どちらのナットを先に締めるかは規格に書かれていて、あとから取り去られました
薄ナットは継手の面に当てるのか、それとも上に置くのか。 この論争は五十年ぶんの技術フォーラムをまたいでいて、しかも両側が権威を引けます。 答えはあります——薄いほうを先に、継手の面に当てて——そしてその答えは かつて ISO 898-2:2012 に書き込まれていました。 2022 年版は「二つは対で使うこと」の要求を残し、その手順を削りました。 そしてその事実自体が、この方法がどれだけ信頼されているかを、 論争のどちらの側よりもよく語っています。
答えと、それが以前どこに書かれていたか
薄ナット一つと並高さのナット一つを使うふつうの初期締付けの継手では、配置はこうです。 薄ナットを継手の面に当てて先に締め、並のナットを外側で規定トルクまで締めながら、 同時に薄ナットを押さえて回らないようにする。
ISO 898-2:2012 §5 はこれを文字にしていました—— まず薄ナットを被締結部材に対して締め、そのうえに regular か high nut を締める、と。
⚠️⚠️ ISO 898-2:2022 §6 は対で使うことと強度の組合せの要求を残し、その手順を取り去りました。 ですから現行の ISO の条文はもう順序を教えてくれません。 今日なお順序について ISO を引く人は、置き換えられた版を引いています。
ISO だけではありません。この配置は Bickford(第 4 版 §14.6.4、p.319)にも現れ—— 彼は「薄ナットを継手面に、標準ナットをその上に」を conventional な配置と呼んでいます—— 米海軍の NSTM 第 075 章(§075-5.3.4.1–.2)にもあり、 そちらは薄ナットが継手面と厚いナットのあいだに位置すること、 厚いナットを締めるあいだ薄ナットをレンチで固定することを求めています。
なぜこの順序なのか:作用荷重が持ち手を替える
ここは暗記するより理解する値打ちがあり、海軍の手引きが理由を一文で述べています。 外側のナットの厚さは「それが唯一のナットだったときに必要な厚さ」と同じでなければならない。 主ナットが作用荷重の全部を負うからです。
力学的な順序はこうです。
- 内側の薄ナットをねじ込んで締める。ボルトと薄ナットは通常の受圧側のフランクで接触する。
- 外側のナットを締めるとボルトがさらに伸び、内側の薄ナットはそれにつれて荷重を降ろしていく。
- 二つが互いに突っ張ったあと、それぞれがボルトのねじの反対のフランクに接触し、軸方向のすきまを食べて、向きの逆な局部の予荷重を作る。
- Bickford はそれに伴う利点を挙げています。jam nut は最終の荷重と逆の向きにねじを予荷重するので、ねじの荷重分布が改善される。
ですから薄ナットを下に置く理由は、最終的に締まったあと、それが作用荷重を負う部品ではないからです。 負うのは外側の全高さのナットです。 薄ナットを荷重を負う位置に置くのは、その仕事に間違った部品を置くこと——それが次の節です。
⚠️ 当サイトが言い過ぎるところだった二つ。しかもどちらも大事です。
- ⚠️ 「薄ナットはまったく荷重を負わない」は言い過ぎです。それが述べているのは外部の作用荷重の経路だけ。薄ナットは二つのナットが互いに押し合う軸方向の力、ねじの接触応力と曲げ応力、そして——組付けを誤れば——かなり大きなねじ剝がれの荷重をなお受けます。
- ⚠️ 二つのナットのあいだのボルトは引張りであって、圧縮ではありません。圧縮されているのは二つのナットが互いに接触するその界面です。その区間のボルトを「押し潰されている」と述べるのは、応力の状態を逆に言っています。
薄ナットとは結局何なのか
薄ナットは ISO 898-2 の style 0 で、 ISO 4035:2023(第 5 版、2023 年 8 月発行)が覆い、区分は 04 と 05 です。 先頭のあの 0 は、規格自身が耐荷重を下げたことを示すために使っている記法です。
| ナット | 区分 | 保証荷重、M10×1.5 |
|---|---|---|
| 薄ナット(style 0) | 04 | 22.0 kN |
| 薄ナット(style 0) | 05 | 29.0 kN |
| 並ナット(style 1) | 8 | 50.5 kN |
| 並ナット(style 1) | 10 | 60.3 kN |
| 並または高ナット | 12 | 67.3 kN |
同じ寸法で、04 の薄ナットの保証荷重は 8 の並ナットの 44%。 ISO 898-2:2022 は薄ナットが過負荷時のねじ剝がれを避けるように設計されてはいないと明言しています—— 一方、組み合わされた並ナットとボルトは、ボルトが自由ねじ部で延性破断することを設計の目標にしています。
⚠️⚠️ 当サイトは「規格はそもそも薄ナットを緩み止めとして扱っていない」と書くつもりでした。それは誤りです。 ISO 4035:2023 §1 はこの用途を明文で扱っています。 薄ナットを jam nut として使うときは regular か high nut と対で使うこと、と。 同じ段落が耐荷重の低さと、過負荷時のねじ剝がれを避けることを期待できないことも警告しています。 ですから規格はこの用途を許し、警告を添えている—— それは「緩み止めの方法として認めている」とは別のことです。
薄ナットでないもの:緩み止めナット(prevailing-torque nut)です。 この区別とそれに伴う置き換えの規則は ナットには数字が一つしかないにあります。
そして論争が一度もたどり着かなかったところ
順序の論争は両側が一つの前提を共有しています。ダブルナットは緩み止めの方法であり、 信頼できるかどうかは順序を正しくやったかによる、と。 技術文献がこれに置いている信頼は、その前提よりずっと低いのです。
| 出典 | 立場 |
|---|---|
| NASA-STD-5020B §4.6.1/TFSR 16 | 宇宙飛行ハードウェアのすべてのねじ継手に、初期締付け力に依存しない緩み止めの特徴が最低一つ要る。附属書 B 図 29 は、jam nut が初期締付け力に依存する場合、あるいは初期締付け力の変化が緩み止めの性能を損なう場合、要求を満たさないことがあると明記 |
| NAVSEA NSTM §075-5.3.4 | jam nut を旧来の prevailing-torque の方法と呼び、新規の取付けにはふつう推奨しない——理由は厚さを選び違えやすく、相対位置を取り違えやすいこと |
| Bickford 第 4 版 Table 14.4 | Junker の振動比較(M10、4.8、降伏の 70%)でダブルナットを poor resistance と評価 |
| VDI 2230 第 1 部 2003 年版 Table A14 | 挙げている緩み止めの選択肢は溝付きナットとピン、ロックワイヤ、止め板、全金属および樹脂入り自締めナット、セレート面、接着。ふつうのダブルナットは入っていない |
⚠️⚠️ この表は正確に読む必要があります。読み過ぎやすいからです。 NASA はダブルナットを禁じていません。ダブルナットを唯一の必要な緩み止めの特徴として受け入れることを拒んでいるのです。 NAVSEA も禁じていません。新規設計に推奨しないと言い、手順はなお示しています。 VDI 2230 Table A14 はふつうのダブルナットを挙げていない—— 挙げていないことは明文の禁止ではありませんし、現行の 2015 年版にも禁止の条文は見つかりませんでした。
正直な要約は「規格が禁じている」ではなく、こうです。 緩み止めの性能を検証しなければならない場面で、この方法は繰り返し基準を通らない。
基準を通らない理由:あとから検査できない
NASA-STD-5020B §4.6.4/TFSR 19 は、緩み止めの特徴の存在とその locking moment の両方が 検証されることを求めます。組み上がったダブルナットの継手をこの要求に当ててみてください。
- 完成品からは最初のナットにどれだけのトルクが加えられたかが見えません
- 外側を締めるあいだ薄ナットが本当に固定されていたかが見えません——そして一緒に回ってしまっていたなら、緩み止めを生むはずの逆向きの接触は一度も成立していません
- ねじがすでに局部的に降伏しているかが見えません
- Bolt Science は、ねじに許される軸方向のすきまの差がおよそ十倍に達しうると指摘しています。ですから注意深い技能者でも薄ナットの初期の予荷重は管理しにくいのです
ですからその性能は組付けのその瞬間に完全に決まり、しかも組付けは証拠を残しません。 見た目のまったく同じ二つの継手が、まったく違う振る舞いをしえます。 品質の仕組みにとってそれはとても悪い性質です—— 機構が誤っているからではなく、やったことを証明できないからです。
⚠️ 断っておくと、どの規格もこれを逐語でこう書いてはいません。 これは NASA の検証要求と力学的な性質から導いた結論で、 当サイトはこれを主題全体でいちばん役に立つ論点だと考えていますが、 それは当サイトの結論であって引用ではありません。
あの予締めの百分率と、二つの出典が違う理由
いちばん広まっている言い方は、薄ナットを最終トルクの 25–50% まで締めるというものです。 ⚠️ それは規格から出たものではありません。 Bolt Science までたどれて、性質は工学上の助言です。 理由はねじのすきまと締付け長さのせいで正確な初期荷重が決めにくいので、簡略化した比を使う、というものです。
NAVSEA は別の規則を与えていて、しかも部品の比で伸縮します。 薄ナットと主ナットの厚さの比で決める—— その例は薄ナットが主ナットの厚さの三分の二のとき、 まず主ナットのトルクの二分の一から三分の二まで締め、 それからレンチで固定して主ナットを指定の初期締付けトルクまで締める、というものです。
⚠️ 信頼できる二つの出典、二つの違う数字、そしてどちらも規格ではありません。 どれかの数字を作業手順書に書き込む前に、これは知っておく値打ちがあります。
「薄いほうを下に」が答えでなくなるところ
⚠️ 長くて伸びの大きいボルトでは、下側の薄ナットが先にねじ剝がれを起こすことがあります。 Bolt Science がこれをとくに挙げています。そして解が何でないかに注意してください。 解は薄ナットを上にひっくり返すことではありません。 並高さのナットを二つ使うか、別の緩み止めの方式に替えることです。
だからこそ当サイトは「薄ナットを荷重を負う位置に置くのは一律に誤り」とは言いません。 ボルトの完全な強度を発揮させねばならない継手では、薄ナットは単独でその仕事をできません。 ⭐ けれども保証荷重よりはるかに低いところでは薄ナットに正当な用途があります—— 調整部品、ロッドエンド、ターンバックル、位置決め、そして場所が足りない場面。
歴史上の反対意見
「薄ナットを上に」の主張はふつう Tubal Cain——すなわち T. D. Walshaw——が 《Model Engineer》(vol. 140, no. 3500、1974 年 11 月 1 日、p. 1069)に発表した記事までたどられます。 その記事は実在しますし、所蔵の記録もあります。
⚠️⚠️ 当サイトは公開で照合できる全文を入手できていませんし、 彼の論証についてフォーラム上の伝聞は互いに食い違っているので、 その推論を記述しません。 言えるのは、その結論が ISO 898-2:2012、Bickford、NAVSEA の手引き、 そして Bolt Science の横方向振動の実演と反対だということです—— その実演では薄ナットが上のとき二つとも一緒に緩み、 薄ナットが下で正しい手順で締められたときは初期の緩みだけでした。 ⚠️ それは一つの寸法での一つの試験であって、通例の証明ではありません。
ですから、典拠のある歴史的な反対意見が一つあり、 それは論破されてもいなければ、現行の規格の立場でもありません。
ではどうするか
- まず、どちらの緩みに遭っているのかをはっきりさせる。ダブルナットが扱えるのは「ナットが本当に回った」ほうだけです。ボルトが動いていないのに締付け力が消えているなら、この方法は何も扱っていません——二つの違うことが一つの言葉を共有している。
- 緩み止めの性能が検証されなければならないなら、検証できる方式を選ぶ。ISO 2320 に適合する prevailing torque、機械的な緩み止め、合格した接着の手順は、どれもダブルナットが残せない証拠を残します。
- それでも使うなら——整備、高温、既存設備、標準の緩み止めナットが入らない場所——薄いほうを下に、外側を締めるあいだ固定し、外側のナットの厚さが「それが唯一のナットだったとき」に必要な厚さと同じであることを確かめてください。
- ⚠️ 何を買っているかを知ること。薄ナットは 04 か 05 です。供給者が「M10 のナット」と見積もって薄ナットを出してきたら、あなたは 22.0 kN の部品を受け取り、50.5 kN を前提にしています。
- ⚠️ 順序について ISO を引かないこと。あの一文は 2012 年版にあり、2022 年版はすでに取り去っています。
明確な合否試験のある代替は ねじ固定剤が実際に扱っているのはどちらの緩みかにあります。
参考資料
- ISO 898-2:2012 §5——薄ナットを regular/high nut と併用するときの締付け順序。ISO 898-2:2022 §6——対と強度の組合せの要求を残し、手順は含まない;§5.2.2 と Annex B(耐荷重の低減);表 5(保証荷重)
- ISO 4035:2023 六角薄ナット style 0、第 5 版、2023 年 8 月——§1(jam nut として使うときは regular か high nut と対で、および耐荷重の警告);表 3(区分 04 と 05)。同時期の版:ISO 4032:2023(並ナット、第 5 版)、ISO 4033:2023(高ナット、第 4 版)
- NASA-STD-5020B(2021、2026-01-05 revalidated)——§4.6.1/TFSR 16(初期締付け力に依存しない緩み止めの特徴);§4.6.2(回転軸となるボルトには機械的な緩み止め);§4.6.4/TFSR 19 と表 4(緩み止めの特徴と locking moment の検証);附属書 B 図 29(初期締付け力に依存する jam nut)
- NAVSEA NSTM 第 075 章 Rev. 2、§075-5.3.4.1–.2、p. 75-96——薄ナットは継手面と厚いナットのあいだ;主ナットが作用荷重の全部を負う;厚さの比による予締めトルク;新規の取付けには推奨しない
- J. H. Bickford《An Introduction to the Design and Behavior of Bolted Joints》第 4 版 §14.6.4 p. 319(conventional な配置;Sawa らの改良手順)と表 14.4(Junker 比較、ダブルナットを poor と評価);第 2 版第 17 章(jam nut は最終の荷重と逆の向きにねじを予荷重する)
- VDI 2230 第 1 部 2003 年版 §6.2 と表 A14——推奨される緩み止め要素;ふつうのダブルナットは挙げられていない
- Bolt Science——25–50% の簡略値、ねじの軸方向すきまの差、長いボルトのねじ剝がれの警告、二つの配置の横方向振動の比較
- T. D. Walshaw(Tubal Cain)、〈Bolts, Nuts & Screws〉、《Model Engineer》vol. 140, no. 3500、1974 年 11 月 1 日、p. 1069——薄ナットを上にする主張;全文は公開で照合できない
どの用途の合否も、あなたの図面とあなた自身の試験が決めます。
この記事は手順 2、ねじを扱います。全体の順序は相手材、ねじ、頭部、駆動部、表面処理、書類で、これを崩すと微調整ではなく手直しになる理由はねじの決め方にあります。
よくある質問
薄ナットは先に締めるのですか、あとから締めるのですか。
ふつうの初期締付けの継手では先です。継手の面に当てて締め、そのうえに並高さのナットを締めながら、薄ナットを押さえて回らないようにします。ISO 898-2:2012 の第 5 節がこの順序を文字にしていましたし、Bickford と米海軍 NSTM 第 075 章も同じ配置です。注意すべきは、ISO 898-2:2022 の第 6 節が二つを対で使う要求を残しながら手順を書かなくなったことで、現行の ISO の条文は順序を与えていません。
なぜ薄ナットを下に置くのですか。
最終的に締まったあと、それが作用荷重を負う部品ではないからです。外側のナットを締めるとボルトがさらに伸び、内側の薄ナットは荷重を降ろしていき、二つは最後にボルトのねじの反対のフランクにそれぞれ接触します。海軍の手引きは主ナットが作用荷重の全部を負うと明言しているので、その厚さはそれが唯一のナットだったときに必要な厚さと同じでなければなりません。薄ナットは二つのあいだの相互の力とねじの接触応力をなお受けるので、まったく力を受けないわけではありません。
薄ナットは並ナットよりかなり弱いのですか。
かなり弱いです。薄ナットは ISO 898-2 の style 0 で、ISO 4035:2023 が覆い、区分は 04 と 05、先頭の 0 は規格が耐荷重を下げたことを示すための記法です。M10×1.5 でいうと 04 の保証荷重は 22.0 kN、05 は 29.0 kN、並ナットの 8 は 50.5 kN です。ISO 898-2 は薄ナットが過負荷時のねじ剝がれを避けるようには設計されていないと明言しています。
規格はダブルナットを緩み止めとして勧めていますか。
緩み止めの性能を検証しなければならない場面では勧めていません。NASA-STD-5020B は初期締付け力に依存しない緩み止めの特徴を求め、jam nut が満たさないことがあると述べています。NAVSEA は旧来の方法と呼び、新規の取付けにはふつう推奨しないとしています。Bickford は Junker の振動比較でダブルナットを poor と評価しました。VDI 2230 第 1 部の表 A14 はふつうのダブルナットを緩み止めの選択肢に挙げていませんが、挙げていないことと明文の禁止は違いますし、全面的な禁止の条文も見つかりませんでした。
薄ナットは最終トルクの 25 から 50% まで締めるのですか。
その数字は規格の要求ではなく工学上の助言で、Bolt Science までたどれます。そこではねじのすきまと締付け長さのせいで正確な初期荷重が決めにくいという理由で、簡略化した比を使っています。NAVSEA は部品の比で伸縮する別の規則を与えていて、薄ナットが主ナットの厚さの三分の二のとき、主ナットのトルクの二分の一から三分の二まで締めるとしています。信頼できる二つの出典が違う数字を与えていて、しかもどちらも規格ではありません。
ダブルナットは組んだあとで検査できますか。
実際にはできませんし、それこそが問題です。完成品からは最初のナットにどれだけのトルクが加えられたか、外側を締めるあいだ薄ナットが固定されていたか、ねじがすでに局部的に降伏しているかが見えません。性能が組付けのその瞬間に完全に決まり、しかも組付けが証拠を残さないのですから、見た目の同じ二つの継手が違う振る舞いをしえます。これは検証の要求と力学から当サイトが導いた結論であって、規格のなかの引用ではありません。
お問い合わせ
図面に薄ナットがあるなら、それが jam nut の仕事をしているのか、 それとも荷重を負うのかをお知らせください。 この二つは必要な区分が違いますし、 同じ寸法で 04 の薄ナットの保証荷重は、8 の並ナットの半分にもはるかに届きません。
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