鉛は粉のままである。 鋼の上にできるのは亜鉛の層ではない。鉄と亜鉛が反応した金属間化合物の層である。
ここでは二つの出典を使います。一つ目は ISO 17668:2016、鉄鋼製品上の亜鉛拡散被覆、シェラダイジングで、 ISO/TC 107 の溶融めっき分科委員会によるものです。二つ目は 2021 年に Materials に載ったオープンアクセス論文で、 著者はポーランドのビェルスコ=ビャワ大学の二名。 同一の鋼の円板にこの工程と溶融亜鉛めっきの両方を施し、鋼の棒で摩耗させています。
ドラムの中で何が起きているのか
規格は一段落で述べます。鉄鋼製品が、亜鉛粉末からなる混合物 (不活性材料を含むこともある)の存在下で、密閉された容器の中で加熱される。 容器はゆっくり回るか、固定されている。亜鉛が表面と反応する。 厚さは 10 から 75 マイクロメートルまで得られ、必要ならさらに厚くもでき、 亜鉛粉末の量、処理時間、温度によって正確に制御される。 そのあと炉内は冷却され、ふるい分けで部品と未使用の混合物を分け、 部品はたいてい不動態化の工程へ進みます。
液体が無いことから二つの帰結が出ます。皮膜は 母材の輪郭にぴったり沿い、 不規則な形の品物にも均一な厚さがつきます。どこからも何も流れ落ちないからです。 そして厚さはドラムに入れた亜鉛の量で決まります。 これは「浴にどれだけ浸けたか」とはまったく性質の違う制御変数です。
浴も炉も使わない四つ目の経路もあります。 機械めっき。回るバレルの中のガラスビーズが亜鉛の粉を鋼に打ち込みます。 電流も加熱も使いません。
400 度で四時間、対 460 度で九十秒
この論文が役に立つのは、著者がそれぞれの規格どおりに両方の工程を走らせ、 条件を書き残しているからです。熱拡散の試料は毎分 5 から 10 回転する炉室に入り、 亜鉛粉末は 99 % 亜鉛、平均粒径 3 から 4 マイクロメートル、 400 °C で四時間。 溶融めっきの比較試料は塩酸で酸洗し、フラックス処理し、 460 °C の亜鉛浴に一分半浸けて水冷。 どちらも 45 から 55 マイクロメートルの厚さで出てきました。
| シェラダイジング | 溶融めっき | |
|---|---|---|
| 亜鉛の来かた | 粉末、3 から 4 µm の粒 | 溶けた浴 |
| 温度と時間 | 400 °C、四時間 | 460 °C、九十秒 |
| 動き | 毎分 5 から 10 回転のドラム | 浸けたあと遠心で余分を落とす |
| 皮膜の中の相 | 全体が鉄と亜鉛の合金 | 合金層に加えて上に純亜鉛の層 |
持ち帰る価値があるのは最後の行です。論文は、熱拡散後の組織は溶融めっきに似ているが η 相が無いと述べます。η 相とは、溶融めっき品が浴から引き上げられるとき 外側で凝固する純亜鉛のことです。彼らの試料では、拡散皮膜は外側の δ 相と 内側の Γ 相からなっていました。未処理の溶融めっき品は η、ζ、δ、Γ1。 溶融めっき皮膜を熱処理すると η が消え、三つの相が残りました。
亜鉛の層が無いことの代償と見返り
著者は硬さ、摩擦、摩耗を測りました。彼らの熱拡散皮膜は 325 から 385 HV 0.02 で、熱処理した溶融めっき皮膜より 40 から 90 HV 硬い値でした。摩耗試験では、 未処理の溶融めっき皮膜の質量減少は拡散皮膜の四倍でした。 熱処理した溶融めっき皮膜との差は質量減少で最大 0,004 グラム、 つまり両者はほぼ同じふるまいでした。
注意して読むべきは摩擦の結果です。測られた係数は 0,20 から 0,39 の範囲にあり、それを動かしていたのは 被覆前に鋼をどう仕上げたかでした。母材が粗いほど摩擦は低く、 著者はこれを、鋼の反応性が高まって硬い δ 相の範囲が広がったためと見ています。 同じ皮膜仕様、同じ鋼で、結果は二倍の幅のどこにでも着地しうる。 違いはドラムに入る前に何が起きたかだけです。
これらの数値は締結部品の摩擦係数ではなく、そのように使ってはなりません。 試験は直径四ミリの鋼の棒が、約十ニュートンの荷重で被覆した円板の上を乾いた状態で滑るもので、 ナット座面に締め付けられたボルトではありません。持ち越せるのは向きと効果の大きさです。 この皮膜は、被覆前の表面仕上げによって、与える摩擦が大きく変わる。 トルク値を前提に接合を設計するなら、 摩擦は実際の組合せで測る必要があり、 皮膜の名前から推し量ることはできません。
何で不合格にできて、何ではできないか
第 6.1 項は短く、しかし外観について異例なほど具体的です。表面は灰色で、 つや消しか光沢があり、加工中や保管中の通常の接触による傷が見えることがあるが、 それらは表面的であり、耐食性を損なうものではない。 皮膜は鉄亜鉛合金系の皮膜に特有の、ある程度の表面粗さを示す。 続いて、向きの反対な二つの規則が来ます。
- 白いしみは不合格の理由としてはならない。シェラダイジング後に湿った条件で保管したときに生じる灰白色の腐食生成物は、条文が名指ししたうえで、不合格の理由から明示的に外されている
- 納入時のオレンジがかった褐色は許されない。発注時に合意した場合を除く。これで不合格となった品は再度シェラダイジングして再提出する
- 皮膜の無い部分も許されない。やはり発注時の合意がある場合を除き、同じく再処理して再提出する
そしてこの項全体を正直なものにしている注が来ます。 実務上のすべての要求を満たす外観と仕上げの定義を確立することはできない。 当サイトはこの文に会ったことがあります。別の規格で、別の色について。 規格はどれだけ黒いかを言わない。 二つの委員会、二つの皮膜、同じ告白です。
ねじはどう測られるのか
測定の項は購買側が読む価値があります。証明書の厚さの数字が実際に何を指しているかを 説明しているからです。厚さは磁気式か電磁式、あるいは質量法で測られ、 質量法の換算に規格が与える密度は 7,2 g/cm³ です。 亜鉛ではなく合金の値で、皮膜が全体として合金だからです。
読み取りは基準面積の中で行われます。有意表面が 10 cm² 以上の品物では、 管理試料の各品物に少なくとも一つの基準面積が必要です。 10 cm² 未満の品物は、合わせて 10 cm² になるだけの数をまとめます。 小さなねじは基準面積を持ちません。ひとつかみなら持ちます。 そして証明書の数字は、そのひとつかみの平均です。
続く項は、読み取り値がひとつ低かったことで議論した経験のある人に見せる価値があります。 各基準面積の中で少なくとも五回の読み取りを行い、 一回あたりの測定面積が非常に小さいため、 個々の値は局部厚さより低く、通常 15 % まで低くなりうる。これは問題にならない。 基準面積全体の平均だけが最小値を満たせばよいからです。 低い読み取り値が出ることを、規格があらかじめ告げ、それ単独では数えないと言っています。
| ロット内の品物数 | 管理試料の最小数 |
|---|---|
| 1 から 3 | 全数 |
| 4 から 500 | 3 |
| 501 から 1 200 | 5 |
| 1 201 から 3 200 | 8 |
| 3 201 から 10 000 | 13 |
| 10 000 超 | 20 |
この規格が締結部品の話でなくなるところ
適用範囲には、締結部品を買う人が二度読むべき除外があります。この規格は 専用の規格が存在するシェラダイジング製品には適用されず、 その例として締結部品と管が挙げられています。 それらの規格は追加の、あるいは異なる要求を含むことがあります。 製品規格はこの規格を番号で引用して皮膜を規定することも、 自分の修正を加えて取り込むこともできます。
この規格にはもう一つ、ねじ部品のための追加すきまという表題の項があり、 それは無料プレビューの外にあるので、その内容についてはここでは何も主張しません。 それが存在すること自体は予想どおりです。意味のある厚さの亜鉛皮膜は、 ねじの中に場所を与えられなければならない。それは 溶融亜鉛めっき締結部品の規格 が丸ごと論じていることで、そちらの答えは、めっき後に大きくタップしたナットと、 部品に打たれた一文字でした。
見積りを比べる人に関わる適用範囲の一文がもう一つあります。この規格は シェラダイジング前の母材の表面状態について何の要求も規定しない。 そして第 4.1 項がこう足します。母材の表面状態、部品の質量、処理条件は、 皮膜の外観、厚さ、表面粗さ、および物理的・機械的性質に影響しうるが、 本規格はそれらの性質について何の要求も定めない。 これを、表面仕上げが摩擦係数を二倍の幅で動かしたという論文の結果と並べれば、 その隙間ははっきりしています。
注文書での扱い
- 工程を名指しし、系統だけで済ませない。序文だけで七つの国別呼称が並ぶ。供給側がどれを使っていても、一緒に旅をするのは規格番号だけである
- 受け取るのは等級と平均値だと考える。小物の証明書の厚さは、10 cm² になるようまとめた一群の平均であり、個々の読み取りは 15 % 低くてよい
- 白いしみで不合格にしない。規格が名指しして除外している。納入時のオレンジがかった褐色のほうが許されない
- 摩擦が効くなら被覆前の表面仕上げを尋ねる。規格はそれに要求を置かず、論文が測った影響は大きい
- 製品規格が優先しないか確かめる。適用範囲は、専用規格がある限り締結部品と管をそちらに渡している
覚えておく値打ちがあるのは最初の一つです。表面処理の見積りに並ぶほかの項目では、 亜鉛は液体として、あるいは浴の中のイオンとして到着します。 これだけは、亜鉛が粉として到着し、合金として去っていく。 そして温度は、そのどれかが流れ出す点に一度も達しません。
この記事は手順 5、表面処理を扱います。全体の順序は相手材、ねじ、頭部、駆動部、表面処理、書類で、これを崩すと微調整ではなく手直しになる理由はねじの決め方にあります。
よくある質問
シェラダイジングとは何ですか。
熱拡散被覆の工程です。ISO 17668 は、鉄鋼製品が主に亜鉛粉末からなる混合物の存在下で、密閉された、通常はゆっくり回る容器の中で、およそ 300 から 500 度で加熱されると述べます。亜鉛が表面と反応して金属間化合物の層を作ります。規格は、通常の処理温度が亜鉛の融点である 419 度より低いことを注記しています。
シェラダイジングは溶融亜鉛めっきとどう違いますか。
亜鉛が一度も溶けず、結果に純亜鉛の層がありません。両方の工程を走らせた 2021 年の Materials の研究は、熱拡散の組織が溶融めっきに似ているが η 相が無いと報告しています。η 相とは、溶融めっき品が浴から引き上げられるとき外側で凝固する純亜鉛のことです。その研究では拡散工程が 400 度で四時間、溶融めっきの比較が 460 度で一分半でした。
シェラダイジング皮膜の厚さはどれくらいですか。
ISO 17668 は 10 から 75 マイクロメートルが得られ、必要ならさらに厚くもでき、亜鉛粉末の量、処理時間、温度で制御されると述べます。規格は六つの等級について最小厚さを規定していますが、その等級の値は無料プレビューの外にあるため、ここでは数値を示しません。
シェラダイジング品の白さびは不合格の理由になりますか。
この規格ではなりません。第 6.1 項は、シェラダイジング後に湿った条件で保管した際に生じる灰白色の腐食生成物、すなわち白いしみは、主に塩基性酸化亜鉛の生成であり、不合格の理由としてはならないと述べます。むしろ納入時のオレンジがかった褐色のほうが、発注時の合意がない限り許されません。
個々の厚さの読み取り値が低く出るのはなぜですか。
測定面積が非常に小さいからで、規格がそれをあらかじめ述べています。第 6.2.4 項は各基準面積の中で少なくとも五回の磁気式または電磁式の読み取りを求め、個々の値が局部厚さより低く、通常 15 パーセントまで低くなりうること、そして基準面積全体の平均だけが最小値を満たせばよいので、それは問題にならないと述べます。
小さな部品の皮膜厚さはどう測るのですか。
まとめて測ります。基準面積には少なくとも 10 平方センチメートルの有意表面が必要で、それに満たない品物は合わせて 10 平方センチメートルになるまでまとめます。したがって小さな締結部品の厚さの数字は、一つの部品の測定ではなく、一群の平均です。
シェラダイジングはボルトの摩擦係数を変えますか。
このページは読んだ出典からその問いには答えず、それを意図的に述べます。2021 年の論文は拡散皮膜の摩擦係数を 0,20 から 0,39 と測り、被覆前の鋼の仕上げ方によって変わりましたが、試験は被覆した円板の上を鋼の棒が乾いた状態で滑るものであって、ナット座面に締め付けたボルトではありません。この結果が実際に示すのは、被覆前の表面仕上げが皮膜の与える摩擦を変えること、そして規格がその仕上げに何の要求も置いていないことです。
参考資料
- ISO 17668:2016、鉄鋼製品上の亜鉛拡散被覆、シェラダイジング、仕様。序文、適用範囲、第 3 項の定義、第 4 項、Table 1 を含む第 5 項、および第 6 項から 6.2.5 まで
- Jędrzejczyk および Skotnicki「Comparison of the tribological properties of the thermal diffusion zinc coating to the classic and heat treated hot-dip zinc coatings」Materials、2021 年。CC BY によるオープンアクセス
ISO 17668:2016 は公開プレビューから読んだ。この規格のプレビューは前付と、本文を 6.2.6 の表題までを収めている。六つの等級の厚さの表、合否判定の第 6.3 項、ねじ部品のための追加すきまと題された第 6.4 項、第 7 項、および四つの附属書はすべてプレビューの外にあり、そこからは何も引用していない。本ページにいずれの等級の厚さの値も現れない。第 6.4 項の存在と表題を述べたのは、それが目次にあるからであり、その内容は述べていない。この規格は現在 90.20、系統的見直しの段階にあり、2021 年の見直しで現行版であることが確認されている。規格はシェラダイジングという名称の由来を最後まで説明しておらず、本ページもそれについて何も主張しない。そのために特許を読んでいないからである。論文は CC BY のオープンアクセス版から読んだ。著者自身が測定した値のみを用い、他の文献から集められた金属間化合物相の硬さの表は引用していない。0,20 から 0,39 という摩擦係数は、直径四ミリの鋼の棒が約十ニュートンで被覆円板上を滑る乾式ピンオンディスク試験によるものであり、締結部品の摩擦係数ではない。ISO 16047 によって得られる値とは比較できず、トルク計算に用いてはならない。後処理については何も述べていない。それらはプレビューの外にある附属書にある。
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見積りにこの工程が出てきたら、注文書に書くのは規格番号と等級です。 摩擦や厚さの均一性が効く場面では、被覆前の表面仕上げを一行立てる値打ちがあります。 規格はそこを意図的に規定していません。