締結部品に付く強さの数値は、力を棒が始めに持っていた断面積で割ったものである
本サイトは強さの数値を絶えず引いてきた。八百メガパスカル、強度区分、二つの数値の比。しかしそれを生む試験そのものを一度も読んでいなかった。そこでこの頁は引張試験の規格を読む。そして規格が最初に述べるのは、報告される応力が、誰かが引く前に試験片が持っていた断面積で力を割ったものだということである。
ISO 6892-1 は応力を、試験中の任意の時点における 力を試験片の原断面積で割ったものと定義する。 そして注記を添える。 「本文書における応力への言及はすべて公称応力である。」 棒は破断の前にくびれる。分母はそれに付いていかない。
この頁がどう書かれたかについて一言。 ここでの通常のやりかたは、フォーラムから問いを取り、その背後の文書を読みに行くことである。 今回はブラウザの道具が使えなかったので、主題は本サイト自身の空白から選んだ。 ここには強さの数値を引く頁が何百とあるのに、そのすべてを検索しても 耐力、標点距離、伸び計、ひずみ速度、0,2 % という表記の命中は零だった。 埋める価値がありそうに見えた。
材料選定や試験の助言はここでは一切与えず、試験所名も装置名も書かない。
分母は一度も動かない
丸棒を引けば伸び、ある点を過ぎると一か所で細りはじめる。 切れるころには、破面の金属は始めよりずっと小さな断面で荷重を担っている。 その瞬間その金属のなかにある応力は、報告されるどの数値よりもかなり高い。
規格は最後まで So、原断面積で割るからである。 それが公称応力の意味であり、文書はそれを推測に委ねず一行で述べている。
二つめの意外は、看板の数値の定義にある。 引張強さ Rm は、最大力に対応する応力である。 破断時の力ではない。 延性のある金属では、この二つは目に見える間隔をもつ別々の出来事だ。 力が頂点に達し、くびれができ、力が落ち、それから切れる。 引かれる数値は頂点のものである。
たいていの場合、降伏強さは存在しない
ここが仕様表の読みかたを変える。 降伏強さは 「その金属材料が降伏現象を示すとき」に適用されると定義される。 力の増加なしに塑性変形が起こる応力のことである。 そうなる鋼はあり、目にも見え、規格は上降伏強さと下降伏強さを与えている。
たいていはそうならない。それ以外のすべてに与えられるのが 塑性伸びによる耐力 Rp である。 塑性伸びが伸び計標点距離の指定された百分率に等しくなるときの応力で、 その百分率は下付きに書き込まれる。 Rp0,2 はそこから来ている。
つまり誰もが降伏と呼ぶあの数値は、多くの締結部品用鋼にとって、 千分の二の永久伸びを残すという理由で選ばれた応力である。 二十ミリメートルの伸び計標点距離なら 百分の四ミリメートル。これは規格ではなく当方の計算だ。 材料が越える閾値ではない。角のない曲線の上に委員会が引いた一本の線である。
そして正しい計器なしには測れない。定義中の注記がはっきり述べている。 伸びに基づく性質、Rp を含めて、 伸び計の使用は必須である。
五倍の直径を、5,65 と書く
伸びはある長さの百分率なので、その長さを先に決めておかねばならない。 規格は好ましい試験片を比例試験片と呼び、 Lo = k √So で定義し、 「国際的に採用されている k の値は 5,65 である」と述べる。
この数は恣意的に見える。1998 年版がその下に置いた脚注を見つけるまでは。
5,65 √So = 5 √(4So / π)
円形断面では √(4So/π) は直径である。 つまりこの式全体が直径の五倍と言っている。 この定数についての当方の計算では、 5 × √(4/π) = 5 × 1,128 4 = 5,641 9、 丸めて 5,65 になる。 断面が小さすぎるときに規格が示す代わりの値 11,3 は 10 × 1,128 4 = 11,283 8 で、直径の十倍、 しかもちょうど 5,65 の二倍である。
測定のノイズのように見える二つの定数は、丸棒を自分の直径の五倍と十倍で測ることだった。 そして伸びは定義上その長さの百分率なので、1998 年版は、 標点距離が 5,65 のものでない場合には記号に添字を付けることを要求する。 A11,3 や A80 mm である。 ただの A と書かれた伸びは直径五倍のものであり、 その慣習だけが二つのそうした数値を比較可能に保っている。
標点距離には 15 ミリメートルという下限があり、 注記は20 ミリメートルを下回ると破断後伸びの不確かさが増すと警告する。 これは規格ではなく当方の観察だが、 五ミリメートルの帯が、許されつつ悪くなると分かっている区間として残っている。
どれだけ速く引くかも答えの一部である
序文はこの点について異例なほど率直だ。試験速度には二つの方法がある。 方法 A はひずみ速度に基づき、 方法 B は応力速度に基づく。 方法 A は、速度に敏感なパラメータを決める瞬間の試験速度の変動を最小にし、 測定の不確かさを最小にするために存在する。
そして理由。持ち帰る価値があるのはこの一文である。 「材料のひずみ速度感受性がしばしば知られていないという事実からも、 方法 A の使用を強く推奨する。」
したがって強さの数値は、引く速さを含んだ問いへの答えであり、 規格は、手元の材料がその速さにどれだけ敏感かはしばしば不明だと述べる。 それを、重要でないと主張することではなく、速度を管理することで扱っている。
室温とは二十五度幅の帯である
原理の箇条が条件を定める。 「別途規定がないかぎり、試験は 10 °C から 35 °C の室温で行わなければならない。」 その範囲外なら温度を記録して報告し、試験所はその影響を評価しなければならない。
そして二つめの、より狭い一文。 「管理された条件下で行う試験は、23 °C ± 5 °C の温度で行わなければならない。」
つまり一つの箇条に室温が二つあり、通常のほうは管理されたほうより 二倍半広い。これは当方の引き算である。 どちらの条件で得られたかを言わずに引かれた数値は、 二十五度の幅のどこで測られたものでもありうる。
まず折り、それから二つを突き合わせる
その光景のためだけにでも読む価値のある定義が一つある。 破断後の最終標点距離は、破断のあと、室温で、 「二つの片を、その軸線が一直線になるように注意深く突き合わせたうえで」測る。
破断後伸びは、その長さから元の長さを引き、元の長さで割ったものである。 この業界でもっとも引用される延性の数値は、 折れた棒を手で組み直し、二つの標点のあいだを測って得られている。
言葉が動いた
1998 年の文書と現行版のあいだに小さな変更が二つあり、 どちらも隠されずに記録されている。
- 1998 年はそれを非比例伸びによる耐力と呼んだ。2019 年版は塑性伸びによる耐力と呼び、その注記は、定義が古い名称を使う技術報告から適合されたものだと述べる
- 1998 年は試験を 10 から 35 度の周囲温度で行うとした。2019 年は同じ二つの数値のあいだの室温とする
どちらも値を変えていない。 しかしどちらも、古いデータシートのなかで数値を追うときに何を検索すべきかを変えている。 それが、この二つに気づいておく実務上の理由である。
強度区分がこれらの数値で何をするか、そしてその区分がどこで効かなくなるかは別の話で、 強度区分と温度の頁にあり、 ここでは繰り返さない。
持ち帰る点
- 応力は力を原断面積で割ったもの。最後までそうである。規格は応力への言及がすべて公称応力だと述べる
- 引張強さは最大力のところであって、破断時ではない
- 降伏強さは材料が降伏現象を示すときにしか存在しない。それ以外では、指定された塑性伸びにおける耐力である
- Rp0,2 は千分の二の永久伸びを残す応力。二十ミリメートル標点距離なら百分の四ミリメートル
- 伸びに基づく性質には伸び計の使用が必須である
- 5,65 は直径の五倍、11,3 は十倍。1998 年の脚注が 5,65√So = 5√(4So/π) と直接書いている
- 添字のない伸びは直径五倍のもの。それ以外の標点距離は記号に書き込まなければならない
- 試験速度は無視されるのではなく管理される。材料のひずみ速度感受性がしばしば不明だからである
- 室温とは 10 から 35 度のことで、管理された条件だけがそれを 23 度プラスマイナス 5 度に狭める
これらは数値を誤りにするものではない。数値を具体的にするものだ。 強さの数値は、分母と標点距離と引く速さと温度が付いた手順の出力であり、 その手順は公開されている。 手順を言わずに数値だけを引く人は、その半分だけを引いている。
この記事は六つの手順のどれか一つには収まりません。手順をまたいで出てくるか、組み付けたあとに出てくる話です。ここに行き着く判断がどこで下されているかはねじの決め方にまとめてあります。
よくある質問
ボルトの引張強さは、折れた瞬間に金属のなかにあった応力ですか。
違います。理由は二つ。規格は応力を力を原断面積で割ったものと定義し、応力への言及はすべて公称応力だと述べるので、分母はくびれに付いていきません。そして引張強さは最大力に対応する応力と定義され、延性のある金属ではそれは破断時ではなくその前に起こります。
Rp0,2 とは何ですか。
塑性伸びによる耐力です。規格は、塑性伸びが伸び計標点距離の指定された百分率に等しくなるときの応力と定義し、その百分率を下付きに書きます。したがって Rp0,2 は 0,2 パーセント、すなわち千分の二の永久伸びを残す応力です。
降伏強さをそのまま示せばよいのでは。
多くの金属には示すべき降伏強さがないからです。規格は降伏強さを、材料が降伏現象を示すとき、つまり力の増加なしに塑性変形が起こるときに適用されると定義します。それを示さない材料には、指定された塑性伸びにおける耐力が与えられます。
標点距離の係数はなぜ 5,65 なのですか。
直径の五倍だからです。1998 年版が恒等式を脚注に置いています。5,65 掛ける So の平方根は、5 掛ける 4So を π で割ったものの平方根に等しく、円形断面ではその平方根が直径です。この定数の当方の計算では 5 掛ける 1,1284 で 5,6419。もう一つの値 11,3 は直径の十倍で、ちょうど 5,65 の二倍です。
標点距離は伸びの数値を変えますか。
変えざるをえません。破断後伸びは定義上、原標点距離の百分率だからです。だからこそ 1998 年版は、標点距離が 5,65 のものでないときには記号に添字を付けることを求め、A11,3 や A80mm という書きかたが生まれます。ただの A は直径五倍の標点距離を意味します。
試験の速さは効きますか。
規格はそれを無視するものではなく管理するものとして扱います。ひずみ速度に基づく方法 A と応力速度に基づく方法 B を示し、材料のひずみ速度感受性がしばしば知られていないと述べて、方法 A を強く推奨します。
引張試験はどの温度で行うのですか。
別途規定がないかぎり 10 から 35 摂氏度の室温で、その範囲外なら温度を記録して報告します。管理された条件下の試験は 23 度プラスマイナス 5 度です。当方の引き算では、通常の帯は管理されたものの二倍半の幅があります。
破断後伸びは実際どう測るのですか。
最終標点距離は破断のあと、室温で、二つの片をその軸線が一直線になるよう注意深く突き合わせて測ります。百分率はその長さから元の長さを引き、元の長さで割ったものです。
この頁はどの材料を使うべきか教えてくれますか。
いいえ。材料選定や試験の助言は与えず、試験所名も装置名も書きません。公表されている強さの数値が何の測定なのかを述べ、数値をそれを生んだ手順とともに読めるようにするための頁です。
参考資料
- ISO 6892-1:2019「金属材料 引張試験 第 1 部:室温における試験方法」第三版。十五頁の無料プレビュー、印刷第 9 頁まで。序文、第 3 節の用語定義の全体、第 5 節の原理、第 6 節の試験片を含む
- ISO 6892:1998、十五頁の無料プレビュー。旧用語の対照と、5,65 が直径の五倍であることを示す脚注のために用いた
二つの無料プレビューをダウンロードして読んだ。ISO 6892-1:2019(カタログ番号 78322、十五頁、印刷第 9 頁まで)と ISO 6892:1998(カタログ番号 2472、十五頁)。本サイトが金属の機械試験の委員会の規格を使うのはこれが初めてである。引用した数値と式はすべて、当該頁を画像に起こして目で照合した。文字抽出ではない。この記事にフォーラムの出所はない。本サイトがふだん問いを読むために使うブラウザの道具が、二度とも拡張機能未接続と報告したため、主題は本サイト自身の収録状況から選んだ。全記事を検索しても、耐力、標点距離、伸び計、ひずみ速度、0,2 % の表記はいずれも現れず、強さの数値だけが至るところにあった。次の各項は当方の計算であり、いずれの版の記述でもない。5 掛ける 4 を π で割ったものの平方根が 5,641 9、10 倍が 11,283 8 であり、したがって二つの係数は直径の五倍と十倍で、11,3 はちょうど 5,65 の二倍であること。0,2 パーセントが二十ミリメートル標点距離で 0,040 ミリメートルであること。10 から 35 度の帯が 23 度プラスマイナス 5 度の二倍半であること。そして五ミリメートルの標点距離の区間が、許されつつ不確かさを増すと明示されているという観察である。実際の試験速度の数値を載せる第 10 節、第 11 から 23 節、および附属書 A から L は、いずれもプレビューの外にあり読んでいない。そこには試験所間の精度を扱う附属書 L も含まれるので、この頁は試験所どうしの差について何も述べていない。この頁のために ISO 898-1 は読んでおらず、いかなる強度区分の数値もこの引張試験規格に帰していない。ISO 7500-1、ISO 9513、ISO/TR 25679 も読んでいない。材料選定や試験の助言は与えず、試験所、計器、製造者の名も書かない。
お問い合わせ
仕様が当社の供給する部品に強さの数値を課しているなら、 それと一緒に送っていただくと役に立つのは、 その数値がどの規格で測られたか、そして伸びであればどの標点距離か、です。 その二つが、二枚のデータシート上の二つの数値が同じ量かどうかを決めます。 あとで分かるより、いま伺うほうがよいと考えています。